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The Economist
日本の為替政策:円安にしろ!
2012.05.08(火)
日本の政策立案者は、円安誘導に向けて巧妙なアプローチを試している。
円相場は一向に安くならない・・・〔AFPBB News〕
この10年というもの、ほぼ一貫して翌日物貸出金利がゼロの状態が続く日本では、国民はとうの昔に金利を気にしなくなっている。代わりに関心の的になっているのが円相場だ。
買い物客はドルに対する今の円高を謳歌しているかもしれないが、マスコミの報道や金融市場、産業界では、円高は執拗な悩みの種となっている。
日産自動車・ルノー連合のCEO(最高経営責任者)であるカルロス・ゴーン氏は公然と、今の円高は日本車を海外で売る力を損ねる「体重1000ポンドのゴリラ」だと非難している。円の強さは次第に政治問題にもなりつつある。
密かに為替市場を狙った対策
最近、日銀と財務省はともに、アナリストの見るところ、密かに為替市場に狙いを定めた対策を講じた。日銀は4月27日、資産購入プログラムの規模を5兆円拡大し、購入する国債の残存期間の上限を2年から3年に広げた。これで、2月に実施され、急激な円安を招いた緩和策を拡充したことになる。
その数日前には、主にユーロ危機への懸念を和らげることを目的とした総額4300億ドルの国際通貨基金(IM)の資金増強で、日本の財務省が600億ドルという単一国としては最大の貢献を約束した。
ある政府高官が認めたように、日本政府の決断は利他的なものではなかった。ユーロ危機が悪化すると、日本の欧州向け輸出が打撃を受け、円が強くなり、円高問題が一段と悪化する。日本は市場の安定に対して直接的な利益を持つわけだ。
日銀も財務省も、表立って為替について話すことはない。日銀は、あからさまな為替操作は「近隣窮乏化政策」として顰蹙を買うことを知っている。だが、日銀はそれでも円相場が重要だということを理解している。円相場の動向は、個人と企業が下す経済的な判断に影響するからだ。
円相場は、(デフレに慣れた国内投資家はともかく、外国人投資家の)インフレ予想に影響を与えるかもしれない。また、政治的にも厄介な問題だ。
有力政治家は日銀に対し、円安誘導を図り、もっと景気てこ入れのための対策を講じろという圧力をかけている。こうした政治家は、日銀の資産購入プログラムの規模が他の主要中央銀行のそれを下回ることを示す統計を振りかざす(図参照)。
一部の政党は、日銀が中銀の独立性を損なうと考えている改革を提案している。
日銀は直近の対策を打ち出した際、中銀は奇跡を起こせないということを市場に思い出させようとしたように見える。資産購入プログラムの増額の規模は、市場の期待に届かなかった。日銀は暗に、紙幣増刷による債務のマネタイゼーション(貨幣化)の危険について警告を発した。
IMFへの資金拠出は為替介入への地ならし?
先の金融政策決定会合が行われてから、円相場は上昇した。JPモルガン証券の足立正道氏は、これは日銀がどんな策を講じようと、世界的なリスク選好意欲の方が為替市場に大きな影響を及ぼすことを思い出させる材料だ、と指摘する。
だが、円が忘れ去られているわけではない。野村証券の池田雄之輔氏は、2010年以降4回にわたり、大規模な資産購入プログラムの後に、円安誘導のための政府の為替介入が行われたと指摘する。政府は少なくとも、新たな介入を検討しているはずだという。さらに、IMFへの資金拠出は、円安誘導を助けるための巧妙な対策だと同氏は考えている。
池田氏によると、IMFへの資金拠出を先導した日本の動きのおかげで、政府が実際、再び円売り介入に踏み切ることを決めた場合に、国際社会の承認を得やすくなるという。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35145
Financial Times
すっかり欧州化した米国経済力強い成長への回帰はもう見込めない
2012.05.08(火)
力強い成長への回帰は見込めなくなっている(写真はマンハッタンの夕暮れ)〔AFPBB News〕
また春がやって来て、また米国の景気回復が勢いを失い始めている。これで3年連続で、多くの人が力強い成長への回帰になると期待した景気回復が、冬眠状態の夏を迎えそうな気配を見せている。
5月4日に発表された米国の雇用統計によると、失業者数は11万5000人減った。この雇用者数の増加は、人口増加に辛うじて見合う数字だ。
仕事を探す米国人の割合は引き続き間違った方向に進んでおり、米政府発表の失業率を実際よりもましに見せている。4月の失業率は0.1ポイント低下し、8.1%となったが、誰一人として労働市場から脱落していなければ、公式失業率は上昇していた。
こうした状況はどれも大した驚きではないはずだ。何しろ、ユーロ圏の危機や比較的高値が続く原油の国際価格、中国やインドの経済成長の減速予想など、責めるべき外部要因はたくさんある。
米国経済は以前にも増して、他国の需要動向に大きく影響されるようになっている。今の世界経済においては、米国の国内購買力はもはや最大の原動力ではなくなった。そんな時代は戻ってきそうにない。
