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仏政権交代とギリシャ政局混迷
くすぶる財政危機再燃の懸念
ギリシャの総選挙では緊縮財政を推進してきた連立与党が過半数割れ。新たな政権の枠組みは見えない。フランス大統領選挙でも、財政協定見直しを掲げたオランド候補が当選。緊縮財政路線の見直しの公算が大きくなり、財政危機再燃の懸念がくすぶり始めた。
大型連休明けの東京市場は波乱の幕開け。7日の日経平均株価の終値は前週末比261円11銭安の9119円14銭と今年最大の下げ幅を記録した。6日のフランス大統領選挙の決選投票で景気への配慮を掲げる社会党のオランド候補が勝利、同日のギリシャ総選挙では欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)主導の緊縮財政プログラムに反対する左派政党が第2党に躍進した。欧州の債務危機対応や政局をめぐる不透明感を市場は嫌気した。10日には日経平均は一時9000円を割った。
債務危機克服に向け、厳しい財政規律と構造改革の断行を求め、それを達成するためには景気後退も辞さない欧州の債務危機対応は限界に近づいている。これまで南欧諸国に規律の達成を求める立場にあったオランダでも、緊縮予算の議会審議が行き詰まり、4月に内閣が総辞職した。
連立政権協議は調わず
ギリシャは再選挙の公算
ギリシャの新民主主義と左翼進歩主義連合の連立交渉は物別れに
Photo:AFP=JIJI
債務交換の成功と2次支援の開始で一息ついたはずのギリシャでは、総選挙の結果を受けて、政局が一段と不透明さを増している。単独過半数を獲得する政党が現れなかったことで、組閣に向けた連立協議が行われているが、交渉は難航している。再選挙が実施される可能性が高い。
第1党に復帰した新民主主義(ND)は7日、連立政権協議が不調に終わったため、協議を打ち切った。続いて第2党に躍進した左翼進歩主義連合(SYRIZA)が連立協議を開始したが、NDと全ギリシャ社会主義運動(PASOK)の両党首に緊縮プログラムの撤回を求めるなど強硬姿勢を崩さず、これも物別れに終わった。10日には第3党に転落したPASOKが連立協議を開始した。だが、既に各党共に再選挙をにらんだ駆け引きを始めており、連立交渉は行き詰まる可能性が高い。
次のページ>> 再選挙は6月半ばが有力視されている
再選挙は6月半ばが有力視されている。その間も、ギリシャの財政運営は綱渡りの状況が続く。5月18日には33億ユーロの国債償還を控える。6月には2次支援プログラムで約束した約116億ユーロの歳出削減の具体策を固めるように求められている。EU、IMF、ECB(欧州中央銀行)の審査団は5月中に予定していたギリシャ訪問を延期した。次期政権の枠組みが固まるまでは、次回の融資実行のめどは立たない。ギリシャの政局をめぐる金融市場の不安心理が早期に解消することはない。
EUやECBの高官は、ギリシャが約束した緊縮プログラムを実行しない限り、ユーロ圏にとどまることはできないと警告する。再選挙はギリシャがこのままユーロ圏にとどまるのか、離脱して新たな道を歩み始めるのかを決断する場となる。再選挙でNDやPASOKが議席をわずかでも上積みし、両党合計で過半数を確保できれば、これまで同様に両党がタッグを組み、緊縮財政路線を続けていく可能性も出てくる。一方、再選挙で民意が反緊縮路線に一段と傾くようならば、緊縮財政の見直し機運が高まり、財政支援の打ち切り懸念やユーロ圏からの離脱観測が現実味を帯び、さらなる市場の動揺を誘うことになるだろう。
仏新政権の財政運営次第で
再格下げの可能性も
フランスの新大統領となるオランド氏
Photo:AFP=JIJI
フランス大統領選は、大方の予想通りの結果となったが、オランド新政権の骨格が固まり、政策運営の具体像が明らかになるまでは、市場心理の重しとなろう。
新大統領が選挙公約に掲げた公的部門での雇用創出や年金支給開始年齢の引き下げは、財政再建・構造改革路線の後退と受け止められる恐れがある。財政協定見直しを求めていることも、債務危機克服に向けたドイツとフランスの協調関係を傷つけるとの声もある。
次のページ>> フランスの財政収支は過去30年以上にわたって赤字
フランスの財政収支は過去30年以上にわたって赤字が続いている。労働市場の硬直性が失業率の低下を妨げ、企業の競争力低下から近年は経常収支の赤字基調が定着している。今年初めには、スタンダード&プアーズが国債格付けをAAAからAAプラスに引き下げた。新政権の財政運営次第では、再格下げもあり得る。フランスも財政危機の波及リスクと無縁ではない。
