05. 2012年4月27日 20:16:55
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物価上昇率1%展望できる時期は14年度含む=白川日銀総裁 2012年 04月 27日 20:07 JST [東京 27日 ロイター] 日銀の白川方明総裁は27日、金融政策決定会合後の会見で、資産買い入れ基金の増額による追加金融緩和を決めた理由について、経済・物価に明るい動きが出ている中で日本経済が持続的な成長に復帰することを確実にするため、と説明した。 その上で今後の政策運営について「毎月、金融緩和をやっていくわけではない」としながら、強力な金融緩和を推進し、デフレ脱却に向けて適切に政策運営していくと語った。日銀が事実上のインフレ目標としている消費者物価の前年比上昇率1%に達する時期について「2014年度も含む」としたが、1%が見通せるまで強力な金融緩和を推進していくとする日銀の時間軸に対する考え方は「まったく変わっていない」と強調した。 <1%展望できないため緩和したわけでない> 日銀は今回公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、前回1月の中間評価と比べて景気・物価いずれも上方修正したにもかかわらず追加緩和に踏み切った。白川総裁は「景気・物価情勢が改善しているなか緩和強化は多くないが、過去になかったわけではない」と指摘。「経済・物価の面で起きているよいモメンタムを大事にし」、「物価安定のもとでの持続的な成長経路に復する蓋然性をさらに確実にしたい」ため、追加緩和に踏み切ったと説明した。 物価については「大きな流れが重要。2009年夏に消費者物価指数が前年比でマイナス2.4%と近年の底を付けて以来徐々に縮小し本日発表された3月の消費者物価指数はプラス0.2%だった。購入頻度の高い、財・サービスは徐々に上がってきている」と指摘した。 日銀が現在進めている資産買入基金による「包括緩和政策」を打ち出した2010年10月以降、基金の規模を「1年強で35兆円、長期国債で25兆円と大変な増額を行ってきている」ことを受け、「経済に前向きなモメンタムが少しずつ働き始めている」との見方を示した。 今後は景気の「上下両方向のリスクに十分注意を払い、景気・物価の展開や金融政策の効果を冷静にじっくり見極めたい」とした。日銀は2月に「物価安定の目途」の形で物価上昇率1%が展望できるまで金融緩和を続ける姿勢を明確にしているが、総裁は、展望リポートで13年度まで1%が展望できないため緩和したわけでない、と述べた。 <「財政ファイナンス行わない、信用してほしい」> 日銀は包括緩和政策を打ち出した2010年10月、企業向け貸出の多くが2年以内との根拠で、買い入れ金融資産の年限を2年以内としていた。今回年限を3年に延長した点について、企業の資金調達を考えると合理的判断、と述べた。 米国の金融債務は家計向けの30年近い不動産担保貸付が多く、社債も発行期限が平均13年と長いため「長い金利への働きかけが有効」と指摘。「日本では期間の長い調達は多くないため従来から3年以下を意識し政策を行ってきた。それぞれの国の置かれた金融構造に即してもっとも有効な金融政策手段が必要」と強調した。 度重なる追加緩和で日銀の国債買い入れが増額を続けているが、総裁は「買い入れは金融政策の目的実現のため、財政ファイナンスが目的でない」、「財政ファイナンスを行わないことを信用してほしい」と強調。その趣旨を明らかにするために、通貨供給のための国債買い入れとは別の「基金という分別管理をし、国民や市場参加者が監視できるようにしている」と説明した。 <長期国債残高、今年度末までに銀行券上回る見通し> 日銀は、通貨供給のため買い入れる長期国債の残高をお札(日銀券)の発行額以下に抑える自主規定を定めているが、総裁は「今年末か今年度末には長期国債保有額が銀行券発行残高を上回る」との見通しを明らかにした。 一方、「国債の買い入れが大量にのぼると、日銀の意思とかかわらず、『財政ファイナンスでないか』との見方が出ることは一般論としてはあり得る」とし、「そうした事態を避けるためにも財政健全化に向けた取り組みをしっかりと進めてほしい」と述べた。 <副作用あるから緩和すべきでないという訳でない> 総裁は3月以降の2度の訪米の際に講演で金融政策の副作用について強調しているが、「世の中には効果だけあってコストがない政策・手段はない。副作用あるから金融緩和するべきでないというわけでなく、副作用が小さくなるよう構造改革の努力をしてほしい」との趣旨だと説明した。 