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http://news.finance.yahoo.co.jp/detail/20120517-00000003-wsj-bus_all
【コラム】グラス・スティーガル法の復活を---ウォール・ストリート・ジャーナル
10時09分配信 ウォール・ストリート・ジャーナル
【ニューヨーク】JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)の「規制がウォール街をだめにする」という主張は正しい。
米金融規制改革法(ドッド・フランク法)は、銀行に多額のコストを強いたが、いくつかのことを回避できなかった。
たとえば、JPモルガンによるデリバティブ取引の巨額損失。MFグローバルの破綻と16億ドルもの顧客資金の損失。四半期に一度のペースで発生するゴールドマン・サックス・グループのスキャンダル。
もういいかげんに、ウォール街をなるがままにさせておくべきだ。自由市場は自由に任せる。JPモルガン・チェースは、ダイモンCEOが「馬鹿な取引」と称した20億ドルの損失を出してよいではないか。20億ドル稼げばよいのだ。
とどのつまり、それがウォール街のやり方なのだ。ウォール街では、高報酬のためにはハイリスクも厭わないパワフルな市場システムが求められる。午前の取引で銀行の利益が数十億ドル吹っ飛んでも、午後にはそれを取り返せばいい。
そのパワーをどうこう言っても始まらない。どんなに規制をかけても抜け穴は常に見つかる。欲望(すなわち楽をして富を生むこと)という動機はあまりに強すぎる。
だから、効果があまり見込めず、簡単に操作できるような規制を導入するよりも、いっそのこと制度を分けてはどうか。こちらは通貨経済面の伝統的銀行業務、あちらは投機的なカジノ資本主義というように。
つまり、グラス・スティーガル法を復活させるのだ。
グラス・スティーガル法を覚えているだろうか。投資銀行とトレーディング業務をリテール、商業銀行業務から分離した大恐慌時代の法律だ。この法律により、JPモルガンは銀行部門のJPモルガンと証券部門のモルガン・スタンレーに分かれた。
1999年の同法廃止に伴い、証券会社と銀行は再び一緒になることが認められた(注)。そしてもちろん、それが問題の始まりだった。最大の問題は、伝統的な銀行資産を投機的な賭けに使ったり、住宅ローン資産を住宅ローン担保証券(MBS)に使ったりしたことだった。
(注)実際には、多くの伝統的な商業銀行は、1999年までに90年代に設けられた法の抜け穴を利用して証券取引のような取引を行っていた。すでにJPモルガンの経営実態は投資銀行に近く、ビジネスの割合としては商業銀行業務が投資銀行業務を下回っていた。
2008年から09年にかけての金融危機の後、規制当局と議員らは、「金融の近代化」によってもたらされた自由競争を縮小しようと動いた。基本的に金融市場の細部まで規定することを意図したドッド・フランク法は、法律の書類が849ページと膨大だ。
これに対して、グラス・スティーガル法は37ページ。経済に打撃を与えると弁護士が騒いだ米企業改革法(サーベンス・オクスレー法/SOX法)でさえ66ページだ。
今、起きているのは、金融業界に対する、微に入り細にわたる規制の横行だ。
当局は、こうした細かな規制を強制したくないし、制定にも積極的というわけではない。また、銀行と証券会社は当然、ドッド・フランク法が定める線に収まるつもりはない。ボルカー・ルールは、グラス・スティーガル法よりも弱腰で、有効性よりも政治に配慮して作られている。米連邦準備理事会(FRB)議長を務めたボルカー氏にはそれがわかっているのではないか。
誰もが問題の本質を避けようとしている。
それならば、なぜ銀行業界はグラス・スティーガル法の復活に反対なのか。
銀行はまず、自分達は1930年代の無知なバンカーとは違い、もっと高度な技能を備えている、と主張する。そして、1兆ドルを超える保証と救済を受けた同業界は、世界基準を満たすには銀行と証券が同じ傘下である必要があり、米銀だけが別な行動を取れば競争力を失う、と言う。
この主張は明らかにおかしい。第一に、クレディ・スイス、UBS、バークレイズ、ドイツ銀行と、影響を受けるグローバルな大銀行は、ほんの一握りしかない。第2に、こうした金融機関はすべて、米国に投資銀行業務の過半を保有している。
つまり、もし米国がグラス・スティーガル法に戻れば、世界もカジノ銀行業務から伝統的な銀行業務を事実上分離せざるを得なくなるということだ。
そうしたシステムは、銀行・証券双方にとって魅力的だ。我々のローン、預金、債務、資産を抱える銀行システムは、自由で乱暴な市場から切り離される。一方、証券部門は銀行監督当局から開放され、リスクを常に警戒する必要がなくなる。
それならばなぜ、大手金融機関はグラス・スティーガル法の復活を支持できないのか。答えは簡単。彼らは、我々の資金を「カジノ」で賭けたいのだ。
最近、資産担保証券(ABS)やクレジットカード債務、デリバティブへの依存体質を強める銀行にとって、預金が、そうした変動から身を守る緩衝剤となっている。銀行からすれば、個人のキャッシュと政府の保険――米連邦預金保険公社(FDIC)とFRB――を放棄するくらいなら、800ページ超の新規制と格闘した方がましなのだ。
これは、ウォール街のモチベーションについての個人的な考察でしかない。しかし、欲望よりも強いモチベーションといえば、自己防衛本能くらいだろう。デリバティブやクレジットリスクの上に成り立つ金融市場が、欲望なしでは存在し得ないとはいえ、我々の経済には強い自己防衛本能がどうしても必要だ。
だからこそウォール街を自由にしてやるべきだ。あるいは、トレーダーを首にして、銀行をもう一度銀行らしくすべきではなかろうか。
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