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クルーグマンの量的緩和論 橋下徹氏のためのデフレ入門&日銀法入門 
http://www.asyura2.com/12/hasan75/msg/734.html
投稿者 MR 日時 2012 年 4 月 24 日 22:47:50: cT5Wxjlo3Xe3.
 


http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51785608.html
2012年04月23日 08:20 経済 テクニカル
クルーグマンの量的緩和論
また橋下市長から質問があったが、ツイッターでは答えられないややこしい話なので、簡単に先日の記事を補足する。
池田信夫氏の論も分かるけど、だけどノーベル経済学賞のクルーグマン氏は量的緩和論。中央銀行、もっと量的緩和やれよと。池田氏はノーベル賞のクルーグマンの方が間違ってる!と言うのかな?政治家は数ある論のうちどれかを選択しなければならない。そのプロセスを作ることが重要だ。
ノーベル賞かどうかは、議論の中身と関係ない(ノーベル賞をもらったスティグリッツは量的緩和に反対している)。クルーグマンの議論には批判も多いが、彼は日本の量的緩和もよく知っており、最近はバランスのとれた議論をしている。きのうのブログでは、こう書いている:
QE is an attempt to get traction despite those zero short-term rates by buying long-term debt, hopefully narrowing the spread and thereby boosting the economy. I don’t think it’s had a large effect, but that’s the goal.
これは基本的には、私の先日の記事と同じだ。つまりゼロ金利では普通の金融政策はきかないが、長期債を買って長短金利のスプレッドをせばめる量的緩和には意味がある。大した効果があるとは思えないが、弊害がなければやってみる価値はあるというのが彼の意見だ。

量的緩和がインフレ予想を作り出せるなら意味があるが、そのためには中央銀行が長期的に緩和を続けるというコミットメントが必要だ。これが日銀の試みた時間軸政策で、植田和男氏もいうように一定の効果はあった。つまり日銀のコミュニケーションがへたなのでうまく伝わっていないが、クルーグマンのいうような政策は日銀がすでにやったのだ。

http://livedoor.blogimg.jp/ikedanobuo/imgs/d/5/d597be0c.jpg

池尾和人氏も指摘するように、日本の通貨供給量は、むしろ過剰である。上の図は横軸に名目GDP、縦軸に通貨供給量をとったものだが、通貨はGDPに比例する量の2倍以上になっている。クルーグマンもいうように量的緩和の効果は多分に心理的なものなので、日本のように金融緩和が慢性化していると、追加緩和の効果はほとんどない。


http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51785333.html 2012年04月21日 12:22 経済
橋下徹氏のためのデフレ入門

橋下市長から、インフレ目標についての質問があった。デフレとかインフレ目標については今まで何度も解説したが、ここでまとめておこう。
インフレ目標を嫌がる日銀のプロパガンダのような気がします。考察すべきは銀行が損をするかどうかではなくインフレ目標で名目GDPが伸びるかですよね。GDPが伸びれば貸出しで銀行は儲けが出るのでは? RT @ikedanob: 1%のインフレ目標を実現したら、まず銀行がつぶれる。
「インフレ目標で名目GDPが伸びる」とは、1%のインフレ目標を設定したら1%のインフレが起こるという意味だろう。日銀が目標を設定して通貨(マネタリーベース)をどんどん供給したらインフレになる、と思うだろうが、実際にはそういうことは起こらない。図のように2000年代前半にマネタリーベースを最大36%増やしても、物価は上がらなかった

http://livedoor.blogimg.jp/ikeda_nobuo/imgs/4/c/4cf5847b.jpg

その原因は、日本では金利がゼロに張りついているからだ。これがちょっとむずかしいところだが、日銀が通貨を供給するときは市中銀行から短期国債を買う。たとえば短期金利が2%だとすると、これが銀行の貸し出しの「原価」だから、日銀が通貨を供給して金利が1%になると、銀行が今まで貸せなかった企業にも貸せるようになり、資金が世の中に出回る――というのが、普通の金融緩和のメカニズムである。

ところが今のように金利がゼロになっていると、それ以上、金利を下げることはできないので、日銀がいくら通貨を供給しても銀行の貸し出し金利は下がらず、貸し出しが増えない。これを流動性の罠と呼ぶ。こういう状態で量的緩和で通貨供給量を増やしても、日銀に預けられている銀行の準備預金が積み上がる「ブタ積み」になってしまう。

