http://www.asyura2.com/12/hasan76/msg/164.html
Tweet |
「企業年金が消える日」 民主党「チーム仙谷」が大暴走 週刊ポスト2012/05/25号
http://ameblo.jp/heiwabokenosanbutsu/entry-11250147739.html
2012-05-14 平和ボケの産物の大友涼介です。
「企業年金が消える日」〜民主党「チーム仙谷」が大暴走「財界のみなさん、喜んでいただけますか」〜週刊ポスト2012/05/25号
企業年金は企業と社員が交わした契約であり、法律で守られている。一部の企業では、脱法スレスレの誤魔化しでそれを減額したり廃止したりする横暴が罷り通っているが、あろうことか、労働者の権利を重視する立場だったはずの民主党の一部の議員らは、大企業に尻尾を振って、企業年金廃止に手を貸そうとしている。国民生活を蔑ろにする大陰謀を暴く。
■基金解散で受給額ゼロ
国会ではいよいよ消費税増税法案が審議入りした。
大メディアは早速、「与野党は大胆に歩み寄り、早期の成立を目指すべきだ」(読売新聞5月9日付社説)と増税礼賛一色になり、国民は生活破壊への不安を募らせている。
こういうときが最も危ない。国民の視線が一つの問題に釘付けにされている間に、別のとんでもない謀略をめぐらすのは霞が関のよくやる手だ。
案の定、野田政権は大増税の陰で密かに国民の老後資金を収奪する仕掛けを打っていた。
大型連休直前の4月24日、蓮舫元行政刷新相座長とする民主党の「年金積立金運用の在り方が及びAIJ問題等検証ワーキングチーム」が重大な報告書をまとめた。
『AIJ問題再発防止のための中間報告』という表題で、一見、運用を受託していた企業年金2000億円の大半を消失させたAIJ投資顧問事件の被害者救済策のようだが、内容は正反対のものだった。
中間報告はこう結論付けている。
<厚生年金基金制度は、一定の経過期間終了後、廃止する>
被害者救済どころか、逆に企業年金の方を潰してしまえというのだ。この一文がどれだけ重大な問題を孕んでいるのかきちんと報じたメディアは皆無だった。
企業年金には、大別すると「厚生年金基金」「確定給付企業年金」「企業型確定拠出年金(401k)」の3種類の制度があり、11年3月末時点の加入者総数は約1545万人で、厚生年金に加入する民間サラリーマンのざっと4割が企業年金に加入している計算だ。401kを除く資産残高は約73兆円にのぼる。
そのうち大企業から中小企業まで約450万人のサラリーマンが加入するのが厚生年金基金であり、AIJ事件で最も被害が多かったのがこのタイプの企業年金だった。民主党のワーキングチーム(WT)は被害者を救済するどころか、事件の被害を受けていない厚生年金基金を含めて制度そのものの廃止を打ち出したのである。
企業年金は国民年金や厚生年金のような政府が運営する公的年金ではない。労使協定に基づいて社員が年金の形で受け取る「退職金の一部」である。日本経団連の調査では加盟企業などの75%が退職一時金と退職年金(企業年金)を併用している。退職金だから掛け金は当然、事業主が拠出する。また、退職金は企業が社員に”サービス”で渡すものではなく、法律上は「労働の対価」と見なされるのが普通だ。つまりサラリーマンの権利なのである。
民主党の方針は、国家権力が労働者の権利を奪うことを意味する。
厚生年金基金が廃止されるとどうなるか。
中間報告には具体的な方法として、<厚生年金基金には、@解散させるか、A代行資金を返済した上で、確定拠出型年金ないし確定給付型年金に移行するかを選択させるべきである>として、解散要件の大幅緩和まで盛り込んでいる。
厚生年金基金の解散は、06年に政府の産業再生機構によって解体されたカネボウ。グループのケースがよく知られている。同社の基金には子会社を含む約1万4000人の現役社員と約2万2000人の退職者(受給権者)が加入していたのが、基金の資産残高約910億円を社員と退職者に分配して解散し、企業年金は打ち切られた。社員が受け取ったのは本来もらえるはずの金額の4割程度だった。
それでも積立金が残っていたカネボウ社員はまだ恵まれている。厚生年金基金は複数の企業が共同で設立した総合型など全国に578あるが、4割の212基金は積立金がゼロだ。本来なら不足分を企業が拠出しなければならないが、解散すれば企業は年金債務から逃れることができ、一方で社員やOBは受け取る企業年金が最悪、ゼロになる。