景気配慮を訴えるオランド新政権も財政再建を最優先課題と位置づけており、市場参加者の多くは現実的な政策運営を行わざるを得ないとみている。ただ、その方法論をめぐっては不透明な要素が多く、具体的な政策を見極める必要がある。6月10日、17日の国民議会(下院)選挙を社会党有利に進めるためにも、少なくとも選挙が終わるまでは政策の方向性が定まることはないだろう。
新大統領の調整能力・政策手腕を占う上での注目点は、5月23日と6月28〜29日のEU首脳会議に向けて、財政協定の見直しでドイツをはじめ他のEU諸国の譲歩を引き出すことができるかにある。
ドイツ・メルケル首相との協調関係を維持できるかが注目される
Photo:AFP=JIJI
規律を重視するドイツも、来年に連邦議会選挙を控え、景気配慮を求める声に一定の理解を示す。メルケル首相は首脳会議の場で、加盟国の成長促進策を議論すると約束した。ただ、ドイツ政府が念頭に置く成長促進策は、労働市場の柔軟性回復や企業の競争環境の整備など構造改革が中心だ。成長促進の具体策では、ドイツとフランス間の隔たりは大きい。
市場参加者の多くは、今のところ財政協定見直しに否定的な立場を崩していないドイツも部分的な見直しには応じると考えている。だが、最終的な妥協点にたどり着くまでに両国間の不協和音が一時的にも高まれば、ユーロ安、ユーロ圏の国債利回り上昇といった事態に見舞われるだろう。
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景気悪化も財政危機要因
難しい経済政策の舵取り
オランド候補の勝利、ギリシャ総選挙での緊縮策に反対する少数政党の躍進など、欧州の債務危機対応は曲がり角に差しかかっている。一連の選挙結果や政局不安は、新たな危機の火種であると同時に、行き過ぎた緊縮路線を見直すきっかけとなる望みでもある。スペインに対する財政不安再燃は、地方自治州の財政再建の遅れや銀行の不良債権問題もさることながら、厳し過ぎる財政緊縮が景気悪化に拍車をかけ、財政収支の改善を難しくしているとの懸念も一因だ。
過度な財政緊縮の見直しを求める声の高まりを受け、欧州の政策当局も景気動向に配慮し、財政健全化の達成目標を柔軟に運営することを検討し始めた。制裁発動での裁量の余地を制限したとされる新たな財政協定でも、特別な事情がある場合には基準からの一時的な逸脱が認められている。景気の下振れ懸念が顕著な国については、今後、構造改革を着実に実行することなどを条件に、財政健全化の達成年の先送りが認められる可能性がある。
PMI(購買担当者)指数の一段の悪化など、景気低迷の長期化を示唆する経済指標を受けて、これまで様子見を続けてきたECBも景気への配慮を見せ始めた。3日の政策理事会では政策金利を年1%に据え置いたが、「景気の不確実性が高まっている」と指摘し、年後半の景気回復シナリオが崩れる場合や金融市場の緊張が一段と高まる場合には、政策金利引き下げや潤沢な流動性供給を通じて景気の下支えや金融市場の安定化に動く可能性がある。
ただ、景気に配慮し過ぎては、各国の財政再建・構造改革努力の後退につながり、財政危機再燃を招くことにもなりかねない。財政規律と景気への配慮の最適なバランスがどこにあるのか、欧州の政策当局の苦悩が続く。
(田中 理・第一生命経済研究所主席エコノミスト)
http://diamond.jp/articles/-/18456
Financial Times
今デフォルトするか後でするか、それが問題だギリシャに残された4つの選択肢
2012.05.15(火)
経済と政治の状況からして、ギリシャにとって経済的に理にかなう選択肢は何か? 筆者には、4つの選択肢が考えられる。いずれも不確実性に満ちたものだ。
第1の選択肢は現状維持で、国際通貨基金(IMF)と欧州連合(EU)が定めた通りに、さらなる緊縮財政と経済改革を断行する道筋だ。ここに潜むリスクの1つは、ギリシャが永遠の恐慌に苦しめられ、債務の罠から抜け出せないことだ。もう1つのリスクは、理論上はこの選択肢が経済的にうまくいくかもしれないが、政治的にはほぼ確実に失敗することだ。
急進左翼連合(SYRIZA)のアレクシス・ツィプラス党首〔AFPBB News〕
実際、これが既に起きている可能性もある。直近の世論調査では、緊縮に反対する極左政党の急進左翼連合(SYRIZA)が支持率でトップとなっている。
この結果が今後の選挙で再現されたら、SYRIZAは第1党に上積みされる50議席(全議席の6分の1に相当)という誰もが欲しがる賞も手に入れる。つまり、過激な政党が勝利を収める結果になるわけだ。
この選択肢は経済的にも政治的にもうまくいかないため、理にかなう選択肢にはなり得ない。
