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http://www.mmc.co.jp/gold/market/toshima_t/2012/1193.html
JPモルガン損失問題は同銀行の屋台骨を揺らがせるような規模ではないが、最大の影響はボルカールール=「銀行規制強化」の火に油を注ぐ結果になったことだ。既に、マーケットでは、プロのトレーダーたちが、社内リスク管理の更なる厳格化に萎縮し、益々、ポジションというリスクを取りたがらないし、取れない。
金市場では、その傾向が既に価格に顕著に表れている。
ギリシャ問題は、本欄で「未だ6回表」と書いてきたように、もつれ長期化は想定内であった。筆者が、連休前1660ドルの時点で1670−1570のレンジを出したのも、ギリシャ発リスクオフの売りを見込んでのことであった。
しかし、JPモルガンの一件は全くの想定外。タイミングが悪すぎる。
ドッド・フランク法による銀行規制の詳細が、まさに煮詰まりつつあった段階で飛び出した。しかも、同法の強力な反対派で金融界の人望も厚いダイモンCEOの管轄下で起きてしまった。
実は、JPモルガンは、同法を見通して、コモディティー関連のトレーディング部門を縮小している。この一件で手仕舞われるべきポジションは無いはずだ。それでも心理的影響がリスク回避モードを加速させ、金価格も1570ドルから更に売られ、1550ドル台に突入している。
プロのトレーダーがリスクを取らない市場は、大手投機筋(ヘッジファンドや一部の準公的機関)にとって格好の草刈り場と化す。大玉の空売り注文を仕掛ければ、それに買い向かうディーラーも現れず、価格は下がるままとなる。トランプのババ抜きみたいなもので、トレーダーの間で、大きな売り注文がたらい回しにされ、その過程で、価格の下げが増幅されてゆく。
中期的に見れば、空売り主導の下げ相場は、いずれショートカバー・ラリー(買戻しラリー)で終わるは必定。所詮ゼロサム・ゲームの世界である。従って、筆者の相場観も弱気から強気に徐々に軌道修正中だ。
中長期のマーケット・トレンドを形成するのは、先物ではなく、現物の買い。注目の新興国中銀、そして中国・インドの民間金購入はいずれも「買いっぱなし」なのでボディーブローの如く効く。ノックアウト・パンチの即効性威力には欠けるが、判定に持ち込めば、まずポイント勝ちが計算できる。
リーマンショック後も、金は強烈なリスクオフで3割近く急落している。しかし、上記のボディーブロー効果で、結局史上最高値に向かい、上昇トレンドを再開した。
ギリシャ危機の金価格への影響を計るには、良きケース・スタディーであろう。(2012・5・15)
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