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EFSFとEFSM──EUは金融危機に備えてこれら2つのセーフティーネットを作ったのですが、思うように資金が集まらず、十分機能していないのです。そこで、既存のEFSFに加えてESM(欧州安定メカニズム)を作り、これら2つで1兆ユーロ規模のファンドの立ち上げを目指しているのです。
このESMとは何でしょうか。それにしても同じような名前のセーフティーネットをいくつも作ったものです。
・ESM/欧州安定メカニズム
ESMの対象国はユーロ圏17ヶ国で、基本的にEFSFと同様に債券を発行して、融資枠5000億ユーロ(約51兆円)を集めようというのです。保証比率もEFSFと同じです。
ESMは、2013年6月までのEFSFを引き継ぐものとして本来考えられていたのですが、金融危機が拡大したので、急遽2012年7月に前倒しして発足させ、EFSFとESMの2本体制で、ファンドを1兆ユーロ規模にすることを目指すことにし
ているのです。
つまり、EUは、欧州危機に対処するための「最後の貸し手」の機能を構築しようとしているのですが、資金がうまく集まらないので、それがなかなかうまくいっていないわけです。一般的に「最後の貸し手」とは、他に貸し手がいなくなったときに、最後に貸す貸し手のことで、破綻に瀕した金融機関に対して、発動される中央銀行の機能のことを指しています。
しかし、EUでは、ECB──欧州中央銀行は必ずしも最後の貸し手ではないという意見が強いのです。そのため、EFSFとESMが重視されるのですが、これについては改めて詳しく述べることにします。
もうひとつの救済システムとしてIMF(国際通貨基金)があります。EUは3月30日のユーロ圏財務相会合で、セーフティーネットの規模は、8000億ユーロ(約88兆円)が必要であるしています。これは、ESMの前倒し立ち上げを念頭に置いたものですが、IMFもこれに対応して加盟国に対し、5000億ドル(約40兆円)規模の財源の拡大を画策しているのですが、これには各国で温度差があるのです。
肝心の米国は、IMFは途上国の救済機関であり、欧州には馴染まないことや「IMFには十分な資金がある」として応じようしないし、中国も積極的ではないのです。そのようななかで、世界中で最初に資金の拠出を決めたのは日本だけなのです。
日本はIMFに4兆8000億円の拠出を早々と決めています。
IMFは日本の財務省の牙城であり、これまでも莫大な資金を拠出しています。しかし、日本としてIMFに資金拠出することは必ずしも日本の国益にプラスではないのです。せいぜい財務省出身のIMFの篠原副専務理事がIMF内で、大きな顔ができる
ぐらいのことです。まして財務省は、国内には日本は財政危機で消費税の増税が必要だといいながら、こういうところでは御大尽ぶりを発揮するのです。矛盾の極みです。
確かに日本は世界一の対外純資産を有しており、国益のためにその資金を有効に使うことには意義があります。しかし、悲しいことに、現在の野田政権には戦略がないのです。IMFなどにカネを注ぎ込んでもメリットは少ないのです。 それでは、今の日本に何ができるのか──慶応義塾大学教授の櫻川昌哉氏は、2012年4月4日付/日本経済新聞の「経済教室」で、そのためには歴史を学ぶべしとして、次のように書いて
います。
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歴史は「最後の貸し手」の重要性を教えてくれる。1929年 に米国で生じた大恐慌の影響は世界中に波及し、欧州経済を直 撃した。第1次世界大戦の後遺症から回復途上にあったドイツ オーストリアで銀行取り付けが発生し、金融パニックは瞬く間
に広がった。弱体化しっつあった基軸通貨国の英国は「最後の 貸し手」として中欧経済を救済できなかった。一方、当時既に 経済力で英国をしのぎ最大の債権国であった米国は、救済する 意思を持たなかった。かくして欧州経済は大不況に陥り、各国
はブロック経済化と通貨安競争に突き進み、国際貿易と世界経 済の収縮から第2次世界大戦の悲劇へと歴史はかじを切ったの である。 ──櫻川昌哉慶応義塾大学教授
2012年4月4日付/日本経済新聞/「経済教室」
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「最後の貸し手」というのは、どこの国でも最後の貸し手は中央銀行です。しかし、ユーロ圏諸国の場合、それぞれの国には中央銀行はありますが、金融政策はECBに委譲されており、ユーロ圏諸国の場合、事実上の中央銀行はECBなのです。ところが、ECBのドラギ総裁は、こういっているのです。
ECBは「最後の貸し手」にはなれない
ドラギ総裁は、昨年11月に就任するや危機に瀕している国の国債を買い取るなど、中央銀行として適切な手を打ってきているのですが、これはあくまで「非常手段」だというのです。つまり建前はやってはいけないが、そのまま放置すると金融危機が拡大するので、非常手段としてそういう手を打ったというのです。
ECBとは何なのでしょうか。
●ECB最後の貸し手の危機強化論に反発/ロイター電
ユーロ圏債務危機の深刻化を背景に、欧州中央銀行/ECBに対し「最後の貸し手」として踏み込んだ対応を求める圧力が高まる中、ECB当局者などからは反論が相次いだ。
ドラギECB総裁は2011年11月18日、政府の対応の遅れに不満をあらわにし、欧州金融安定化ファシリティー(EFSF)の運用をできるだけ早急に始めるべきとの考えを示した。
総裁は欧州銀行関連の会議で、欧州連合(EU)首脳はEFSF創設を1年半以上前に決定し、EFSFの拡充を4週間前に決定したと指摘。「長期にわたる決定の実行はいつ行われるのか」と訴え、ECBの関与拡大要求を退けた。
バイトマン独連銀総裁も、政府が危機対応の前線に立つべきと主張。「危機の収束が成功していないからといって、ECBの責務を過度に拡大したり、ECBに問題解決の責任を負わせることは正当化されない」とし、ECBの責務に対する明確なコミットメントは、ユーロの未来にとって欠くことのできない要素の1つと述べた。
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