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# 企業は、海外でも安く作れる製品を、これまで通り高いコストで作り、売り続けたい
# 一方、人々は、安全な食料、役に立つ教育、医療・介護などを死ぬまでの長期間にわたって安く確実に入手したいが
# 生産力の限界や規制のせいで、適切な価格での供給はなかなか増えず、
# さらに将来の資源・食糧高騰、増税・インフレ=将来の実質所得減少など多くの不安があるから安心して使えない
# 単純に国債を日銀が買い取っただけでは解決できない、構造的な需給ギャップの存在が、デフレの原因の一つであることは間違いなさそうだ
http://diamond.jp/articles/-/17832
真壁昭夫 [信州大学教授]
「デフレを脱却できないのは日銀のせい」は本当か?
金融政策の限界と独立性を無視した政治圧力への警鐘
デフレから脱却できないのは
本当に日銀のせいなのだろうか
「デフレから脱却できないのは、日銀が政策を出し惜しみしているからだ」
最近、そうした発言が目立つようになっており、日銀に対する政治的圧力の高まりが鮮明化している。
わが国経済がデフレから抜け出せないのは、本当に、日銀の政策運営に問題があるのだろうか。その点について、はっきりした答えがあるわけではない。
金融の専門家や経済学者の間でも意見が分かれている。「デフレはお金に関する現象なのだから、日銀の政策次第で解決できるはずだ」との見方がある一方で、「すでに日銀は潤沢な資金供給を行なっているにもかかわらず、デフレが続いているのは多額のデフレギャップがあるからだ」との意見もある。
現在民主党の中には、「日銀の独立性を保証した日銀法を改正してでも、日銀にさらに積極的な政策を打たせるべきだ」との思い切った意見が出ている。そうした政治的な圧力に関しては、大きなリスクが存在する。
政治家諸氏は、必ずしも経済・金融の専門的な知識を持っているとは限らない。そうした人々が「デフレは日銀のせいだ」と主張し、日銀が独立して意思決定できる現在の体制を崩そうとしている。
中央銀行が、政治の圧力によって通貨を際限なく発行すると、中長期的には通貨の価値が下落してインフレ圧力が高まるだろう。そのときに、都合の良いところでインフレ率を止めようとしても、それがうまくいく保証はない。
その結果、経済全般の活動に大きな支障を与えることが考えられる。長い目で見ると、それは社会全体にとってプラスにならないはずだ。
そもそも日銀の金融政策には限界がある
消費意欲が復活しないと物価は上昇しない
金融政策とは、中央銀行が政策金利(我が国の場合、無担保コール翌日物)や、市中で流通するお金の量を調節することによって、円滑な経済活動をサポートするものである。
多くの国では、中央銀行は政府や政治から独立して、独自の判断に基づいて政策運営を決定できる体制になっている。それを、「中央銀行の独立性」と称する。わが国では1998年に日銀法が改正され、日銀の独立性が一段と明確になった。
金融政策はオールマイティではない。金融政策で金利を引き下げて、人々が、預金するよりもお金を消費するように促しても、人々が将来に不安を持つような場合、なかなかお金を使う気になれない。
その結果、いくら金利を下げても消費が盛り上がりにくい状態が続くことも考えられる。金利の引き下げによってお金を借りる側の負担を軽減し、企業がお金を借りて設備投資を行ないやすい状況をつくっても、企業が先行きに明るい見通しを持たないと、設備投資に積極的にはなれない。
1990年代、わが国がバブル崩壊に伴う景気低迷の時期、日銀は金利をゼロにまで引き下げ、さらに潤沢な資金を供給したにもかかわらず、なかなか景気の回復に結びつかなかった。当時の状況を振り返ると、金融政策がオールマイティでないことはよくわかる。
それと同様、日銀がいくら資金を供給しても、人々がそのお金を使わなければ、お金の流れは改善しない。特に、人々が将来に不安を持っているようなケースでは、将来のリスクに備えて、手元にお金を持って使わない人が増えるため、お金の流通速度が上がらず、物価を押し上げることにはなりにくい。
忘れてはならない需給ギャップの影響
大切なのは政府が企業活動を盛り上げること
わが国のデフレを考える場合、もう1つ忘れてならない点は、わが国経済には多額のデフレギャップが存在することだ。デフレギャップとは、供給力が需要を上回っていることを指す。現在でも、わが国経済は15兆円程度のデフレギャップを抱えていると言われている。
デフレギャップが存在するということは、商品をつくって売りたいという人が、買いたいという人を上回っているということだ。これでは、なかなか製品価格は上昇し難い。
しかも、薄型テレビやIT関連機器のように、少し待っていれば値段が下落しやすい商品があることを考えると、人々の消費活動は盛り上がりにくく、物価水準にもなかなか上昇圧力がかかりにくい。
また、デフレギャップがあるということは、企業が消費者の欲しがる商品をつくることができていないとも考えられる。その背景には、様々な要因が潜んでいよう。そして、その要因を解決するためには、企業が国内外の消費者の購買意欲を現実化させるような商品開発をすることが、必要になるだろう。
それには、企業自身の経営努力が欠かせないのは言うまでもない。また、企業努力に加えて、政府がそれを行ないやすい環境を整備することも重要だ。
たとえば、規制緩和策を実施して企業活動の自由度を上げたり、法人税負担を軽減して、企業がより多くの資源を研究開発費に向けられるようにすることが重要だ。
わが国の法人税負担は、世界的な水準から見てかなり重いと言われている。ライバルである韓国や欧米と比較しても、かなり重税感は拭えない。それは、わが国企業にとってハンディキャップであることは間違いない。
求められる政府と日銀の協調体制
先行きに希望を見出すためには?
わが国のデフレ対策を考えると、最も重要なことは政府と日銀がしっかりした協調体制をつくることだ。現在のように、政治サイドが「デフレは日銀のせい」といって責任転嫁を行なっているばかりでは、効果のある対策を実践することは難しい。
日銀は、現在の日銀法の下で、独自の判断に基づいて粛々と経済・金融情勢を判断すればよい。その判断に基づいて、迅速で果断な政策運営を行なうことで金融市場との信頼関係をつくり、デフレ対策の実効をより高める努力をすべきだ。「政治の圧力に屈した」と見られることは、避けるべきである。
一方政府は、デフレに関する責任を1人日銀に押し付けるのではなく、自身ができる政策をしっかり実施しなければならない。労働市場の効率化や社会制度の改革など、痛みを伴う改革であっても、それを推進して社会全体を状況変化に対応した状況に改革すること=イノベーションが必要だ。
現在、しっかりした展開を示すドイツ経済は、今から約10年前、労働市場の硬直性などに苦しみ、「ユーロッパのお荷物」と揶揄された時期があった。それを打破したのは、政治が積極的に労働市場などの改革に努めたからだ。そして今、信用不安に悩まされるイタリアは、同様に労働市場の改革などを行なっている。
わが国でも、政府と日銀がしっかりした意識の下で協調体制を築くことができれば、経済の先行きに明るさが出てくるはずだ。先行きに明るさが出れば、人々は安心してお金を使うようになるだろう。企業の設備投資意欲も盛り上がることが予想される。
それが現実味を帯びてくると、おそらく経済状況にも徐々に変化が出るはずだ。それが、デフレ解消の有効な方法と考える。
http://diamond.jp/articles/-/17832
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