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なぜ、年金のお金は無くなるのか?
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平成24年4月26日 武田邦彦(中部大学)
2012.04.26 武田邦彦 なぜ、年金のお金は無くなるのか?
私が「国債は買ってはいけない」という本を書いたとき、日本のお金の流れをよくよく調べたり、計算したりしました。その中でびっくりした一つに「年金は積み立てていたら無くなる」ということでした。当時の私の計算結果ですが、20才から年金を積み立てても、最初の10年はわずかに全体の1.5%しか積み立てられないのです。その原因は物価上昇とか生活程度の向上なのですが、これはすでに歴史的事実なのです。
さらにこれに加えて社会保険庁が「年金の使い込み」をしたので、本来、払わなければならない約束は800兆円、実際にあるはずの年金が150兆円。そしてそのうち約100兆円が消えているのです。年金制度を始めたら膨大なお金が集まったので、それに群がった人たちが(どうせ焦げ付くことがわかっている)公共投資にそのお金を投じたことと、役人が天下りで他人の年金をむさぼったことでなくなりました。
このことは有名な国民年金制度の創設者で元厚生省年金課長だった花澤武夫氏の回顧録を見れば一目瞭然です。
「この資金(年金)があれば一流の銀行だってかなわない。 厚生年金保険基金とか財団とかいうものを作って、その理事長というのは、日銀の総裁ぐらいの力がある。そうすると、厚生省の連中がOBになった時の勤め口に困らない。
年金を支給するのは二十年も先のことだから、今のうちに使っても構わない。先行き困るという声もあったが、そんなことは問題ではない。将来みんなに支払うときに金が払えなくなったら賦課式にしてしまえばいいのだから」
つまり、国民から年金といってお金を集めれば何でもできる。そして国民に支払う段階ではお金がなくなっているから賦課方式(今のように若い人が払って高齢者がもらう)にすれば良いというのですから、年金を始める時に、すでに「年金を支払うことなど考えず、どんどん使え」、「無くなったら賦課方式(その年精算方式)に変えれば良いと言っていたのです。
つまり年金は最初から官僚がお金を取るために始めた制度だということを当時の担当課長自身が言っているのです。でも、官僚も人間ですし、明治以来の制度で疲労し腐敗しています。それに競争に勝ち抜いてきた「自分だけが良ければ」という人の集まりですから、むしろ「揺りかごから墓場まで」というようなこのぐらいのことを気がつかない私たちの方が問題だったのでしょう。
今、消費税の増税法案がでていて、「年金との一体改革」と言っていますが、これは簡単に言うと「これまで厚労省などが使い込んだ(もしくはダメな団体に融資した)ので、お金が足りなくなり(つまり年金を他の目的に使用してなくなった)、税金で補填する」ということです。
こんなことはとうてい、認められません。第一に使い込んだところが弁済するのが普通で、霞ヶ関が払うべきです。第二にそれでも国として足りないものがあるなら、なぜ年金がこんなになったのか、花澤氏の回顧録の内容の解説、150兆円のうちの焦げ付きの責任などを明らかにしてからが当然です。それにしてもおとなしい国民と、政府発表を繰り返すだけのNHKですね。
年金の話は、政府のあまりの無責任さに驚くばかりですが、これは果たして年金だけのことでしょうか? 実は私たちの代表である政府はすでに年金の話と同じように腐敗しているかも知れません。何しろ制度を作るときに使い込みを前提にしているということですから、私が今まで体験したリサイクルや温暖化なども最初からトリックだったのも当然のようにおもいます。
そして今でも、エネルギーや電力などに同じようなトリックがあり、それに荷担している人が多いことを考えると慄然とします。
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