今後は、国債買い入れのペースなど最適なスピードを意識し、経済・物価の展開や金融政策の効果を冷静にじっくり見極め、政策運営する姿勢を示した。また1%の物価上昇を達成した後の政策について語るのは時期尚早と述べた。 日本経済の現状については、横ばい圏内だが持ち直しに向かう動きが明確になりつつある、との見方を示した。展望リポートの物価見通しには、「消費税率の引き上げは見通しに織り込んでいない」と述べた。 中期的な物価をみるうえで、中国の賃金上昇や新興国の経済発展に伴う資源価格上昇の影響が一つの注目点で、同日の会合で指摘があったことを明らかにした。 (ロイターニュース 伊藤純夫、竹本能文:編集 内田慎一) 日銀追加緩和決定、資産買い入れ基金5兆円増額:識者はこうみる 2012年 04月 27日 15:32 1%展望する時期は14年度含む、時間軸に対する考え方変わらず=日銀総裁 日銀の追加緩和、市場動向・経済動向踏まえた適切な判断=官房長官 日銀追加緩和で金融市場は乱高下、短期筋の反対売買が交錯 公的資本の政府議決権比率、総合計画認定時に明らかに=東電社長 [東京 27日 ロイター] 日銀は27日に開いた金融政策決定会合で、資産買入基金による長期国債の買い入れ額を10兆円拡大するとともに、上場投資信託(ETF)を2000億円、不動産投資信託(J─REIT)を100億円それぞれ増額する追加金融緩和を決定した。 市場関係者のコメントは以下の通り。 ●安心感誘う、継続的株買いには円安必須 <大和証券 投資戦略部 部長 高橋和宏氏> 国債買い入れ基金の増額を10兆円としたほか、国債・社債の年限を2年以下から3年以下に延長し、市場の安心感を誘った格好だ。また事前に予想されていなかったETF(上場投資信託)やREIT(不動産投資信託)の買い入れ増額はサプライズとして受け止められるだろう。 ただ2月のバレンタイン緩和のように中期的な株価上昇になるかは不透明。ETF買い入れは下値を支える程度で、株価の押し上げ要因にはなりにくい。株価上昇には外為市場での円安進行が必要で、引き続き外部要因にらみの展開を想定している。 ●長期国債買い入れはマイルドな増額 <三菱UFJモルガン・スタンレー証券 シニア債券ストラテジスト 長谷川治美氏> 日銀は追加緩和を決定し、基金は5兆円増額だが、長期国債買い入れは10兆円増額となった。国債の買い入れ対象年限も3年へ延長された。ただ、基金買い入れ期限が今年12月末から半年延長されるため、長期国債買い入れについては10兆円増額だが、月額の買い入れ額は今の1.5兆円から1.6兆円程度と比較的マイルドな増額になった。日銀としても国債マーケットをゆがめることがないように慎重に配慮した結果だと受け止めている。 期待インフレ率を押し上げるという意味で、長期国債買い入れにとどまらず、今回は指数連動型上場投資信託受益権(ETF)、不動産投資信託(J─REIT)などのリスク性資産の買い入れも拡大した。 2月の実質的なインフレ目標導入のあと、市場の緩和期待をコントロールすることが難しくなっている。政治的な圧力もあり、今後はコミュニケーション戦略についても熟慮して行く必要があるとみている。 ETF買い入れが増えたことで、株にはプラスに働いている。債券市場では、月額の買い入れ額がさほど大きくないため、金利の低下効果は小さそうだが、失望売りは回避されているようだ。 ●現実的な選択、基金の再増額も視野 <東短リサーチ・上席研究員 飯田潔氏> 日銀は追加緩和に踏み切り、現実的な選択をした。資産買入等基金の規模を5兆円増額。札割れが相次ぐ固定金利オペの規模を5兆円減らす一方、長期国債に加えて、ETFなどのリスク資産買い入れを増やした。資金需要に乏しい資産への供給を減らして、市場動向に配慮して割り振りを修正した。短期金融市場では、すでに資金余剰感が強いため、目立った影響はない。 日銀は今後、「中長期的な物価安定の目途」である消費者物価の前年比1%を目指して、さらなる緩和に踏み切る可能性がある。再び基金の増額が視野に入ってくるだろう。 ●社債の期間延長に意外感、買入オペの札割れ回避も <三井住友海上あいおい生命 経理財務部部長 堀川真一氏> 日銀は27日の金融政策決定会合で、資産買い入れ等基金による社債買い入れオペの対象期間を「1年以上2年以下」から「1年以上3年以下」に延長したことは、これまで報道されていなかったこともあって、意外感がある。マーケットは国債の買い入れ延長は想定していたが、社債まで踏み込むとは思っていなかったはずだ。前回の社債買い入れオペで大きく札割れしたこともあって、それに対応した可能性が高い。 社債買い入れオペの対象が広がることで、札割れが回避される可能性が高まる。