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スペインの銀行の心臓に開いた穴   ギリシャのユーロ離脱に備える市場  ドイツが「ユーロ共同債」を容認する日
http://www.asyura2.com/12/hasan76/msg/125.html
投稿者 MR 日時 2012 年 5 月 11 日 00:58:43: cT5Wxjlo3Xe3.
 

Financial Times 社説:

スペインの銀行の心臓に開いた穴

2012.05.11(金)
 

スペインのマリアノ・ラホイ首相は就任時に、納税者のお金はもう1ユーロたりとも銀行部門の救済に使わないと断言した。だが、スペインの預金の10%を保有する貯蓄銀行バンキアの危機で、首相は目を背けてきた重大な問題と対峙せざるを得なくなった。

 スペインの銀行部門は、不動産市場の崩壊以降、多額の資金を調達してきたにもかかわらず、いまだに深刻な資本不足に陥ったままだ。

 政府による強制的な業界再編策と強制評価減による540億ユーロの損失処理は、10年間にわたる不動産騒ぎの行き過ぎと向き合い始めるよう銀行に圧力をかけたかもしれない。だが、それでも銀行部門が抱える不動産問題の真の規模には対処できなかった。

 景気後退が進むにつれ、不動産と土地の価格は暴落している。今では、これまで優良債権だった融資の価値さえ疑わしくなっている。

不動産バブルの大きなツケ

 ラホイ首相は、新たな損失処理の要求を打ち出して問題に対処しようとしている。計画では、銀行部門全体で新たに300億ユーロの引当金計上を求めることになっている。危険なのは、これでもまだ十分でない恐れがあることだ。何しろスペインの銀行はいまだに、バランスシート上に推定1800億ユーロの疑わしい不動産融資を抱えている。

 スペイン政府がより積極的な不良債権処理を求める姿勢は正しいものの、銀行部門への信頼を取り戻そうとする取り組みの結果、政府はバンキアを救済するしかなかった。問題を抱えた地方貯蓄銀行7行の統合で2010年に誕生したバンキアは山のような問題不動産を抱えており、最初に求められた損失処理に耐えるにも脆弱すぎた。

 政府は当初の言葉を守り、バンキア救済を拒むこともできた。もし可能であれば、バンキアは銀行破綻処理スキームの理想的な候補にもなったろう。だが、スペイン第4位の大手銀行の破綻容認がもたらす政治的な影響は、ただでさえ緊縮策への反発を抑え込むのに苦労している政府には耐え難いものになった。

 バンキアの不良資産を引き受けるバッドバンクの設立でさえ、政府の支援が必要だった。どちらにしても、納税者が費用を負担することになったわけだ。

 最大規模の疑わしい資産のポートフォリオを抱える銀行として、バンキアはスペインの金融部門への信頼回復も著しく脅かす。

 国際通貨基金(IMF)は2週間前、カハと呼ばれる地方銀行がまだ、金融の安定を脅かしていると警告した。バンキアが明らかな標的だったが、新たな資本増強の要件を満たすのに苦労する銀行はほかにもある。

バンキア上場で株を買った投資家は怒って当然なのに・・・

 一方、昨年のバンキア上場で株を購入した投資家は、腹を立てる権利がある。バンキアの株式上場は、必要な資本にはほど遠い金額しか調達できなかったにもかかわらず、構造改革がうまくいったことを示すための表面的な操作でしかなかった。

 何千人もの一般預金者が、バンキアの強大な地方支店網を通じて、株を買うよう説得された。こうした投資の価値は今や暴落している。ほかの国なら、こうした状況になれば、疑わしい売り込みに対する調査を求める声が上がっているだろう。どうやら、スペインは違うようだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35190

Financial Times
ギリシャのユーロ離脱に備える市場
2012.05.11(金)


選挙後の2日間で、ギリシャの株価は10%以上下落し、国債利回りは2%以上も急騰した。アナリストによると、市場はギリシャのユーロ圏離脱に備え始めたという。

 投資家やストラテジストは、先週末の議会選挙でギリシャ国民が過半数を握る政権を誕生させられなかったことで、国の将来に対する危惧が高まり、ギリシャがユーロから離脱するとの懸念が再燃したと警告する。

 実際、ギリシャの債務の急膨張がユーロ圏全体の危機の引き金を引いてから3年近く経った今、一部の市場参加者は、ギリシャがユーロから離脱する確率を90%と見ており、年内に無秩序な離脱に至る可能性もあると話している。

