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http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51785608.html
2012年04月23日 08:20 経済 テクニカル
クルーグマンの量的緩和論
また橋下市長から質問があったが、ツイッターでは答えられないややこしい話なので、簡単に先日の記事を補足する。
池田信夫氏の論も分かるけど、だけどノーベル経済学賞のクルーグマン氏は量的緩和論。中央銀行、もっと量的緩和やれよと。池田氏はノーベル賞のクルーグマンの方が間違ってる!と言うのかな?政治家は数ある論のうちどれかを選択しなければならない。そのプロセスを作ることが重要だ。
ノーベル賞かどうかは、議論の中身と関係ない(ノーベル賞をもらったスティグリッツは量的緩和に反対している)。クルーグマンの議論には批判も多いが、彼は日本の量的緩和もよく知っており、最近はバランスのとれた議論をしている。きのうのブログでは、こう書いている:
QE is an attempt to get traction despite those zero short-term rates by buying long-term debt, hopefully narrowing the spread and thereby boosting the economy. I don’t think it’s had a large effect, but that’s the goal.
これは基本的には、私の先日の記事と同じだ。つまりゼロ金利では普通の金融政策はきかないが、長期債を買って長短金利のスプレッドをせばめる量的緩和には意味がある。大した効果があるとは思えないが、弊害がなければやってみる価値はあるというのが彼の意見だ。
量的緩和がインフレ予想を作り出せるなら意味があるが、そのためには中央銀行が長期的に緩和を続けるというコミットメントが必要だ。これが日銀の試みた時間軸政策で、植田和男氏もいうように一定の効果はあった。つまり日銀のコミュニケーションがへたなのでうまく伝わっていないが、クルーグマンのいうような政策は日銀がすでにやったのだ。
http://livedoor.blogimg.jp/ikedanobuo/imgs/d/5/d597be0c.jpg
池尾和人氏も指摘するように、日本の通貨供給量は、むしろ過剰である。上の図は横軸に名目GDP、縦軸に通貨供給量をとったものだが、通貨はGDPに比例する量の2倍以上になっている。クルーグマンもいうように量的緩和の効果は多分に心理的なものなので、日本のように金融緩和が慢性化していると、追加緩和の効果はほとんどない。
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51785333.html 2012年04月21日 12:22 経済
橋下徹氏のためのデフレ入門
橋下市長から、インフレ目標についての質問があった。デフレとかインフレ目標については今まで何度も解説したが、ここでまとめておこう。
インフレ目標を嫌がる日銀のプロパガンダのような気がします。考察すべきは銀行が損をするかどうかではなくインフレ目標で名目GDPが伸びるかですよね。GDPが伸びれば貸出しで銀行は儲けが出るのでは? RT @ikedanob: 1%のインフレ目標を実現したら、まず銀行がつぶれる。
「インフレ目標で名目GDPが伸びる」とは、1%のインフレ目標を設定したら1%のインフレが起こるという意味だろう。日銀が目標を設定して通貨(マネタリーベース)をどんどん供給したらインフレになる、と思うだろうが、実際にはそういうことは起こらない。図のように2000年代前半にマネタリーベースを最大36%増やしても、物価は上がらなかった
http://livedoor.blogimg.jp/ikeda_nobuo/imgs/4/c/4cf5847b.jpg
その原因は、日本では金利がゼロに張りついているからだ。これがちょっとむずかしいところだが、日銀が通貨を供給するときは市中銀行から短期国債を買う。たとえば短期金利が2%だとすると、これが銀行の貸し出しの「原価」だから、日銀が通貨を供給して金利が1%になると、銀行が今まで貸せなかった企業にも貸せるようになり、資金が世の中に出回る――というのが、普通の金融緩和のメカニズムである。
ところが今のように金利がゼロになっていると、それ以上、金利を下げることはできないので、日銀がいくら通貨を供給しても銀行の貸し出し金利は下がらず、貸し出しが増えない。これを流動性の罠と呼ぶ。こういう状態で量的緩和で通貨供給量を増やしても、日銀に預けられている銀行の準備預金が積み上がる「ブタ積み」になってしまう。
それなら金利のついている証券を買えばいいじゃないか、という意見もある。たとえば長期国債の金利は約1%だから、日銀がどんどん買えば金利がゼロに近づき、緩和効果がある。しかし短期国債とは違って長期国債はリスク資産だから、もし暴落すると日銀が債務超過になる。これを防ぐためには政府が債務保証する必要があるので、結局は財政政策と同じだ。
このように中央銀行が国債を買って財政を支えることをマネタイゼーションと呼ぶ。無限にマネタイゼーションをやれば、いつかはインフレが起こる。問題は、どういうインフレが起こるかだ。今までにも数十兆円の買い入れは行なっているが、まったく効果がないので、普通の方法ではいくら国債を買っても何も起こらない。
インフレを起こすためには、インフレ予想を生み出す「レジーム・チェンジ」が必要だ。たとえば金子洋一氏が日銀総裁になって「インフレが起こるまで数百兆円の国債を引き受ける」と宣言すれば、通貨の信認が毀損されてインフレが起こるだろう。これは途上国でよくある財政破綻によるハイパーインフレである。
インフレが起こると、金利が上昇する。日銀の調べによれば、長期金利が1%ポイント上がると邦銀は6.4兆円の評価損をこうむるが、これは「銀行が損をする」というレベルではない。2010年度の邦銀の業務純益は3.2兆円だから、その2倍が吹っ飛び、自己資本が大きく浸食される。ハイパーインフレが起こると、金利上昇は1〜2%では止まらない。5%も上がれば、邦銀は全滅する。
