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エンジニアは会社よりも自分のことを考えよう!
【第1回】 2012年4月24日
ちきりん,竹内 健
沈みゆく会社から
なぜエンジニアは逃げ出さないのか?
人気ブロガー・ちきりんさんの今回の対談相手は、フラッシュメモリ開発、次世代メモリの研究で世界をリードする竹内健・中央大学教授です。竹内氏が1月に著わした『世界で勝負する仕事術』(幻冬舎新書)を読んで大感動のちきりんさん。今回は、ちきりんさんからの熱烈要望で特別対談が実現しました。
東芝、スタンフォード大ビジネススクール、そして大学の研究室へと、常に活躍の場を変えながらも最先端フラッシュメモリの研究・開発に携わってきた竹内教授。日本の半導体メーカーの現状を、ホンネで話していただきました(構成:本丸 諒)。
フラッシュメモリの神様が、人生を変えた
竹内 対談って、実は初めてなんです。私は正真正銘、コテコテのエンジニアですから、講演や学会で一方的に話すことはありますけど。
竹内 健(たけうち・けん)
中央大学理工学部 電気電子情報通信工学科 教授。1967年東京都生まれ。93年、東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻修士課程修了。工学博士。同年、(株)東芝に入社し、フラッシュメモリの開発に携わる。2003年、スタンフォード大学ビジネススクール経営学修士課程修了(MBA)。帰国後は東芝フラッシュメモリ事業の製品開発のプロジェクトマネジメントや企業間交渉、マーケティングに従事。2007年、東芝を退社し、東京大学大学院工学系研究科准教授を経て、2012年4月からは中央大学理工学部教授。フラッシュメモリ、次世代メモリの研究・開発で世界的に知られる。著書に『世界で勝負する仕事術』(幻冬舎新書)がある。
ちきりん 先生の書かかれた『世界で勝負する仕事術』(幻冬舎)を拝読させて頂き、ぜひお会いしたいと思いました。私のことは今回の本の紹介で、初めて知っていただいたんですよね?
竹内 いえ、知ってましたよ。ちきりんさんがブログで、「ソニーのテレビ事業部に配属された新入のエンジニアはとてもかわいそうだ、卒業時は日本で最も優秀なエンジニアだったはずなのに、8年間も赤字部門で働かされていたなんて」と書かれているのを見て、私も以前は東芝のエンジニアでしたからズシンと心に響きましたよ。そのあと、「技術も知らない奴が、なにを言ってる!」みたいな反論がだいぶあったみたいですが、ちきりんさんの意見のほうがよっぽど的を射ていると思いました。
ちきりん 先生にそう言っていただけると、心強いです。ソニーに限りませんが、理工系の一流大学院で学び、一流メーカーに入社した優秀な若者が、8年後の33歳まで「たった1円の利益も稼いだ経験がない」って、明らかになにかがおかしいと思ったんです。
赤字でもそれなりの給料をもらっているわけですけど、それって全部、他部門の人たちが稼いできたお金ですよね。あるいは、過去のテレビ事業部の人たちの遺産だったり、もしかしたら銀行からの借入金を回しているだけかもしれません。8年間もそんな状態では、それが当たり前になってしまいます。
彼らがかわいそうだと思うのは、20代、30代をそんな負け戦の続くところで過ごしてきた人が、40代になった時、世界をリードする商品を開発できるエンジニアになれるのか、ということです。そんなところに閉じ込めていたら、有望な若手の可能性を毀損してしまう。
竹内 その通りです。
次のページ>> 東芝に入ったわけ
ちきりん ところで、先生はどのような経緯で東芝に入社されたんですか?