離脱の確率は90%との見方も

 インベステック・アセット・マネジメントの債券部門の責任者、ジョン・ストップフォード氏は「ギリシャにとって、来月が絶対的に重大な局面になる。再選挙が6月中旬に実施され、有権者が再び緊縮策を拒否すれば、離脱はすぐに起こる恐れがある」と言う。

 ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)のユーロ金利ストラテジスト、ハービンダー・シアン氏は「ギリシャがユーロから離脱する確率は90%くらいだと見ている。政治家が緊縮策に同意しなければ、数カ月以内に起こる可能性も十分ある」と話す。

 こうした懸念が最も強く感じられるのが、ギリシャの資産価格だ。金融市場は混乱には陥っていないものの、不安定だ。ギリシャの10年物国債の利回りは急騰(価格は下落)して23.16%に達する一方、アテネの株式市場は1992年11月以来の安値をつけた。

 多くの投資家やストラテジストにとって、圧倒的に大きな懸念は政治リスクだ。ギリシャの有権者は強烈なメッセージを送った。彼らは厳格な緊縮財政にうんざりしており、多くの有権者は過激な政党を支持して反感を露わにした。特に大きな恩恵を受けたのが極左だ。


急進左翼連合(SYRIZA)のアレクシス・ツィプラス党首は9日、連立協議を断念し、再選挙の可能性が一段と高まった〔AFPBB News〕

 救済策の合意内容を支持するギリシャの2大政党が議席の過半数を獲得できなかった後、投資家は急進左翼連合(SYRIZA)のアレクシス・ツィプラス党首が政権を樹立できるかどうか疑わしいと思っている。

 ツィプラス氏が新政権を樹立できなければ、再選挙は6月17日に実施される見通しだ。

 政治の停滞が続く限り、EUと国際通貨基金(IMF)からの次回融資分の支払いは危うくなる。総額1740億ユーロのギリシャ第2次支援の一環として、医療費と公的部門の雇用の大幅削減に対する議会承認を得ることが融資実行の条件となっているからだ。

 EUとIMFの救済資金がなければ、ギリシャは来月の年金や公務員給与の支払いと債務返済ができなくなる。ストラテジストらは、このようなシナリオの下では、ギリシャのユーロ離脱の引き金が引かれる恐れがあると指摘する。

 「ギリシャが年金と賃金を払えなくなれば、ユーロ離脱の時期が早まる可能性がある」とシアン氏は語った。

 同氏は、通貨同盟からの初の強制的な離脱は、ユーロ圏全体にとって深刻な不透明感と難題をもたらすと懸念している。ギリシャの離脱は、その他周縁国の国債市場を圧迫し、他国のユーロ離脱をも引き起こしかねない。

 とはいえ、ギリシャがユーロ離脱へ向かって進んでいるとは考えていない市場関係者もいる。JPモルガンのストラテジスト、マルコム・バー氏は「確率は50%未満だ」と語る。

 同氏によると、ギリシャが離脱するにせよ、その前に2つの段階が待ち受けている。第1の局面は第2次支援策の再交渉を求めるギリシャ政府の誕生だ。すべての政党が何らかの形の再交渉を望んでいるため、その可能性は高いと考えられる。

 第2の局面は、再交渉のプロセスで、ギリシャ政府がユーロ圏からの離脱が最も国益にかなうと判断する段階に到達した時だ。再交渉を巡る激しい駆け引きはまだ始まっておらず、少なくとも6月末まではなさそうだとバー氏は話す。

市場はとっくにギリシャを見限っている

 その他のストラテジストにとっては、もはや市場は重要ではない。ギリシャは資金調達で市場に依存していないし、この先何年も依存しないと見られるからだ。

 INGファイナンシャル・マーケッツの金利戦略部門のグローバル責任者、パドレイク・ガーヴェイ氏は次のように語る。

 「市場はとっくにギリシャを見限っている。今やすべてが政治にかかっているため、国債利回りが上昇しようと、大した問題ではない。政治家に歳出削減を受け入れるつもりがなければ、ユーロ圏離脱しか選択の余地はないだろう」

 前述のストップフォード氏は言う。

 「ギリシャが実際にユーロを離脱すれば、ギリシャ国債はいよいよ魅力を失う。こんな状況では、外国人投資家がギリシャの国債市場に戻ってくるとは考えにくい。だが、その一方で、政治家がユーロについてどんな判断を下そうとも、今後長い間、外国人投資家がギリシャの国債市場に戻ってくることは考えにくい」

By David Oakley
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35192


Money Globe ― from London
ドイツが「ユーロ共同債」を容認する日

欧州景気の「上ブレリスク」を大胆予想

2012年5月11日 金曜日 池田 琢磨

フランスの大統領選でサルコジ氏が敗れ、ギリシャの総選挙では与党が惨敗した。緊縮策に対する国民の不満を背景に「成長への配慮」を求める声が高まっているが、それにはドイツの政策転換が不可欠。果たして、ドイツは変わるのか?

