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欧州財政危機問題に関して、ヨーロッパのリーダー達に、コペルニクス的な発想の転換が、今、起きています。
その結果、デカい事が発表される可能性があります。それらは:
1.欧州中央銀行(ECB)による利下げ、ならびにLTRO3
2.欧州安定化債の発行
3.ドイツ労組の賃上げ
です。
このうちECBによる利下げ、ならびにLTRO3が起こる確率は60%くらいだと思います。
欧州安定化債とは、フランスのオランド大統領が選挙戦の過程で示した公約ですが、インフラ投資のためにヨーロッパ政府が共同で公債を出すことを指します。
これはユーロ共同債(ヨーロッパ政府がこれまで各自で国債を出していたのを止め、米国財務省証券のように連邦として国債を出すこと)に限りなく似通った措置なので、ユーロ共同債に反対の立場を取るドイツから反発を招くと考えられます。
従って欧州安定化債の実現可能性は30%程度でしょう。
最後のドイツ労組の賃上げは70%以上の確率で実現すると思います。
なぜ発想の転換が今、起こっているのでしょうか?
それは端的に言えば、欧州財政危機をどう切り抜けるか?という問題に関する、ドイツの考え方(=切り詰め一本槍)が間違っていたという事がコンセンサス化したからです。
2009年冬にギリシャの財政問題が最初に発覚して以来、ヨーロッパでは既に何度も財政削減法案が成立しました。しかし、現実としてはそれを実行に移しても赤字の削減にはつながりませんでした。
実際、ほぼ全ての国で赤字削減のターゲットを下回り、実際には事態は悪化したのです。
これはなぜかといえば、公務員の解雇などの急激な切り詰めが不景気を招き、それが法人税などの減収を招いて、結果として支出を切り詰めた以上に収入の方が落ち込んでしまったことが原因です。
市場関係者は自分の頭でものを考えない人が大半なので、マーケットのコンセンサス意見に矛盾があっても、その矛盾にぜんぜん気がつかないことが多いです。
具体的には米国経済に関してはQE(追加的量的緩和政策)の発動を待望する一方で、ギリシャ問題では病人から毛布を取り上げ、スープも食べさせないような、中世暗黒時代的なドイツによる処方を「それが正しい」と無批判に信じてしまうことを平気でやるわけです。
現実にはヨーロッパから出て来る経済指標は、ドイツ的な切り詰め策が全然効果を生んでいないどころか、事態を一層悪くしている事を明白に示しています。
いま米国のGDP成長率は乱暴に言って2.5%程度出ているのですが、政策金利はゼロ金利です。ところがEUのGDP成長率は0%を切ろうとしているのに政策金利が1%というのはどう見てもおかしいのです。(米国とEUの消費者物価指数はほぼ同じです)
欧州が、ぜんぜん成長が無いにもかかわらず政策金利を高くしてきた理由は、ドイツがインフレというものに対してフォビア(不安障害)を持っているからに他なりません。
しかし先週になってブンデスバンクは「ヨーロッパのインフレは、今より少し高くても構わない」という発言をしています。これは(おれ、間違っちゃったかな)というブンデスバンクの自信の揺らぎ、心の動揺を示す、大イベントでした。
平たい言葉で言い直せば、「俺、やっぱりわかんないわ。ドラギちゃん、アンタやってよ」とECBのマリオ・ドラギ総裁に全面的に下駄を預ける発言に他ならないのです。
ドイツ労組に対する賃上げの容認というのも、極めて重要な材料です。
なぜならドイツの労組は東西ドイツ統一以降、基調として「賃上げは我慢しなさい。ベースアップしてしまうとドイツのモノ作りの国際競争力が低下してしまうから。その代わり、国内に巨大な生産基盤を維持し、雇用は最大限に拡大します」という、ある種の社会契約を労働者と結んできたからです。(因みにドイツでは「中国からの追い上げで、国内産業が空洞化する」式の議論は、ありません)
その結果としてドイツの製造業の国際競争力は落ちていないし、失業率は過去最低なのです。
問題はどんなに輸出競争力が強くても、肝心のお客さんの方で需要が無くなってしまったら、もうモノは買って呉れなくなるということです。
実際、ドイツの輸出の仕向け先を見ると、ヨーロッパのその他の国向けが大幅に落ち込んでいます。これを中国などへの輸出で何とか補っているのです。
ヨーロッパのその他の国向けの輸出が落ち込んでいるのはドイツがそれらの国に財政切り詰めを要求しているからで、自ら蒔いた種です。
一方、ドイツ国内の消費は、これはもうお話にならないくらい弱いです。なぜならドイツはヨーロッパ全体の水準に対して、常に賃金の上昇を低く抑えてきたからです。だから欧州で一番経済の足腰がしっかりしていて、本来、消費という面でも牽引車の役割を果たすべきドイツが、ぜんぜんその役割を果たせないでいるわけです。
今回のドイツ労組に対する賃上げ容認は、1.賃上げによって国内消費市場に活を入れる、2.イタリアやスペインなどの近隣諸国との競争力のバランスを取る事により、ドイツの一人勝ちの状況を是正する、という二つの目的があります。
なお、最近はギリシャのユーロ脱退と、それが誘発するハルマゲドン・シナリオを語る人が大変多いです。
でもEUは過去にも、いま以上の危機に直面してきました。
(一例はジョージ・ソロズが「イングランド銀行を破産させた男」として一躍有名になるきっかけを作った、フランスのEUに関する国民投票)
しかしEUは危機に直面するたびごとに結束が強くなるという事を繰り返しています。若し、その過去の経験則が今回も当てはまるのならば、ハルマゲドンにはならないという可能性もあるわけです。
逆にECBが緊急利下げを発表したら、スペインIBEX35指数やイタリアMIB指数は強烈にラリーするでしょう。
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