http://www.asyura2.com/12/hasan76/msg/244.html
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●ユーロ危機と欧州統合の表裏関係
http://tanakanews.com/
【2012年5月17日】ギリシャ政治危機でユーロが解体するかもしれないと言われている。だがよく見ると、危機のどさくさ紛れにEUが統合を促進するという、以前からの動きと同じものが今回も行われている。EUは、財政協約によって緊縮方向の財政決定権を各国から奪い、成長協約によって拡張方向の財政決定権を各国から奪って、EUの政治統合を進めようとしている。(田中 宇)
●反緊縮財政派が選挙で勝利、欧州でこれから何が起こるか
http://diamond.jp/articles/-/18623
***ユーロという共通通貨は「現代版金本位制」
そもそも、ノーベル賞受賞者でもあるアメリカの経済学者ジョセフ・スティグリッツは、欧州危機の時の緊縮政策は「自殺」への処方箋だといっている。同じくノーベル賞受賞者のポール・クルーグマンも、緊縮政策は「狂気の沙汰」であるとして、はっきりとおかしいと言っている。ほとんどのエコノミストは経済危機における緊縮政策は、間違っている点で同意するだろう。
振り返ってユーロ危機の本質を考えると、それはユーロという共通通貨圏となったために、各国の金融政策の自由がなくなったことにある。各国でユーロを共通通貨として用いるということは、各国が金という共通通貨を用いる金本位制に似ており、「現代版金本位制」といえる。
経済の歴史からの教訓として、金本位制では金融政策の自由度が低いため、経済危機の時には、財政政策でしか対応できないので対応力がないことがわかっている。1930年代の大恐慌の時に金本位制にこだわった国は恐慌が長引き、金本位制から早く離脱し管理通貨制に移行し、思い切った金融緩和した国ほど恐慌が短くて痛みが少なかったのだ。この大恐慌のメカニズムは、1980年代以降、テミン・MIT教授、アイケングリーン・カリフォルニア大学、バーナンキFRB(連邦準備制度)議長らの国際比較学派が究明した。
1930年当時と現在を単純に比較できないが、この研究から示唆されることは、ユーロから離脱すべき国は早く離脱したほうがいいということだ。
また、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者マンデルによる最適通貨圏理論もある。共通通貨を適用するには、それぞれの国の景気やインフレ率の変動などが一致している必要がある。各国に同じ金利が適用されるのだから、景気やインフレ率がバラバラでは、一つしかない金融政策がワークしない。
第2に、各国の景気を平準化するためには、各国間の貿易相互依存が高い必要がある。第3に景気の好不況に合わせて人々が各国を移動できたり、構造調整が容易になるような労働市場の開放性や経済構造の柔軟性も必要だ。
こうした条件こうした条件から見ると、無理にギリシャなどの周辺国まで同じユーロ通貨にするのではなく、最適通貨圏の加盟条件を満たした中心国だけが、同じユーロ通貨を採用したほうがいい。
***不自然さから開放されようとする国民の叫び
ところが、フランスやドイツがユーロの拡大において、こうした経済原理を無視して参加国を次々と増やしたのは、もっぱら政治的な理由だ。独仏連合では市場規模が小さすぎ、ユーロがドルに対抗できる通貨にはなりえなかったからだ。
ギリシャに対する第2次支援策は、これまで中心国のフランスやドイツが得ていた果実をギリシャに返すということであるが、もはや、フランスやギリシャ、ドイツの選挙結果は、経済原理を無視した人為的な制度「ユーロ」による不自然さから開放されようとする国民の叫びとも考えられる。
ただ、政治的な思惑は人々の合理的な行動を妨げる。法的にユーロからの離脱可能かどうかといった検討に時間が費やされる。さらに、政治的な面子を重要視して、目先の経済混乱を理由として、ユーロからの離脱に反対する向きもある。はたしてユーロに関する経済合理性は確保できるのだろうか。(抜粋)
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