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「まさかここまで欧州の政治家の能力が低いとは!」──これは、慶応義塾大学教授の竹森俊平氏が、『Voice』2012年2月号の冒頭論文『ユーロ危機は解消しない』に付けたサブタイトルです。
何をもって竹森教授がこう述べたかですが、それはたかがギリシャのような問題で、欧州の政治家が不適切な対応をし、世界中が振り回されるような結果にしてしまったからです。
ギリシャはたかだかGDP25兆円程度の小国であり、そのような小国の財政危機に、欧州の主要国がなぜきちんとした対応ができなかったのでしょうか。それは、金融危機への対応策を間違えたということです。
金融危機には次の2つがあります。それに対応する対策はそれぞれ違うのです。
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1.流動性的危機
2.返済不能危機
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ギリシャ危機を振り返ってみましょう。ギリシャが国債の借り換えに窮してユーロに救援を申し入れてきたのは、2010年2月のことです。2009年10月にギリシャの財政赤字の虚偽報告が発覚し、2010年に入って、すぐギリシャ国債が格下げになったのがきっかけで、金融が行き詰ったのです。
ユーロ圏諸国の財務相会合は、同年5月に第1次支援として日本円で約11兆円の救援資金を提供したのですが、この金額は、当時のギリシャのGDPの3分の1に相当する大金です。
問題はこの救援資金が無償援助ではなく、つなぎ資金の貸付けだったことです。ギリシャの金融危機を単なる「流動性的危機」ととらえたからです。つまり、流動性を提供すれば問題が解決できると考えたのです。
しかし、その時点でギリシャは、1年以内に政府債務累計残高が150%を超えることが明白になっており、船舶と観光ぐらいしか産業がなく、国民の勤勉性にも問題のあるギリシャに返済能力がないことは明白だったのです。つまり、ギリシャのケースは「返済不能危機」であり、竹森教授はこれについて次のように述べています。
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借りた金が返せない相手に、いくら巨額でも新たな借金を押し 付けたところで、返せないものは返せないのだから少しも問題 の解決にはならない。ところが、ユーロ圏の首脳は「圏内に返 済不能の問題は存在しない」という主張を貫き通し、巨額の融資と引き換えにギリシャに無理な返済計画(財政再建策)を押 し付けた。だが案の定、ギリシャの財政再建は無理な計画どお りには進まず、その事実が明確になった2011年の夏ごろか らギリシャ情勢が逼迫する。 ──竹森俊平著
『ユーロ危機は解消しない/まさかここまで欧州の政治家の能 力が低いとは!』 /『Voice』2010年号
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実は「圏内に返済不能の問題は存在しない」という主張を主導していたのはフランスなのです。フランスの銀行がギリシャの国を多く所有していたという事情からです。
これに対してドイツのメルケル首相は、早い段階からギリシャ問題は「返済不能危機」としてとらえ、債権者に自主的債権放棄を迫っていたのです。ドイツの銀行はギリシャ国債をあまり多く所有していなかったというフランスとの事情の違いがあります。
ギリシャ危機が起きた当時のECB総裁は、フランス人のトリシェ総裁だったのですが、彼はサルゴジ大統領に次のように注意を促していたのです。
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ギリシャ危機はこのままいくと、リーマン・ブラザーズの破綻 が全世界に飛び火する金融危機をもたらした二の舞になり兼ね ない。 ──トリシェ前ECB総裁
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2011年の夏になると、ギリシャの状況が再建計画から大幅に外れ、ギリシャに追い貸しして助ける計画が行き詰まり、危機はユーロ圏の他の国にまで及ぶようになったのです。そうするとフランスに代ってドイツがユーロ危機への対応策の主導権を握るようになったのです。
問題はこのドイツなのです。ドイツの経済に対する考え方は他の国といささか異なるのです。ドイツは1930年代の大恐慌の発生以前の経済常識に従って行動しているからです。不況により財政状況が悪化したときは、財政を立て直すために一段の緊縮財政を実施すべきであるということを金科玉条としているのです。
どこかの国の財務省に似ていますが、これは1930年代の大恐慌以前に正当派とされた経済思想なのです。
ユーロ圏の中心国であるドイツのこの経済思想は、当然のことながら、ユーロ圏各国の経済や財政の考え方に大きな影響を与えることになったのです。
ドイツはもともとは福祉国家なのです。しかし、1990年の東西ドイツの統一で、ドイツの経済は悪化し、失業者が増大したのです。旧東ドイツの再建にかかる費用でドイツの財政が悪化したからです。1999年のユーロの導入がさらにそれに追い打ちをかけたのです。統一通貨であるユーロを使うことによって、賃金の安い周辺国に多くのドイツ企業が工場を移設し、その分ドイ
ツの雇用が激減したのです。
そしてシュレーダー政権下の2005年に失業者は500万人に達し、失業率は11%と戦後最悪になったのです。そしてドイツの復活には、産業競争力の復活が不可欠になったのです。そしてはじめられたのが、シュレーダー改革です。福祉国家路線を転換したのです。 ── [欧州危機と日本/23]
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ギリシャの財政問題に端を発するユーロ危機がここまで深刻化する以前から現在の事態を予見していた人物がいた。1997年、旧大蔵省の証券業務課長時代に山一証券の処理に携わり、2008年にはIMF(国際通貨基金)日本代表理事としてリーマン・ショックの対応にあたった、小手川大助氏(60)である。金融危機に辣腕をふるってきた同氏が、ユーロ危機の本質を解説する。ユーロの金融危機回避策の最大の障害となっているのが、ギリシャの“ひどさ”だ。本当はギリシャに求められている財政再建計画は、実現不可能なものではなく、ラトビアなどもっと厳しい財政再建を強いられて頑張っている国はある。それなのにギリシャは、「いくらカネを注ぎ込んでもダメかもしれない」と思わせるほど、当事者能力がない。財政再建は、歳出を減らし歳入を増やすしかないが、公務員が多くて歳出はなかなか減らない上に、歳入=税金を集めるシステムが不完全だ。ギリシャは貧富の差が激しく、富裕層は税金をほとんど払っていないのが現実である。アテネの最高級住宅地にはざっと250軒の豪邸があり、その多くがプール付きだというが、うち税金を払っているのは3軒のみだとされる。また、「3分の1ルール」などと言われるものが罷り通っている。これは、例えば100万円の税金を払わなければいけないという時、3分の1を実際に納税し、残りの3分の1は賄賂に回す。そして最後の3分の1は払わずに済ませるのだ。
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