現状維持よりは現実的な「プライマリーバランス均衡後にデフォルト」
第2の選択肢は、ギリシャがプライマリーバランス(利払い前の基礎的財政収支)を均衡させるまで今の計画を断行し、均衡した段階でデフォルト(債務不履行)するか、少なくともIMFおよびEUと緊縮・改革プログラムについて再交渉することだ。これは1番目の選択肢よりは現実的だ。
先週は、この選択肢の一種が議論されていた。だが、この段階に至るために必要な緊縮が厳しすぎたり、実現に時間がかかりすぎたりするせいで、政治的なリスクも影響を及ぼし始める恐れがある。
第3の選択肢は、SYRIZAのアレクシス・ツィプラス党首が示した道筋だ。同氏は、ギリシャが即刻、今のプログラムを撤回し、一部の改革を覆し、残っている対外債務についてデフォルトの可能性を検討することを望んでいる。そうしてもユーロ圏からの離脱にはつながらないとツィプラス氏は主張する。EUは、はったりをかけているだけだと同氏は言う。
後者については、筆者はツィプラス氏が正しいという確信を持てない。ただ、それを言えば、間違っているという確信も持てない。
ギリシャが一方的にプログラムを撤回したら、どうなるのだろうか? まず、EUがギリシャ向けの融資を打ち切る。次にギリシャはすべての対外債務についてデフォルトする。
だが、プライマリーバランスが赤字なため、ギリシャは今以上に大規模な緊縮プログラムを実行しなければならない。ギリシャがまだユーロ圏内にとどまることを望んでいると仮定して、他国が離脱を強いることはできるのか?
他国がギリシャを追い出す可能性
欧州の条約には、ユーロ加盟国が単一通貨から離脱する条項がないし、どこかの国を追放する条項も当然ない。条約は、EUの通貨はユーロであるということも定めている。
理論上は、欧州中央銀行(ECB)はギリシャ国債を担保として受け入れることを拒める。緊急流動性支援の要請を拒むこともできる。そうなれば、ギリシャは「自発的に」ユーロ圏から離脱せざるを得なくなる。だが、これは信じ難いほど敵対的な行為だ。
ドイツのヴォルフガング・ショイブレ財務相は、ユーロ圏はギリシャ離脱に耐えられると確信している。この見方は、ギリシャの債務交換で債券保有者の自発的な参加が行われてもユーロ圏は易々と対処できると述べていた同氏の判断を思い出させる。今回の判断も、長らく続く誤算の連鎖の1つになる恐れがある。筆者自身は、ギリシャが離脱を強いられたら、投資家はユーロ解体に賭けて激しい攻撃に出ると思っている。
金融の感染に関する不確かなリスクもある。格付け機関のフィッチ・レーティングスが11日の連立協議に際して述べたように、ギリシャの離脱はユーロ圏の格付けに悪影響を及ぼす。
ツィプラス氏は、ギリシャを離脱に追い込むことはEUの利益にならないと話しており、これには一理ある。問題は、それでもユーロ圏は結局、指導者たちが状況を読み誤ったためにギリシャを追い出す可能性がある、ということだ。
最悪の選択肢は・・・
4番目の選択肢は、今すぐ自発的に離脱することだ。ギリシャの輸出産業は極めて小さいし、シティグループのウィレム・ブイター氏が指摘したように、離脱で当初高まる競争力は、すぐに国内政策によって損なわれてしまうだろう。
4つの中で最悪の選択肢は、実は1番目だ。EUとIMFのプログラムに従うことで、ギリシャは10年間にわたる恐慌に苦しみ、必然的にユーロから離脱する羽目になり、民主主義の崩壊に見舞われる可能性さえある。
筆者の考えでは、最善の選択肢は、2013年までにプライマリーバランスを均衡させ、その後、民間債務、公的債務を問わず、残った対外債務をすべてデフォルトする戦略だ。ギリシャ国外では不評だろうが、ギリシャをユーロ圏から追放することは難しいはずだ。
1930年代前半のドイツと同じ
ツィプラス氏のやり方はリスクが高すぎると筆者は思う。だが、ギリシャ国民が同氏に投票する理由は分かる。ツィプラス氏が取っている立場は、経済再生の観点を何一つ示せない緊縮・中道路線の既成勢力の立場より明らかに理にかなっているからだ。今のギリシャは、1930年代前半のドイツとまるで同じだ。
こうなると、残されるのは、後でデフォルトするか、今デフォルトするか、という選択肢だ。筆者は後でデフォルトする方がいいと考えている。より穏やかな財政調整が可能になり、いくつか賢明な改革が行われ、ギリシャがユーロ圏内にとどまれる確率を高めるからだ。
悲しいかな、今の政治的な勢いは、反対方向に振れている。
By Wolfgang Müncha
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35210
“反・緊縮財政” ムードで金融危機から政治危機へ?