それなら金利のついている証券を買えばいいじゃないか、という意見もある。たとえば長期国債の金利は約1%だから、日銀がどんどん買えば金利がゼロに近づき、緩和効果がある。しかし短期国債とは違って長期国債はリスク資産だから、もし暴落すると日銀が債務超過になる。これを防ぐためには政府が債務保証する必要があるので、結局は財政政策と同じだ。

このように中央銀行が国債を買って財政を支えることをマネタイゼーションと呼ぶ。無限にマネタイゼーションをやれば、いつかはインフレが起こる。問題は、どういうインフレが起こるかだ。今までにも数十兆円の買い入れは行なっているが、まったく効果がないので、普通の方法ではいくら国債を買っても何も起こらない。

インフレを起こすためには、インフレ予想を生み出す「レジーム・チェンジ」が必要だ。たとえば金子洋一氏が日銀総裁になって「インフレが起こるまで数百兆円の国債を引き受ける」と宣言すれば、通貨の信認が毀損されてインフレが起こるだろう。これは途上国でよくある財政破綻によるハイパーインフレである。

インフレが起こると、金利が上昇する。日銀の調べによれば、長期金利が1%ポイント上がると邦銀は6.4兆円の評価損をこうむるが、これは「銀行が損をする」というレベルではない。2010年度の邦銀の業務純益は3.2兆円だから、その2倍が吹っ飛び、自己資本が大きく浸食される。ハイパーインフレが起こると、金利上昇は1〜2%では止まらない。5%も上がれば、邦銀は全滅する。

つまりインフレを起こすことだけが目的なら簡単だが、それは金融危機と財政破綻のリスクをおかす史上最大のギャンブルなのだ。それに勝つ可能性も論理的にはあるが、圧倒的多数の経済学者はリスクが大きすぎると反対している。日本経済が崩壊するリスクに比べれば、1%以下のデフレ――大部分は輸入物価や技術革新による相対価格の変化――の弊害は大したものではない。

日銀が金融引き締めを行なっているなら、それを緩和すれば景気がよくなるが、ゼロ金利というのは究極の金融緩和であり、これ以上緩和することはできない。日本経済が停滞している原因は、人口減少や設備投資の低迷などの実体経済の問題であり、企業が努力しないで日銀がお札をばらまくだけで不況が解決するフリーランチはないのだ。

http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51784083.html
2012年04月13日 15:13 法/政治
橋下徹氏のための日銀法入門

大阪市の特別顧問に高橋洋一氏が就任したと聞いて危惧していたのだが、橋下市長が日銀法の改正に言及し始めた。
政治が日銀人事に口を出すのは当然だ。むしろ、目標の独立性と手段の独立性を混同している。目標は政治が決めるべき。そしてその目標を達成する手段は専門家に任せるべき。首長と教育委員会の関係と全く同じだ。日銀が全て正しい判断をするわけではない。
これは高橋氏がよくいう嘘である。日銀法には、その目的がこう書かれている。
第1条第2項 日本銀行は、前項に規定するもののほか、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資することを目的とする。
第2条 日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。
このように日銀の目的は、信用秩序の維持と物価の安定である。第4条では「それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない」と定められており、目的の独立性はない。しかし物価の安定のためにどういう政策手段をとるかについては、日銀の独立性が保証されている。

リフレ派は日銀の目的とインフレ目標を混同して、「政府がインフレターゲットを設定すべきだ」と主張するが、インフレ目標は政策手段であり、それを採用するかどうかは日銀の裁量の範囲である。日銀の独立性が保証されている意味は、教育委員会とは違う。今のように不況が続いて財政政策の余裕がなくなると、コストのかからない金融政策で景気を刺激しようという政治的圧力のかかるインフレバイアスがあるためだ。80年代には「円高不況」に低金利で対応したため、バブルを生んでしまった。

みんなの党などが主張しているように、日銀法を改正してインフレターゲットを政府が決め、達成できなかったら総裁を更迭するという規定を設ければ、日銀はあらゆる手段を使ってインフレを起こすだろう。それは副作用を無視すれば簡単である。植田和男氏もいうように、「(日銀が)財を大量に購入して廃棄するということを続ければ、デフレは止まる。中央銀行が政府の代わりに公共投資を大量に実施しても同じである」。

