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「緊縮政策にノン!」の行方を考える  ギリシャ危機が暴くフランス新大統領の本音  大荒れの中で再選挙に備えるギリシャ
http://www.asyura2.com/12/hasan75/msg/899.html
投稿者 MR 日時 2012 年 5 月 09 日 01:38:55: cT5Wxjlo3Xe3.
 

http://diamond.jp/articles/-/18197
 

「緊縮政策にノン!」の行方を考える 

フランスとギリシャ、そして日本
緊縮財政に反対する国民の強い意思

 フランス大統領選の決選投票、加えてギリシャの総選挙の結果が相次いで発表された。フランスは現職のサルコジ大統領が敗れ、社会党のオランド党首が新大統領に就任した。

 ギリシャは連立政権編成の合意ができない混迷状態だ。特に、民主主義発祥の地とも言えるギリシャの状況を見ると、選挙による民主主義は時に機能不全に陥るものであることが改めてわかる。

 両国の置かれた状況はそれなりに異なるが、共通するのは、緊縮政策に反対する国民の強い意思だ。フランス語だから「緊縮政策にノン!」ということになる。

 選挙結果を受けて、我が国の株価は大幅に下落した。一方、円の為替レートは選挙結果が出る前から円高が進み、選挙後も、対米ドルで80円割れの水準に留まっている。

 率直に言って、選挙結果はほぼ事前の予想通りであり、為替市場の方が賢いようにも見えるが、大型連休で日本の株式市場が開かれていない間に、為替は海外市場で取引されていたことの差もあろう。

 一方、我が国では、参院で問責決議を受けた閣僚の去就など、不確実性を伴う問題があるが、「社会保障と税の一体改革」の法案、要は消費税率引き上げの法案が審議入りの運びとなり、こちらでも、「方向としては」増税による緊縮政策が指向されている。

 しかし、賛否は大きくはかけ離れてはいないものの、最近の世論調査では、消費税率引き上げに対する反対の方が賛成よりも多く、また、消費税率引き上げを目指す野田政権への支持率は下降トレンドを辿っている。

 フランス、ギリシャのように選挙で民意を問うなら、「緊縮にノー」が返って来そうな情勢だ。

次のページ>> 統一通貨ユーロからの離脱も
欧州には通貨の自由度が必要

 フランスもギリシャも、高い失業率を抱えており、これが最大の問題だ。フランスは10%と、隣国ドイツの5.7%を大きく上回っている。ギリシャは20%を大きく上回っており、これは社会秩序の維持が危うくなるレベルと言えそうだ。

 大きな失業率を抱えているときに、緊縮政策は不適切だというのが、両国民が緊縮政策に反対する直接的な理由だろう。

 確かに、民間の需要が大幅に落ち込んでいるときに、財政赤字がこれをカバーすることが適切な場合もある。しかし、両国、特にギリシャにとって必要なのは、共通通貨ユーロからの離脱による通貨の自由ではないだろうか。

 観光と農業を主な産業として、膨大な数の公務員を養わなければならないギリシャとしては、通貨ユーロが高止まりしていることが決定的な重荷だ。

 ギリシャをユーロ圏に留めることについては、ユーロの信用維持の意味があるとしても、ギリシャ自身の苦境を救うことを考えた場合には、ギリシャがユーロから離脱して独自の通貨を使えるようにすることが望ましいのではないだろうか。

 フランスは、ユーロの中心国の1つだから、ユーロから離脱する選択肢は当面考えにくいが、ドイツとの失業率の差やフランスとドイツの1人当たり国民所得がほとんど並んでいることを見ると、現在、ドイツと共通の通貨と金融政策を使っていることの「家賃」が高いのではないかと思われる。

 フランス人の労働者とドイツ人の労働者がほぼ代替的なら、共通の通貨で構わないだろうが、両国の産業や労働者の生産性に違いが出る局面では、共通通貨が一方の足枷になる。

 共通通貨ユーロは、財政や物価、生産性などが加盟各国で変わらない条件でなら歪みを生じないが、各国で経済環境が異なり、これに対して各国が財政的に対処しようとした場合に障害となる。

次のページ>> 拡張財政が必要な日本で、消費税率の引き上げは早急に必要か

 この条件の下で「ユーロの害」を無毒化するためには、各国で賃金をはじめとする物価が速やかに調整されなければならないが、たとえば、ギリシャの産業が十分に競争力を持つところまでギリシャ人の賃金をスムーズに引き下げることは、社会的に難しい。

 ヨーロッパの債務問題が今後どうなるかは見通しが難いが、金融機関ないし政府が抱える不良債権が、かつての日本の不良債権処理のような意味で「処理」されたとは到底言えない。

 最終的に不良債権を処理するためには、財政資金の投入が必要になり、これを欧州中銀がファイナンスせざるを得ないように思われるが、ドイツはそれを容認しそうにない。不況の長期化が予想されるし、再び「危機」(金融システム不安)の状況に陥る可能性もある。

 なお、フランスのオランド新大統領には「バランスの取れた現実主義者」だとの評があるが、当選後、雇用対策として公務員を数万人増やすと発表したことには驚いた。

 数万人の公務員に付随する予算と仕事がどのようにものになるかにもよるが、これだけでは雇用増に対する効果は限られているし、その割に非効率が大きい。残念ながらあまり期待できそうにない、というのが当面の感想だ。

