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軽減税率を設けた消費税の引き上げによる経済的影響
消費税の増税がこのままでは難しいと見た政府は今度は、軽減税率や給付金付きの消費税増税を持ち出してきた。
政治的な妥協をして、消費税を通そうとする腹つもりである。しかし経済原則に妥協はない。デフレ下の消費税増税は、軽減税や給付金をつけても、国民を路頭に迷わす暴挙に過ぎないのだ。
このような軽減税付きや給付金付きの消費税の増税をすることは、最早、当初の内閣府の試算どおりの税収を上げることは不可能であり、財政再建の目論みや、社会保障の充実による不安解消は、達成できないことになる。(もともとこのデフレ下の消費税増税は税収が増えないまやかしであるが。)
軽減税付き、給付金付きの消費税増は、一時的に経済の突然死を避けることはできるが、しかし、2、3年後には確実に大不況が襲って、破綻に至ることには違いがない。
今以上の速度で、時が経つにつれ、年が経るにつれ所得の偏差値が下へ下へと下がり、下層階級がどんどん多くなり、中流層がなくなっていく。
それは今現在の5%の消費税率の経済より早く破綻の縁に導くの確実である。
市場の経済縮小に関係なく支給される公務員の賃金との民間賃金の格差はさらにどんどん広がり、市場の規模の割に公務員の負担が大きくなり、破綻する。
あるいは、民間だけによる購買力がほとんど無いため、政府が援助する分野、補助金を出す分野のみが、生き残り、その他は衰退する。
ギリシャ化というのは、単に公務員負担が多いことを言うのではない。政府の補助金や法律の援助に頼らなければやっていけない経済を指すのである。
例えばタクシー業界が、役所の近辺をうろつかざるをえなかったり、建築業界が、公共投資だけを頼りにして、民間の消費力だけではやっていけないことをいう。
いずれにせよ、軽減税や給付金付きの消費税増税であっても破綻までの寿命が3、4年伸びる程度に過ぎない。
政治的妥協でデフレがひるむ分けでもなく、経済原則が変わるわけでもない。稚拙な政治的妥協が大きな災いを生む。無知な経済学者や、官吏が政治家を動かし、ババを掴むのは民間である。
ヨーロッパは、これまで大きな貯蓄を蓄え、それを原資にして、高消費税、高福祉を担ってきた。しかし、例えば莫大に借金が増え貯蓄がなくなれば、借金返しのためにこのような体制を維持することは不可能になる。
ユーロの崩壊、ギリシャのユーロ圏からの離脱は、大きな借金をそれぞれの国に課することになる。その時高負担、高福祉型の国はその体制を維持できず崩壊するだろう。
私達は、デフレで借金を返さなければならない状態に置かれている。それを認識していればこんな馬鹿げたことはしないはずである。
小泉竹中路線が、アメリカ型の金融立国を目指し失敗したが、今度はヨーロッパ型の市場をまねることになるわけだ。
異常に消費税率の高い多くのヨーロッパ諸国が、ユーロ崩壊による大借金を背負い込めば、今の10%を越える消費税率でやっていける分けがない。
もともと高福祉による高負担は、ヨーロッパの飛躍の足かせになっていた。
そのような体制は、借金より貯蓄が多い豊かな、ヨーロッパが前提となっているのである。
高福祉を維持するため、消費税率を高くし、産業をないがしろにしてきたヨーロッパが、現在の新興国の台頭する世界で、大きな借金を背負えば、借金を返すことは不可能である。
ヨーロッパの高福祉高負担による我がよければよいの思想及び仕組みは、彼らが地球の他の国々より経済的に頭抜けていた場合にのみ成り立つのである。
単なる猿まねは、猿にも劣ろう。
日本は大借金を既に背負っている。わざわざ惨敗が明らかなヨーロッパ型を目指すことはなかろう。
単なる猿まねは、猿にも笑われよう。
*消費税を引き上げた場合の軽減税率の問題点
消費税が引き上げられると、市場全体からさらに資金が政府に吸い上げられることにはかわりがないが、軽減された産業群が正常な経済状態で優遇されるより以上に優遇されることになる。それが資源配分を大きく歪ませることになる。
消費税増税下の軽減税率は、
