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#NKと比較するのは極論だが、過去の飢饉や原発、温暖化(寒冷化)リスクを考えても、カロリーでの食糧自給率に拘るのは全く意味がなく、
本質的に重要なのは世界市場にアクセスできる経済力と政治力(集団安全保障、軍事力)を維持すること(そのコアとなる国民の知力や活力)であることは明らか
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35175
世界の中の日本
食料自給率100%の国は飢えている
北朝鮮問題から自給率を考える
2012.05.14(月)
川島 博之:プロフィール
北朝鮮が「衛星」と称した弾道ロケットの打ち上げに失敗したことは日本でも大きく報道された。その費用は800億円とも言われる。その失敗を取り返すために、近く3度目の核実験に踏み切るのではないかと言われている。それにも多額の資金が必要だ。
ここではそんな北朝鮮の食料事情について考えてみたい。
1人当たりコメ消費量は日本よりも多い
北朝鮮の人口は2430万人。FAO(国連食糧農業機関)によると、2010年の穀物生産量は454万トン。その中でコメが243万トンと約半分を占め、残りは大半がトウモロコシ(168万トン)である。小麦の生産量は16万トンと少ない。
1人当たりのコメ生産量は100キログラムであるが、これはもみの付いた重量であり、白米にすると65キログラム、1日177グラムである。これから得られる熱量は630キロカロリーだが、人間は1日に約2000キロカロリーを摂取しなければならないから、これでは全然足りない。そのために、多くの人がコメにトウモロコシを混ぜて飢えをしのいでいる。
ただ、日本の1人当たりコメ消費量は現在59.5キログラム/年でしかない。北朝鮮よりも少ないが、日本人は飢えていない。またコメにトウモロコシを混ぜたりもしていない。それは、穀物以外から多くの熱量を得ているからだ。
一例を上げれば、日本の年間の食肉生産量は322万トン、輸入は260万トンである。1人当たりの供給量は年間45キログラムにもなる。
一方、北朝鮮は肉をほとんど輸入しておらず、国内生産も年間32万トンでしかない。1人当たりの供給量は13キログラムである。
また日本は牛乳を年間770万トン生産しているが、北朝鮮は9.5万トンであり、日本の81分の1だ。人口が5分の1であることを考慮しても、これでは平壌に住む特権階級しか牛乳を飲むことができないであろう。
FAOのデータは北朝鮮が報告した値に基づいている。北朝鮮は国際社会にウソを報告することが多いが、援助が欲しいからか、食料については比較的正直に報告しているように思える。そのために、多少の誤魔化しはあるだろうが、素直にFAOデータを読むだけでも北朝鮮が食料に困っていることが分かる。
自給率と食料供給の間にはなんの関係もない
それでは、なぜ北朝鮮は食料に困っているのであろうか。ここでは北朝鮮と日本、韓国の食料供給を比較してみたい。
1人当たりの農地(穀物栽培面積)は北朝鮮が0.052ヘクタール、日本が0.015ヘクタール、韓国が0.019ヘクタールであり、1人当たりの面積はこの3国の中では北朝鮮が最も広い。1人当たりの面積が広いのに、なぜ食料が不足しているのであろうか。
その1つの原因は、単収(単位面積当たりの収穫量)が低いことにある。北朝鮮の単収は1ヘクタール当たり3.6トンでしかない。一方、現在、日本は5.9トン/ヘクタール、韓国は6.2トン/ヘクタールである。
単収が低い原因は窒素肥料が足りないからだ。それはエネルギーが不足して十分な肥料を生産できないためである。つまり、エネルギー不足が食料不足につながっている。
食料の輸入量においても3国には大きな違いが見られる。2010年に日本は2530万トン、韓国は1155万トンの穀物を輸入している。穀物自給率は日本が31%、韓国は39%である。それに対して北朝鮮の輸入量は45万トンに過ぎない。そのおかげで穀物自給率は91%と高い。
現在、韓国と日本の生活状況はほぼ同じと考えてよい。多くの人は食べたい時に好きなものを食べている。「焼き肉」を将軍様の贈り物と称して1年に数えるほどしか食べられないなどということはない。
つまり、食料自給率が低い国の方が食生活は豊かなのだ。このことは何を意味しているのであろうか。
そもそも北朝鮮、日本、韓国は、世界の平均から見れば人口が多く農地が少ない国である。そのために、自国の農地だけでは、ご飯に味噌汁やわかめ汁、たくあん、キムチといった伝統的な食生活は可能だが、現在のような洋風化した食生活を営むことは不可能である。豊かな食生活を楽しむためには、食料の輸入が欠かせないのだ。
食料自給率が100%に近い北朝鮮の状況を見れば、自給率と国民への実際の食料供給の間になんの関係もないことは明らかだろう。
自給率の向上にこだわり、諸外国との関係が悪化する方が、食料の安定供給に悪い影響を及ぼす。諸外国と仲よくし、国が繁栄してこそ、食料の安全保障が実現できる。食料自給率向上を政策目標にすることなど、百害あって一利なしである。
飢餓の発生は常に農業問題ではなく政治問題
最後に付言すれば、北朝鮮程度の経済力があれば国民が飢えることなどないはずだ。
失敗したミサイルに800億円(10億ドル)も費やしたとされるが、穀物価格が高騰している現在でも、トウモロコシ1トンは270ドル程度である。だから10億ドルあれば370万トンも輸入することができる。これをそのままコメに混ぜて食べれば、全ての国民が腹いっぱいになる。また餌にすれば、鶏肉なら140万トンも生産できる。それは現在の北朝鮮の食肉生産量の約4倍だ。
ミサイルなど打ち上げなければ、北朝鮮の食生活は大幅に改善される。飢餓の発生は常に農業問題ではなく政治問題であるとされるが、北朝鮮のケースも全く同様である。
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