つまりインフレを起こすことだけが目的なら簡単だが、それは金融危機と財政破綻のリスクをおかす史上最大のギャンブルなのだ。それに勝つ可能性も論理的にはあるが、圧倒的多数の経済学者はリスクが大きすぎると反対している。日本経済が崩壊するリスクに比べれば、1%以下のデフレ――大部分は輸入物価や技術革新による相対価格の変化――の弊害は大したものではない。
日銀が金融引き締めを行なっているなら、それを緩和すれば景気がよくなるが、ゼロ金利というのは究極の金融緩和であり、これ以上緩和することはできない。日本経済が停滞している原因は、人口減少や設備投資の低迷などの実体経済の問題であり、企業が努力しないで日銀がお札をばらまくだけで不況が解決するフリーランチはないのだ。
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51784083.html
2012年04月13日 15:13 法/政治
橋下徹氏のための日銀法入門
大阪市の特別顧問に高橋洋一氏が就任したと聞いて危惧していたのだが、橋下市長が日銀法の改正に言及し始めた。
政治が日銀人事に口を出すのは当然だ。むしろ、目標の独立性と手段の独立性を混同している。目標は政治が決めるべき。そしてその目標を達成する手段は専門家に任せるべき。首長と教育委員会の関係と全く同じだ。日銀が全て正しい判断をするわけではない。
これは高橋氏がよくいう嘘である。日銀法には、その目的がこう書かれている。
第1条第2項 日本銀行は、前項に規定するもののほか、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資することを目的とする。
第2条 日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。
このように日銀の目的は、信用秩序の維持と物価の安定である。第4条では「それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない」と定められており、目的の独立性はない。しかし物価の安定のためにどういう政策手段をとるかについては、日銀の独立性が保証されている。
リフレ派は日銀の目的とインフレ目標を混同して、「政府がインフレターゲットを設定すべきだ」と主張するが、インフレ目標は政策手段であり、それを採用するかどうかは日銀の裁量の範囲である。日銀の独立性が保証されている意味は、教育委員会とは違う。今のように不況が続いて財政政策の余裕がなくなると、コストのかからない金融政策で景気を刺激しようという政治的圧力のかかるインフレバイアスがあるためだ。80年代には「円高不況」に低金利で対応したため、バブルを生んでしまった。
みんなの党などが主張しているように、日銀法を改正してインフレターゲットを政府が決め、達成できなかったら総裁を更迭するという規定を設ければ、日銀はあらゆる手段を使ってインフレを起こすだろう。それは副作用を無視すれば簡単である。植田和男氏もいうように、「(日銀が)財を大量に購入して廃棄するということを続ければ、デフレは止まる。中央銀行が政府の代わりに公共投資を大量に実施しても同じである」。
インフレターゲットを採用しているイギリスでも、その罰則はイングランド銀行の総裁が首相に手紙を出すだけだ。FRBの「インフレゴール」には罰則はない。複雑な金融の中で、インフレ率という一つの目標だけを絶対化することは危険だからである。日本経済の最大のリスクは1%以下のデフレではなく、GDPの2倍に積み上がった政府債務であり、日銀が無理な金融緩和を行うことは、財政破綻のリスクをおかすギャンブルである。
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51785561.html
2012年04月22日 22:26 経済
「大分岐」から「大収斂」へ
Great Divergenceという言葉を最初に使ったのは、本書である。西洋が産業革命や資本主義などの「正しいコース」をたどったのに対して、中国がなぜ停滞したのかという従来の問いに対して、18世紀まで世界の最先進国だった中国をイギリスが抜く大分岐がなぜ起こったのか、という本書の問いは大きな論争を呼んだが、今日では「グローバル・ヒストリー」の一つのマイルストーンとみなされている。
本書が示したように、大分岐を生んだのが「資本主義」だという通説は疑わしい。18世紀のイギリスでは、資本は稀少ではなかったからだ。「産業革命」だというのも、当時の中国の高い技術水準を考えると疑問だ。西洋が中国を追い抜いた最大の要因は、土地と燃料だというのが、本書の仮説である。新大陸の発見や植民地の拡大で、西洋の経済成長を制約していた土地が「輸入」できるようになり、木材の代わりに石炭を利用したことで産業が発展したという。
他方、FTによると、19世紀の初頭には日本と中国の一人当たりGDPはほぼ同じであり、今おこっている大収斂は、200年前の状態に復帰する動きと考えることができる。図のように、現在の中国の成長率は1950年代の日本とほぼ同じであり、かつて日本が15年間にわたって10%成長を続けた世界記録を抜いて、20年間も10%成長を続けている。このまま成長すると、2030年の中国のGDPはアメリカとEUの合計より大きくなり、1人あたりでも日本と並ぶ。
これは市場経済でグローバルに一物一価が成立するという当たり前の経済法則なので、その均衡に到達するまで止めることはできない。特に賃金の均等化は、あと20年は続くだろう。これは世界的には大収斂だが、日本国内では大分岐をもたらす。中国で生産できる製造業の価格も賃金も中国に近づき、雇用も流出するだろう。それと代替的な単純労働の賃金も、QBハウスのように中国に近づくことは避けられない。一部の人々が「デフレ」と騒いでいる現象は、こうした200年ぶりの歴史の逆転の一コマにすぎないのである。
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