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四月三日と四日に議長国カンボジアの首都プノンペンで開催されたアセアン首脳会議は、今後の東南アジア諸国の連帯関係を占う上で重要な意味を持つ。無能な野田首相の盲目的な猪突猛進によって、日本の国論を分断したTPP(Trans-Pacific Partnership)への参加路線は、日本を米国に従属させアジアからの脱落を招き、日本の没落を加速させる愚かな売国行為だった。
http://blogos.com/article/22049/
このアセアン首脳会議に二週間ほど先立って日本で発行された、経済誌「ニューリーダー」四月号に発表された「地球環境の運命と東南アジアの役割」と題した記事は、東南アジアだけでなく世界に非常に重要な示唆を含むと思われる。なぜならば、カンボジアの主要紙の「プノンペン・ポスト」が関係し、この新聞の特報記者のベッカー氏と藤原博士の指摘は、将来に向けての極めて重要な問題提起になっているからだ。この記事は非常に読みごたえと説得力があるので、広く読まれるだけの価値を持つと思われる。ことによると既にCIA当たりがいち早く翻訳していて、国家の一大事だと秘密工作を始めているかも知れない。
参考のために貼り付ける。
(貼り付け)
生命体の共生を考える(上)
地球環境の運命と東南アジアの役割
スチュアート・アラン・ベッカー(「プノンペン・ポスト」紙特報記者)
藤原 肇(フリーランス・ジャーナリスト、構造地質学専攻)
東南アジアを非核地域化へ 核兵器保有国の開発禁止を
藤原 ベッカーさんは「プノンペン・ボスト」紙の特報記者として、広範囲な領域の執筆を担当しています。また、MIT(マサチューセッツ工科大学)のノーム・チョムスキー教授をはじめ著名人とのインタビュー記事が、世界のメディアに転載され、ジャーナリストとして令名を馳せている。しかも、チョムスキー博士の思想を人材育成に生かし、タイに仏教倫理と一八世紀の啓蒙思想を組み合わせた「啓蒙研究所」の創設まで実行しています。せっかくの出会いを生かす対談として、二一世紀における東南アジアの役割を中心に、議論を進めたいと思います。
ベッカー 重要なテーマだから喜んでお相手します。ただ、私としてはエネルギー問題の専門家の藤原さんに、日本の原発事故に伴う放射能汚染と、エネルギーの将来についてもお聞きしたい。まず環境問題に関しての議論をしてから、次にエネルギー問題に移りましょう。
まず、私のいるカンボジアは東南アジアの一角にありますが、アジアの問題のカギを握るのは中国の動向です。それに対しアメリカがどう反応し、どんなアジア政策をいかに推進するかの展望が、地政学的に最も重要だと考えます。
藤原 その設定だと、米中関係に議論が矮小化してしまいそうです。もっと巨視的な捉え方をしましょう。
地球は四六億年も前に生まれた生命体で、それを英国の科学者のジェームズ・ラブロックはガイアと呼び、大気と水は生命体ガイアの外延物です。また、大気と土壌と海洋は恒常性を持つ統合体として、三八億年前に有機体が生命活動を始めましたが、その温床を作ったのが海水と土だったのです。
ベッカー その意味では、東南アジアは土によって覆われた場所です。
藤原 岩石でできた地殻が太陽と水で風化して、地上では水と風による選別作用により、岩体と海洋の間に砂と土が分布し、地表と海面下には堆積物として地層が発達した。最初に生命が誕生したのは海底で、海底溶岩の裂け目に熱水性の微生物が棲み、微生物が進化し海藻類になったが、菌類や海藻の棲み家は土と水でできた泥だった。そして、地球上で泥が最も発達する場所が、生命圏としての東南アジアです。しかも、豊かな降雨量と太陽光に恵まれて、微生物をはじめとする生命体の天国です。この集約的な米と果実の収穫をもたらす場所では、環境保全が何にも増して大切です。
ついでに自然条件について、地質の専門家の立場から補足すれば、地殻を作る岩体が太陽と水で風化すると、岩塊、砂利、砂、土になって堆積する。そして、岩塊と砂利は山岳地帯を構成するし、砂利と砂に土が混じれば草原になり、乾燥地帯において砂は砂漠を作る。また、土は水に流されて河岸や河口に堆積し、有機物や植物の繁殖によって土壌になり、生産力の豊かな農業地帯を作ります。その結果、ユーラシア大陸で最も豊かな生態環境が、日本から台湾や中国南部を経て、インドシナやタイなど東南アジア諸国から、ビルマを経てインドに至る地域に広がる。
