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【コラム】
JPモルガン損失問題でリスク計測モデルの有効性に疑問符
HEARD ON THE STREET
2012年 5月 21日 18:32 JST
誰が、いつ、何を知っていたのだろうか。この問いは依然として、20億ドル(約1600億円)もの損失を出した米金融大手JPモルガン・チェース JPM -1.30% に向けられている。その一方で重要なことは、これとは逆の問いである。つまり、誰が何を知らなくて、それはなぜか、ということだ。
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AFP/Getty Images
両方の問いに対するヒントは、損失を出したチーフ・インベストメント・オフィス(CIO)のリスクを測る難解なモデルの調整にありそうだ。JPモルガンによると、今年の第1四半期に、CIOは信用リスク計測モデル「バリュー・アット・リスク(VaR)」を変更した。
VaRは、企業全体や事業部門、また商品タイプごとに日々予想される最大の損失を計測するものだ。この計測モデルにはあまたの欠陥がある。たとえば、先の金融危機では役に立たなかった。しかし銀行はこれを取引のパフォーマンスを測る指標として、また発生しかけている問題を見つけ出す手段として利用している。皮肉にも、VaRは1990年代半ばにJPモルガンによって考案されたものだ。
銀行では、計測モデルの変更はそう簡単に行われない。だからJPモルガンが第1四半期の初めに変更し、その後で損失を公表し、さらにまた、JP モルガンによると、計測モデルを元の形に変更したのは注目すべきだ。
結果どうなったか。JPモルガンは当初、CIOが抱える平均リスクは前四半期より200万ドル少ない6700万ドルと報告していた。しかし元のモデルへ戻した後、JPモルガンは数字を1億2900万ドルへと修正した。CIOが抱える潜在的な損失が急激に膨らんだことがわかる。
VaRの何が具体的に変更されたかという点に加え、測定モデルの変更については、さらに2つの疑問が湧いてくる。第1は、なぜ変更されたのか、という点だ。安全だと思われる取引に対するリスクを誤って高く見積もってしまうと誰かが考えたからだろうか。それとも、取引がうまくいかず、VaRが警告を発し始めるのを誰かが嫌ったからだろうか。後者であれば、不正行為の可能性が出てくる。
第2に、たとえ変更が妥当な理由から行われたとしても、銀行幹部のなかで誰がこれを知り、許可を与えたのだろうかという疑問だ。CIOはジェームズ・ダイモン最高経営責任者(CEO)に直属しているのではなかったのか。
仮に幹部が適切に相談を受けていなかったとすれば、内部管理およびリスク管理システムに深刻な欠陥があることになる。さらに経営者と規制当局は、何かがおかしいという初期の警告サインを知る機会を奪われていたのかもしれない。
これまでのところ、JPモルガンは損失に関して詳細をほとんど明らかにしていない。また第2四半期終了後まで、さらなる情報の提供はしないとしている。さらに、ダイモン氏は先週、上院銀行委員会で証言することに合意した。
議会にとって、銀行のリスク計測モデルはことのほか重要である。これを巡る問題は、銀行による資本の管理方法や投資家に対するリスクの開示にも関係するからだ。
VaRは取引中の資産に対して銀行がどの程度の資本を持っているかを判断する一助となる場合もある。ただ、この計測モデルは内部で作られたものであるため、銀行側に裁量の余地を与えている。危険な面は、銀行側にとって「所要資本額を低く抑えるために計測モデルを使う意向が働く」ことだと、連邦預金保険公社の前総裁、シーラ・ベアー氏は指摘する。JPモルガンの例がその可能性を示すように、銀行が計測モデルを変更することができるなら、危険は増すことになる。
また、JPモルガンのケースは、計測モデルが銀行によって異なることを思い出させることになった。実際、米通貨監督庁(OCC)はデリバティブ(金融派生商品)取引に関する年4回発行のリポートの中で、リスク計測モデルは誤った数値を示すこともあると「警告」していた。
OCCによると、JPモルガン、ゴールドマン・サックス GS -1.64% 、モルガン・スタンレー MS -0.82% は 信頼区間を95%として計算していた。仮に「バンク・オブ・アメリカ BAC +0.57% やシティグループ C -1.51% のように」、信頼区間を99%で計算していれば、「VaRの予測は有意に高かっただろう」とOCCは指摘している。