日本は緊縮財政より拡張財政を
消費税率の引き上げは早急に必要か

 フロー・ストック共に巨額の財政赤字を見ると、消費税率引き上げくらいで緊縮政策と呼ぶのは大袈裟かも知れないが、改めて日本の場合、消費税率の早急な引き上げが必要なのだろうか。

 日銀は1%の「インフレ目標」を提示したが、これはいつまでに達成されるかが曖昧で、来年度も物価上昇率は1%に達しない可能性もある。金融緩和を拡大し続けると、通貨発行益がやがては政府のものとなり、中央銀行による財政のファイナンスとなるので、いつかはインフレになるはずだが、当面、直接的には需給ギャップの存在によって物価は上がりにくい。

次のページ>> 日銀に必要な手段の独立性、一体改革は成立しなくてもよい

 日銀の金融緩和の強化も必要だが、ここしばらくの間、財政は緊縮方向に向けるよりも、拡張的であることの方が適切なのではないか。

日銀に必要なのは手段の独立性
一体改革は成立しなくても惜しくない

 財政赤字の拡大と金融緩和の組み合わせの副作用は、長期金利の上昇とインフレ率の上昇、さらに通貨安だが、現在、長期金利は低位で安定しており、インフレ率はもっと高いことが望ましく、為替レートも円安の方がいい。

 そもそも、過去のデフレの影響を修正することを考えると、インフレ目標値は1%よりも高い方が適切なのではないか。また、米国よりも低いインフレ目標を掲げ続けることは、市場からは「円安にはしない」という意志の表明とも読める。

 一般に、あるべき「中央銀行の独立性」は、「政策目標ではなく、手段の独立性だ」と言われる。「1%が目標だが、達成の時期については、判断をこちらが預からせてもらう」という現在の日銀のスタンスは、明らかに政策目標レベルで独自の判断をしている。

 世の役に立つ普通の中央銀行になってもらうためには、日銀法を改正して、政策目標レベルでは政府のコントロール下に入ることを明確化すべきだと思われる。

 また、消費税率の引き上げは今でなくともよい。小沢一郎氏の無罪判決などもあり、我が国の政治の見通しが利きにくくなっているが、社会保障と税の一体改革法案は、成立しなくても惜しくない。

 もっとも、政局の方がギリシャ並みに混迷する可能性があるのは、大いに心配だ。


質問1 ドイツ、フランス、日本などに必要なのは緊縮財政? それとも拡張財政?

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35165
Financial Times
ギリシャ危機が暴くフランス新大統領の本音
2012.05.09(水)


5月6日夜、フランス農村部では、新たに選出されたフランス大統領が演壇に立ち、欧州における緊縮財政との戦いの先頭に立つと宣言した。

 大陸の反対側では、ギリシャの有権者がフランス新大統領に、本気ならやってみろと挑んでいた。彼らは圧倒的多数でギリシャ救済策の合意内容を無効にするか再交渉したいと考える政党に投票し、フランソワ・オランド氏に辛いジレンマを与えた。

ギリシャを支持するのか、ドイツ政府とIMFを支持するのか


反緊縮を掲げて大統領選で勝利を収めたフランソワ・オランド氏〔AFPBB News〕

 オランド氏は、緊縮に反対するギリシャ国民を支持するのか? それとも、ドイツ政府と国際通貨基金(IMF)を支持し、ギリシャ救済策は再交渉できないと主張するのか?

 オランド氏の選択は、フランスと欧州にとって運命を左右する決断となる。フランスの新大統領は自身を南欧の反逆者のリーダーとして位置づける可能性もある。

 スペイン政府とイタリア政府が(通常は政治的に系統が異なるにせよ)、フランス社会党のオランド氏を声援してきたことは間違いない。彼らもギリシャ人と同じように、ドイツの緊縮主義に対抗する動きを望んでいるのだ。

 しかし、フランスが欧州連合(EU)内でドイツを孤立させようとすれば、戦後のフランスの外交政策にとって歴史的な転換となる。フランスの政策は、「仏独カップル」が一緒にEUを運営すべきだという考えを中心に築かれているからだ。

 フランスが南欧と組めば、欧州有数の力強い経済国としてのフランスの自己像を傷つけることにもなり、金融市場でフランスに対する認識が悪化する恐れもある。何よりダメージが大きいのは、仏独間の明らかな亀裂は、EUと単一通貨ユーロの基盤に地震断層を生み、欧州全域に及ぶ問題を引き起こすことだ。

見込まれるオランド・メルケル合意とは

 そのため大半のアナリストは、オランド氏は、EUの議論の方向性を変えて「成長」に重点を移したと言える程度のメンツを保つためのジェスチャーをドイツ政府から引き出すだけで手を打つと考えている。オランド氏が選挙で選ばれる前から、ベルリンとパリの専門家たちは、考えられる独仏合意の輪郭を描き始めていた。

 想定されるオランド・メルケル合意は、以下のようなものだ。オランド氏は、本人が既にほのめかしたように、EUの新たな財政協定(財政均衡に向けた取り組みに法的拘束力を持たせる協定)の再交渉を求める要求を修正する。その代わりドイツは曖昧な言葉で記した新たな成長協定に合意し、財政協定と並べる形にする。