1、低所得者に対して別段なんら有利になるものではない。同じように高所得者も同じように有利だからである。消費者がこれにより有利になることはない。
給料が増えるわけではなく消費額が増えるわけでもない。働いている企業の売上減、業績悪化から、確実に低所得化に拍車がかかる。確実に企業に入るお金の量が減るからです。
そのため市場全体の資金が再び大量に減少することになります。市場ではその資金が減少した状態で、再び優勝劣敗の生き残り競争が起こります。大半の企業が影響を受け、リストラ、低賃金化し多くの製造企業が淘汰されるでしょう。
それが低所得化を生み出し、中流階層からさらなる下層階級へ、生活保護所帯レベルへとシフトして行きます。公務員以外総下層階級になる日も遠くありません。
このような状態で税率を軽減されると、その業者や産業は、突出して有利になる。それは保護育成策と同じであるが、違うところは、わずかな軽減税であっても、正常な経済状態以上に優遇される結果になることです。
他の産業が増税されているため資金が軽減された方へ向かうからです。
そして保護された産業は、補助金すなわち軽減税がなければ立ち行くことができないものになることです。
すなわち補助がなければ独り立ちできず、育成になりません。
現在の低所得者の多くは、内需企業関連の労働者や、中小零細業者の労働者が多いため、内需市場を直撃する消費税増税は、軽減税付きで有っても、なんら得にならず、深刻な打撃の方が多くなるでしょう。
したがって低所得者層には軽減税付きの消費税増税は、全く恩恵がありません。
2、公正な資源配分が損なわれる。
ごく普通の正常な自由な資源分配が行われず、市場に不公平を呼ぶ。欲しいものが思うほど作られず、不必要なものがたくさん作られる。
例えば、全体の消費税が5%課された場合、食料品が軽減されれば、食品を扱う業者が、他の業界と比べたくさん残ることになる。その分他の産業の業者が少なくなる。
日常品が軽減されれば、嗜好品や、高価な商品の産業が大きな打撃を受け、均衡の取れた産業構造が失われる。
(例えば、食料品が優遇されたとしよう。食品業界はほとんど淘汰されず、ほぼそのまま維持されることになる。しかし食品の輸入品の量もそのまま維持される。ここでTPPなどの自由化が行われると食品業界の大部分が輸入品に変わられる可能性がある。それは食糧輸入品が優遇されることを意味する。
食料品の軽減税が、輸入品の奨励策に成りかねない。
3、軽減税の大きな特徴は、軽減された業界が非常に有利になることです。消費者にはほとんど恩恵がないことです。市場全体に消費税が課されるため、軽減された業界は、より一層経済的優遇を得ることになる。
デフレでこのような保護育成策が行われると、いつまで経っても独立できず、軽減税がその業界になければやっていけなくなる。
これがデフレにおける軽減税の大きな特徴であろう。
皆様ご存じのように、チデジ化の補助金行政が、テレビ産業を衰退させたことは、明らかでしょう。需要の先食いが、極端な販売減をもたらしたのです。
エコ家電減税:デフレ下でこのような政策を実施すると、減税という補助金をやめることができなくなる。やめると極端に売上が落ちるからだ。そのための助成金をずっと続けなければならなくなり、財政が悪化し続けることになる。
(助成金というのは、減税がなされるとその分の税収がなくなるからです。徴収されなかった税収が助成金として支出されているのです。)
チデジ化の失敗によるテレビの衰退、最早取り返しの付かない政府の大失態だろう。このようなことは太陽光発電や、介護事業で大規模に行われており、デフレ下ではもはや自立は不可能であろう。(保護育成策が単なる金食い虫になっているのだ。)
住宅ローンの優遇策、民間の住宅建築業界はこのローンを頼りになっており、やめることはできないだろう。
エコカー減税、これなどは、やめた場合の反動が大きく、永遠に続けなければならなくなる。そのために出費された税金は返ってくることはない。豊田の社長は国内の雇用を守ると立派なことを言ったが、それに対する政府の政策は、全く逆のことをしているのである。
近視眼的に見ていると経済の大きなしっぺ返しを食らうのである。