構造的に回復力が乏しくなる米国経済
これらは着実に強まってきた構造的な作用だ。過去20年間に起きた景気循環を見ると、毎回、以前より経済成長や完全雇用の回復に時間がかかるようになった。市場では毎回、前の景気拡大期よりも低い価格で需給が均衡するようになった。
米国は景気回復の4年目に入ろうとしているが、平均世帯収入は、景気回復が始まった2009年6月のそれと比べ大幅に減少した。バラク・オバマ大統領が再選に挑む11月には、世帯収入は一段と減少しているだろう。
表向きの政治は間違いなく、見苦しいものとなる。根底に潜む経済の現実は、それ以上に厄介だ。富裕層と比べると、非富裕層は所得増加分を支出に回す可能性がはるかに高いため、いよいよ歪みが増す所得配分に対する懸念は、公正という概念をはるかに超えている。
大半の米国人がいまだに景気後退から抜け出せていないという事実は、米国全体の利益を損なう。もし米国がシンガポールだったら、恐らく内需の不足を輸出の急増で補えるだろう。悲しいかな、輸出拡大は米国の病の妙薬にはならない。
米政府が今ほど緊縮財政に傾倒していなければ、公共投資の拡大が活力のない中産階級の購買力を肩代わりできたろう。ブラッド・デロング氏とローレンス・サマーズ氏は最近発表した影響力の大きい論文で、米国はゼロ金利を利用し、インフラや大規模な就労者再訓練といった生産性向上に資する分野に投資することで国家債務を削減できることを示した。
トレンドを上回る成長がなければ、米国の債務負担は高まる一方だ。実際、期待外れだった米国の第1四半期の成長率(2.2%)は、連邦および州レベルでの財政引き締めの影響がなければ、0.6%上振れしていたはずだ。デロング、サマーズ両氏の提言は時宜に適っているかもしれない。しかし、彼らは政治の潮流に逆らって泳いでいる。
弱まるアニマルスピリッツ
では、アニマルスピリッツはどうか? 大恐慌当時、フランクリン・ルーズベルト大統領と顧問団の大半が、どうすれば経済が成長するかについてほとんど知識を持っていなかったことを、人々は忘れがちだ。
1936年に再選された後、ルーズベルト大統領は厳格な縮小予算を編成して米国経済を再び恐慌に陥れてしまった。第2次世界大戦への参戦で米国経済のエンジンはようやく再点火された。
とはいえ、砂嵐が吹き荒れ、移住者が続出した長い10年間は、米国史上最も創意工夫にあふれる期間でもあった。必要が発明の母であるとすれば、大恐慌はその好例だ。大恐慌はゼロックスや大型スーパーマーケット、電気カミソリ、チョコチップクッキー等々を生み出した。
近年の米国の大不況は「iPad(アイパッド)」やツイッターを生み出した。これはかなり優れた成果だろう。それでも、起業の割合は過去最低水準に落ち込んでいる。
労働統計局によると、米国におけるベンチャー企業の創業は長期的な衰退が続いている。2010年には過去最低を記録し、すべての米国企業のうち創業1年未満の企業はたった8%にとどまった(1980年代は13%)。
重ねて言えば、こうした事情はどれも意外ではない。シリコンバレーのベンチャーキャピタリストやワシントン以外の小企業と話をすれば、誰もが同じことを言う。リスク資本を手に入れるのが以前よりはるかに難しくなっているのだ。
諸経費が極めて少ないソーシャルメディアを例外として、大半の新興企業は銀行や投資家から融資を受けるのに苦労している。
では、成長は一体どこからやって来るのだろうか? もう既に訪れている、というのがその答えだ。我々は、新たな通常サイクルの半ばまで来ている。米国は幸いにも、多くの人が欧州について懸念しているような通貨の解体や政治的分裂には直面していない。だが、ほかの面では、米国の欧州化はほぼ完了した。
欧州化が完了し、もはや例外ではなくなった米国
失業率は今後も構造的に高止まりするだろう。労働者の移動は減りつつある。また、働いていない米国人に対する米国人労働者の比率は、欧州諸国の平均のど真ん中と重なっている。
欧州はもちろん、米国が恩恵を受け始めているような思いがけない膨大なエネルギー(シェールガスやタイトオイルの成果や、将来的にカナダから得られるかもしれないタールサンドオイルの供給など)を得られる見込みはない。
また、米国が丈夫な新規参入者を受け入れる跳ね橋を閉ざす可能性も低い。もっとも、移民自身は海を渡って母国に戻っているようだが・・・(米国の「不法滞在者」の数は現在、景気回復が始まった当時より100万人少なくなっている)。
細部には違いもある。だが、最大の課題は共通している。デュッセルドルフ(ドイツ)に住んでいようとダビューク(米アイオワ州)に住んでいようと、旧来の前提は崩れつつある。この点においてもまた、米国はもはや例外ではなくなっているのだ。
By Edward Luce
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35158
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