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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35196
ユーロ危機:欧州のアキレス腱
2012.05.14(月)
The Economist
ギリシャ離脱のリスクが高まる中、ユーロ圏はいまだ、単一通貨そのものを救う課題と向き合っていない。
ユーロ危機が小康状態を保っていたのは、ほんの数カ月だけだった。ギリシャへの1300億ユーロ(1690億ドル)の第2次支援が決まり、2011年12月にはユーロ圏首脳が財政協定に合意し、欧州中央銀行(ECB)が1兆ユーロの低利長期融資を行ったにもかかわらず、再び悪夢が蘇ってきた。
欧州が、迫り来る厳しい試練に対していまだこれほど準備不足だというのは、なんとも気が滅入る話だ。
ギリシャ離脱という悪夢
欧州に残された時間は少ない・・・〔AFPBB News〕
残された時間は少ない。フランスでは、有権者が次期大統領フランソワ・オランド氏に対して、追い落とされた現職のニコラ・サルコジ氏とドイツのアンゲラ・メルケル首相が定めた「緊縮」コースを変え、成長を重視する権限を与えた。
メルケル首相は財政協定を変えるつもりはないと言っているが、オランド氏は来月の議会選挙で、有権者に何らかの成果を示す必要がある。さらに大きな脅威は、各党が連立政権樹立に苦労しているギリシャで次第に可能性が高まっている再選挙だ。
ギリシャの有権者の大多数が再び、支援の条件である歳出削減と改革を拒否すれば、ユーロ圏各国、特にドイツの政府は、思い切った選択を迫られることになるだろう。
メルケル首相の選択肢は、ギリシャに資金を用立てて、反逆に対して報酬で応じるというモラルハザードを受け入れるか、あるいは強硬な態度に出てギリシャを切り捨てるかのいずれかだ。後者の方が可能性は高いだろう。
フランスとドイツの結束が揺らいでいるこのタイミングで、無秩序なギリシャ離脱が起きるというシナリオは、影響を被るすべての関係者を怯えさせる(例えば、そのシナリオが世界経済に及ぼすダメージは、バラク・オバマ氏の再選を阻む最大のリスクとなるだろう)。
極めて多くのものが危機にさらされている今、ギリシャ以外のユーロ圏各国は早急に、ギリシャ離脱から生じる悪影響がポルトガルやアイルランド、さらにはスペインやイタリアに伝染するリスクを抑える必要がある。
気がかりなのは、冷静な現実政治が必要とされている今この時に、政治が自己欺瞞に陥り、主要国のすべての指導者が誘惑的な「半面だけの真理」をばらまいては、安易な解決策を欧州の市民に約束していることだ。
語られる物語は・・・
ユーロ圏は、数多くの難題に取り組む必要がある。本誌(英エコノミスト)のリストには、最低でも以下の課題が含まれる。
短期的には、財政調整の減速、投資の拡大、金融緩和による成長促進、基盤の弱い周縁国への伝染を防ぐための金融防火壁の強化(いずれもドイツが嫌っていることだ)。中期的には、欧州の硬直した市場と膨張しすぎた社会保障制度の構造改革だ(この政策は南欧諸国では人気がない)。またこれと併せて、債務残高の少なくとも一部を相互化し、欧州全域での銀行破綻処理機構を設立する計画を立てる必要がある(誰にとっても扱いにくい案だ)。
これらは野心的な課題だが、イタリア、スペイン、ギリシャがいずれもある程度の厳しい選択を受け入れ、ECBが大量の流動性を供給していた今年初めには、そうした政策も可能に思えていた。
成長が重要だと訴える点では、フランソワ・オランド氏は正しいが・・・〔AFPBB News〕
今や、その可能性は夢の国へ去ってしまった。最も顕著な例がフランスだ。オランド氏は、債務を管理可能にし、銀行を回復させ、失業率を下げることで、成長が欧州の将来を変えられると言う。この点では、オランド氏は正しい。
だが、その真理は、2つの嘘により打ち消されてしまう。
オランド氏は財政再建を口にしているが、主として公共支出と増税で危機を脱すると約束し、フランスの有権者たちに、その資金は富裕層が負担できるし、自分たちの苦難は限られたものになるという幻想を抱かせている。
しかもオランド氏は、欧州の危機の責めを負うべきは自由主義、民営化、規制緩和だと訴えてきた。フランスは今や、企業に対する障壁の後ろに立てこもるという考えに傾こうとしている。その障壁こそ、これまでフランス経済の競争力を削いできたものだ。
短期的には、オランド氏はメルケル首相と妥協できるはずだ。財政協定に成長協定を追加することは可能だろう。実際、ドイツにとってそれは内需拡大策を強化する根拠にもなる。
だがそれでも、オランド氏は改革を支持しなければならないだろう。借金に頼らずに社会保障支出を賄うための確実な中期的計画が必要だからだ。さらに、近隣諸国が改革を受け入れている現状では、フランスもそれに加わらなければ、失業率が上昇し、賃金が伸び悩むことになる。