同じような調子で、ドイツはユーロ債(EU共通の債券発行)を求めるオランド氏の要求を拒否するが、恐らく、EUが裏書きする、インフラ事業の資金を賄う「プロジェクト債」には同意するだろう。

 欧州投資銀行(EIB)による融資枠の拡大についても合意が成立する見込みだ。これはEUと仏独の典型的なごまかしだ。参加者全員の名誉ある撤退を可能にし、諸外国は概ね、何の影響も受けず、多少困惑することになるのだ。

計算を狂わせるギリシャの「噴火」


ギリシャの総選挙では中道派の2大政党が惨敗した(写真はギリシャ・テッサロニキにある極右政党「黄金の夜明け」事務所前で総選挙の勝利を祝う党員ら)〔AFPBB News〕

 だが、ギリシャの政治的火山の噴火は、この構図を著しく複雑にする。

 ギリシャの問題は極めて深刻化しており、EU条約に巧妙に書かれた条項を2つ、3つ加えることで「解決」することは不可能になっている。ギリシャ問題の解決には、確固たる危険な決断が必要だ。

 具体的に問題となるのは、ギリシャが今後数カ月間で、直近の救済計画で求められている数十億ユーロの追加歳出削減を推し進めるのかどうかだ。

 もしギリシャが実行を拒めば、IMFは、ギリシャ向け支援の次回実行分の支払いを許可しない姿勢を明確にしている。そうなれば、ギリシャ政府は資金が尽きることになる。

 痛みを伴うとはいえ、管理された年金・賃金カットは、ずっと混沌とした危険なものに取って代わられる。ギリシャがユーロからの離脱を余儀なくされる可能性も大幅に高まるだろう。

 ギリシャ総選挙の速報は、同国が近くこの苛酷な選択を迫られる可能性があることを示唆している。救済策を支持する2大政党の新民主主義党(ND)と全ギリシャ社会主義運動(PASOK)は、得票率が3割程度にとどまった。両党は連立政権の樹立に苦労する見込みで、ギリシャは近々、またしても選挙に直面する可能性がある。

NDのサマラス党首はオランド氏の自然な協力者?

 さらに、ND党首で、今でも次期首相に就任する可能性が最も高いアントニス・サマラス氏でさえ、ギリシャ救済策の合意内容の変更を主張するだろう。

 サマラス氏は、中道派の両党が外国人に押し付けられた極めて不人気な緊縮策と結び付けられているという事実が危険であることを認識している。政治的に利益を得るのは唯一、国家主義と極左の過激派だからだ。


 具体的には、サマラス氏は、ギリシャ企業が切に減税を必要としていると考えている。だが、同氏はこの議論に関して、ドイツのアンゲラ・メルケル首相から何の励ましも得ていない。そもそもサマラス氏とメルケル首相の関係は恐ろしいほど悪い。

 もしサマラス氏が首相になったら、同氏は自身を、逆効果を招くドイツの緊縮政策に反対論を唱える理性的な反逆者として位置づけるだろう。そうなれば、サマラス氏はオランド氏の自然な協力者のように聞こえる。

 実際は、ギリシャを支持するかドイツを支持するかという選択を迫られた場合、フランスはほぼ間違いなくドイツを選ぶ。しかし、そのような選択は、オランド氏の反緊縮論が空虚なレトリックであることを露呈させる。

 フランスがIMFとドイツを支持し、経済が縮小し、失業率が急上昇するギリシャに大幅な緊縮を押し付ける構図と比べると、「プロジェクト債」に向けた多少のジェスチャーなど無意味だ。

今夏にもEUが直面する重大な選択

 ギリシャの政治的混乱と融通の利かないIMFという組み合わせは、ギリシャが今夏、新たな危機に見舞われることを示唆している。その段階で、EUは重大な選択に直面する。EUはIMFが手を引くのをよそに、さらなるギリシャ向け支援を行い介入するのか? それとも、ギリシャに対する支援を拒み、その選択に伴う政治的、経済的リスクを受け入れるのか?

 このような危機に直面すると、欧州を緊縮から救うというオランド氏の意気を高める曖昧なレトリックは大した意味を持たない。

By Gideon Rachman

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35166
Financial Times
大荒れの中で再選挙に備えるギリシャ

ギリシャでは、来月再選挙が実施される見込みが濃厚になっている(写真は総選挙で第1党になった新民主主義党=ND=の支持者ら)〔AFPBB News〕

5月6日の総選挙で決着がつかなかったことを受けて、中道右派政党の党首が左派の支持を得て「救国政府」を樹立するのに失敗した後、ギリシャは再選挙に備え始めた。

 「我々は今、著しく分裂した雰囲気の中で、来月の2回目の投票へ向かっている」。ある政府高官は落胆した表情でこう語った。この高官によると、再選挙は恐らく6月17日に実施されることになるという。

 救済策の合意内容を支持するギリシャの2大政党が議席の過半数を確保できなかったことで、悪化している経済状況は一段と深刻度を増す。実務家のルカス・パパデモス首相率いる現政権は、暫定政権に道を譲るために来週総辞職する準備に入っているからだ。

