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楽天、中国撤退の“挫折”
2012年5月2日 水曜日 原 隆
楽天が中国検索サイト大手の百度と提携を解消した。ECバブルという誤算。見通しの甘さはぬぐえない。既に次の提携先を見つけ中国再進出の機会をうかがう。
楽天が中国市場で音を上げた。中国検索サイト最大手の百度と共同で立ち上げた「楽酷天」を5月末に閉鎖し、中国からEC(電子商取引)事業を撤退する。開始から1年半で投資した額は約8億6000万円。業績への影響は軽微だが、同社が矢継ぎ早に進めてきた海外展開で初めての挫折となった。
楽天と百度が共同で立ち上げた「楽酷天」は5月末をもってサービス終了を決めた。既にウェブサイト上では終了のお知らせを公開している
開設直後から、なかなか軌道に乗れず、苦戦が伝えられてきた楽酷天。中国で足場を築けなかった背景には様々な“読み違い”がある。楽天自身も認める最大の誤算は、中国のECバブルだ。
これを裏づける数字がある。アイリサーチジャパンの広告情報データ分析ツール「iAdTracker」によると、2010年の中国におけるインターネット広告出稿金額は176億円で、EC関連広告は111億円と63%を占めていた。しかし、2011年になるとこれが一変。ネット広告出稿金額は227億円と拡大し、EC関連広告はその97%を占める221億円に急増している。
「お金を燃やしながらシェア獲得合戦を繰り広げているのが今の中国のEC市場」と語るのは楽酷天の江尻裕一・董事長兼首席執行官だ。VC(ベンチャーキャピタル)が次々と中国のEC事業者に資金を投下し、IPO(新規株式公開)を目指して採算度外視のシェア拡大競争を繰り広げた。マーケティング費用はもちろんのこと、原価割れで売ることも日常化。楽酷天は立ち上げからほどなくしてVC主導の競争激化の波にのみ込まれてしまう。
バブルに乗るか降りるか
こうした環境下で、提携相手の百度との間で方針が割れてしまった。
百度側は「市場の拡大とともにシェアを拡大できる」と読むものの、楽天側は「ROI(投下資本利益率)が悪い」(江尻董事長)と、採算度外視路線に対して難色を示した。バブルに乗って拡大したい百度に対し、地道な拡大路線を選択したい楽天。両社にはいつしか埋めがたい溝が生じ、今回の提携解消へとつながっていった。
ただ、劇的な環境変化はどの市場でもあり得る。楽天の見通しの甘さを環境変化の一言では済ませられない。
楽天が中国市場で失敗した理由について、中国最大手のインターネット調査会社、易観国際の于揚董事長兼CEO(最高経営責任者)は「中国政府とのパイプの弱さにある」と指摘する。欧州企業が中国市場で次々と地歩を固めるのに対し、日本企業が撤退するケースが後を絶たない。中国企業と組むことが重要ではなく、中国政府への太いパイプを作らなければならないと説く。そうすれば「中国のインターネット業界の動きは読める」と于董事長は語る。楽天は百度との提携によって、こうした手間を怠っていた可能性がある。
楽天にとって、今回の提携解消で生じた損失額は大した規模ではない。だが、同社がさらに加速させようとしている海外展開が、図らずも最大のマーケットでつまずいてしまったことは事実だ。
それでも楽天は中国進出を諦める気はない。既に百度との提携解消前から次の手を模索していた。
「第3のパートナー」。楽天の三木谷浩史会長兼社長は今年1月の日経ビジネスの取材で新たな提携相手の存在を示唆している。その提携交渉を進めるため、百度との関係解消を決断したと見る方が真相に近いだろう。
難航する中国事業について「僕は結構しぶとい(笑)」と含みを持たせる三木谷社長。中国EC市場のバブル崩壊のタイミングを狙っての再参入となりそうだ。
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原 隆(はら・たかし)
日経ビジネス記者。日経BP社入社後は日経パソコンに約7年勤務。その後、日経コミュニケーション、日経ネットマーケティング(現日経デジタルマーケティング)を経て2010年1月よりビジネス編集部に在籍。電機・ITグループ所属、主にインターネット業界担当。趣味は酒と麻雀とピアノ。宮崎県出身、高田馬場在住15年目。「鳥やす」で焼き鳥とビールを飲むのが好き。Twitterアカウントは@haratakashi。飲んだときにしかほとんどつぶやかない
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