厚生年金基金から別の企業年金制度への移行の場合も退職金減額に直結する。
公的年金や企業年金制度に精通する「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾氏が指摘する。
「厚生年金基金の場合、企業が社員の給料の何%分かに相当する金額を拠出し、基本はそれを5・5%の予定利率で運用した金額を退職後に企業年金として支払うことを就業規則で約束している。現在の市場環境ではそんな運用利回りは無理だが、これは労働者との契約だから、不足分は企業が追加拠出することになっている。運用成績が悪いから企業年金を減らすというのは労働条件の『不利益変更』にあたり、加入者の3分の2以上の同意が必要で、企業が潰れるとか、よほどの事情がない限り認められません。
ところが、企業側は退職金拠出を減らすために厚生年金基金から他の企業年金制度に変更し、そのドサクサに制度や法律に詳しくない社員を丸め込んで同意させ、予定利率を1・5〜2%程度まで引き下げるケースが多い。民主党報告書の厚生年金制度の廃止は、企業年金カットの格好の口実にされるでしょう」
予定利率が下がれば退職金がいくら違うかを試算すると、例えば、退職金2000万円のサラリーマンが1000万円を退職一時金、残る半額を年金方式(60歳から25年間)で受け取る場合、予定利率5・5%なら月額約6万1959円だ。それが予定利率を2%に引き下げると、企業年金は月額4万2684円と3割カットになる。総額500万円以上カットされるのである。
■財界の悲願だった「運用リスクは社員に」
この厚生年金の廃止は財界の悲願だった。
日本経団連は2012年に発表した『企業年金に関する制度改善要望』の中で、「2000年代前半の厳しい運用環境の連続、さらに08年秋以降の世界同時不況と金融危機の発生など運用環境が激変する中で、企業年金制度の持続可能性をいかに確保するかという課題への対応を迫られている」として、企業年金から企業型確定拠出年金への移行と、」給付削減要件の緩和を要求している。
企業型確定拠出年金は、01年に創設された制度で、企業が一定の予定利率で社員に企業年金の支給額を保障する「確定給付」型ではなく、企業は決まった金額の拠出金を負担するだけで利回りを保証せず、運用方法を社員に選択させる仕組みだ。運用利回りが低かったり、赤字になれば社員の受取額は大幅に減るが、企業に補填の義務はない。運用リスクを全部社員に転嫁する制度だが、それだけに労組などの抵抗が強く、導入は進んでいない。
「3種類の企業年金のうち企業が社員に高い予定利率を保証している厚生年金基金と確定給付企業年金は大幅な運用赤字です。だから財界は企業年金そのものの廃止か、そうでなければこの機会に確定拠出年金に切り替えて将来の年金債務なくしたいのが本音です。しかし、投資環境が悪くて運用のプロでも利益が出せないのに、投資の素人である社員に自分で運用して利益を出せというのは無理がある。企業年金は国民の老後を保障する制度のひとつであり、その趣旨から考えても本末転倒です」(北村氏)
実は、財界が企業年金から早く手を引きたがっているのには理由がある。現在、国際的にIFRS(国債財務報告基準)という新たな企業会計基準の導入が進められており、日本も今年中に新基準による決算義務付けを決定する予定だ(導入は最短2015年の決算から)。日本の上場企業は企業年金の運用赤字で8兆円以上の積立不足があるとみられているが、新基準が導入されるとそうした積立不足の”隠れ債務”を全額負債に計上しなければならなくなり、決算が一気に悪化する。
そこで新会計基準導入前に赤字を抱える企業年金を精算してしまいたいのだ。
あまりに虫がよすぎる。
もともと厚生年金基金(1966年創設)は高度成長期に公的年金の給付水準が引き上げられた際、保険料負担を抑制したい財界の要望で導入されたものだ。その仕組みは企業が国に納めるべき厚生年金保険料の一部をかわりに運用し、社員への厚生年金(報酬比例部分)の給付を代行する制度だ。運用益で企業分の保険料負担を減らし、さらに企業年金に回して退職金の一部まで賄うことができる。高金利の時代は社員に5・5%の予定利率を保証しても十分おつりがきた。国に納める厚生年金保険料という他人のふんどしで退職金の一部を賄ってきたわけである。