ベッカー 地上最大の穀倉地帯の東南アジアは、人類の運命にとって重要な食糧生産の基地です。二一世紀の地球は七〇億人を超す人口を抱え食糧の問題が陸路だと言われているだけに重要ですね。
環境保全についてはローマ・クラブ(一九七〇年正式発足の著名な民間シンクタンク)が報告書で警鐘を鳴らし、京都やブラジルでの会議において、国連を中心に国際的な合意が確認された。にもかかわらず、乱開発によって熱帯雨林が伐採されたり、工業化で炭酸ガスの排出が増えたりして、地球の温暖化が着実に進んでいる。だから、環境問題と東南アジアを結びつけて、ユネスコの世界遺産に等しい評価を与え、生命遺跡の聖域にする必要があると考えます。
藤原 それは着想として非常に興味深い。この得がたい貴重な生態環境を保存するために、国による開発計画を阻止して、地上の最後の楽園を未来に残す必要がある。まず国連の安全保障理事会の理事国が、この地域で国家単位で開発を行うことを禁止し、NGOとNPOの活動だけに制限すべきでしょう。
ベッカー なぜ理事国(米国、ロシア、中国、英国、フランス)なのですか。
藤原 この五カ国が核兵器の保有国であり、また、五大国は覇権主義や植民地主義など、侵略的な体質を強く持っているからです。核兵器は生命の生存を脅かす危険なものだけに、この五カ国には東南アジアへの立ち入りを制限して、地上から核の災害を追放する聖域を作る。もちろん原子力発電も追放する。
ベッカー インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮なども核兵器を保持している。五大国だけではなく、核兵器保有国を立ち入り禁止にすれば、理論的な整合性が増しますね。また、経済力と技術力を持つ日本とドイツを含めなければならないのでは。
藤原 ドイツも日本も東南アジアで、原発を作る事業ができないようにすべきでしょうね。
マニフェスト・デステニィの正体 アメリカの歴史は資源収奪の歴史
ベッカー とはいえ、植民地主義や帝国主義が再び猛威を奮い、東南アジアが再び侵略されて、生命の楽園を損なう危険性があるのか。そんなに用心しなければならない事態が、二一世紀に繰り返すとは思えませんが。
藤原 そんなことはない。注意すべきは米国です。地政学上の問題だけではなく、この対談のテーマである環境問題にも大きく影響します。過去百年間に米国が世界を舞台に試み、特に中南米で実行した帝国主義的な行動は、最近でこそ行き詰っています。だが、新たな獲物の対象を東南アジアにするようになれば、非常に危険なことだと警告したい。
ベッカー 具体的にどういうことを指すのですか。
藤原 まず米国の帝国主義からお話しましょう。アメリカ人のあなたは子供の頃から、「リメンバー・アラモ」という言葉に慣れ親しんで、愛国心を掻き立ててきたと思います。だが、その背後に侵略主義を正当化する思想があることに、気づいていましたか。
ベッカー 私の父親は陸軍のパイロットだったし、ベトナム戟争の時はヘリコブターを操縦して、第一線の戦場を飛び回る兵士だった。だから、若かった頃の私は典型的な愛国青年として、米軍の勝利に対し熱狂したものだし、アラモで玉砕したアメリカ人に対しては、強い同情と敬愛の気持ちを持っていた。
しかし、東南アジアでジャーナリストとして仕事をしてから、米国がベトナムに枯れ葉剤を撒き、カンボジアには爆弾の雨を降らせ、住民に対して無差別爆撃したことを知り、考えを改めました。
藤原 カンボジア内戦における米国の責任に対し、あなたはアメリカ人としてどう考えているのですか。
ベッカー 北爆を停止したという欺瞞の宣伝の陰で、カンボジアをB52で絨毯爆撃して、第二次大戦で使った以上の爆弾を投下し、一〇〇万人近くもの農民を殺戮した事実がある。だから、ナチスと同じ悪質な殺戮犯罪を推進したニクソンやキッシンジャーの犯罪については、裁判で明らかにして責任を追及すべきです。チョムスキー教授が強く訴えたように、カンボジア内戦の悲劇の原因を米国が作った以上は、すべての補償責任を取る義務があります。だから今では、アラモの神話はテキサスを奪っために、必要以上に美化したものだと考えます。
藤原 その通りです。メキシコ領のテキサスに入植したアメリカ人が、独立を叫んだことで戦争が始まり、メキシコはテキサスを失った。カリフォルニアやニューメキシコも同じように、アメリカが隣国から奪った領土です。これが「マニフェスト・デステニィ」の正体です。領土を資源という言葉で置き換えれば、イラク戦争もアフガン戦争もその延長で、海外権益の拡張のための侵略です。
