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ドコモは何を恐れたのか 日本通信との接続料訴訟、その対立の深層 年間3500億円の未回収コスト
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投稿者 MR 日時 2012 年 5 月 01 日 02:37:40: cT5Wxjlo3Xe3.
 

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ドコモは何を恐れたのか 日本通信との接続料訴訟、その対立の深層

2012年5月1日 火曜日
白石 武志


 携帯電話の通信設備を貸し出す際の接続料をめぐって、司法の場で争う見通しとなったNTTドコモと日本通信。「2008年に合意した接続料の算定式を2010年度以降、ドコモが一方的に変更した」と主張する原告側の日本通信に対し、ドコモは「法令やガイドラインに従っている」と反論。いまのところ、両社の主張は真っ向から対立している。

 ドコモの通信設備を利用しているMVNO(仮想移動体通信事業者)の加入者はドコモの加入者でもあり、両社の関係は本来、「ウィン―ウィン」であるはず。それがなぜ、これほどまでにこじれてしまったのか。

 両社の主張を取材する中で判明した未回収コストの存在などを基にドコモの危機感を分析していくと、日本通信とはまったく別の、ドコモにとっての真の脅威が浮かび上がってきた。

年間3500億円の未回収コスト

 「ドコモのコスト負担分がMVNOと同じなら、2010年度実績で3500億円のコストが未回収になる。この負担をドコモのユーザーだけに押し付けるのはおかしい」――。日本通信に対するドコモの主張を端的に表現すると、こうなる。

 あらゆる社会インフラと同様に、携帯電話網にも設計上の性能幅を上回る設備が備わっている。こうした設備が一斉に稼動することはないが、インフラを円滑に運用するためには欠かせないものだ。「MVNOである日本通信も、こうした設備のコストについて応分の負担をすべき」というのがドコモの主張の骨子だ。

 一方、ドコモの通信設備を利用する日本通信は、自社が実際に利用する設備についてのみ、コストを負担するのがMVNO本来の姿だと主張している。こうした認識の違いが、接続料をめぐる両社の対立の根底にある。

 現行の算定式ではこの認識の溝を埋めないまま、両社が主張する値の平均値をとって、接続料を計算している。このことが、日本通信が「接続料は本来払うべきコストよりも高い」と感じる一方で、ドコモは「未回収のコストが残っている」という不満を抱える要因になっている。

 ドコモは今年2月、2011年度の接続料を総務省に届け出るのにあたって、自らの主張に沿い、未回収コストを含めた接続料を日本通信に提案している。「接続料が急激に変化するのを緩和するため、3年かけて段階的に未回収コストを算入する配慮をした」(古川浩司企画調整室長)ものの、日本通信はこの提案に猛反発。ドコモはその後、この提案を取り下げている。

NTTドコモの古川浩司企画調整室長

 結果的にドコモが4月13日に公表した2011年度の接続料の原価の中に、未回収コストは算入されていない。では、「ドコモが接続料の算定式を一方的に変えた」という日本通信の主張の根拠は何なのか。日本通信はこの点について、4月19日に開いた記者会見では詳しく説明していない。

 ドコモの古川室長は日本通信が主張する「算定式の変更点」について、「訴状を受け取っていないため、今は推測するしかない」と前置きした上で、「2010年度から接続料の原価の中に加えた『接続料直課コスト』のことを指しているのではないか」と話す。

 接続料直課コストとは、MVNOに通信設備を貸し出すために必要になった人件費や物件費のことで、MVNOに固有のコストだという。古川室長は「日本通信のMVNOサービス開始から一定期間が経過し、通年の実績コストが把握できるようになったため、2010年度から接続料の原価に加えた」とその経緯を説明する。

 もしこのドコモ側の推測が正しかった場合、裁判では接続料の原価に接続料直課コストを加えたことが両社の契約に違反するかどうかが争点となる可能性が高い。この点についてドコモは「契約書にはもともとコストの範囲に係る定めはない」と言い、「接続事業者に負担してもらうコストとして、接続料直課コストの算入は適切なものだ」と主張する。