オランド新大統領が鍵握る「ユーロ圏崩壊」の現実度
オランド新政権がフランスで誕生した波紋
「反・緊縮財政」が存在感増すユーロ圏
5月初旬に行なわれたギリシャとフランスの選挙で、国民が示した意思表示は「反・緊縮財政」だった。ギリシャやフランスなどの国民の心の叫びは、「ユーロ圏の財政協定に基づく緊縮財政で、生活が苦しくなるのはもう耐えられない」というものだ。
その叫びによって勝利したのは、「財政協定を見直し、財政を絞るよりも成長が重要だ」と訴えたオランド次期フランス大統領であり、「財政協定そのものを否定する」と訴えたギリシャの左派政党だった。
今回の選挙結果によって、ユーロ圏では従来懸念されていた金融機関の経営悪化による危機=金融危機から、ユーロ圏諸国間の政治的亀裂が広がり、修復することが困難な状況に追い込まれるという不安が盛り上がっている。言わば、「反・緊縮財政」のムードが、政治危機に発展する様相を呈するに至っている。
今のところ、「オランド新大統領は、厳格な財政均衡主義を主張するドイツと協調体制を崩すことはないだろう」と見られるものの、選挙期間中に掲げていた「財政協定を見直す」という公約をそう簡単に反故にできるものではないはずだ。両国の国民にとって受け入れ可能な妥協点を見出すことは、容易ではないだろう。
ギリシャのケースはさらに深刻だ。国民が緊縮財政で疲れていることに加えて、連立政権の成立が難しくなっている。再選挙が実施された場合、どのような結果になるか予測が立たない状態だ。
専門家の間では、「ギリシャのユーロ圏離脱は時間の問題」との見方も出ている。ユーロ圏の問題は、すでに地域内の軋轢ではない。今後起きることが、世界経済に大きな影響を与えることになる。これからの展開が懸念される。
次のページ>> ギリシャが離脱? ユーロ主要国で広がる「協調の断層」
ユーロ主要国で広がる「協調の断層」
ギリシャがユーロ圏から離脱する可能性も
ユーロ圏諸国の経済・政治情勢を概括すると、かなり危険な状況になりつつあるというのが、正直な見方だ。
経済面を見ると、ドイツやオランダを中心とする相対的に経済状況の良い北欧圏と、景気後退と財政悪化に苦しむギリシャやポルトガル、スペインやイタリアなどの南欧圏、という構図が浮かび上がる。
一方、政治情勢を見ると、緊縮財政で生活が苦しくなっている南欧諸国では、国民感情が反政府に向かっている。また、ドイツなどでの北欧諸国では、「自国の血税を南欧諸国救済に使うのはけしからん」という反政府の感情が高まっている。
問題は、ユーロ圏諸国間の経済的・政治的な断層をいかに整合させ、ユーロ圏の経済運営を行なうかという点だ。それは口で言うほど簡単なことではない。
もともとユーロ圏の経済システムは、経済規模や実力の異なる17ヵ国を、単一の通貨と金融政策で運営する仕組みになっている。そこに根本的な欠陥がある。その制度的な欠陥を補正しない限り、ユーロ圏という経済圏を維持することは難しい。
昨年来の金融危機に対しては、中央銀行が潤沢な流動性を供給することで“一時しのぎ”をすることはできるだろう。しかし今回のように、フランスなどのユーロ主要国で、国民の意思がユーロ圏の財政協定に反する動きが明らかになると、その断層を埋めることは容易ではない。
また、ギリシャのようにユーロ圏から脱落する可能性が取り沙汰されるようになると、世界の金融市場には大きな動揺を与えることになる。それは実体経済にもマイナスの影響を与える。政策当局が対応を誤れば、そのマグニチュードは無視できない。
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痛みに耐える西欧と反発する南欧
統一の財政システムをつくる難しさ