インフレターゲットを採用しているイギリスでも、その罰則はイングランド銀行の総裁が首相に手紙を出すだけだ。FRBの「インフレゴール」には罰則はない。複雑な金融の中で、インフレ率という一つの目標だけを絶対化することは危険だからである。日本経済の最大のリスクは1%以下のデフレではなく、GDPの2倍に積み上がった政府債務であり、日銀が無理な金融緩和を行うことは、財政破綻のリスクをおかすギャンブルである。

http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51785561.html
2012年04月22日 22:26 経済
「大分岐」から「大収斂」へ
Great Divergenceという言葉を最初に使ったのは、本書である。西洋が産業革命や資本主義などの「正しいコース」をたどったのに対して、中国がなぜ停滞したのかという従来の問いに対して、18世紀まで世界の最先進国だった中国をイギリスが抜く大分岐がなぜ起こったのか、という本書の問いは大きな論争を呼んだが、今日では「グローバル・ヒストリー」の一つのマイルストーンとみなされている。
本書が示したように、大分岐を生んだのが「資本主義」だという通説は疑わしい。18世紀のイギリスでは、資本は稀少ではなかったからだ。「産業革命」だというのも、当時の中国の高い技術水準を考えると疑問だ。西洋が中国を追い抜いた最大の要因は、土地と燃料だというのが、本書の仮説である。新大陸の発見や植民地の拡大で、西洋の経済成長を制約していた土地が「輸入」できるようになり、木材の代わりに石炭を利用したことで産業が発展したという。

他方、FTによると、19世紀の初頭には日本と中国の一人当たりGDPはほぼ同じであり、今おこっている大収斂は、200年前の状態に復帰する動きと考えることができる。図のように、現在の中国の成長率は1950年代の日本とほぼ同じであり、かつて日本が15年間にわたって10%成長を続けた世界記録を抜いて、20年間も10%成長を続けている。このまま成長すると、2030年の中国のGDPはアメリカとEUの合計より大きくなり、1人あたりでも日本と並ぶ。

これは市場経済でグローバルに一物一価が成立するという当たり前の経済法則なので、その均衡に到達するまで止めることはできない。特に賃金の均等化は、あと20年は続くだろう。これは世界的には大収斂だが、日本国内では大分岐をもたらす。中国で生産できる製造業の価格も賃金も中国に近づき、雇用も流出するだろう。それと代替的な単純労働の賃金も、QBハウスのように中国に近づくことは避けられない。一部の人々が「デフレ」と騒いでいる現象は、こうした200年ぶりの歴史の逆転の一コマにすぎないのである。


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コメント
 
01. 2012年4月25日 00:22:29 : IOzibbQO0w

>長期金利が1%ポイント上がると邦銀は6.4兆円の評価損〜2010年度の邦銀の業務純益は3.2兆円だから〜自己資本が大きく浸食される。
ハイパーインフレが起こると、金利上昇は1〜2%では止まらない。5%も上がれば、邦銀は全滅

1〜2%程度であれば、メガバンクはまず大丈夫だろう
地銀は一時的には債務超過で危ないが、日銀がサポートするなら、何とかなりそう

5%上昇は、流石に短期的にはないだろうが、将来
国内生産力が崩壊し、資源・食糧が高騰し、インフレ率も上昇、徹底的な空売りを浴びたらどうなるかはわからない

http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr120419a1.pdf
ドイツ国債利回りが2%pt 程度上昇するショックを仮定すると、日本・
米国の国債利回りはそれぞれ0.9%pt、2.5%pt 程度上昇する。このとき、外債と
日本国債の双方から債券時価損失が生じる(図表V-2-6)。大手行は地域銀行に
比べて外債の保有が相対的に多く、外債から損失を蒙りやすい。一方、地域銀
行は、日本国債からの損失が大きく、債券時価損失はTier I 資本対比で約19%と
大手行を上回る損失が発生する。
海外市場のショックから有価証券関係損益が発生する点は、生命保険会社も
同様である。生命保険会社について、欧州株価の下落ショックとドイツ国債利
回りの上昇ショックをそれぞれ想定すると、いずれのショックの場合でも有価
証券の時価損失によるソルベンシー・マージン比率の低下幅は150%pt〜200%pt
程度にとどまり、規制水準である200%を上回る水準を維持することが可能


02. 2012年4月25日 10:34:07 : 3CNLte9sGM
「金持ちと輪転機」BY PAUL KRUGMAN

以下の文は、Paul Krugman,”Plutocrats and Printing Press“の翻訳になります。誤字・誤訳の指摘はコメント欄にお願いします。

