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Financial Times
日銀追加緩和でも円安進行は望み薄
2012.04.27(金)
遅まきながらという感もあるが、日銀は27日、金融緩和に最も尽力している中央銀行としての実績を固める機会を利用すると見られている。
市場の観測によれば、日銀は資産買い入れプログラム(すなわち量的緩和)の規模を現在の総額65兆円からさらに5兆〜10兆円拡大する見通しだ。このプログラムは、政策金利が0%に近い中で、日銀の主たる政策手段になっている。
GDP比総資産で世界最大の中銀の称号をECBから奪還へ
日銀は今年、総資産の国内総生産(GDP)比が世界で最も高い中央銀行という称号を取り戻すかもしれない〔AFPBB News〕
市場の予想通りになれば、2010年10月に始まったプログラムの拡大は5度目となり、これで日銀は今年、欧州中央銀行(ECB)を抜いて、総資産の国内総生産(GDP)比が世界で最も高い中央銀行という称号を取り戻す可能性が出てくる。
しかし以前なら、金融政策が緩和されると、利回りに飢えた日本人投資家による外国の資産・通貨への投資に拍車がかかったが、今回は増加する流動性の大半は日本から流出しないとアナリストたちは見ている。
グローバル市場はまだ欧州情勢に対する懸念によって歪められた状態にあるため、この流動性は次の2カ所に落ち着く公算が大きいという。
1つは、市中銀行が日銀に開設している当座預金口座で、この口座の残高は資産買い入れプログラムの開始以降、ほぼ倍増している。もう1つは日本国債市場だ。指標となる10年物国債の利回りは現在、1年半ぶりの低水準に下がっている。
日銀当座預金と国債にしか向かわない慎重なマネー
このような状況が円相場――そして円安になれば緩和されるはずの国内のデフレ――に及ぼす影響は好ましいものではない。バークレイズのチーフエコノミスト、森田京平氏(東京在勤)は「今のところ、資金が進んで向かう先はこの2つしかない」と言う。
日本ではまだ、大半の種類の投資家が警戒感を抱いている。例えば、金融市場を揺さぶることができるほど資産規模が大きいために注視されている生命保険会社は、4月に始まった新年度においても円建て債券が運用の主体になると述べている。
最大手の日本生命は今週、同社の一般勘定資産49兆円に占めるヘッジ付き外国債券の割合は2013年3月まで、現在と同じ約11%になるだろうと述べた。また同社と、資産規模で第2位の第一生命は、今年度の対ドルの円相場の平均値を1ドル=80円と予想している。足元の81.45円よりやや円高の水準だ。
キャリートレード再開の動きもなく、国内志向を強める投資家
かつて円安要因となったキャリートレードの復活は見込めない?〔AFPBB News〕
日銀は今年2月半ば、資産買い入れプログラムを拡大すると同時に、インフレ率の「目途」という従来より確かな目標を採用して市場を驚かせた。
円はそれ以降、対ドルで5%下落したが、それにもかかわらず「キャリートレード」的な戦略の再開を試みた投資家はほとんどいない、とUBSの外国為替戦略部門の責任者、マンスール・モヒウディン氏は言う。
この戦略を取る投資家は、金利の低い円を日本国内で借り入れ、利息収入と為替差益を期待して外国に投資する。これがトレンドになれば、日本円は安くなる。
ところが財務省のデータによれば、日本の銀行と保険会社、および資産運用会社は2月半ば以降、外国の株式や債券、短期金融商品を累計で3310億円売却している。
個人投資家も国内志向を強めている。日本では個人が保有する非円建て資産の大部分を公募投資信託が占めているが、投資信託協会によれば、公募投資信託(株式投信追加型)に今年3月に純流入した資金はわずか128億円で、2月までは5カ月連続で純流出だった。
昨年11月以降、日本の家計が新興国一国(ブラジル)に保有する純資産は、ユーロ圏全体に抱える純資産より多くなっている。
正当化できない海外投資のリスク
「1%か2%程度の上乗せにしかならない海外利回りでは、リスクは正当化されない」。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの債券チーフストラテジスト、藤田昇悟氏(東京在勤)はこう言い、世界の市場環境は、2001年から2006年にかけての前回の日銀の金融緩和局面とは「全く異なる」と指摘する。
市場では、日銀が今月最初の金融政策決定会合で政策を据え置き、白川方明総裁が先週ニューヨークでの会合で、日銀は「強力な金融緩和を推進していく」ことに「完全にコミットしている」と語って以来、追加緩和に対する期待が高まってきた。
モルガン・スタンレーMUFG証券は、日銀の最新のインフレ予想は2月に定めた目標の1%に届かないと見ており、追加緩和の確率を「ほぼ100%」としている。2月の消費者物価指数(食品とエネルギーを除くコア指数)上昇率は、マイナス0.6%だった。
物価の下落は国債市場の魅力を高める。国債市場では、日銀のプログラムによる直接購入もあって、2年債の利回りが低下し、政策金利の上限である0.1%に近づいている。「利回りはほとんど動きようがない」とバークレイズの森田氏は言う。
内外の金利差が広がるまで状況は変わらない?