ユーロ圏が抱える経済・政治問題を解決するためには、いくつかの選択肢が考えられる。まず、通貨・金融政策と共に、ユーロ圏内で統一の財政システムをつくることだ。
それができれば、ギリシャなどの南欧諸国は、ドイツなど北欧諸国の信用力をバックに信用不安に悩まされることは回避できる。ただ、それには各国から反発もあるだろう。それをまとめるには時間を要する。今回の危機打開には間に合わない。
次に考えられるのは、ユーロ圏諸国が南欧諸国への信用補完を行なうと同時に、ギリシャやポルトガルなどが改革を実施し、経済の競走力を強化し、収支の不均衡を解結することだ。
もともと、南欧諸国の財政悪化の問題は、外貨を稼ぐセクターが不足して経常収支の赤字が蓄積するため、海外からの借金で埋めなければならない体質に起因する。それを、ある程度の時間をかけて解決すれば、ユーロ圏の問題の多くは解決可能になる。
ただ、南欧諸国の改革が進んで競争力をつけるまでの間、ドイツなどの国民は救済の負担に耐えることができるだろうか。南欧諸国の国民も、改革に伴う痛みに耐えることができるだろうか。いずれも疑問符が付く。
最近、市場関係者と話していると、彼らの頭の中で最も可能性が高い展開は、「ユーロ圏17ヵ国の中から、ギリシャなどいくつかの国が脱落する」との見方だということがわかる。
おそらく、今の状況がこのまま続けば、そのシナリオが実現する可能性はかなり高いだろう。問題は、そうしたシナリオを描くと、ユーロ圏から離脱する国が出るたびに、金融市場が不安定になることが懸念されることだ。それは、世界経済の足を引っ張る可能性が高い。
次のページ>> 「ユーロ崩壊」の鍵を握るオランド新大統領の政治力
公約をすぐ反故にすることはできない?
鍵を握るオランド新大統領の「政治力」
もともと、経済的な欠陥を抱えたユーロ圏を維持できたのは、2人の牽引者=メルケルとサルコジが政治的な妥協点を見出しながら、何とかユーロ圏経済を運営したことが大きい。
ところが、牽引者の1人であるサルコジは、フランスのリーダーの地位を降りた。今後、最も重要なポイントは、オランド新大統領が、ドイツとの協調体制を築くことができるか否かだ。
その点について、多くの人が楽観的な見方をしている。「オランド新大統領は温厚な実務家タイプであり、メルケルとの協調体制をつくれるはずだ」という見方が有力だ。
もちろん、そうであって欲しい。しかし、“財政協定”の見直しについて、ドイツ側は「その余地はない」と明言している。一方、オランド新大統領としても、選挙公約をすぐに下すわけにはいかないだろう。他にも、厳格な財政均衡主義を主張するドイツと協調することが容易ではないポイントは、少なくない。
問題は、ユーロ圏の問題はかなり厳しい状況に追い込まれており、時間があまり残されていないということだ。フランスとドイツの政策協調に手間取っている間に、ギリシャの資金繰り問題が顕在化することも懸念される。
スペインでも、大手金融機関の不良債権問題が喫緊の課題になりつつある。さらに、その火の粉がイタリアに及ぶことになると、世界的な金融システム不安が再燃することも考えられる。
それを防ぐためには、どうしてもオランド新大統領の政治手腕に期待せざるを得ない。フランスとドイツが問題に対する共通認識を持ち、迅速に政策協定を行ない、ユーロ圏の経済問題の火の手に立ち向かうことが必要だ。
それができないと、おそらく今後、いくつかの南欧諸国がユーロから離脱するシナリオが現実味を帯びることになるだろう。
質問1 オランド新大統領の誕生で、「反・緊縮財政」の声は一気に広がると思う?
http://diamond.jp/articles/-/18482
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