そうした状況を、金利の引き下げや6万人の教員増員、新道路の建設で防げるとしたら、どんなにか素晴らしいだろう。だが、そんな成長の妖精など、存在しないのだ。
・・・そして、信じられている物語
幻想がばらまかれるというパターンは、欧州のいたるところで見られる。イタリアで信じられている半面だけの真理は、困難な選択を実務家内閣に委ねれば、機能不全の政治から逃れられるというものだ。
イタリアのマリオ・モンティ首相は確かに才能ある人物だが、5月7日の地方選挙で抗議票が多かったことを考えれば、多くのイタリア国民の生活に影響を与える人気のない政策を決定するのは、やはり選挙で選ばれた政治家であるべきだろう。
ドイツに流布する半面だけの真理は、債務国が緊縮で自ら繁栄への道を切り開いていけば、ユーロ圏の問題は解決できるというものだ。だが実際にはドイツは、インフレ率の上昇を受け入れ、消費をもう少し増やし、通貨同盟に参加する弱い国々を支えなければならない。
実際は、すべての国が、現在は尻込みしている選択に対峙しなければ、ユーロ圏は生き残れない。恐ろしいジョークとして言われているように、ユーロに必要なのは、フランスの改革と、ドイツの浪費と、イタリアの政治的成熟なのだ。
最もひどい状況にあるのが、ギリシャだ。アテネで唱えられている半面だけの真理は、ギリシャが耐えてきた苦難を偏狭な北部諸国が何ら評価していないというものだ。確かにギリシャは苦しんでいる。2012年には、ギリシャ経済は2007年と比べて20%近く縮小すると見られる。
経済は深刻な信用逼迫と流動性の逼迫に圧迫され、さらなる予算削減と増税が待ち構えている。
すべてがうまくいったとしても、来年のギリシャの債務は国内総生産(GDP)の161%に上る見込みだ。次期政権がどのような顔ぶれになろうと、ギリシャがその債務を返済できると考えるのは、壮大な幻想以外の何ものでもない。
それでも、ギリシャはユーロ圏にとどまった方がいいのだろうか? 恐らくそうだろう。ただし、その判断はますます微妙になっている。
あと1カ月ほどの勝負?
ユーロから離脱し、続いてデフォルト(債務不履行)すれば、ギリシャの負債は軽くなり、競争力が回復し、ギリシャの政治家たちは自身の運命を握るだろう。だが、ユーロからの離脱は、混乱を生み、貯蓄を台無しにする。そして、過去の同様の事例でもしばしば見られたように、ユーロ離脱の利益は、インフレによりあっという間に消えてしまうかもしれない。
ギリシャ以外のユーロ圏諸国にとっても、ギリシャが「入って」いる方が好都合だ。たとえその理由が、他国に伝染する恐れがあるから(そしてそれに対する備えが不十分だから)というだけのものだとしてもだ。だがそれも、いかなる代償を払っても、というわけではない。
ギリシャが第2次支援を拒否したり、改革計画に大幅に遅れが出たりするようなら、ユーロからの離脱は避けられなくなるかもしれない。その備えをするためにメルケル首相とオランド新大統領に与えられた時間は、ほんの1カ月程度かもしれない。両首脳がやらねばならないことは、山ほどある。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35198
欧州から脱落しゆくギリシャEUやIMFにはノーと言えるが、緊縮からは逃れられない
2012.05.14(月)
Financial Times
ギリシャでは連立交渉が不調に終わり、カロロス・パプリアス大統領(右)が直接、各党との交渉に乗り出すことになった〔AFPBB News〕
ギリシャの国民は緊縮財政を拒絶した。腐敗した政界既成勢力を追放したことでギリシャ国民を責めることは到底できない。外国の債権国・機関がギリシャに与えた経済の処方箋が驚くほど厳しいことについても、議論の余地はない。
問題は、怒りは政策ではないということだ。何度ギリシャが緊縮に反対票を投じようと、緊縮は避けられないのだ。
ギリシャは債権者に押し付けられた恐慌というスキュラと、一方的な債務返済拒否とユーロ圏離脱の大混乱というカリュブディスの間に挟まれ、進退窮まっている。
5月6日の選挙では、有権者の3分の2以上が、第2次支援の代償として欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)がギリシャに課した歳出削減や増税、構造改革に反対する政党を支持した。ところが同じ3分の2以上の有権者は、ユーロを維持したいとも話している。
ギリシャ国民が抱く根本的な矛盾
この根本的な矛盾は持続不能だ。決定権がアテネの政治家の手から奪われる時が迫っている。財政上の期限が近づいている。直近の選挙の結果(そして6月の再選挙で再び決定的な結果が出ない可能性)は、ギリシャが無秩序なデフォルト(債務不履行)の渦に向かって突き進んでいることを示している。