 元欧州中央銀行(ECB)副総裁のパパデモス氏は「経済再建を目指した困難な旅の大部分を終えた今になって、ギリシャ国民の犠牲を無駄にしないよう」政治の安定を呼び掛けた。

 115億ユーロ規模の中期緊縮計画の最終決定を含め、さらなる改革に関する意思決定は、新政権の発足まで先送りされることになる。

新政権発足まで先送りされる改革、ギリシャ向けの融資実行に支障も

 「断行できるのは政治色のない施策だけだ」。先の高官はこう語り、6月中に完了する予定だった77の構造改革の推進が困難であることを認めた。

 こうした膠着状態によって、総額1740億ユーロの第2次支援に基づく次回融資分の支払いが危うくなる。最近、金融の非常事態に対処するために35億ユーロが供与されたにもかかわらず、ギリシャは来月、年金と公務員給与の支払いや債務返済ができない事態に直面する。

 欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)は、次のギリシャ議会が中期緊縮計画を承認するまで、新たな融資実行を停止すると警告した。中期計画には、ギリシャの前政権とその前の政権の下で議会が反乱を起こす引き金となった医療費や公的部門の雇用の大幅削減措置が含まれる。

新民主主義党(ND)のアントニス・サマラス党首は早々に、連立協議を断念した〔AFPBB News〕

 選挙で第1党となりながら議会の過半数は大きく割り込んだ中道右派の新民主主義党(ND)のアントニス・サマラス党首は7日、ギリシャのユーロ圏残留を確実にするため、改革派政党による連立政権樹立を提起する一方、救済合意の条件緩和も求めた。

 これは国際的な支援国・機関から強い反感を引き起こしかねなかった要請だ。

 だが、得票率を4倍近く伸ばして第2党へと躍進した急進左翼連合(SYRIZA)のアレクシス・ツィプラス党首は勢いに乗り、「そのような連立は『救済ではなく悲劇』をもたらす」として提案を拒否した。

 しかし、左派政党を束ねて独自の連立政権を樹立しようとする彼の野望は、ギリシャ共産党が孤立を望んでいるため、失敗に終わる運命にある。民主左派党は数年前にSYRIZAから分派しており、再び手を組むことを望む兆しは見せていない。

 総選挙の最終結果では、NDが108議席を獲得。続いてSYRIZAが52議席、全ギリシャ社会主義運動(PASOK)が41議席を獲得した。残りの議席は、21議席を獲得して初めて議会に進出した極右の「黄金の夜明け」を含む4つの小規模政党で分け合った。

来月の再選挙で結果は変わるのか?

 6日の選挙で緊縮財政に反対する政党が総得票数のほぼ70%を占めたことで、ギリシャ国民は高い失業率、賃金カット、景気後退がさらに18カ月続くとの見通しに対する怒りと苛立ちを噴出させたように見える。

 「今回の選挙は、改革に対する反対票だった・・・かつて人気のあった、欧州統合賛成派のPASOK議員たちが長年維持してきた議席を失った」と政治評論家のタキ・ミカス氏は語った。

 再選されなかった著名なPASOK議員の1人が、元欧州委員で開発担当相のアンナ・ディアマントポウロウ氏だ。彼女は在任期間中に汚職の一斉摘発に着手したほか、前任者らが使わずに残したEU基金の使用解禁を成し遂げた。

 だが、総選挙で三十数年ぶりの惨敗を喫したNDとPASOKが、すぐに再編成できるかは定かでない。アナリストの中には、間をおかずに実施される2度目の選挙が今回より穏健な有権者の反応をもたらすかどうか疑問視している。

By Kerin Hope

 