 ここ数年は多くの点で不毛の時代になっている――だが、耐え切れないほど愚かで、テーブルに頭をぶつけてしまいそうになるでたらめな経済理論はブームに沸いている。最近の流行は――今日のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のこの記事が典型的だが――拡張的な金融政策が広く銀行や金持ちへのプレゼントになっているというものだ。実際、WSJの長たらしい記事が主張しているのは、1対99のことを言うのならFRBを制御するか、もしくは廃止するべきだということだ。そして、不幸なことにダロン・アセモグルとサイモン・ジョンソンのようなすばらしい人の中にも、少なくともこのお話の一バージョンを受け入れている人がいる。

輪転機を回すことが金持ちへのプレゼントになっているという考えの何が間違ってるのか? いくつ間違ってるのか挙げてみよう。

最初に、ジョー・ワイゼンタールとマイク・コンツァルが共に指摘しているように、実際の政治はそこで主張されているものと正反対だ。量的緩和は資本家や利子生活者によって無自覚な大衆に押し付けられたものではない。それは、ある程度まで、金融産業からの抗議の怒号の声に逆らって実行されたものだ。えーっと、WSJの社説欄のどこでFRBにインフレ目標値を引き上げるように要求してるのかな?

それはともかく、経済学の話に移ろう。

FRBの政策に関する単純な(あるいは、わざと誤解を誘う)解釈では、ベン・バーナンキが銀行に「お金をあげている」ということになっている。もちろん、実際にFRBがしているのはなんからかのもの、近頃は別のものもあるが普通は短期国債を買うことだ。それは贈り物じゃない。

それが実質的なプレゼントだと主張するためには、FRBの支払う価格が人為的に高いか、同じように、その利子率が人為的に押し下げられていると主張する必要がある。実際、そのような結果になっているとする主張を絶えず目にしているはずだ。でも、数分考えれば、そのような主張はまったく奇妙なものだと分かる。

いったい、非人為的とか、お好みなら「自然な」利子率とかって何なのか? 結論から言うと、ヴィクセル以来、自然利子率には標準的な定義があって、それは基本的に理論よりも実態によって(プリンは食べてこそ証明できるものってこと)定義されている。大まかに言えば、自然利子率とはほぼ完全雇用の状態でインフレが安定的になる利子率のことだ。

そして、現在のアメリカが高失業で低インフレであることから、自然利子率は現行の水準よりも低いところにあり、キーになる問題は抜け出すことができないゼロ下限だということが強く示唆される。現在の状況の下では、拡張的なFRBの政策は銀行へのプレゼントといったものではなく、経済が必要としているものを与えるための取り組みそのものである。

さらに言えば、FRBが行っているこのような取り組みは、平均的には、銀行を助けるものではなく、傷つけるものとなる。銀行は主に短期で借りて、長期で貸すのが商売である。つまり、短期金利と長期金利のスプレッドを圧縮するものは全て彼らの利益にとって悪いものになりがちだ。そして、FRBがやろうとしていることは、投資家にゼロ短期金利の長期化を確信させるものであったり、長期資産を買い取ったりすることによってそのスプレッドを圧縮することになる。こういった行動は銀行を怒らせるものであって、幸せにするものではないと予想してしかるべきもの――そして実際にそうなってる――である。

最後に、どうやったら拡張的金融政策が99%の人々を傷つけることになるのか? 言われているような、固定所得を糧としている人々のことを考えてほしい。そういった人ってどんな人? 僕はその絵が思い浮かぶ:銀行口座からの利子率と固定的な年金給付で暮らしてる定年退職した人――間違いなくこの描写とピッタリ合う人は存在する。でも、そういった人の数は多くない。

近年では、典型的なアメリカの定年退職した人は主に社会保障――それはインフレに連動している――に依存している。彼らにも銀行口座からの利子所得があるかもしれない。でも、それは大した額ではない:平凡なアメリカ人は、エリートが軽く考えるのとは違い、ほとんど金融資産を持ってない。年金についてはどうか:たしかに、インフレとは連動していない確定給付型年金がある人もいる。でも、それは先細りの少数派である――そして、もう1、2%高いインフレはこれら少数派の人々にさえ重大な影響を与えるものではない。

