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企業・経営>特集の読みどころ
人件費破裂前夜
健保・年金・税が迫る大変革
2012年5月14日 月曜日 日経ビジネス特集取材班
ゴールデンウイーク明け、国会で社会保障や消費税の一体改革に絡む法案の審議が始まりました。国民の目はどうしても、2014年10月にも予定されている消費税率の引き上げに向けられがちですが、実は、家計や企業に大きな影響を及ぼすのは消費税だけではありません。健康保険や年金の制度改革もまた、多大な影響を及ぼします。
既に健康保険料率は年々引き上げられ始めていますが、団塊の世代が65歳を迎え始める2014年以降、さらにアップさせようという議論が進んでいます。多くの企業では、健康保険のコストを社員と会社で折半していますから、広義の意味での人件費が増大してしまうのです。
加えて年金。2016年度からは厚生年金への加入義務の対象を広げる動きがあります。これまでは週30時間以上働く人などを対象にしていましたが、これを週20時間以上で、勤続1年以上、年収94万円以上(従業員501人以上の企業のみ。学生は対象外)に広げようというのです。
この20年、企業は国際競争に打ち勝つために、総人件費を上げないように努力してきました。ところが、その努力が、制度の変更だけで水泡に帰してしまう恐れがあるのです。
家計にとっても、負担になります。給料が上がらない現状を何とか我慢してきたのに、健康保険料や年金という形で徴収されれば、可処分所得はそれだけ減ります。そう、健康保険料率の引き上げや年金の加入枠の拡大とは「隠れた増税」なのです。
さて、問題はここからです。こうした人件費の膨張は、企業の競争力を弱めると同時に、働く社員たちのモチベーションも棄損してしいます。総人件費を上げずに社員のモチベーションも下げない。この二律背反とも思える難題を企業は抱え込むことになります。
では、どうするか。その答えは1つではありません。人件費の原資は限られています。従って、従来以上にメリハリをつけるしかない。それは人事制度そのものの大変革を伴わないことには実現不可能でしょう。
特集では、そうした問題意識を元に、様々な企業の取り組みをリポートしています。あと、2年後、3年後に確実に来る未来をどう迎えるのか。その対応策へのヒントになる特集です。
特集の読みどころ
企業が直面する変化や課題に多角的に切り込む日経ビジネスの特集。その執筆の動機やきっかけ、誌面に込められたメッセージをお届けします。誌面と併せてお読みいただくことで、理解がより深まる連載です。
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企業・経営>ニュースを斬る
5・15、ヤクルトのXデー
「休戦協定」終了後に襲い来る黒船
2012年5月14日 月曜日 日経ビジネス ヤクルト問題取材班
「休戦協定」のタイムリミットがやってきた。ヤクルト本社と仏食品大手ダノンが交わしたスタンド・スティル条項。2000年頃からヤクルト株を買い増したダノンは、2003年にヤクルト株の約20%を保有して戦略的提携を迫ったが交渉は難航、一部の提携にとどまっている。2007年5月には、ダノンが株の買い増しを進めないという「休戦協定」が結ばれている。一方、ヤクルトはダノンから非常勤役員を受け入れ、海外市場開拓や研究開発などでも提携している。
だが、5月15日をもって、この休戦協定が期限を迎える。その後、ダノンはヤクルト株を36%まで買い増すことができるとされる。
ダノンの妥協案も拒否
ヤクルト関係者の話によると、期限が迫る中でダノン側との交渉が続いたが、ヤクルト側は株主総会で重要議案を否決できる36%まで株を保有されることに強く反対。これにダノン側が折れる形で、「28%までの買い増しと、常勤役員の派遣」という妥協案を提示した。
ところが、ヤクルトはこの提案を拒否。社外取締役としてダノンから派遣されているリチャード・ホール氏を執行役員と兼任させることで済まそうとしている。
「我々はダノンの株主比率の増加を望んでいない」
ヤクルト本社の川端美博副社長は、5月11日の決算会見の席上で、そう断言した。「自主独立の維持」。それが、ヤクルトが頑にダノンの株買い増しを拒否する理由だ。
「もしダノンが買い増してきたら、どう対応するのか」
そんな記者の質問に、川端副社長は表情を変えずにこう答えた。
「そういうことが起きるとは思っていない。(もし、ダノンが買い増したら)提携関係の維持が難しくなると思う」
さらに「次の期限は2017年5月になっている」とも発言し、このまま5年間、ダノンとの関係を「現状維持」にしようと目論む戦略もちらつかせる。
本社だけが儲かる構図
「何が守りたくて、あれほどハリネズミのような(防御を固める)姿勢を続けるのか」
ダノン関係者は、ヤクルト側の対応に憤りを露にする。両社の交渉を知る弁護士によると、「休戦協定」は紳士協定のようなもので、「ダノン側は上限なく株を買っていっても、何ら法的な問題はない」と証言する。また、ダノン陣営には28%という妥協案を蹴られた後、「すべての交渉は白紙に戻った」という発言も漏れ、主戦論すら囁かれる。