 4月23日:オランダにて。財政緊縮法案で閣外協力が得られず連立政権が崩壊。

 4月26日:ブリュッセルにて。ヘルマン・ファンロンパイ欧州連合(EU)大統領が「成長と雇用に焦点を当てるべきだ」と発言。

 5月6日:フランスにて。歳出拡大や年金受給開始年齢の引き下げなどを公約とした、社会党のフランソワ・オランド氏が次期フランス大統領に当選。

 同日:ギリシャにて。総選挙の結果、EUと国際通貨基金(IMF)の支援条件受け入れを約束した前連立与党の二大政党が過半数割れし、条件見直しを訴えた少数野党が大躍進。

 同日:イタリアにて。最大与党である自由国民がマリオ・モンティ首相に対し、「成長に配慮した経済政策に変更しなければ支持を取り下げ、早期の総選挙を目指す」と表明。

 4月下旬から5月初旬にかけて、欧州各国で緊縮・構造改革路線に対する国民の強い不満が表面化している。それは、ギリシャのようなユーロ圏の周辺国だけではなく、オランダのように周辺国を支援してきた中心国も例外ではない。過去数カ月、欧州債務問題は小康状態にあったが、ここに来て再び、波乱含みとなってきた。(参考:「ユーロ圏を覆う奇妙な小康」)

高まる景気後退懸念、失業率も最悪に

 こうした国民の不満がここに来て一気に表面化しているのは、景気が悪化し続けているからだ。ユーロ圏は2011年10〜12月期にマイナス成長に転落した後も、2012年1〜3月期、さらには足下でも緩やかなマイナス成長が続いている模様だ。浅いながらも、景気後退に陥っていると見られる。

 失業率を見れば、景気後退の深刻な影響が浮かび上がる。ユーロ圏の平均失業率は3月に10.9%となり、ユーロ導入後で最悪の水準に到達した。それでも、この平均値は、ドイツの5.6%という過去最低の失業率によって押し下げられている。国別に見れば、スペインで24.1%、ギリシャで21.7%といった具合に状況の悪さがより際立ってくる。若年失業率に限れば、スペインとギリシャで50%を超えているほどだ。

 景気が一向に良くならないのは、全体的には、ブーム後の調整を家計や企業が行っていることに加え、金融危機に伴う信用逼迫や緊縮政策が成長率を押し下げた結果だ。最近は移り気な市場も、緊縮政策による成長率の下ぶれが債務の返済可能性を引き下げるという悪循環に気がつき、成長率の低さを材料に周辺国の国債が売られる状況となっている(国債の金利は上昇)。

各国の政治的な動揺で欧州のパワーバランスに変化

 冒頭で紹介したような欧州各国の動揺は、これまでドイツ主導で進められてきた欧州債務問題への対応策を巡るパワーバランスに、変化が生まれてきている証左とも言えそうだ。ニコラ・サルコジ政権下のフランスは、ドイツ主導の緊縮路線を支持してきた。だが、政権を奪取したオランド新大統領は、その路線を成長へ配慮したものに見直すように要求する構えだ。連立政権が崩壊したオランダは、これまでドイツとともに周辺国に緊縮策を突き付けてきた。しかし、自らの緊縮策が頓挫したことで、ユーロ圏の中心国としての立場が揺らぎ始めている。そして、ギリシャでも民主的な手続きを踏んだ末に国民が下した判断は、その是非はともかく、緊縮政策への反対であった。

 だが、成長への配慮を重視した危機対応へと路線変更がなされても、それは、欧州が抱える問題を解決する上でプラスの効果をもたらすのだろうか。また、そもそも、こうした路線変更をドイツは受け入れるのであろうか?

 答えはそう単純ではない。

オランド氏の「成長路線」は市場の信認を得られない

 筆者自身は長らく、緊縮・構造改革が景気後退を通じて債務の返済可能性を悪化させるリスクを指摘してきた。給与が減り続けている人に借金を返せと要求することがいかに難しいか、想像していただければ分かりやすいだろう。その意味では、「成長への配慮」には賛成である。

 だが、「成長への配慮」にも注意が必要で、それだけで市場の信認が得られるわけではない。

 例えば、オランド大統領が掲げた公約を見てみよう。そのいくつかを取り上げると、まず、「今後5年間で歳出を500億ユーロ拡大」や「公的補助金をつけて、今後5年間で15万人の若年層を雇用」など、公的負担で直接的に需要や雇用を拡大したいという狙いが読み取れる。その一方で、「公的年金の受給開始年齢を62歳から60歳に引き下げる」といった、これまでの構造改革に逆行する項目もある。