選挙で大敗を喫したのは、中道右派の新民主主義党(ND)と中道左派の全ギリシャ社会主義運動(PASOK)という、数十年間にわたってギリシャの政治を支配し、腐敗させた政党だった。極左では共産党、極右ではネオナチ政党の「黄金の夜明け」など、野党の小規模政党が支持を大きく伸ばした。
大勝利を収めたのは、PASOKを第3党に追いやった急進左翼連合 (SYRIZA)だ。SYRIZAのアレクシス・ツィプラス党首は、EUとIMFの「残酷な」要求を破棄することを約束している。
こうして、壊れた経済の横に壊れた政治組織が鎮座することになった。NDとPASOKによる古い複占体制の致命的な遺産は、政治のバルカン化(分裂・細分化)であり、その結果ギリシャには、現在の経済の進路に賛成するにせよ、反対するにせよ、議会の過半数を握る政党が1つも存在しなくなった。
ギリシャの政局混迷はどんな結果をもたらすのか〔AFPBB News〕
欧州の政策立案者の中には、期待を込めて抗議票について語る向きもあった。つまり、抗議票という苦痛の叫びを上げた後、ギリシャ人が自らの窮状を冷静に検証すると、既成勢力への回帰が生じる、という見方だ。しかし、次の選挙が異なる結果をもたらすことを示す証拠は何もない。
これほど多くの有権者がツィプラス氏を支持したのも理解できる。NDとPASOKは、経済を破壊し、ギリシャ社会を傷つけた、腐敗した恩顧主義の政治体制を指揮してきた。
ギリシャ人は50歳で引退するとか税金を払うことを拒むといった、ベルリンなどで聞かれる多くの嘲笑にもかかわらず、緊縮財政は既に大きな打撃を与えてきた。
公共支出は大幅に削減され、賃金と年金は25%も減少した。ギリシャの国内総生産(GDP)は2割縮小した。羽毛のマットレスのような手厚い保護は、ごわごわした懺悔服に取って代わられたのだ。
怒りは何の解決にもならない
だが、国民の怒りは解決策を与えてはくれない。ギリシャはEUやドイツ政府にノーと言うことはできる。IMFの官僚を嘲ることもできる。ギリシャが望むのであれば、ユーロの束縛から自国を解き放つこともできる。できないのは、罰を逃れることだ。
ユーロ圏から離脱しようと、ユーロ圏内にとどまろうと、ギリシャは国家財政を立て直し、国際競争力を取り戻すために必要な厳しい調整を避けることはできない。ただ単に債務をご破算にしてドラクマを復活させれば、経済崩壊の引き金を引くことになる。
ギリシャの政治家は、自国の債権者がはったりをかけていると思っているのかもしれない。表向きどれだけ違うことを言っても、EUとIMFには、ギリシャの無秩序なデフォルトを容認する余裕はない、というわけだ。
スペインの銀行システムに新たに生じた亀裂は、ユーロ圏周縁国への感染の危険性を思い出させるタイムリーな出来事だった。単一通貨の防火壁は、まだ半分しか建てられていない。ドイツのアンゲラ・メルケル首相は本当に、ユーロ圏解体の前触れとなりかねないギリシャ離脱のリスクを取るつもりなのか?
確かに、ユーロ圏における緊縮と連帯のバランスに関しては、今後行わねばならない重要な議論がある。ドイツはユーロ圏周縁国に対して、あまりに早急に過度な要求をしたという説には強力な論拠がある。緊縮財政は、自滅的な措置になりつつある。
今ではベルリンでさえ、ユーロ圏の中核国は経済成長を取り戻すために貢献すべきだと示唆する発言を耳にするようになった。ありがたいことに、フランス大統領選でのフランソワ・オランド氏の勝利により、こうした議論が再開された。
だが、欧州の冷静な当局者や政治家との幾多の会話から筆者が得た感覚は、もしギリシャが成長重視の新たなレトリックのおかげで、潔白な財政と構造改革に対する誓いを脇へ置くことができると思うなら、自らを欺くことになる、ということだ。
EU諸国は、ギリシャにしびれを切らしている。EU諸国とギリシャの政策立案者の関係は、完全な信頼の欠如と、ギリシャ政府が自己改革する能力に対する深刻な悲観論に彩られている。
エコノミストの中には、それは良いことだと言う人もいるだろう。ギリシャにとって救いはユーロ離脱にあり、ドラクマへの復帰に続く大幅な通貨切り下げが競争力を回復させるというのだ。
近代的な欧州国家になることを諦め、バルカン諸国の仲間入り?
過ちは、通貨切り下げが痛みを伴わないと思い込むことだ。むしろ通貨切り下げは、別の形で国内の生活水準を引き下げる方法だ。無秩序なデフォルトに関して言えば、それがもたらす結果は、ギリシャの銀行システムの内部崩壊と、外国資金へのアクセスの途絶だ。
すべての道は緊縮に続く。だが、ギリシャにとっては、問題は経済だけではない。ギリシャによるEU加盟の悲劇は、地理に抗って自国を近代的な欧州国家として再定義することに失敗したことだ。今、ギリシャが単一通貨内にとどまれる道筋を想像するのは難しい。だが、ギリシャは再びバルカン諸国の仲間入りをすることを望んでいるのだろうか?
By Philip Stephens
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