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#クルーグマン、竹中、中原、IMFからルービニまで言うことは同じ
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金融と財政緊縮の緩和が必要
2012年4月25日 水曜日 ノリエリ・ルービニ
欧州経済が再び悪化し始めた。ユーロ圏周辺国の金利が上昇している。欧州諸国が進める緊縮財政は需要の縮小を招く。成長にはつながらない。今必要なのは金融を一層緩和し、財政の緊縮を緩め、ユーロ安を誘導することだ。
欧州中央銀行(ECB)は2011年11月、マリオ・ドラギ新総裁の下で政策金利の引き下げに踏み切った。併せて、2度にわたる流動性供給オペレーションを実施。合計1兆ユーロを超える大量の資金をユーロ圏の金融システムに供給した。
この結果、ユーロ圏周辺国(ギリシャ、スペイン、ポルトガル、イタリア、アイルランド)において、金融市場が直面していた緊張が一時的に緩和された。ユーロ圏の金融システムにおいて、取りつけ騒ぎが起きる恐れはかなり小さくなった。イタリアとスペインの資金調達コストは、昨年秋の持続不可能な水準から低下した。
時を同じくしてギリシャは、形のうえではデフォルト(債務不履行)を回避した。同国は、半ば強制的な形ではあったが、公的債務を再編することができた。
ユーロ加盟国の財政規律を強化する新たな「財政協定」への合意と、ギリシャ、イタリア、スペインにおける新政府発足を受けて、これらの国が緊縮財政と構造改革に真剣に取り組むとの期待が高まった。さらに、ユーロ圏の新旧の救済システム(欧州安定メカニズム=ESMと、欧州金融安定基金=EFSF)の統合が決まり、ユーロ圏の防火壁は著しく強力になった。
だが、市場の安定は長続きしなかった。イタリアとスペインの金利は再び上昇し始めた。一方、ポルトガルとギリシャの借り入れコストは高止まりを続けている。必然的に、と言うべきだろう、ユーロ圏周辺国の景気後退は深刻化している。そして、フランス、ドイツといったコア諸国にまで景気後退が波及し始めている。2012年を通じて、景気は悪化の一途をたどるだろう。幾つもの理由から、筆者はこのような考えに至った。
緊縮財政が景気後退を呼ぶ
第1に、緊縮財政は、それがいかに必要であろうとも、経済の縮小を加速させる。増税、政府支出及び支出移転の削減は、可処分所得と総需要を減少させるからだ。しかも景気後退が一段と深刻さを増すにつれて財政赤字は拡大し、さらなる財政緊縮が必要となるだろう。そして今、「財政協定」が合意に至り、ユーロ圏のコア諸国でさえ、緊縮策の前倒しが避けられない情勢となっている。これは、景気を下押しする効果を持つ。
さらに、ユーロ圏周辺国が競争力を取り戻し、対外収支を改善させるには、ドルに対するユーロの為替レートが1ユーロ=1ドルまで下落する必要がある。ユーロ圏周辺国では、過去10年間に労働コストが30〜40%上昇したからだ。1ユーロ=1.30ドルかそれ以上になっても耐えられるのは、最強の競争力を誇るドイツだけだろう。
結局のところ、支出を抑え貯蓄を増やして債務を削減すれば、公・民両方の需要を冷え込ませる。こうした中で成長を回復させようと思えば、唯一の希望は、貿易収支を改善させることだ。そして、そのためにはユーロの大幅な下落が必要である。
一方、ユーロ圏周辺国の信用収縮は厳しさを増している。ECBによる長期低利貸し出しにより、銀行が抱える流動性の問題は一段落した。しかし、膨大な資本不足の問題は依然として解決していない。自己資本比率9%の基準を満たすことに難渋している彼らは、資産を売却し与信を絞り込むことで、目標の達成を図るだろう。これは景気回復への理想的なシナリオとは到底言えない。
緊縮財政に対する不満が膨らむ
事態を一層困難にしているのは、ユーロ圏が米国以上に石油輸入に依存していることだ。そして政治・政策環境の悪化により、石油価格は値上がりしている。
フランスでは「財政協定」に反対する大統領が当選するかもしれない。その大統領が打ち出す政策は、債券市場の不安をかき立てるだろう。景気後退から不況へ転じつつあるギリシャでも、議会の選挙が近づいている。直ちにデフォルトを宣言し、ユーロ圏から離脱する意向を明らかにしている政党への支持率が40〜50%に達する可能性がある。
アイルランドの有権者も、国民投票で「財政協定」に反対する恐れがある。スペインとイタリアでは、苦痛を強いる緊縮や改革に対する疲れが見え始めている。デモやストライキが拡大するなど、財政緊縮策に対する国民の反感が募っている。
生産性を向上させるのに必要な構造改革でさえ、短期的には景気を冷え込ませかねない。労働市場の柔軟性を高めることは、短期的には、官民双方でレイオフが増加することを意味する。これは所得と需要の落ち込みを増幅させるだろう。
最後に、出足は快調だったECBが今、ユーロ圏が求めている追加的な金融緩和を休止している。事実、複数のECB高官が石油ショックを受けて、インフレに対する懸念を声高に訴え始めた。
必要なのは成長戦略
問題は、ユーロ圏には何の成長戦略もないことだ。緊縮財政の戦略はあるものの、これは景気後退をもたらす。生産が縮小し続ければ、赤字と債務の比率が上昇を続ける。いずれ持続不可能になるからだ。しかも、社会的・政治的な抗議の声が抑えられなくなるだろう。
ユーロ圏周辺国で金利が再び上昇し始めているのは、これらの国々に成長戦略がないことが理由だ。周辺諸国はストックとフローの極度の不均衡に苦しんでいる。ストックの不均衡の一例は、GDP(国内総生産)に対する公的・民間債務の比率が、既に高いレベルから一段と上昇していることだ。フローの不均衡は、例えば景気後退の深刻化、国際競争力の大幅な低下、及び、大規模な対外債務である。言うまでもないが、市場は今、対外債務のファイナンスに消極的である。
金融を一段と緩和し、前倒しで進めている財政の緊縮を緩めない限り、ユーロの為替レートは低下しない。国際競争力は回復せず、景気後退は深刻の度を増すばかりだろう。成長が再開しない限り、2012年中に、ストックとフローの不均衡が一層持続不可能な水準に達する。そして、ユーロ圏のより多くの国が債務の再編に追い込まれる。そのうちの何カ国かは最終的に通貨同盟からの離脱を決断するだろう。
国内独占掲載 : Nouriel Roubini © Project Syndicate
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ノリエリ・ルービニ
ニューヨーク大学スターンビジネススクール教授。経済分析を専門とするRGEモニターの会長も務める。米住宅バブルの崩壊や金融危機の到来を数年前から的確に予測したことで知られる。
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