 公的負担を増やし、かつ、構造改革に逆行する政策では、市場の信任は得にくいだろう。筆者が必要だと考える「成長への配慮」とは、中長期的な成長率の引き上げを狙った構造改革に取り組みながら、その副作用として生じる景気の下ぶれを相殺するために、短期的な景気刺激策も併せて実施することである。

ドイツの「成長への配慮」は構造改革の結果に過ぎない

 オランド大統領が唱える「成長への配慮」が市場の信認を得にくい中身である一方で、緊縮・構造改革路線への批判の高まりを受けて、ドイツにも変化の兆しが見える。アンゲラ・メルケル首相が「緊縮政策だけで問題が解決すると言っているわけではない」と述べ、ドイツ政府筋も「財政協定」に「成長協定」を盛り込むことを示唆し始めている。また、ドイツの緊縮政策を支持してきた欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁も、「成長協定」を結ぶことに言及した。

 しかし、メルケル首相やドラギ総裁が言っている「成長策」とは、あくまでも構造改革を通じた中長期的な成長促進の域を出ていない。

 例えば、メルケル首相は、「ドラギ総裁が言ったように、構造改革による成長が必要。政府債務を増やす単なる景気刺激によるのではなく、持続的成長が必要」と述べている。つまり、「成長への配慮」といっても、その実現方法や短期的な刺激策を容認するかという点で、オランド大統領や周辺国の首脳との間には依然として大きな隔たりがある。

 「成長への配慮」の中身で債務危機の主要プレーヤーの立場を大別すると、構造改革をより重視するドイツとECB。短期的な成長刺激策の必要性を強調し始めたイタリア、フランス、スペインといった関係になる。

 相反する2つの立場がある中で、EUとして取り得る現実的な落とし所は、欧州構造調整基金の使い残しの活用、欧州投資銀行(EIB)の融資枠拡大、財政目標達成年限の見直し程度になるのではないだろうか。

成長に配慮するにはユーロ圏共同債が必要

 EUが、構造改革と組み合わせた短期的な景気刺激策に踏み切れないのは、ドイツやECBが反対しているからという理由だけではない。景気刺激策を実施するには資金が必要で、それをどのように調達するのかという難問が残されているからだ。

 多額の債務を抱えている周辺国は、すでに資金調達コストが大きく上がってしまっている。そこで必要になるのは、次の2つの方策しかない。それは、ドイツなど信用力が残っている中心国が債券を発行し、その資金を周辺国に融通すること。もしくは、ユーロ加盟国が共同で中心国の信用力を背景に資金調達し、その資金を融通することだ。

 つまり、前者は財政資金の移転、後者はユーロ圏共同債の発行である。だが、どちらも、ドイツが強く反対してきたのは周知の通りである。つまり、構造改革と短期的な景気刺激策を両立する「成長への配慮」で欧州首脳が合意したとしても、ドイツの協力が得られなければ、資金調達段階で実行不能になってしまうわけである。

 それならば、ドイツがユーロ圏共同債の発行を容認するなど政策転換をするしかない。その可能性を考えてみよう。

ドイツで中道左派政権の誕生もあり得る

 ドイツの主要政党は、最近の党首交代に伴って欧州懐疑派に路線変更をした自由民主党(FDP)を除けば、伝統的に欧州統合推進派である。しかしながら、欧州債務危機への対処を巡っては、ユーロ圏共同債の発行に断固反対する中道右派のキリスト教民主同盟/キリスト教社会同盟(CDU/CSU)とFDPの現連立政権と、ユーロ圏共同債の発行を容認する中道左派の社会民主党(SPD)と緑の党との間で、政策が大きく分かれている。ドイツは、決して一枚岩ではないのだ。

 しかも、中道右派と中道左派の支持率は、ともに4割程度とおおむね拮抗している。従って、ユーロ圏共同債の発行を容認する中道左派の連立政権が、将来、生まれるチャンスは必ずしも絵空事ではない。そのため、ドイツの危機対応、ひいては欧州の金融市場を巡る環境も大きく変化しうるわけだ。

 実は2013年9月に予定されている総選挙で、中道左派連立政権が誕生する可能性はゼロではないと筆者は考えている。ただし、はじめに断っておくと、これは筆者の考える「上ぶれリスク」で、メインシナリオではないのだが。