一方のヤクルト側は、グループ内に不協和音が聞こえてくる。
ヤクルトレディを擁する全国109社の販売会社だが、一部で「本社不信」が高まっている。
「多くの販売店が苦しい経営に陥っている中で、なぜ本社だけが高い利益率を維持できるのか」
ある有力販社の役員は、そんな疑念を持つ。発表されたヤクルト本社の前期の連結決算は売上高3126億円(2.2%増)、経常利益280億円(8.5%増)と好業績をあげている。今期も増収増益を見込む。
だが、販社は毎年のように数社が経営に行き詰まり、整理統合されている。だが、そもそも、ヤクルトは販社から立ち上がり、後に「本社」が作られたという生い立ちがある。本来は「販社上位」の企業グループだった。
広告宣伝や商標権管理を目的として、全国のヤクルトの製造・販売会社が集まって「ヤクルト本社」を設立したのは1955年のこと。かつて、特殊乳酸菌を発見した京都大学の代田稔教授が、希望者に製造権や販売権を分け与える形で事業がスタートしているためだ。
その後、長崎地区の販社を率いた松園尚巳氏がヤクルト本社の社長として辣腕をふるい、全国の販社をまとめて業績を一気に伸ばしていく。松園氏はヤクルトレディを軸にした訪問販売システムを磨き上げ、80年に株式上場に導くなど、「中興の祖」として君臨した。
ヤクルト陣営、離反が続く
しかし、ヤクルトは90年代から「本社」の暴走が始まる。98年にはデリバティブで1000億円を超える損失が表面化、取引を主導した当時の熊谷直樹副社長と桑原潤会長が引責辞任。その後も、不祥事が続く。2000年以降も、右翼の大物、日本政治文化研究所理事長の西山広喜氏が社長を務める企業との取引が発覚するなど、世間を騒がせた。
そうした中で、販社も含めたグループ内から「反・本社」の声が漏れてくる。
「なぜ、本社だけが安定した利益率を維持できるのか。商品の販社への卸値を上げて、利益を吸い上げているだけじゃないか」「すでに株式の20%を持っている外資の声を無視する経営など、このグローバル経営時代に許されるのか」
高まる不満は、ついにダノン陣営に付く流れまで作っている。
1994年に亡くなった松園尚巳氏の資産管理会社「松尚」(神奈川県藤沢市)。ヤクルト株を6.6%保有して、ダノンに次ぐ第2位の大株主に名を連ねるが、同社の関係者によれば、すでにダノンと連動する交渉も進めており、本社に「改革」を働きかけていくという。
また、松園氏の双子の兄である直巳氏が保有していた株など、関係が深いヤクルト関係者の株式を集めると約10%に上ると推計される。これがダノン側に付けば、ヤクルト本社は厳しい状況に追い込まれる。
ヤクルト側が28%の保有も認められない背景には、こうした「反本社」の株主が少なからず存在する事実がある。また、ヤクルト株を保有する海外株主は、ダノンを除いても10%近くに上り、彼らも対立構図の中ではダノン側に付く可能性がある。
ヤクルト本社の関係者も、こうした危険な構図にある中で、ダノンの妥協案を退けている現経営陣に危機感を募らせる。
「ヤクルト本社の経営陣は、まるで駄々っ子のようだ」
ダノンは、これまで「反外資」の世論が日本で高まることを警戒して、ヤクルト本社と友好的に提携を進める道を模索してきたと言われる。だが、ヤクルトグループ内からも援軍が集まりつつある中で、TOB(株式公開買付)に打って出る可能性もある。
紳士協定が切れる5月15日を過ぎれば、ヤクルト本社とダノン、そしてヤクルトグループをも巻き込んだ大乱戦が、いつ勃発してもおかしくない。
ニュースを斬る
日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
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アジア・国際>記者の眼
インフレ社会で見えるもの
日本が忘れた「値上げ当たり前」思考の功罪
2012年5月14日 月曜日 熊野 信一郎
香港から日本に一時帰国すると必ず感じることがある。「何てモノが安いんだ」。正確に言えば、何年たってもモノやサービスの価格がほとんど変わっていないことの再発見である。
記者が香港に赴任したのは2007年。ちょうどそのころから、香港は本格的なインフレに突入し始めた。国際的な燃料価格高騰に、食品や日用品を輸入する中国本土のインフレと人民元高の影響が重なった。
不動産市場では、中国本土の投資家による香港不動産の購入が活発化。市況の変化は激しいものの、基本的に右肩上がりが続いている。契約更新時に2割や3割の家賃アップを提示され、引っ越しを余儀なくされる日本人駐在員家族も多い。
マクドナルドも年2回の値上げ
デフレにどっぷり浸かった日本では考えられない「値上げ当たり前」の世界。それは日常生活のあらゆる場面で実感する。2011年、マクドナルドは2回の値上げを実施した。「茶餐店」と呼ばれる庶民的な食堂でも、かつてはランチセットが30香港ドル(300円)以下だったのに、今では40ドル(400円)前後が標準的。