 さらにドコモの古川室長は「接続料は特定の事業者との個別の合意によって決定されるものではなく、総務省がガイドラインで定めた算定方式に従って決定すべきものだ」と強調。「算定式を『変える』『変えない』という事実認識は法律の規定上ありえない」とも述べ、日本通信の論理を根底から否定している。

日本通信の三田聖二社長(写真:山本琢磨)

 そもそも、国内携帯電話業界の巨人であるドコモが、契約数が二十数万件しかない日本通信のMVNO事業をこれほどまでに警戒するのはなぜなのか。その理由の1つが、国内の携帯電話会社では市場支配力の高いドコモとKDDI(au)だけに課されている「ドミナント規制(非対称規制)」の存在だ。

 携帯電話の接続ルールを定めている「第二種指定電気通信設備制度(二種指定制度)」では、契約数の少ない事業者が契約数の多い事業者と接続交渉をする際に不利にならないよう、25%以上のシェアを持つ事業者を二種指定事業者と定め、接続約款や接続料を定めて総務省に届け出ることを義務付けている。

 さらに二種指定事業者は、接続約款によらなければ接続に関する協定を締結できないルールになっている。今のところ、ドコモが接続約款に基づく相互接続を行っているのは日本通信だけだが、もしその他の企業が通信設備を借りたいと申し入れてきたとしても、ドコモは接続を拒否することができないのだ。

 海外に目を向ければ、仏Transatel(トランザテル)など複数の国にまたがって携帯電話サービスを提供する「グローバルMVNO事業者」が力をつけ始めており、日本市場にも関心を持っているとされる。また、「米グーグルが欧州でMVNOの実験を始めているほか、米アップルもSIM(電話番号を特定するためのICカード)関連の特許を取得するなど、さまざまな情報を総合すると、今後、海外の巨大IT(情報通信)企業が日本のMVNO市場に参入する可能性は高い」(古川室長)という。

 一方、シェアの高い携帯電話会社に接続約款に基づく接続を義務付けているのは、実は世界でも日本くらい。海外のMVNOの求めに応じて設備を開放した場合、携帯電話事業者はMVNOの通信データを流すだけのダムパイプ(土管)になる恐れがある。ドコモの古川室長は「例えばアップルが自らドコモのMVNOとなって『iPhone』を販売した場合、iPhoneの商品力から言って、一気に市場を席巻される可能性がある」と懸念する。

 古川室長は「赤字垂れ流し構造のまま土管屋になってしまった場合、我々の第一の責務である設備の保守・運用すらおぼつかなくなる」と言い、「ドコモの経営が困難になるだけでなく、設備を利用しているユーザーや日本の国益、国際競争力などあらゆるところに跳ね返ってくる」とも指摘する。

 日本通信の三田聖二社長は今回の裁判を「お金ではなく、MVNOのビジネスモデルを守る戦い」と位置づけ、「以前の契約内容が履行されるよう、裁判ではっきりと白黒をつけたい」と意気込む。一方、接続料問題が蟻の一穴となって従来の事業基盤が崩壊することを懸念するドコモも、「日本の通信産業を守る」という大義名分を隠さない。裁判での両社の詳細な主張が明らかになるのはまだこれからだが、その判決内容は両社の今後の命運を左右する、重い意味を持つものになりそうだ。

(この記事は、有料会員向けサービス「日経ビジネスDigital」で先行公開していた記事を再掲載したものです)
このコラムについて
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日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。

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著者プロフィール

白石 武志(しらいし・たけし)

日経ビジネス記者。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20120427/231467/?ST=print  

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コメント
 
01. 2012年5月01日 11:03:44 : Ejc5Yj4gjo
ドコモ;頑張れ! 

応援団はいるからな。


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