躍進する海賊党の動向がカギに

 最近のドイツの政治状況を見てみると、2つの動きが目立っている。

 第1は、CDU/CSUの支持率が回復傾向にあること。メルケル首相の危機対応に対するドイツ国民の評価は概して高いと言えそうだ。確かに、州議会選挙でCDUは連戦連敗中であるが、争点は欧州政策ではなくそれぞれの地方問題にあることには注意が必要だろう。またユーロ懐疑派に転じて、支持率を大きく下げていたFDP(自由民主党)の支持も底入れの兆しが出ている。


 対照的に中道左派のSPD、緑の党の支持率は低下傾向となっている。緑の党は昨年3月の日本の原発事故後大きく支持を伸ばしたが、ブームも去ったというところだろうか。

 グラフに示していないが、もう1つの大きな動きは、インターネット上の自由を標榜する海賊党が3月以降に急激に支持を伸ばしたことだ。実に、海賊党に支持率は13%に達し、緑の党を上回った。海賊党は、緑の党や無党派の支持層を吸収しているようだ。

 世論調査によれば、海賊党の支持層は都市部の若者やインテリ層で、潜在的にはSPDや緑の党といった中道左派と重なり合う部分が大きいように思われる。ドイツの政策転換の前提は中道左派による連立政権成立であるから、この支持層の重なりは重要な意味を持ちそうだ。

 海賊党は様々な主張を持つ人々の寄せ集めと評されることもあり、党としての政策があるかどうかを疑問視する声もある。海賊党の躍進が中道左派の分裂を招くのか、あるいは彼らが欧州政策をどのように考えているのかが、ドイツが政策転換をするかどうかを占う上で、重要なカギとなってこよう。

ドイツの「悲惨指数」はそれほど悲惨ではない

 来年秋の総選挙までにはまだ1年以上の時間があるので、これ以上の詮索は控えることとしよう。だが、ドイツで政権交代が起きる可能性を考える上で、注目したい指標を最後にもう1つ提示しておきたい。それは米国の大統領選挙の行方を占う際にもよく用いられる「悲惨指数」だ。


 悲惨指数は、ここではインフレ率と失業率の和で定義しておく。ドイツでもこの悲惨指数が上昇すると政権交代が起こりやすい傾向がある。

 さて、これを現在に当てはめてみると、前述のようにドイツの失業率は過去最低まで低下しており、悲惨指数も改善(低下)している状況だ。はじめに述べたように、現時点では2013年9月の総選挙で政権交代が起こる可能性は「上ぶれリスク」にとどまるという判断が妥当なようだ。


Money Globe ― from London

環境、会計など様々な分野で影響力を誇示する欧州の経済情勢を、現地の専門家がマクロ、為替、金融政策、M&A(合併・買収)など様々な観点から分析する。

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池田 琢磨(いけだ・たくま)
ノムラ・インターナショナル シニアエコノミスト

1990年東京工業大学工学修士課程修了、96年東京大学経済学修士課程修了。野村総合研究所、郵政研究所、野村総合研究所アメリカ、ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナルを経て、2007年より現職。Institutional Investor Magazine誌の2010年欧州経済調査部門で2位にランク された。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20120509/231822/?ST=print  

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コメント
 
01. 2012年5月11日 08:10:38 : TuB3Er34dE
[中長期的な成長率の引き上げを狙った構造改革に取り組みながら、その副作用として生じる景気の下ぶれを相殺するために、短期的な景気刺激策も併せて実施することである。」

「ドイツの「成長への配慮」は構造改革の結果に過ぎない」

成長率の引き上げを狙った構造改革って何よ???

賃金引下げ、競争力アップ?

世界中の国がそう言ってるけど、純輸出はゼロサムゲームだよ。

ユーロ共同債も根本的解決にならない。
ユーロという固定為替相場制で起きる矛盾をファイナンスで先送りするだけのこと。


02. 2012年5月11日 21:24:48 : lqOPOFnyLE
ギリシャのユーロ離脱、ギリシャのドラクマ通貨への回帰が流れのように、解決策のようにいう向きもあるが、ギリシャ国民はユーロ離脱を望んではいないだろう。破産政府の通貨は軍票のように国民の信頼に耐えるものとはみなせないのではないか。ドラクマ通貨に戻ることは(どんな水準のドラクマに戻すことが合意できるというのか)、国民が拒否している経済的復帰に、対外債務の増大、国内経済の縮小などと、はるかに縁遠いものとなるのだから、何の解決にもならない。
どんなにもがこうと、幾何学の学習に王道がないように、困難な道があるのだから、ギリシャのユーロ離脱は考えられない。(強い通貨のドイツのユーロ離脱ということは考えられるとしても)

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