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危機を逃れ、ドイツ国債に殺到する投資家 安全資産としての資質に疑問の声も
2012.05.25(金)
Financial Times
実に目覚ましい上昇相場が続いてきた。このところ市場では大量の売り注文が相次ぎ、23日には一段とその傾向が強まったが、投資家は多額の資金をドイツ国債につぎ込んできた。ドイツ政府の債券は、欧州で最も安全な資産と見なされているからだ。
その結果、ドイツ政府の借り入れコストは過去最低水準まで低下。指標となる10年物ドイツ国債の利回り(価格と反対の動きをする)は、ほかの比較的安全な投資先の利回りより大幅に低下した。流動性が高い安全資産として世界最大の市場規模を誇る米国債でさえ、ドイツ国債に殺到する買いの陰に隠れてしまった。
ただ同然の金利で債券を発行するドイツ政府
この「質への逃避」の規模を見事に象徴したのが、23日のドイツの国債入札だ。
投資家はドイツが初めて発行する表面利率ゼロの2年物国債を微々たる割引率で買い上げ、その結果、利回りは0.07%という過去最低を記録した。言い換えると、ドイツ政府はただ同然の金利しか払わずに債券を発行しているわけだ。30年物国債の利回りは史上初めて2%台を割り込んだ。
「これは、かなり驚くべきことだ」。BNPパリバで欧州ソブリン債務資本市場部門の共同代表を務めるナサニエル・ティンブレル・ホイットル氏はこう話す。「明らかに、ドイツはまだ欧州で一番人気の避難先だ」
こうした状況は一部の投資家やアナリストを困惑させている。彼らは、ドイツ政府はいずれ、通貨同盟を救うための費用を負担し、自国の信用力を損なう羽目になると考えているためだ。だが、ドイツ国債の利回りは一貫して低下し続けてきた。
ギリシャがユーロ圏から離脱する可能性に加え、鈍化するその他欧州諸国の経済成長への懸念から、ドイツ国債の利回りが上昇するかどうかは疑問だ、とシティグループの金利戦略のグローバル責任者、マーク・スコフィールド氏は言う。
ドイツ国債はユーロ圏の全面解体に対するヘッジ
「ドイツ国債やユーロ圏から大規模な資金流出が起きる可能性は低い。ほかの主要な世界準備通貨を見ても、ぱっとしない」と指摘し、比較的期限の短いドイツ国債の利回りは短期的にマイナスに転じるかもしれず、10年債利回りは1.25%まで低下する可能性があると言う。
実際、一部のストラテジストは、ドイツ国債は事実上、全面的なユーロ圏解体に対するヘッジだと話している。というのも、全面解体に至った場合、ドイツ国債はドイツマルク建てに切り替えられ、通貨価値が上昇すると見られるからだ。
「名目利回りはマイナスになるかもしれない。今の騒乱が続いた場合は特にそうだ」と話すのは、M&Gのシニアファンドマネジャー、デービッド・ ロイド氏。「一時的に購買力を失うこともあるだろうが、それと引き換えに、絶対確実にすべてを取り戻せる」
それでも、ドイツ国債の上昇相場の継続性を巡っては、多くの不安がある。一部の投資家は、数ある「安全」資産の中ではドイツ国債は弱く見えると言う。ドイツ経済は大半の近隣諸国より好調だが、比較によって実際より良く見えていると指摘する向きもある。
さらに、81%というドイツの対国内総生産(GDP)債務比率は、すべての投資家に信頼感を抱かせるような水準ではない。
フランクリン・テンプルトンで外債部門の共同責任者を務めるジョン・ベック氏は言う。「ドイツの債務指標が他国より大幅に優れているとは思えない。別の惑星から来た人がいたら、なぜドイツがこのような金利で借り入れができているのか理解に苦しむだろう」
ドイツにのしかかるユーロ救済費用と銀行問題
最終的に、弱いユーロ圏諸国を支援する費用の多くをドイツが負担せざるを得なくなったら、ドイツの債務負担は一段と大きくなる。費用はほかの加盟国と分担することになるが、ドイツはほぼ間違いなく最大の割合を背負わされるだろう。
「ドイツは負担の大半を負わなければならず、それがドイツの信用力に重くのしかかってくる」と、ヘンダーソン・グローバル・インベスターズの最高投資責任者、デビッド・ジェイコブ氏は言う。
安全な避難先としてのドイツの資質にとっては、銀行がもう1つの弱点かもしれない。規模が小さい地方・地域金融機関の多くは2008〜09年の世界金融危機で多額の損失を負い、ドイツ国外の不良債権へのエクスポージャー(投融資残高)に対する懸念が残っているためだ。
「疑わしい資産を大量に抱えたドイツの中小銀行がたくさんある」と、ある英国の銀行家は言う。「現時点では、市場はこの点について心配していないが、1つの問題ではある」
こうした懸念はまだドイツ国債市場に反映されていないが、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのストラテジスト、ジョン・レイス氏は、ユーロの下落は国際的な投資家が懸念を深めていることを物語っている可能性があると指摘する。
ユーロはこれまで、債務危機の影響に対して予想外の抵抗力を見せてきた。その背景には、資金が欧州から漏れ出さなかったこともある。実際、欧州の周縁国からの資本流出は、欧州の中心部へ向かい、特にドイツの相対的な安全性へ流れ込んだ。ところが今、この状況が変わり始めた可能性がある。
最近のユーロ安が示唆するユーロ圏外への資本逃避
「最近のユーロの弱含みは、ユーロ圏内における資本逃避がついにユーロ圏外への資本逃避に発展し始めたことを示唆しているかもしれない」とレイス氏。「ドイツ国債はユーロ圏の安全な避難先だが、それでもユーロ圏に属していることに変わりはない」
ドイツ国債に対する初期の懸念が最も如実に表れているのは、デリバティブ(金融派生商品)市場だ。
短期のドイツ国債の利回りはほかの安全資産より低いものの、デフォルト(債務不履行)に対する一種の保険であるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を見ると、ドイツのCDS保証料率はじりじり上昇し、1%近くに達したとマークイットは言う。この保証料率はユーロ圏の中では最も低く、日本のCDSより低いが、英国債や米国債のCDSよりは高い。
ドイツ国債の利回りが上昇するという予想は、この2年近く外れ続けてきた。だが、もし投資家がドイツの避難先としての資質を真剣に疑い始めたり、ユーロ圏の危機が和らいだりしたら、ドイツ国債への資金流入は反転しかねない。
「ほんの少しでも状況が上向けば、これほど利回りが低いドイツ国債を少しでも保有していたいと思うか? 行く手には流血の結末が待ち受けている可能性がある」とベック氏は話している。
By Robin Wigglesworth
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