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コメント
 
01. 2012年5月09日 02:13:46 : 3CNLte9sGM
ギリシャ第2党、救済支持2党に約束撤回を迫る−連立の条件 

  5月8日(ブルームバーグ):ギリシャ総選挙で第2党となり、新政権樹立に向けた交渉の主役となった急進左派連合(SYRIZA)のアレクシス・ツィプラス党首は8日、連立を組む条件として、救済策を支持する2党の党首に対し緊縮措置実行の約束撤回を求めた。
ツィプラス党首は新民主主義党(ND)のサマラス党首と全ギリシャ社会主義運動(PASOK)のベニゼロス党首に対し、欧州連合(EU)に先に提出した緊縮実行約束の書面はもはや無効だと伝える書簡を送るよう求めた。9日の連立協議の前にEUに書簡を送付するよう求めている。
ツィプラス党首は8日、パプリアス大統領から連立政権樹立の要請を受けた後にアテネで記者団に、「救済支持政党はもはや、国を略奪するような措置を議会で可決するための過半数を持たない」と述べ、「110億ユーロの追加緊縮措置も15万人の人員削減も起こらない」と続けた。
救済賛成と反対の間で票が割れた6日の総選挙の結果、1300億ユーロ規模の第2次救済の条件をギリシャが満たせるかどうかが再び不透明になり、危機の震源となったギリシャのユーロ離脱リスクが再浮上している。
一方、サマラス党首は救済条件措置を実践するEUへの約束を撤回する意思はないと表明。国営NETテレビで放映された演説で、ツィプラス党首が「私に求めているのはギリシャの破滅に署名することだ。私にはそれをする意思はない」と言明。ユーロ残留とギリシャの国益を守るため少数政権を支持する用意があると述べた。
有権者からのメッセージ 
ドイツのウェスターウェレ外相は8日ベルリンで記者団に、「ギリシャ当局者らに、理性を持った政府が誕生するよう安定に向けて早急に動くことを呼び掛ける」と訴え、ギリシャでの展開を「非常に憂慮している」と語った。合意された措置が実践されることが重要だとし、条件の「再交渉はない」と言明した。
総選挙の結果、救済支持のNDとPASOKの議席数は過半数の151を2議席下回った。ツィプラス党首は銀行の国有化や債務のモラトリアム(支払猶予)、救済および労働改革・年金削減などの措置の撤回の政策を取る政権を樹立する考え。同党首は有権者からのメッセージは明瞭だと述べた。
同党首は、救国内閣の名の下に救済合意の実践を目指すことをPASOKとNDはやめるべきだとし、「国家の救済ではなく、救済合意の救済になってしまうからだ」と論じた。
シティグループは7日、ギリシャが2013年末までにユーロを離脱する確率が最高で75%になったとの見方を示した。ギリシャは8日、13億ユーロ相当の26週間物証券を発行したが、落札利回りは4.69%と4月10日の入札時の4.55%から上昇した。
ツィプラス党首はこの日、19議席を獲得した民主左派の党首と会談。9日にはサマラス、ベニゼロス両党首のほか、33議席を持つ「独立ギリシャ人」のカメノス党首とも会う。
ツィプラス党首が3日以内に連立をまとめられない場合はPASOKに3日間の交渉が委ねられ、その後は大統領が仲介。それでも政権ができない場合は再選挙となる。
JPモルガン・チェースのエコノミスト、マルコム・バー氏は「6月半ばの再選挙の可能性が高まっているようにみえる」とリポートに記している。
原題:Greek Pro-Bailout Leaders Told by Syriza to Revoke AidPledges(抜粋)原題:Samaras Won’t Revoke Bailout Pledges, Greece Must Stay inEuro(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:アテネ Maria Petrakis mpetrakis@bloomberg.net;アテネ Natalie Weeks nweeks2@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Tim Quinson tquinson@bloomberg.net;Jerrold Colten jcolten@bloomberg.net
更新日時: 2012/05/09 01:20 JST


02. 2012年5月09日 12:55:06 : 3CNLte9sGM
焦点:ギリシャのユーロ圏離脱観測、打撃は限定的との見方も
2012年 05月 9日 11:49 JST
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[ロンドン 8日 ロイター] 6日のギリシャ総選挙は、緊縮策に国民が「ノー」を突き付けた格好となった。このため、ギリシャがユーロ圏を離脱するとの見方が台頭しているが、そのような事態になってもユーロ圏が壊滅的打撃を受けることはなく、対処可能との見方がでている。

すでにいくつかの銀行は、ギリシャがユーロ圏を離脱する確率を算定している。

シティは、ギリシャがユーロ圏を離脱する確率を50%としていたが、選挙結果を受けて50─75%に引き上げた。離脱は今後12─18カ月以内に起こると予想している。

だが、ここ1年、投資家の間ではギリシャなど巨額の財政赤字を抱えたユーロ導入国債券の売却が進み、欧州中央銀行(ECB)が大量の流動性を供給している。このため、ダメージは限定的なものにとどまる可能性がある、とみられている。

選挙結果を受けた7日の欧州金融市場では当初、スペイン国債やイタリア国債が売られ、通貨ユーロや株が下落したが、取引終盤までに回復した。

INGインベストメント・マネジメントの戦略責任者Valentijn van Nieuwenhuijzen氏は、「ギリシャが依然システミックな脅威なのか、ギリシャの問題はギリシャ固有の問題なのか、それとも欧州諸国にとっての政治的問題なのか、考えさせられる」と述べ「スペインやイタリアに深刻な影響の波及がみられなければ、ユーロ圏全体を揺るがす問題になる可能性は小さい」と予想した。

ギリシャ総選挙では、緊縮反対の政党が躍進し、EU/IMFと支援協議をしてきた連立与党は過半数議席をとれず敗北した。現在、新たな連立政権樹立に向けた協議が行われているが、2回目の債務再編が実施される可能性が高まっている。

しかし、国際的な金融機関は、2010年5月の第1次ギリシャ支援合意以降、ギリシャ、その他ユーロ圏周辺国向け投融資を大幅に削減。現在、ギリシャ債の大半は欧州中央銀行(ECB)やギリシャの銀行、ヘッジファンドが保有している。

ラボバンクの為替ストラテジスト、ジェーン・フォレー氏は、ギリシャはユーロ圏を離脱する可能性があるが、欧州は対処可能と予想。「エクスポージャーを圧縮するなどの措置を講じており、ギリシャが離脱した場合のダメージははるかに小さくなった」と述べた。

実際に離脱が起こった場合にユーロ圏が受ける打撃として市場で懸念されているのは、ある国がユーロ圏を離脱して通貨を切り下げ、国際競争力を高めると、それをみた相対的に経済力の弱い国の離脱が相次ぐ可能性があることだ。