ただ、銘柄そのものの範囲が拡大するわけではないため、社債市場の需給が大幅に引き締まるところまでには至らないとみている。 ●期待封じ込めの印象、物価1%展望言及で時間軸短期化も <クレディ・スイス証券 チーフエコノミスト 白川浩道氏> 緩和を強く求め続けるマーケットの期待をこれで封じ込めたい意図が感じられる内容だ。長期国債買い取り10兆円増額や他の資産買い取り、買い取り対象国債の残存年限の延長に加えて、「展望リポートの見通し期間後半にかけて物価1%上昇に遠からず達する可能性が高い」と打ち出したことにそれを感じる。つまり、今回の措置をもってデフレ脱却に自信が持てると言っているようなものだ。2014年には利上げ方向にアクションをとらないわけではないことも示唆し、時間軸はかえって短くなるような印象を与えている。このあと発表の展望リポートで、2014年度以降も緩和を続けることを丁寧に説明するかしないかが、1つの注目点だ。 ●予想以上の規模だが、今後の緩和不要と読める文言も <大和住銀投信投資顧問 経済調査部長 門司総一郎氏> 予想以上に大きな規模の追加緩和となった。特に、指数連動型上場投資信託受益権(ETF)や不動産投資信託(J─REIT)などのリスク性資産の買い入れ増額は必ずしもコンセンサスとなっていなかっただけに、株式市場にはポジティブだろう。企業決算が想定より良いことも考えれば、連休明けの株価上昇に期待が持てる。 ただ日銀は声明文の中で消費者物価について、展望レポートの見通し期間後半にかけてゼロ%台後半となり、その後、当面の「中長期的な物価安定の目途」である1%に遠からず達する可能性が高い、と指摘している。「遠からず達する」という文言は、読みようによっては、これ以上の緩和の必要がないとも読める。追加緩和は不要という解釈になれば、今回の緩和効果が薄らぐ可能性も出てくる。 ●買入資産の構成に工夫も円安持続は難しい、今後の米金融政策を注視 <ニッセイ基礎研究所 シニアエコノミスト 上野剛志氏> 日銀が打ち出した資産買入基金増額の規模は5兆円ということで最低ラインだが、買入資産の構成を変更するなど工夫がみられた。ETF買い入れの2000億円程度の増額というのは印象として大きいだろうし、札割れが連発している固定金利オペは減らして長期国債の買い入れを増やすということで工夫がみられる。さらに買い入れ対象とする長期国債の残存期間を1年延長したり、包括緩和の基金自体の年限も半年延長したりしたが、総合すると市場が予想していたよりも踏み込んだ内容で、日銀の緩和姿勢の強さを印象づけたとみている。 しかし、円安の持続は難しいだろう。2月から3月にかけてのような大幅な円安の再来の可能性はあまり高くないとみている。米国の経済指標は良くないものが出ているほか、バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長は追加緩和に含みを持たせており、一方向にドル買いにポジションを傾けづらい。また、4月以降、再び欧州の債務問題がクローズアップされている。各国での重要選挙も控えており、ユーロ圏でもし何かあればリスク回避で円高の流れになりかねない。 次回6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、6月末に期限を迎えるツイストオペ後に何かするのか、やめてしまうのか判断してくるだろう。決定にあたっては、4月米雇用統計など5月に発表される米経済指標が判断材料として非常に重要になってくるため、注目する必要がある。現在は日銀が追加緩和で先行しているイメージがあるが、FRBが再び追加緩和を打ち出してくればドル安/円高のインパクトは大きい。FRBの出方を注視したい。 ●アグレッシブな緩和、期待インフレ再評価も <メリルリンチ日本証券・チーフ債券ストラテジスト 藤田昇悟氏> 日銀緩和の内容はポジティブサプライズ。相次ぐ札割れで実質活用されていない固定金利オペの規模を5兆円減らした分を他資産の買い入れにまわしたことで、基金は実質的に10兆円の増額。予想していなかったETFとREITの買入枠を拡大した。また、基金70兆円を実現するために、国債買入年限の延長、基金買入期限の半年延長などの工夫も施した。 仮に、今回追加緩和を見送っていた場合には、政治、市場、メディアから日銀に対する圧力が増していたことだろう。アグレッシブな緩和に踏み切ったことで、揺らいでいた日銀の独立性を多少なりとも取り戻したのではないか。 追加緩和は、素直に円安・株高の要因とみている。日銀は今後も追加緩和を継続してデフレ解消をコミットするのであれば、期待インフレを再評価し、長期金利の水準を押し上げる要因になる可能性がある。 |