だが、海外の金利が日本の金利と大きく乖離し始めるまでは、日銀が何らかの形の量的緩和を採用する初の中央銀行になった後、日本から資金が大量流出した過去10年間と同じ流れが繰り返されることはない、とアナリストらは指摘する。
「(日銀としては)海外投資の急増で円安が進んだら嬉しいだろうが、そのような環境では全くない」。ラボバンクの金融市場調査部門の責任者、エイドリアン・フォスター氏(香港在勤)はこう話す。「日本の流動性の殺到に備えている人は誰もいない」
By Ben McLannahan
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35096
The Economist
原油高と経済:安いエネルギーの終焉?
2012.04.27(金)
原油高が経済に与える影響
原油価格が高止まりし、経済への逆風となっている〔AFPBB News〕
先進国経済は勢いをつけようとしているが、しつこい逆風が止まない。原油価格は依然として1バレル=100ドルを超えており、欧米の消費者に対して税金の役目を果たしている。
一部の人は、原油高を邪悪な投機筋のせいにする。バラク・オバマ大統領は4月17日、市場操作に対する罰則を強化する考えを明らかにした。たが、もっと簡単な説明がある。供給が不十分で、増加する需要に追いつかないのだ。
ピークオイル説の真偽
ピークオイルの概念――世界の原油産出量が限界に達したか、限界に近づいているという考え方――は決して普遍的に受け入れられているわけではない。ある有力な資産運用担当者は最近、米国のシェールガスの開発のおかげで、世界は「エネルギーで溢れかえっている」と語った。
とはいえ、石油は今も自動車やトラックの主要燃料だ。そして、原油生産量(バイオ燃料やガスから作られる液体燃料などの代替燃料ではなく、純然たる原油)は2005年以降、横ばいで推移している。
多くの国(英国、エジプト、インドネシアを含む)がここ数年間で、石油の純輸出国から純輸入国に転じた。また、先進国はエネルギーの大量消費を多少抑制してきたが、新興国では需要が急増し続けている。
おかげで石油市場は、リビア内戦などの一時的な供給混乱に対して極めて脆くなった。国際・欧州問題研究所(IIEA)とピークオイル・ガス研究協会(ASPO)が先日ダブリンで主催した会議で、ペトロリアム・レビューの顧問編集者、クリス・スクレボウスキー氏は、石油市場の余剰生産能力が2015年までに尽きる可能性があると主張した。
ピークオイル説を提唱したのは故M・キング・ハバート氏で、同氏は1956年に、米国48州の原油生産量が1970年頃までにピークに達すると正確に予想した。会議の席で国際通貨基金(IMF)のエコノミスト、マイケル・クムホフ氏は、近く公表予定の調査報告の結果を紹介した。エネルギー生産に「ハバート・ピーク」の理論を取り入れると、原油価格を予測するモデルの精度が大幅に高まる、というものだ。
このモデルによると、今後10年間で原油生産量が年間0.9%ずつ増加するという予測に基づくと、原油の実質価格は同じ期間に2倍近くに上昇するという。
こうした原油価格上昇がもたらす経済的な損失は小さく、1年間で世界のGDPの0.2%程度と見られる。これまで、原油価格の変動による長期的な影響は限定的だった。石油輸入国がどんな損失を被っても、石油輸出国の利益によって埋め合わされてきたからだ。
1980年代前半と2008〜09年の景気後退では原油高が一定の役目を果たしたが、その主な理由は、産油国は概して所得に対する限界消費性向が低く、世界の需要を押し下げたからだ。
それでもクムホフ氏は、原油価格が十分に高ければ、経済的な影響がかなり高まる恐れがあると心配している。最も極端な想定に基づくと、経済的な損失は年間2%に達する可能性があるという。
また、たとえ世界が新しい石油を見つけたとしても――例えば北極圏の油田や、タールサンドなど――、より長期的な問題は、「安価なエネルギー」の時代が終焉を迎えたかどうか、そして、もし終焉を迎えたのであれば、世界はどう適応できるか、ということだ。
安価なエネルギーで成り立ってきた戦後経済
先進国経済は、安価なエネルギーが容易に手に入ることを基盤として築かれている。何しろ先進国は世界中から運ばれてくる製品を輸入し、消費者はエアコンの効いた職場へ通うのに何マイルも車を運転し、年次休暇には太陽がさんさんと降り注ぐ地域に飛行機で飛ぶ。
しぶとい原油の高止まりは確実に代用(電気自動車や天然ガスで動くトラック)を促すだろうが、その移行費用は莫大なものになりかねない。
そのうえ、石油に代わり得る一部の代替燃料や新エネルギー源(バイオ燃料やタールサンドなど)は、単にそれを作り出すのに大量のエネルギーを要するという意味で、石油よりずっと効率が悪い。この方程式(エネルギー投資効率=EROI)が悪化している限り、経済成長に影響が及ぶのは確実だ。
「近代工業社会が存続するために必要なエネルギーシステムの最低限のEROI値は一体いくつなのか?」。学者のキャリー・キング氏とチャールズ・ホール氏は、最近発表した論文で、そう問いかけている。「複雑な社会ほど、大きな1次エネルギー基盤の上に築かれた高いEROIが必要になる」というのが、両氏の答えだ。
この問題は、金融政策や緊縮財政の影響、労働市場改革の必要性で頭がいっぱいの主流派エコノミストの間ではあまり検討されていない。だが、産業革命が石炭で成り立ったように、第2次世界大戦後の経済は安い石油の上に築かれた。その安い石油が完全に無くなってしまったとしたら、間違いなく重大な影響があるだろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35094
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