ベッカー 確かに「リメンバー・アラモ」で使った発想は、「リメンバー・ケイン」や「リメンバー・パールハーバー」になった。そして、「リメンバー・9・11」で再び敵愾心を煽って、米国はイラクやアフガン戦争を始めた。
藤原 「リメンバー・ケイン」を大宣伝した時には、ハースト系の新聞である『ジャーナル』紙が、金儲けのために戦争を煽ったので、アメリカの世論は好戦一色になりましたね。だが、ベトナム戦争の時は報道の威力で、反戦機運が高まったために侵略が挫折している。現在のメディアに同じ勇気があるだろうか。
ベッカー 今は、米国の新聞業界は不況で倒産が続き、テレビはルパート・マードックのフォックスTVのように、反動化が著しくなっているし、政府や財界は情報操作を好んでいる。でも、MITのチョムスキー教授をはじめとして、米国には幅広い民主主義の草の根運動があり、権力の横暴に抵抗する伝統があります。
藤原 しかし、アメリカが好む弱肉強食の帝国主義路線は、資源が豊かな発展途上国において、相変わらず猛威をふるっている。最近の米軍のイラク撤退の決定も、民主化の名で傀儡政権を作った失敗の後始末だ。一〇〇万人以上のイラク人を殺戮したが、カンボジアでも米国の手口は同じだった。これは中南米で親米軍事政権を支持し、最後に破綻して追い出された米国の侵略史と共通で、同じパターンを繰り返しています。
ベッカー だから、アメリカは莫大な戦費で財政破綻に陥り、もはやボロボロの帝国主義国家として、悪あがきする状態になってしまった。
藤原 ソ連が崩壊して米国の一極支配になり、ネオコン政治がワシントンを牛耳ってから、米国は犯罪国家と見なされています。九五lのアメリカ人は友好的で善良なのに、残りの五lがワシントン政府を操り、アメリカの富のほとんどを独占しているくせに、もっとほしいと強欲になっている。だから、世界の平和に米国の君臨はマイナスです。だが、多くのアメリカ人はそれに気づいていません。
ベッカー その結果、中南米のほとんどが反米国家になって、アフリカや中東も親米国家が次々と姿を消しており、友好国は東南アジアにしか残っていない。
藤原 米国は常に仮想敵国を必要としており、正義を振りかざして敵に立ち向かうことで、国論を統一し膨張する歴史があった。また、金融と軍事産業に依存する米国は、伝統的な信仰や愛の精神を失い、権力と自由だけを信奉する国になって、地上を弱肉強食の思想で侵略し、収奪に明け暮れている。
しかも、大地へ働きかける農業をビジネス化し、米国は農業を殺虫剤、肥料、ホルモン漬けにして、自然を金儲けの道具にしてしまった。
生命の故郷と食糧の宝庫の危機 米国″アグリビジネス″の脅威
藤原 米国の大平原や南米のパンパ地域が、小麦や大豆の穀倉地帯になったのは、灌漑施設を作ったからです。だが、これまで作ったダムや堰堤工事により、土壌がやせて養分が乏しくなり、肥料や農薬を使ったせいでさらに土壌が劣化して、最近では水不足も目立っている。だから、南米を食い荒らしたアメリカの帝国主義が、生命の最後の楽園の東南アジアを狙い、開発の名の下にアグリビジネスを武器にして、支配圏を作ろうとする動きが心配の種なのです。
ベッカー 確かに中南米ではバナナの農園を経営し、キューバでは砂糖の生産基地を作って、ハワイではパイナップル栽培のために、米国資本は独占的な経営を過去に行ってきた。だが、最初から略奪するつもりではなかった。
藤原 私がそう思わない理由は、米国の農業には共生(Symbiosis)の思想がないからです。共生という言葉の概念は、複数種の生物が相互関係を保ちながら、一緒に生活する現象を指しています。また、思想家のイヴァン・イリイチはそれを社会レベルで捉え直し、相互支援を通じて機能するモデルとして、生き生きとした共生(Convivial)という言葉を作った。利用者と生産者または学習者と教師が、共創を通じて親和的に自立し合う形で、均衡を保つ状態をこの言葉は指します。自然レベルで考えると、スペイン語のConvivirは土(Clay)を土壌(Soil)にすることから、生命が多次元的な均衡を保有し合う、土壌の重要性の発見に結びつきます。
ベッカー よくわからないな。土と土壌という言葉の違いについて、わかりやすく説明してもらいたいですね。
藤原 土は地表を覆う粘土の俗称です。土壌は生物活動の影響を受けた堆積層で、大地の回復力の活性化のために、微生物が生活できる環境として、耕す行為と結びついた土のことを指す。アジアは一見では徽菌の巣窟だが、実は全生命が共存している世界であり、生き生きと共生する生命の楽園です。