いやいや、拡張的な金融政策による真の犠牲者は、まさに現代の神話の中でこの政策を推進しているとされてるやつらってわけだ。そのことが、なぜそれに対する反対論を聞かされ続けているかの理由を物語っている。ジョージ・オーウェル的な世界、それこそが僕らの生きている世界なんだ。
http://econdays.net/?p=6441

クルーグマン「健忘症だのみのロムニー」(2012年4月22日)

(Paul Krugman, “The Amnesia Candidate,” New York Times, April 22, 2012)

「ミット・ロムニーはぼくらをどれだけバカだと思ってるんだろう?」 彼の選挙戦をはじめからずっと追っかけてる人なら,こんな疑問がこれまで何度となく頭をよぎったはずだ.

ただ,ここにきてこの疑問がとくに強烈なものになってる.先週,ロムニー氏が閉鎖になったオハイオ州の乾式壁工場をオバマ政権による経済失政の象徴にしたてあげようとしたのがそのきっかけだ.

なにより,多くの報道がすぐさま指摘したように,どういうわけかロムニー氏が言及しないでいた点がある:それは,バラク・オバマではなくジョージ・W・ブッシュが大統領だったときにその工場が閉鎖されたという点だ.ロムニー陣営は,彼の前任者の執政でアメリカ人にオバマ大統領を非難してほしいんだろうか?

実はそうなんだよ.ロムニー氏はオバマ氏のもとで失われた雇用についてひっきりなしに語ってる.でも,その雇用喪失のすべては,20009年の開始数ヶ月で起きている.つまり,新政権の政策がどれひとつとしてまだまだ実施されていなかったときに起きてるわけだ.ということは,オハイオ州での演説は,ロムニー陣営が世間が健忘症にかかってオバマ氏が引き継いだ時点ですでに経済の急降下は始まっていたことを思い出しませんように,と願っているのをはっきりと例証しているわけだ.

ロムニー陣営は「オバマの」雇用喪失はオバマの政策が実行される前に起きていたというやっかいな現実をどうかたづけるつもりなんだろう? 工場の閉鎖について質問されたとき飛び出た主張によれば,たしかにオバマ氏は深く問題にはまりこんだ経済を受け継いだけれど,彼はいままでにこれを解決済みにしておくべきだったんだそうだ.ロムニー氏の相談役に言わせると,たしかに工場はいまも閉鎖しているけれど,それはオバマの政策が「経済をふたたび回転させること」に失敗したせいらしい.

実のところ,あの工場は経済が好調になっていてもまだ閉鎖したまんまだったはずだ――乾式壁は主に新築住宅で使用されている.経済の調子はもどってきてるのかもしれないけれど,ブッシュ時代みたいな住宅ブームは復活しそうにない.

ただ,ロムニー氏が宣伝用写真に使うのに工場の選択を間違ったのさておき,経済回復のじゅうぶんに促進できていないといってオバマ氏を非難する方が,ブッシュの政策でオバマを非難するのよりはマシにはちがいないだろう.でも,たいしてマシなわけじゃあない.なにしろ,ロムニー氏は本質的にブッシュ時代とそっくり同じ政策に回帰するのを主張しているからだ.彼は,あの頃の政策がどれだけひどかったか,みんなが覚えていないようにと願っていることだろう.

ブッシュ時代は,たんに破局に終わっただけじゃない.そのはじまりもろくなものじゃなかった.そう,オバマ氏の雇用面の数字は期待はずれなものではあった――でも,ブッシュ氏の政権でそれに相当する時期の数字よりはまちがいなくマシだ.

これは,民間部門の雇用に注視すると,とくによく成り立っている.オバマ時代の雇用全体は,学校教員とそれ以外の州・地域政府の雇用の大量レイオフがあったせいで増加を抑えられている.でも,民間部門の雇用は政権初期の数ヶ月に失われた分をほぼ取り戻している.これは,ブッシュ時代と比べてすぐれている:2004年当時,民間の雇用は240万人にすぎず,ブッシュが政権を取ったときの水準を下回っていた.

そうそう,あの学校教員の大量レイオフはどこで起きていると思う? その大半は,共和党が支配してる州で起きてるんだよ:公的雇用の喪失のうち,70パーセントはテキサスか共和党が最近掌握した州で生じている.

