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Financial Times
自発的な「金融抑圧」でマゾヒズムの時代の到来不利な金利でも国債を買うしかない?
2012.05.14(月)
今からちょうど1年前、経済学者のカーメン・ラインハート氏とベレン・スブランシア氏は、「金融抑圧」に関する国際通貨基金(IMF)の革新的な論文を執筆した。当初、多くの西側の投資家は論文を見て、ポカンとした。
というのも、こうした「抑圧」は近年、新興市場で幅広く議論されてきたが、米国では多くの人が、この暗い響きのある言葉が何を意味するのか知らなかったからだ(答えを言えば、「金融抑圧」とは、投資家が好ましくない金利、つまり現行のインフレ水準を下回る金利で債券を購入せざるを得ないと感じる状況を政府が作り出し、国の債務を減らす助けをすること)。
ユーロ圏や米国にも広がる金融抑圧
時代は変わるものだ。あれから1年経った今、「抑圧」という言葉は、西側諸国で開かれる投資家の会合で飛び交っている。
無理もない。ユーロ圏では、スペインやアイルランドのような国々の政府が銀行や政府系の年金基金に対し、公的部門の債券を潜在的に好ましくない価格で購入するよう――「強制している」とまではいかなくとも――「奨励している」兆候が強まっている。
一方、米国でも、同じくらい注目に値する事態が進行中だ。投資家が、全く「抑圧」される必要もないまま、好ましくない金利で国債を大量に購入しているのだ。5月第3週には、ユーロ圏に関する不安が急激に高まる中、10年物米国債に対する需要が強まり、米国政府は1.75%という過去最低の表面利率で国債を発行した。
しかも、1.91%という10年物米国債の名目利回りは、昨年の最低水準よりは高いものの、インフレ率が2.5%強に上ることから、実質ベースではマイナス領域にある。
言い換えると、米国債を購入する投資家は皆、深刻なデフレが迫ってきているとでも考えていない限り、基本的に今後数年間、米国政府に補助金を出すことに同意しているということだ。何なら、これを一種の「自発的な」抑圧を呼んでもいいだろう。どちらにしても、抑圧はほぼ間違いなく、投資家に損害を与えて米国政府を助ける結果になる。
では、金融抑圧は継続し得るのだろうか? 米国の政策立案者や金融当局者にその質問をしたら、ばつの悪い咳払いを聞くことになるだろう。例えば、筆者は先日、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の討論会で、米連邦準備銀行(FRB)の総裁たちに質問してみた。
連銀総裁たちは、公の場では誰もその状況を、あからさまな「抑圧」とは表現したがらなかった。結局のところ、米国の金融政策は独立している、と彼らは言った。
FRBの超緩和的金融政策の存在理由は経済の需要を押し上げることであって、財政政策を支援することではないという意味だ。これが債務を減らす助けになっているとすれば、それは幸運な偶然に過ぎない。彼らの議論に従うと、そういうことになる。
株式から債券へ比重を移した米国年金基金
それでも、非常にはっきりしているのは、FRBと財務省の当局者は一様に、当分の間は米国債利回りを、実質ベースでマイナスとは言わないまでも、超低水準にとどめておくことを決意している、ということだ。そして彼らが成功する可能性は十分ある。
FRBが金融緩和政策の一環として米国債を大量に購入してきたことや、民間銀行がバーゼル委員会の流動性カバレッジ比率のような新規制を満たすために国債保有残高を増やしているという事実などは、この際気にしなくていい。
それよりもっと興味をそそるのは、投資家さえもが、知らぬ間に「自発的な抑圧」という考え方を受け入れていることだ。
米国の年金基金に何が起きたか考えてみるといい。5年前には年金基金は通常、資産の60%を株式に配分し、30%を債券に配分していた。ところが、コンサルティング会社ミリマンの調査によると、先月は、上位100位の基金は1兆3000億ドル相当の運用資産総額の41%を債券に配分しており、初めて株式への配分比率を上回った。
そうした変化は、数年前なら合理的に思えたかもしれない。何しろ過去10年間は、米国債のリターンが年率換算で6.8%に上り、S&P500株価指数のリターン(2.9%)を大きく上回っていたからだ。
2%の国債利回りは、PERで言えば50倍に相当
だが、今のタイミングは最悪に見える。というのも、ハイマーク・キャピタルのCIO(最高投資責任者)、デビッド・ガーツ氏が言うように、「2%の米国債利回りは、PER(株価収益率)にすれば50倍に相当するのに対し、現在のS&P500の予想PERは13倍だ」からだ。
言い換えれば、年金基金にとっては、運用先を再び株式に切り替える方が理にかなっているということだ、と同氏は言う。
一方、グッゲンハイム・パートナーズのスコット・マイナード氏のような運用担当者は、まともなリターンを得るために社債に目を向けるべきだと考えている。だが、2007年と2008年の経験が投資家に非常に大きな傷跡――そして恐怖感――を残したため、彼らはリターンよりも資金の保護と流動性の方をより重視している。
言い換えれば、(FRBや銀行を含め)ほかの誰もが米国債にどんどん投資している時は、多くの投資家も群れに従いたがるということだ。恐怖の相関関係が先行しているのだ。
金融抑圧が生む長期的なリスク
このことは長期的に大きなリスクを生み出す。インフレ率が突如急上昇したり、成長が再開したり、再びデフォルトの恐怖をもたらす米国の財政騒動が起きたりした場合には、価格が大きく振れ、多くの投資家が大けがを負うだろう。
だが、余剰資金に溢れた世界では、このバブルが正確にいつ弾けるのか予測するのは無駄足だ。筆者は、この自発的な抑圧がしばらく続くのではないかと思っている。何なら、それを大衆市場の金融マゾヒズムの時代と呼んでもいいだろう。
By Gillian Tett
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