JPモルガンの問題は、銀行と投資家の双方にとって、リスクを測ろうとすることが――それを操作することは言うに及ばず――危険をはらんでいることを浮き彫りにする結果となった。
[ハード・オン・ザ・ストリート(Heard on the Street)は1960年代から続く全米のビジネス・リーダー必読のWSJ定番コラム。2008年のリニューアルでアメリカ、ヨーロッパ、アジア各国に 駐在する10人以上の記者が加わり、グローバルな取材力をさらに強化。刻々と変わる世界市場の動きをWSJ日本版でもスピーディーに紹介していく]
記者: David Reilly
http://jp.wsj.com/Finance-Markets/Heard-on-the-Street/node_446090?mod=WSJ3items
JPモルガン、リスク管理者ゴールドマン氏の損失歴認識
5月21日(ブルームバーグ):米JPモルガン・チェースのチーフ・インベストメント・オフィス(CIO)部門でリスク管理を担当していたアービン・ゴールドマン氏は、前の勤務先の米キャンター・フィッツジェラルドで損失を計上した投資をめぐって2007年に解雇されていた。事情に詳しい関係者3人が明らかにした。この問題ではキャンターが監督当局の調査を受けていた。
JPモルガンは今年2月に同氏をCIOのリスク管理責任者に起用した。同行は当時、ゴールドマン氏のキャンターでの行為が当局による同社制裁につながったことを認識していたと、事情を知る関係者は述べた。
20億ドル(約1600億円)を超す損失を出したCIO部門のリスク管理は重大な問題として注目されており、米監督当局が今回の損失問題を検証しているほか、議会は預金者を危険にさらしかねない銀行のリスクテークをどう防止するかを議論している。事情に詳しい関係者1人によると、ゴールドマン氏は義理の兄弟のバリー・ズーブロー氏(59)が1月にリスク管理担当トップから退任したのを受けて、リスク管理の職に就いた。JPモルガンは損失公表から1週間足らずのうちにゴールドマン氏を解任し、チェタン・バーギリ氏を後任としたと事情に詳しい関係者は話している。
キャンターは2010年に、ゴールドマン氏が同社の自己勘定部門で取引していたのと同じ株式を個人口座で売買していたのを監督しなかったとして、ニューヨーク証券取引所(NYSE)の電子株式市場Arcaの法規執行部門から25万ドルの支払いを命じられていた。同氏による株式投資は06年12月に一部銘柄が急落した。NYSE・Arcaは同氏の個人的投資が利益相反に当たり、投資の判断に影響した可能性があると指摘したことがNYSEのウェブサイトに掲載された和解文書に示されている。
和解
この件についてキャンターは不正行為を肯定も否定もせずNYSEとの和解に応じた。NYSEの文書では、ゴールドマン氏は当時の役職名でしか言及されておらず、違法性を直接追及されてはいなかった。解雇の経緯を知る複数の関係者が退社理由は非公開だとして匿名を条件に語った。キャンターはトレーダーが自己勘定取引で買った銘柄を個人的に投資することを社内で禁止している。
JPモルガンの広報担当、クリスティン・レムコウ氏はゴールドマン氏のキャンターでの行動や同行でのリスク管理責任者への起用決定にに関してコメントを控えた。ゴールドマン氏からのコメントは現時点では得られていない。
複数の関係者によると、JPモルガンは現在、トレーディングリスクを隠そうとした人物がいるかどうかを調査している。関係者1人によれば、同行はゴールドマン氏に何らかの不適切な行為があった事実は発見していない。
原題:JPMorgan CIO Risk Chief Said to Have History of TradingLosses(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:ニューヨーク Lisa Abramowicz labramowicz@bloomberg.net;ニューヨーク Dawn Kopecki dkopecki@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:David Scheer dscheer@bloomberg.net;Alan Goldstein agoldstein5@bloomberg.net
更新日時: 2012/05/21 16:09 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M4CGA36K50Y701.html
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