その他、タクシーや地下鉄など交通インフラの料金から、学校の授業料、ディズニーランドの入園料に至るまで。値上げされていないものを探すほうが難しい。香港名物の路面電車トラムも、2011年6月に大人運賃が2ドル(20円)から2.3(23円)ドルへと大幅に引き上げられた。価格改定は実に13年ぶり。日本から見れば破格に安いが、香港では庶民の足として定着しているだけに、値上げへの抵抗も大きかった。
ちなみにこうした状況では、日本の「デフレ力」は価格競争力の面では強さを発揮する。例えば定番商品の価格が安定しているユニクロは、香港では割安感が強くなっている印象がある。日本国内だけの値下げ競争は果てしなき消耗戦だが、そこで磨いたモデルは海外市場攻略の武器になるということも言えそうだ。
教科書的に言えば、適度なインフレは理想的。だが、デフレにも特定の立場から見ればメリットがあるように、インフレにもプラスとマイナスの側面が両方ある。
香港の場合、この数年のCPI(消費者物価指数)の前年同月比の伸びは一桁で、行き過ぎたインフレには到達していない。それだけに、「これがインフレのプラスの循環か」と感じさせることも多い。
企業も個人も値上げを前提に動く
まずあるのが、「値上げを前提としたポジティブ思考」である。飲食店にしても、単にメニューの数字を書き換えるだけでなく、リニューアルと称して内装に手を加えたり、新しいメニューを開発したりする。そこでまた、新しい競争が生まれる。
浮沈が激しい不動産分野でも、オーナーは少しでも高い賃料で契約を確保しようと必死だ。マンションのオーナーはやたらと豪華な内装や家電を揃え、賃借人にアピールする。古いオフィスビルは、内外装からトイレに至るまであちこちに頻繁に手を加え、見た目の新しさを維持しようとする。
香港の一等地の1つ、ラッセル・ストリートのテナント賃料は米ニューヨーク5番街に次ぐ世界2位の高さ
こうしたプロセスは当然、内装業者や職人などの仕事、設備や家電などの需要を生む。それが値上げ分に相当するかはさておいて、積極的に新しい価値を提供しようという前向きな空気が、都市全体で感じられる。
もちろん負の側面もある。社会全体で見れば、収入・階層の2極化が最大の問題だ。不動産など資産の含み益を持つ層とそうでない低所得者層の格差は広がる一方。低所得者層ほど生活コストの上昇に苦しむことになる。賃金は上昇傾向にあるが、低所得者層の上昇率はインフレのペースに追いついていないとの調査もある。
テナント賃料の高騰によって、中国人観光客が溢れる繁華街やショッピングモールに並ぶ店は高級ブランドか大手チェーン、宝飾品ばかりが目立つようになった。中心部から小規模な個人商店は追い出され、街の個性が薄れてしまったというのが個人的な感想だ。
ただそれでも全体としての活力が失われないのは、そうしたインフレの副作用に行政が素早く手を打っているからだとも言える。象徴的なのが、2011年に導入された最低賃金制の導入だ。徹底したレッセ・フェール(不干渉主義)、自己責任主義の香港であっても、インフレによる所得格差の拡大と低所得者層の下支えには細心の注意を払わざるをえない状況になっている。
「1人6万円配布」というインフラ対策
それ以外にも、公的住宅の家賃減免や、子育て世帯や高齢者への補助など、電気代の補助、次から次へとインフレ対策が打ち出される。永住権を持つ18歳以上の住人に1人当たり6000ドル(約6万円)を支給するというバラマキ策まである。
香港ドルは米ドルにペッグしており、金利などの金融政策が米国に準拠せざるを得ずそれほど自由度が高くない。そのため、物価の調整機能や生活支援をこうした個別の政策でしか実現できないという事情もある。
人口700万人で国土が小さく、財政黒字が生み出す豊富な財源があるために各種政策がすぐに実行できるという特異性もある。少子高齢化が進んでいるが、中国本土という広大な市場が後背地にあり、需要不足の心配がそれほどないというのも恵まれた条件だ。
それだけに、単純に日本と比較することは適切ではない。ただ、インフレから遠ざかって久しい日本では体感できない普遍的な教訓を教えてくれる。待ちに待った適度なインフレが訪れたとしても、負の効果を軽減する富の再配分策が機敏に実施されなくては、宝の持ち腐れになりうる。デフレ脱却については日本銀行の金融政策の話に収斂しがちだが、21世紀に入ってからまだ見ぬ「その先にある現実世界」について考えを巡らしておいても損はない。
記者の眼
日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。
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熊野 信一郎(くまの・しんいちろう)
日経ビジネス香港支局特派員。日経BP社入社後、日経ビジネス編集部に所属。製造業や流通業を担当後、2007年に香港支局に異動。現在は主に中国や東南アジアの経済や企業の動き、並びに各地の料理やアルコール類の評価、さらに広島東洋カープの戦力・試合分析などを担当する。
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