しかも、企業年金を保障することで「3階部分があるから公的年金を手厚くし過ぎる必要はない」と厚生年金給付の引き上げまで抑制してきた。
ところが、バブル崩壊で超低金利政策が始まり、企業の年金運用が赤字に転じると、経済界は政府に働き掛けて企業年金の抑制に走った。それまで企業年金の減額はできなかったが、政府は97年に年金局長通達(厚生年金基金設立認可基準)で減額を認める例外措置を導入した。次に政府は01年に前述の「企業型確定拠出年金」制度を創設し、企業年金制度の大改悪を行った。その翌年にはうまみがなくなった厚生年金基金による保険料運用の代行を国に返上する制度ができた(それまでは返上できなかった)。
金利が高かった時代はサラリーマンの年金資金を好きに運用して自分たちの懐を温めておいて、低金利時代で損失が出ると「公的年金は国が運用してくれ」「企業年金は社員が運用しろ」とリスクを押し付ける財界の図々しい要求を歴代の自民党政権が実現してきたのである。
同じことを、民主党もやろうとしている。
■ハゲタカに魂を売った謀略トリオ
民主党の蓮舫チームは、党政策調査会の財務金融部門会議の下に置かれている。蓮舫座長とともに報告書をまとめたのはモルガン・スタンレー証券出身で経済同友会の「金融システム改革委員会」委員などを歴任した大久保勉政調副会長だが、いかに財界とのパイプが太いとはいえ、厚生年金基金の廃止という企業年金制度の根幹に関わる重要な方針を一介のWTが決めたのは奇妙だ。
企業年金の解散権限を持つ小宮山洋子厚労相も蓮舫チームと一蓮托生だ。中間報告がまとまる前、蓮舫氏は小宮山氏と会談して厚生年金基金制度の廃止について協議したとされる。
「年金局は財務体質が悪化していない厚生年金基金まで制度ごと廃止するなど考えていなかった。ところが、小宮山大臣は蓮舫氏の中間報告を了承し、省として反対できなくなった。財界と民主党WTと大臣の間で事前に役人抜きで話ができていたことに年金局は青くなっている」(厚労省中堅)
その蓮舫、小宮山、大久保の3氏は東電処理と原発再稼働で財界とガッチリ手を組む仙谷由人政調会長代行の「チルドレン」たちだ。蓮舫、小宮山両氏は仙谷側近として知られ、大久保氏も仙谷氏が自ら会長を務めて最も力を入れている民主党の東電・電力改革プロジェクトチームの副会長に起用されている。
企業年金廃止に慎重な民主党政調幹部が舞台裏をこう明かした。
「蓮舫氏や大久保氏の狙いは内外の金融機関が求めている年金資金の運用自由化。資金運用の専門家の大久保氏は年金資金はもっとハイリターンな金融商品で運用できるというのが持論で、もともと120兆円ある年金積立金の運用規制を大幅緩和するWTを設立しようとしていた。本来ならば年金問題を担当する厚生労働部門に作るのが筋だが、そこにAIJ事件が起きたので、『投資顧問会社はこっちの所管だ』と、大久保氏が座長を務める財務金融部門会議にWTを置いた。厚生年金基金の廃止を打ち出したのも、企業年金を401kにした方が金融機関は年金資金でもっと自由に金融商品を買えるという思惑が透けている。WTではこれから運用自由化の議論が始まる。AIJ事件では日本の年金資金が不良業者に食われたが、その対策を口実に今度は公的年金も企業年金もハゲタカに餌食にされかねない」
中間報告の背後には、退職年金債務を切り捨てたい財界と巨額の年金資金の運用を狙う金融界の意向が反映されていることをうかがわせる証言だ。
大久保氏はこう答える。「厚生年金基金の高い料率では、会社の経営が圧迫されて雇用が失われかねない。また、受給者のために現役世代が高い年金の掛け金を負担する世代間格差も生じる。厚生年金基金は一定の期間後に廃止すべきです。廃止に伴う不利益変更は民間の問題であり、企業が責任を持って対処すればいい」
まったくの見当違いである。厚生年金基金は積み立て方式であるから世代間格差は生じない。現在、リタイア世代の年金を現役世代が負担しているのは、過去にも基準を逸脱した積立不足があったからだ。そうした運用の問題を解決することこそ政治家、政党の仕事だろう。
「増税はシロアリの餌食」「年金は国が税金で面倒を見る」といって政権を取った連中のやっていることが、これである。本誌は追及の手を緩めない。
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。