ここで,話は健忘症だのみの選挙戦にみられるもう一つの側面にうつる:ロムニー氏は,2009年以降の経済政策のいたらなさ(一部は2008年に起きたやつのも)を,すべていまホワイトハウスにいる男のせいだとみんなに思わせ,共和党が支配してる州政府が果たしてる役割だとか,オバマ氏が就任初日から政治的な焦土戦による反対を受け続けている事実は忘れてもらいたがっている.基本的に,共和党はできるかぎり最大限まで政権の努力を邪魔してきておいて,政権はじゅうぶんな手を打ってこなかったとしれっと非難している..

さて,じゃあ,「オバマ氏はできるかぎりのことをした」「政治的な反対にさえあわなければ万事順調だった」とぼくは言わんとしているのかっていうと,まさか,とんでもない.政治的な制約はあったにせよ,政権は2009年にやるべきだったしやれたことを全部やったわけじゃない.とくに,住宅に関してはそうだ.さらに,オバマ氏は,焦点を雇用から赤字削減に転じるワシントンの破滅的な「ピボット」に積極的に関与した.

それに,政権は繰り返し自己満足にはまりこんできた――ほんの数ヶ月でもいい知らせがでてくると,さらなる行動の必要を力説するかわりに,その知らせを口実にしてその場の名誉に安住した.2010年にもそうしたし,2011年にもそうした.今年も,ある程度まで同じことを繰り返している.だから,現政権の経済運営については,妥当な批判の余地がある.

でも,それはロムニー氏がやってるような批判とは別物だ.むしろ,彼は基本的にオバマ氏がジョージ・ブッシュの三期目ででもあるかのように振る舞わなかったことを攻撃している.そんな攻撃が通るほど,アメリカ人は――そしておそらくもっと重大なところとして,報道メディアは――物忘れがはげしいものだろうか? これはそのうちはっきりするだろうね.

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クルーグマン「事実無用時代の選挙戦」(NYT,2011年12月22日)

http://econdays.net/?p=1553
緊縮財政か繁栄か
BY RUSS ROBERTS

10月7日にCafe Hayekに掲載されたRussell RobertsのAusterity or prosperity?の訳。誤訳の指摘お願いします。

ケインジアンにどうやって政府の財政支出が繁栄をもたらすのかの実証的な証拠を求めたとき、彼らの1番良くて頻繁に返される答えは、どうやって第二次世界大戦が恐慌を終わらせたのか、というものだ―そう、大規模な赤字財政の政府支出の増加が終わらせたのだ、と。しかし、ロバート・ヒッグズが指摘しているように、失業の激減はケインズ乗数の魔法によるものというよりむしろ徴兵制によるものだ―アメリカ人は軍隊に入れさせられたのだから。ヒッグズは、GDPの上昇は政府の生産性の価値を測るという問題(請け負っている政府の下で依頼された戦車の価格は車の価格を意味するものなのだろうか?)と価格統制(いくつかのものは安かったが自由には買えなかった)によって歪められていると主張する。

私はより逸話に富んでいるが多分より説得力のある論拠を用いる。戦時中、アメリカにもイギリスにもドイツにも繁栄は存在しなかった。その時代を駆け巡った人でその時代を経済活動が急成長していた時代として回想する人はどこにもいない。その時代は、あなたが戦車や爆弾や銃弾を作ることに従事していない限り、苦難と困窮の時代だった。そこにケインズ乗数は無かった。戦車に費やした1ドルは、民間経済を「刺激」などしなかった。1ドルの政府支出は1.52ドルの経済生産性を生み出しはしなかった。より多くの戦車は、鉄や労働者がより高価になるため、より少ない自動車を意味した。そして民間が使える資源はより少なかった。

私がこのことについて私の協力者であるジョン・パポラに話したとき、彼は私の主張を軽くいなしているポール・クルーグマンのこの記事を指し示した。先の記事でクルーグマンは、第二次世界大戦でのGDPの上昇はざっと財政支出額と同じ程度だという私と似た見解を展開している、ボブ・ホールとスーザン・ウッドワードのこの記事に反応していた。そこに刺激的な効果は無かった。ホールとウッドワードはマイナスの効果があると主張しているわけではない―測定に関するヒッグズの主張との関連もある。しかし、彼らは、経済の残りの部分にプラスの効果など決して無かったと主張しているのだ。

それでもクルーグマンはケインズ乗数はまだまだ健在だと主張したいようだ。彼はホールとウッドワード(そして恐らく私の主張にも同様に)に2語(原文)で返答している:

ふむ、配給かい?