だが、シティの為替ストラテジスト、Valentin Marinov氏は「われわれは、ギリシャが連続的な離脱の引き金を引くことはないと予想している。ユーロ圏の政策責任者やECBが、市場の懸念の高まりに対応するだろう」と述べている。

<秩序ある離脱>

とは言っても、市場にまったく影響がないわけではない。

アナリストは、ユーロ圏周辺国債券の独連邦債利回りに対するスプレッドが拡大し、通貨ユーロは下落すると予想している。ただ、シティのMarinov氏は、ギリシャのユーロ圏離脱が秩序あるものであった場合、現在1.30ドル付近にあるユーロが6─12カ月以内に1.40─1.45ドルに上昇する可能性があるとみている。

市場参加者は、ユーロ圏におけるギリシャの将来をめぐる政治的不確実性を考え、離脱の可能性を想定したポジションをとるのは難しいと述べている。また投資家がこのシナリオを想定してユーロ売りに動く兆候もほとんどないという。

ある銀行(ロンドン)の為替部門幹部は「自分がどうしたいか分かっても、どうしたらよいか分からない」と語っている。

市場の関心はギリシャにほぼ集中しているが、仏大統領選を制した、緊縮より成長戦略を重視するオランド氏の方により注目すべきとの指摘も出ている。

ロンドン・アンド・キャピタルの債券部門責任者Sanjay Joshi氏は、「ギリシャのデフォルトやユーロ圏離脱という事態が重大な経済・金融的悪影響をもたらすとは予想しにくい。ただ、明らかに欧州の政治的側面は変化している。それはフランスからもたらされている」と指摘した。

(Nigel Stephenson記者;翻訳 武藤邦子;編集 内田慎一)

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03. 2012年5月09日 18:30:43 : 3CNLte9sGM
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ギリシャのユーロ離脱の可能性とその影響
2012/05/09 (水) 14:48

ギリシャのユーロ離脱についての思惑が広がっています。

6日の総選挙で連立政権を担っていたPASOKとNDが
得票率を一気に減らし、
第1党であったPASOKは160議席からわずか41議席となり、第3党へ。
第2党であったNDは、第一党に与えられる50議席の分議席を108議席に増やしたものの
計149議席と、過半数の151議席に届かず、その後他党との連立交渉も失敗に終わり
結果、組閣を断念する形となりました。
一方で目立ったのが極左、極右勢力の台頭。
極左勢力であるSYRIZAは39議席を増やして52議席を獲得し、第2党に。
ネオナチとも呼ばれる極右政党CHA(GoldenDawn)は初めて21議席を獲得しています。

現状、第2党であるSYRIZAが組閣交渉を試みていますが
左派勢力だけでの連立を目指すとしており、
組閣実現性はかなり低いのが現状
その後第3党となったPASOKが組閣交渉を行いますが
こちらも可能性は相当低く、
政治的な空白を抱えたまま、再選挙(6月17日の予定)となります。

EU/IMFが求める財政緊縮に対して反対を表明する極左、極右勢力が台頭していることで
今後のギリシャ財政問題はかなり深刻な状況となりそうです。

このままでは、6月に予定されていたトロイカ調査団による
財政赤字削減の状況確認とギリシャとの交渉は相当の難航が予想されます。
調査団の結果を持って実施するとしてきたEUとIMFからの第二次金融支援の次回分ですが
支援条件である医療分野の支出削減と公務員の削減に対する議会承認を得ることが難しいからです。

これによってギリシャが無秩序なデフォルトに陥り、
さらにはユーロ離脱につながっていくという見方が市場で台頭しているのです。

問題は、実際に離脱となった場合の影響が非常に見極めにくいことです。
不透明感が高いということ自体がユーロ売りの材料であり
今週に入ってのユーロドル、ユーロ円の売りにつながっていますが
実際の影響については、なかなか意見の分かれるところ。

そもそもユーロを規定するマーストリヒト条約にユーロ離脱の条項が存在せず
実際のオペレーション自体が不透明な状況で
影響を見極めるのも無理筋ではあります。

ギリシャドラクマの減価自体はかなり強く起こると思われますが
ギリシャ以外の金融機関などが持つギリシャへのエクスポージャーは
第二次支援を決めた際の取り組みなどでかなり整理されており
パニック的な動きにはならないという見方があること。
今回のギリシャの状況は政治的な問題が多分にあり、
ポルトガルやアイルランド、さらにはスペイン、イタリアと言ったところへの波及はすすまず
ユーロ自体の崩壊などの状況には陥らないという見方が強いことなどが
ユーロが値を落としているとはいえ、
パニック的な売りにはつながっていない背景にありそう。

デフォルト自体をうまく管理しながら、離脱に成功し、
ギリシャ情勢も落ち着くといった状況を作り出すことに成功すれば
逆にユーロが上がる可能性まで指摘されます。
もっとも、これはよほどうまく行った場合。
相場の混乱がギリシャ国内での資金の流れに影響を及ぼして
ギリシャの混乱が深まったり、
ユーロ圏の他の財政赤字国への懸念が広がり、
株式市場や債券市場が崩れるなどの状況から
一気にユーロが売られるという可能性も十分あります。