トヨタも危ない。国内の自動車産業全体が甘い汁を吸い、体がふやけて自己崩壊する危険が高い。
金融円滑化法により生きながらえている企業は、消費税増税によりより一層苦しくなり、それに対する補助金は増えざる負えない。
しかしこれをやめれば企業群の大崩壊となり、大失業が発生するためやめられない。デフレ下の企業淘汰は、新陳代謝がないため、新しい企業参入がなく、たんなる失業者の増大と、税収を担う企業群の枯渇を意味する。
それは1千兆円を越える政府の借金を返す担い手を失い、デフォルトを宣言することと同じである。
4、恣意的になり、政治家の利権が幅を利かす経済市場になる。
今見てきたように、軽減税を課される業界は非常に有利になる。そのため政治家に対する業界からの働きかけが激しくなり、経済的資源配分より、政治的資源配分が行われ、いびつな経済市場になる。
自由競争による自然な資源分配が阻害される。不均衡を助長する。
5、借金を返す目処が付かず、借金が増える一方になる。デフレからの脱却がますます不可能になる。
消費税に軽減税を付けると、中途半端な税制になる。市場全体の収縮と、軽減された業界の膨張が生じるが、全体の経済成長が阻害され、財政再建も遠のく。
借金を返さなければならない国が、成長力を阻害する消費税を掛けてはいけない。このような馬鹿げた発想は、市場の縮小に応じて給料が減額されないシステムになっている国の公務員的発想である。
特に軽減税付きの消費税増税は、デフレ緩和の意味などほとんど無い。また低所得者に対する恩恵もない。軽減税率を設けることになんら経済的利益はない。
それが良いように思えるのは、政治的妥協を引き出し安いからだろう。全体に税金を掛けながら、お宅の産業が、我々に協力していただけるのなら税金をおまけしましょうというやり方である。
政治的妥協と経済原則にはなんら関係が無い。
結論:デフレ下におけるより一層の消費税引き上げと軽減税率を設けるやり方は、経済的に意味がなく、大損失を招く政策である。
今回初めて本格的に軽減税について分析したのですが、これ程経済的に無意味だとは思いませんでした。特にデフレ下で軽減税の意味は全くなく損失だけです。
政府の単なる国民からの収奪システムです。消費税を全体に掛け、それに対して政治的妥協を引き出すために、日常品を軽減する。そうすれば反対論を押さえることができるからです。
しかしそれは、消費者に何も恩恵がなく、生産者のみを優遇するものです。しかも大借金を抱え、それを返済しなければならない場合、軽減税付きの消費税増は全く役に立たず、阻害するものです。
ヨーロッパ経済が爆発的な成長せず、どちらかというと停滞気味であったのは、このような軽減税付きの消費税が原因でしょう。
ドイツもユーロの大借金を背負ってはやっていけなくなるでしょう。消費税を上げたイギリスが心配ですね。かの国はロンドンオリンピックで沸いているはずなんですがそんな話は聞きません。オリンピックが終わればどうなるんでしょう。
日本でこのまま軽減税付きの消費税の増税がなされ、エコカー減税という補助金がつづけられれば、そのままずっと続けなければならなくなります。やめると日本で生産を続けられなくなるでしょう。
これは、テレビがチデジ化の補助金政策でつぶれたのと同じことです。デフレ下では補助金を付けるとそれから逃れなくなります。
軽減税は生産者に対する補助金であり、デフレ下でなされれば、その業界の温存を図ることになります。それは正常な資源配分がなされず、大きな歪みを経済にもたらします。
追記:ちょっと軽減税付きは、問題あり過ぎだ。政治的妥協の産物に過ぎない、税金収奪システムです。
次回は給付金付きの消費税についてですが、これは軽減税付きよりは消費者寄りだと思います。しかしこれとて、デフレ下ですれば日本の破綻は今より早くなります。
一言主
http://blog.so-net.ne.jp/siawaseninarou/
http://www.eonet.ne.jp/~hitokotonusi/
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