ベッカー それは、殺虫剤、肥料、ホルモン漬けの農業でなく、改めて有機と名乗らなくてもいいほど自然栽培が可能な、天が恵んだ地上の食糧庫を意味する‥…。
藤原 そうです。興味深いことに黄河文明地区を除けば、他の古代文明圏は古地中海と呼ばれた、数千万年前のティーティス海の周縁部です。地上最大のヒマラヤ山脈の裾野地域では、土は生物連環のお陰で土壌になり、東南アジアの氾濫原は生命の宝庫なのです。
ベッカー バイ菌も植物も動物も人間も共生して、生き生きと生命活動をするという意味で、生命の宝庫と名付けるわけですね。
藤原 そうです。だから、殺虫剤、肥料、ホルモン剤など無用で、ここは石油製品や化学合成物を使わない、自然農業の聖地として護る必要がある。ヨーロッパや南北アメリカを始めとして、日本や中国の農地は化学物質のために、土壌が汚染されて微生物が激減し、無機質の土になり生産力が落ちている。これを救い地力を回復させるためには、生ゴミや落ち葉を発酵させて,堆肥(Compost)で作る有機肥料を梳き込むか、乳酸菌の培養液を散布する。これが自然農法における基本作業になります。
ベッカー 昔の農民はそうした耕作を熱心に行い、質のよいおいしい食糧を作ったものです。だが、最近はアグリビジネスとして金儲けに走り、野菜や果物が持つ自然の味がない作物になった。しかも、規格品の見てくれだけのものが多い。
藤原 特に酷いのは科学技術の濫用であり、農民の手間が省け収穫が多いと宣伝し、遺伝子組み換えの種(GM=genetically modified)が売り込まれている。しかし、自然界に存在しない異常な種は、生態系を狂わせ、ことによると生命が絶滅する原因になる。この悪魔の発明はモンサント社の仕事です。
ベッカー モンサント社の遺伝子組み換え種(GM)のシェアーは世界で九割に達し、病虫害や除草などの耐性効果をうたっていますが、それを食べる生命体への影響に関しては、何世代にもわたる十分な追跡と実証がない。ところが、米国産の家畜用飼料の一〇〇lがこの遺伝子組み換えの穀物であり、それを飼料にして生産した肉や食物が、世界中に商品として輸出されている。 ベトナムやカンボジアに大量に散布した枯れ葉剤の爆弾による土地汚染で、奇形児や奇病が大量発生しましたが、その犯罪行為も放置されたままのことを想起しますね。
藤原 だから、国としての反省をしていない米国は、農業生産の問題に関連した分野において、東南アジアに関与すべきではない。また、化学肥料やホルモン剤を生産し続けている国連の常任理事国や日独伊などは、最後に残った生命の楽園の東南アジアに、市場原理を持ち込まないことです。そして、三八億年の生命の歴史に対する責任から、食糧生産は住民の選択に任せるべきです。
ベッカー それがあなたの生命観と土壌観なのですね。あなたが米国の東南アジア進出を拒む理由が、政治的な反米ではなく共生観で、自然学の立場なのだと納得できましたよ。
(貼り付け終わり)
生命の天国の東南アジアから原発だけでなく、遺伝子組み換え種(GM)を追放しようという主張は、納得できるから受け入れやすいのは当然だが、アメリカを始め国連の常任理事国に対して、国家レベルでの開発事業を制限する提案は過激だ。こんなことを発言した人は前代未聞だが、ことによると燎原の火として燃え広がるかも知れない。こんな大胆な発言をしている藤原という日本人は、地質学を専門にしていたジャーナリストで、「生命知の殿堂」という変わった題の本の著者であり、世界を舞台に活躍しているジャーナリストだ。
http://straydog.way-nifty.com/bangaihen/2011/07/post-8d99.html
しかも、日本の政治についても外国から観察しているようであり、鋭い視点で混迷に陥った日本の政治を料理していることでも知られている。最近は政治記者の本澤二郎氏との対談で洛陽の紙価を高めている。
http://www.asyura2.com/11/senkyo119/msg/740.html
最近ではこんな内容の傑作に属す対談もあって、それが人気を集めていることが報告されている。このような議論がどんどん盛り上がったら、日本のメディアも活況を呈して閉塞感を吹き飛ばせるのではないだろうか。
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