当面は、先行きの不透明感が続くと思われますので
6月の選挙見通しなどをにらんで、ユーロは戻りを丁寧に売る展開。
その後に関しては、ユーロからの離脱の実現性とその影響への思惑などを見極めながら
柔軟対処といったところのようです。


04. 2012年5月09日 18:31:29 : 3CNLte9sGM
第153回 「ドイツのユーロ」と二つの選挙(1/3)
2012/05/08 (火) 14:01


 2012年5月6日。欧州で二つの選挙の投開票が行われ、その驚くべき結果に、世界に衝撃が走った。

『2012年5月7日 ブルームバーグ紙「仏大統領選:社会党オランド氏が勝利、現職サルコジ氏が敗北」
 6日投開票のフランス大統領選挙は、社会党のフランソワ・オランド前第1書記(57)が現職のサルコジ大統領に勝利した。17年ぶりに社会党大統領が誕生する。
 世論調査会社4社の推計によると、オランド氏の得票率は約52%、サルコジ氏は約48%。フランスでは5週間後に国民議会(下院)選挙が予定されている。
 フランス経済はほとんど成長が見られず、失業保険申請件数は12年ぶりの高水準にある。政府債務の増加でフランスもユーロ圏の金融危機の影響に対して脆弱(ぜいじゃく)な状況にある。ここ2年にわたるユーロ圏の金融危機で政治指導者が交代するのはサルコジ氏で9人目。現職の仏大統領が再選を逃したのは約30年ぶり。(後略)』

『2012年5月7日 ブルームバーグ紙「ギリシャ総選挙:NDとPASOKの連立不透明−最新予測」
 6日行われたギリシャ総選挙で、救済合意に反対する政党が躍進、2大与党の新民主主義党(ND)と全ギリシャ社会主義運動(PASOK)が再び大連立を組み、救済資金の確保に必要な財政緊縮を実行できるかどうかが不透明な情勢となった
 ギリシャ国営NETテレビが伝えた開票途中での予想によると、得票率はNDが18.9%、PASOKは13.4%。一方、同国の救済プログラムに反対する陣営では、急進左派連合が16.6%、独立ギリシャ人が10.5%。この予測によれば、NDとPASOKの合計議席数は過半数の151議席に1議席達しない。(後略)』

 最新報道によると、ギリシャの連立与党であるNDとPASOKは、「第一党に50議席が上乗せされる」という、同国独特の選挙制度を加味しても、過半数を確保することは不可能のようである。本稿執筆時点では、第一党になったNDに50議席を上乗せし、PASOKの議席と合わせても、ギリシャ議会の過半数である151に2議席足りない状況になっている。
何しろ、NDとPASOKの双方を合わせると、09年の総選挙の際には77.4%の得票を得たのだ。それが今回の総選挙では、わずかに32.1%だ。ある意味で、気持ちがいいほどの負けっぷりである。

 フランスの現職であるサルコジ大統領が、社会党のオランド候補に敗れた。ギリシャの巨大連立与党であったNDとPASOKが惨敗し、過半数の確保が不可能になった。
 サルコジ大統領とギリシャ連立与党に共通しているのは、もちろん「ドイツが主導する緊縮財政路線」を支持していたことである。逆に、勝利したオランド候補及びギリシャの野党各党は、全て「反・緊縮財政」を主張していた。すなわち、フランスとギリシャの国民は、現在のドイツ主導の緊縮財政路線に、明確に「NO!」を突きつけたのである。

【図153−1 ユーロ主要国の失業率推移(単位:%)】

出典:ユーロスタット

 図153−1の通り、ユーロ主要国の雇用状況は、ドイツを例外として、他国は軒並み悪化している。ギリシャやスペインに至っては、何と20%を上回っているのだ。フランスにしても、失業率は10%で推移している。


