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ギリシャのユーロ離脱が欧州経済に及ぼす損害額はいくら?ユーロ圏の中央銀行は1000億ユーロを融資、ECBは560億ユーロのギリシャ債を購入…
• 2012年5月24日 木曜日
• The Economist
ギリシャがユーロ圏から離脱する可能性が日に日に高まっている。5月6日の総選挙の後、連立政権協議が不調に終わった。ギリシャは暫定政府を置き、6月中旬に再選挙を実施する。再選挙が、ギリシャの緊縮計画を否認する結果に終われば、事態は間違いなくユーロ離脱に向けて動き始める。
だがそれ以前に、ギリシャ国民がオンライン操作で銀行から預金を引き出し始めたら、事態は前倒しで進行しかねない。
ギリシャの預金の3分の1が消えた
今日の取り付け騒ぎは、預金者が銀行に押し寄せて現金を引き出すという形では始まらない。マウスをクリックするだけで海外に送金する、あるいは債券や株式などの資産を購入することができる。ギリシャの銀行は、過去2年の間に、預金残高全体での3分の1を失った(グラフ1参照)。預金者が(本誌注:暮らしのため)貯蓄を減らしているという面もある。しかし5月の半ば頃から、預金の流出量が膨らみ始めている。不穏な兆候だ。
ギリシャのカロロス・パプリアス大統領は5月14日に、中央銀行から警告を受けたことを発表した。国内の銀行から約7億ユーロ(約700億円)の預金が引き出されたという。公式な数字は数週間後に発表されるが、銀行関係者によると、14日からの数日間で12億ユーロ(約1200億円)もの預金が流出した。流出はその後も続いているが、ペースはかなり収まっている。
ある銀行関係者はこう語る。「外貨と交換可能なカネは既に大半が去った。今、盛んに引き出されているのは、夜のニュース番組の内容をどう理解すべきか分からない小口預金者たちのカネだ」。
EFSFの資金をギリシャの銀行に注入すべき
恐ろしいのは、取り付け騒ぎがポルトガルやスペインなど経済が脆弱な他のユーロ圏諸国に広がる危険性だ。ある銀行関係者は、「取り付け騒ぎは、細い流れで始まり、いきなり洪水になる」と語る。「本当に心配なのは、最初にギリシャでダムが決壊した後、ほかの国でも決壊することだ」。
他国の個人預金者は、今のところ預金を引き出す動きを見せていない。だが大企業は、ユーロ圏周縁国の銀行から既に預金を引き上げている。英国のある地方自治体は、スペインのサンタンデール・グループ傘下の英サンタンデール銀行に預けてある預金を他行に移していると報じられた。同行は英国内で資本調達を行い、英国の規制当局の監督下にあるにもかかわらずだ。
ギリシャでは、再選挙まで4週間、政治空白が続く。差し当たり、この間に取り付け騒ぎが起きないようにすることが課題となる。当局には、預金者の信頼感を回復させる強力な手段がある。まさにこのような目的のために欧州金融安定基金(EFSF)が用意している480億ユーロ(約4兆8000万円)ほどの新たな資金を、ただちにギリシャ国内の銀行に注入するのだ。
欧州中央銀行(ECB)は5月中旬、ギリシャの一部の銀行に対して、資本増強の不足を理由に流動性供給オペを停止した。それでもECBが豊富な流動性の手持ちを示せば、預金者は安心できる。
しかし、これらの対策は賭けでもある。預金者は、望めば引き出せる現金の準備があることを知って、むしろ預金を下ろそうとするかもしれない。
欧州とギリシャ当局が再選挙までなんとか取り付け騒ぎを抑えられたとしても、その選挙で国民が、ユーロ離脱を掲げる政府を選ぶ可能性は残る。ギリシャ国内の銀行は、そうならないことを祈っている。ギリシャの銀行関係者はこう語る。「ユーロ離脱は悪夢を招く。アルゼンチンとは違う。アルゼンチンには独自の通貨があった。ギリシャでは経済がたちまち物々交換の段階に戻ってしまう」。
しかし、離脱がもたらす危険性は、ギリシャ1国にとどまらない。
伝染経路は1つではない
ギリシャが借り入れた救済資金を返済しなければ、ユーロ圏諸国と国際通貨基金(IMF)も無傷ではいられない。ギリシャがユーロを離脱した場合に、債権者が直接負う金融的な負担は、債務再編前に比べればましになっているとはいえ、かなりのものだ。