“”
それからアメリカの歴史のウェブサイトから引用している:

第二次世界大戦が始まると、おびただしい数の挑戦がアメリカの人々の前に立ちはだかった。政府は戦時の間、食料、ガソリン、服までも配給する必要性を見出した。アメリカ人は全てのものを大切にするよう要請された。戦争の影響を受けないものは誰一人としておらず、配給は全てを犠牲にすることを意味した。

“”
ここにいるみんなを助けてやってくれ。私や他の2人は第二次世界大戦での政府支出―債務によって賄われた政府支出の巨大なスパイク波形だ―は繁栄や景気回復をもたらしはしなかったと主張している。爆弾は食べられないし、戦車は着れないし、銃弾でコーヒーを甘くすることもできないので、それは苦難をもたらすだけだった。そしてクルーグマン、ノーベル賞をもらい、しっかりと訓練された経済学者が、私たちは間違っていると主張する。それはケインズ乗数の失敗では無かった、と。私たちが間違っている理由は、アメリカ政府が配給という政府のプログラムによって人々に少ないけれども十分な量を手に入れるよう強制したとしていることにあるという。クルーグマンは、それがもし配給のためでなかったとしたらそのすべての栄光の中にケインズ乗数を見ることができただろうという主張をしているように見える。一体彼は何について話しているというんだ? 彼は配給が欠乏への反応というより欠乏を生み出したと考えているのだろうか?

ケインズ乗数のもっとも愚かな面の1つは1.52のように不変なものとして扱うことにある。それは不変ではありえないし、意味のある方法でもない。もし政府がアメリカの人口の半分を1日中穴を掘らせることに従事させ、もう半分にそれを埋めさせ、全員それぞれに日給として10億ドルを支払い、掘って埋めた穴を1兆ドルと評価すれば、GDPは非常に、非常に高くなり、失業はゼロになるだろう。しかしそこに刺激的な効果は無く、私たちはすぐに餓死するだろう。(人々を働かせる際の配置についてはここでは無視する。)

第二次世界大戦が民間部門を刺激しなかったという事実は、ケインズ主義がいつも失敗するということを証明するものではない。もしかしたらより小さい軍隊とより少ない戦車なら違ったかもしれない。しかしそれは間違いなくケインズ主義の成功を証明するものでもない。ケインズ主義は成功しなかった。ケインズ主義は民間部門を刺激しなかった。ケインズ乗数は、政府の契約の受け取り手として、元々の支出に50セントや2ドルを上乗せしたり、労働者が使えるお金を増やすことはなかった。ケインズ乗数は民間部門を餓死させた。それはケインズ刺激の例としては失敗だったのだ。

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03. 2012年4月25日 11:25:36 : v7a8Ab2mMw
そもそも本当に日本でハイパーインフレが起こると信じているのが、バカらしい。

>>長期金利が1%ポイント上がると邦銀は6.4兆円の評価損〜2010年度の
>>邦銀の業務純益は3.2兆円だから〜自己資本が大きく浸食される。

バカ。
マスコミのフロパガンダを真に受けてる。
会計上「満期保有の債権」で計上されているものは、含み損益を決算に計上しなくも良いから、損失が計上されることはない。

 金融庁への報告は満期保有の債権(含み損益を計上しない)についても含み損益がどのように変動するかと言う理論値を計算して報告しており、実際にこの額がすべて単年度の決算に一括して計上される訳ではない。

もし、その事がヘッジ・ファンドの標的になるようなら、金融庁が「国債についての取扱」をリーマンショックの時のように変更して「含み損を自己資本から控除しなくても良い」ようにすればよい。
それだけで解決する。

 リーマンショックの時はアメリカの問題で「迷惑」をこうむって特別措置をすることになったのだから、文句がでるからと言うような事はないと思うが。
 それでガタガタ言うようなら、単なる「言いがかり」にしか過ぎない。


04. 2012年4月25日 11:51:28 : IOzibbQO0w

>>02 ベン・バーナンキが銀行に「お金をあげている」

これは緩和で株などリスク資産が上昇し、投資家ばかりが儲けているという批判ではないか?

だからいわゆる銀行業務ではなく、自分でポジションを持つ投資銀行批判だろうが

今は、多くの米銀ではほとんど自己勘定取引部門は閉鎖されているから

いずれにせよ銀行批判は、やや見当はずれか


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