第153回 「ドイツのユーロ」と二つの選挙(2/3)
2012/05/09 (水) 14:01

 ドイツの経済の好調をもたらしているのは、ユーロ安に牽引された「輸出増」である。すなわち、ドイツは輸出(GDP上は純輸出)という「外国の需要拡大」により、経済を成長させ、失業率を引き下げていっているわけだ。さらに、このユーロ安をもたらしているのは、PIIGS諸国などの財政危機なのである。
 すでに本連載において何度も取り上げたが、ドイツは2005年前後に失業率が10%を超え、何と当時のスペインをも上回っていた。理由は、01年にITバブルが崩壊し、企業が負債返済を優先し、投資を縮小するバランスシート不況に陥っていたためだ。
 苦境に陥ったドイツを「助けるため」に、フランクフルトに本拠を持つECB(欧州中央銀行)は政策金利を引き下げ始め、これがドイツ以外のユーロ加盟国にバブルをもたらした。ドイツは南欧などのバブル諸国向けの輸出を拡大し、失業率をようやく引き下げることが出来るようになったわけである。
 同時に、当時のドイツではシュレーダー政権による「改革」が行われ、非正規労働に関する規制緩和などが実施された。結果的に、各種産業において企業の人件費負担が緩和され、投資に回せるお金が増えたのである。そもそも、最低賃金引き下げや非正規労働の拡大は、純利益を増やすことで投資を拡大しようとする、サプライサイド(供給能力)政策になる。すなわち、インフレ対策だ。
 純利益を拡大すれば、企業の投資は増える「はず」である。デフレ期の日本では、純利益が増えた企業は内部留保(現預金)を増やしており、米韓などの諸国では配当金に回ってしまっているが、元々の法人減税や最低賃金制度改革の目的は、国民経済の供給能力を高めるインフレ対策なのだ。
 いずれにせよ、ドイツはシュレーダー政権期に「供給能力を引き上げる政策」を実施し、現在はユーロ安による「外需拡大」に巧く対応し、国民経済を成長させているわけだ。例えば、現在のユーロ危機が「ドイツ国内の不動産バブル崩壊」をトリガーにしていた場合、ドイツの「改革」は裏目に出た可能性が高い。すなわち、不動産バブル崩壊で需要が急収縮し、デフレギャップが拡大しているところに、さらに供給能力の強化がなされるという話になり、現在の日本と同じ状況に陥ったはずなのだ。
 ところが、ドイツは国内で不動産バブルが発生せず、かつ各ユーロ加盟国のバブル崩壊で、ユーロ危機が深刻化した結果を受けたユーロ安を「外需拡大」のために活用しているわけだ。何というか、現在のユーロが、
「ドイツの、ドイツによる、ドイツのためのユーロ」
 という状況に陥っているのがよく分かる。
最低賃金制度改革に代表される各種の構造改革とは「インフレ対策」であり、現在のスペインやギリシャ(恐らくフランスも)が実施すると、デフレギャップが拡大し、失業率がさらに上昇する。さらに、ギリシャやスペインなど、高品質な製品を生産する企業を持たない国が生産性を高めたところで、ドイツと同じ真似はできない。ドイツはあくまで「元々、競争力が高い製造業大国」だったからこそ、現在のユーロ安による外需拡大に対応できているわけだ。
 とはいえ、ドイツの競争力強化は、国民の可処分所得を引き下げることにより達成された。すなわち、国民の消費という最も重要な内需が、今後、ドイツ国内で順調に増えていくのか、疑問を持たざるを得ないわけだ。
 また、スペインやギリシャがドイツと同じ真似をすると、デフレ深刻化で財政が今以上に悪化する。そうなると、両国の財政問題が悪化し、またまたユーロ安ということでドイツは潤う。
 このドイツが「自国の方針」に基づき、ユーロ加盟国に緊縮財政や財政均衡の憲法化を要求しているわけであるから、他のユーロ諸国の国民としてはたまったものではないわけだ。特に、スペインやギリシャのように失業率が20%を超え、アメリカ大恐慌期に近づいているような国々までもが、「他国(ドイツ)」の望む緊縮財政路線を歩まされるわけである。各国の国民が怒り、既存の政党や政治家に「NO!」を突きつけるのは、むしろ当たり前に思える。何しろ、緊縮財政とは増税や政府支出削減(公共事業削減、公務員経費縮小、年金削減など)を意味しており、雇用環境には確実に悪影響を与える。
 他国(ドイツ)の望む緊縮財政を自国にまで強要されている状況下で、欧州諸国の政治家は選挙の洗礼を受けねばならなくなってしまった。その先陣を切ることになったフランス大統領選挙、及びギリシャ総選挙では、両国民が共に緊縮財政路線について、民意をもって否定した。
 ギリシャの場合、連立与党以外の政党は全てが「反・緊縮財政」である。緊縮財政に反対したからこそ、一気に議席を伸ばしてきた各党が、選挙後にNDの既存路線に賛成することはできない。今回の選挙で第一党となったND(新民主主義党)のサマラス党首は、ギリシャのユーロ圏残留を目指す連立政府を樹立する意向を表明はしている。とはいえ、ユーロ残留・緊縮財政を訴えていたのは、他には大敗北を喫したPASOKのみだ。そして、NDとPASOKが連立し、NDに50議席をプラスしても、ギリシャ議会の過半数を占めることができないとなると、緊縮予算がことごとく否決されるだけの話になる。すなわち、IMFやEUのギリシャ支援の前提が崩れてしまうわけだ。
 無論、EUやIMFの支援が止まれば、ギリシャは最終的なデフォルト(EU関係者ですら認めざるを得ない完全なるデフォルト)に追い込まれることになる。同時に、ギリシャのユーロ離脱が現実味を帯びてくることになるだろう。
 とはいえ、反・緊縮財政路線を叫び、勝利した野党陣営とはいえども、別にユーロ離脱の構想や経済成長への道筋が立っているわけではない。中途半端なままユーロに残り、緊縮財政を拒否すると、長期金利が再び急騰し、政権はすぐに行き詰ることになる。
 これが日本の場合、超低迷している金利を利用し、「国債格下げだ!」などと叫ぶ外野(格付け機関など)をよそに、財政出動と金融緩和という「正しいデフレ対策」のパッケージにより成長路線に戻れる。それに対し、ギリシャは「デフォルト」及び「ユーロ離脱」という二つの関門を潜り抜けなければ、成長路線に戻る見込みは立たない。しかも、この二つの関門を抜ける際に、国民経済がどれほどの傷を負うのか、想像もつかない状況なのだ。


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