しかしそれよりもはるかに大きな負担を負うのは、欧州の納税者だろう。ギリシャ中央銀行はユーロ圏のほかの中央銀行から合計約1000億ユーロ(約10兆円)を借りている。仮にこの債務をデフォルト(債務不履行)すると、ドイツだけでも(ECBへの出資比率から計算して)約300億ユーロ(約3兆円)の損害を受ける。
このほか、ECBは、流通市場で購入したギリシャ国債で560億ユーロ(約5兆6000億円)の損失を被る(各国中央銀行の購入分を含む)。欧州が拠出した救済資金は総額1610億ユーロ(約16兆1000億円。ECBが損失を被らないよう一時的に取り分けた担保費用を含む)。IMFの融資額は220億ユーロ(約2兆2000億円)にのぼる。
ギリシャ発の金融的な連鎖で次に問題になるのは、各銀行がギリシャ向けに保有しているエクスポージャー(投融資残高)だ。銀行は既にギリシャ国債について評価損を計上している。また、額面価値の低い債券との交換にも応じた。それでも、独ベーレンベルク銀行によると、さらに評価損を計上せざるを得ないという。欧州の銀行と投資家は、合わせて額面で550億ユーロ(5兆5000億円)のギリシャ国債を依然として保有している。
ギリシャの企業と家計も海外に借金をしている
ギリシャで債務を負っているのは政府だけではない。国際決済銀行によると、ギリシャの企業や家計が他国の銀行に負っている負債は、2011年末で690億ドル(約5兆5000億円)にのぼる(グラフ2参照)。最も多いのがフランス(家計と企業に対するエクスポージャー総額は約370億ドル)。次いで英国(同約80億ドル)、ドイツ(同約60億ドル)の順だ。
ギリシャがユーロ圏から離脱した場合、こうした民間債務のどの程度が回収不能になるのかは、評価が難しい(仮にギリシャがユーロ離脱を避けることができたとしても、評価損となる可能性は高い)。例えば融資の一部は船舶や航空機の製造に使われたかもしれない。船舶などへの融資契約は、英国法に基づき、ドル建てで結ばれている可能性がある。その契約の担保となる資産(船舶)は港で差し押さえることができる(積み荷の荷主にとっては困った事態になる)。
ギリシャの債務者には恐らく非上場企業が多い。大手上場企業の多くも、開示情報から分析すると、借入枠が比較的小さい。また、シンジケートローンに関係する金融機関は広く分散しているようだ。
このほか、ギリシャがユーロを離脱した影響のもっと小さな波及経路として、外国の保険会社や年金基金がギリシャ企業の社債を購入しているケースが考えられる。
市場は、スペインとイタリアを注視
欧州の金融システムにとって、危機がギリシャ国外に広がるかどうかは大きな問題である。ギリシャのユーロ離脱によって被害を被ることが最も明白なのはキプロスだ。キプロスの金融システムはギリシャのシステムと密接に絡み合っている。
米格付け会社ムーディーズは、ギリシャがユーロを離脱した場合、キプロスの銀行は大きな損失を被り、同国GDP(国内総生産)の50%に相当する約90億ユーロ(約9000億円)の資本増強が必要になると試算する。欧州の銀行はキプロス経済に対して約360億ドル(約2兆8000億円)のエクスポージャーを持つ。
しかしキプロスは小国だ。必要となれば容易に救済できる。本当の不安は、市場がもっと大きな国に目を向けていることにある。ポルトガルとアイルランドがギリシャに続く候補として控える。さらに、スペインとイタリアの国債利回り(借り入れコスト)も、ギリシャ不安に反応して上昇している。スペインでは5月17日に、最近一部国有化されたバンキア銀行の株価が急落した。同行から預金が10億ユーロ(約1000億円)引き出された、との報道を受けてのことだ。
ギリシャ危機は発生から2年になる。だが欧州の政策担当者にとって、周縁国への飛び火を抑える防火壁を築くのに使える時間は、数週間もないかもしれない。
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英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
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