竹内 私は東大の工学部物理工学科に進学したんですが、そこにはノーベル賞候補の先生がたくさんいて、将来、そういう先生のようになりたいと憧れていました。基礎研究をやりたかったんですね。
ご存じのように、工学部というのは、基礎研究ではなくて応用研究が本分ですよね。でも、私はホントは電気とか通信、機械のような産業分野での技術開発とか製品開発って、俗っぽくて嫌だったんですよ。お金儲けよりも自然界の根本原理を見つける仕事のほうがずっと高尚だと考えていたんです。
ちきりん
関西出身。バブル最盛期に証券会社で働く。その後、米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。マネージャー職を務めたのちに早期リタイヤし、現在は「働かない生活」を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦などを含め、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログ「Chikirinの日記」を開始。政治・経済からマネー・問題解決・世代論まで、幅広いテーマを独自の切り口で語り人気を博す。現在、月間150万以上のページビュー、日に2万以上のユニークユーザーを持つ、日本でもっとも多くの支持を得る個人ブロガーの1人。著書に『ゆるく考えよう』(イースト・プレス)、『自分のアタマで考えよう』(ダイヤモンド社)がある。
ちきりん それなのに、なぜ民間企業に?
竹内 大学院の時、たまたま先輩から「東芝に企業訪問するから、おまえも一緒に来ないか」と誘われたんです。私は大学に残るつもりだったので、就職する気なんか全然なかったんです。でも、当時はバブルがはじけたといっても、まだ企業訪問をすれば食事をごちそうしてもらえるような、とてもいい時代だったんですよ。そこでメシに釣られて東芝に行ったら、舛岡富士雄さんという人に会ってしまった。
ちきりん 舛岡さんって、フラッシュメモリを開発した方ですよね。私も、名前だけは存じ上げています。
竹内 その舛岡さんです。フラッシュメモリというのは、デジカメ、USBカード、iPhone、iPadなどに使われている記憶媒体のことです。パソコンに使われているDRAMというメモリは電源を切ったらデータは消えてしまいますが、フラッシュは電源を切っても消えずに残る。
残るという意味では、ハードディスクも残りますが、あれは機械的な駆動部分があってスピードは遅いし、大きい。デジカメやiPhoneのように持ち運びをする媒体に使うと振動で壊れたりする。フラッシュは電子回路なので速いし、小さく、振動にも強いんです。しかも、電源を切ってもデータは残る。
ちきりん いいことづくめですね。でも、話を戻しますが、竹内先生は最初、東芝に入る気はなかったんですよね?
竹内 ええ。そもそも、技術とか開発を俗っぽいと思っていたので、ホントは舛岡さんの名前も、フラッシュのことも、その時までなにも知らなかったんです。でも、舛岡さんに出会って、東芝に入ろうという気持ちに変わった。舛岡さんは、「いまDRAM、CPUが開発されているけれど、次はフラッシュの時代だ、それを開発できるのは世界でもオレ一人だ」とすごい迫力で言い切るんですよ。それで、私はきっとこの人についていくんだろうな、と運命的な出会いに感じたんです。
ただ、問題が一つありました。私は当時、まだ修士の2年生で、博士号まで取りたいと考えていたことです。すると、舛岡さんは「東芝に入っても博士号は取れるよ」と言われたので、なるほど、そういう道もあるのかと考え直しました。東芝に入ったのは93年のことです。実際に、東芝でのフラッシュメモリの研究成果で、2006年に博士号を取ることができました。
次のページ>> 社長になりたいと思ったけれど
ちきりん 私がビジネススクールに通っていた頃ですね。当時、半導体といえば日本が圧倒的に強くて、シリコンバレーの半導体問屋のビジネスマンは日本の半導体メーカーと取引をするため、裏側に日本語が書かれた名刺をもって駆け回っていました。その頃、アメリカ経済は本当に調子が悪くて、反対に日本は絶好調、今とは全然違う時代でした。
竹内 ちきりんさんって、技術的なバックグランドもあるんですか。
ちきりん いえ、全然ありません。大学を出てからずっといわゆる文系の仕事をしていました。いまは「働かない生活」を謳歌とか、ふざけたことを言ってます(笑)。
花粉症がひどいし、今年はすごく寒かったので、2月にセブ島に行ってたんですよ。その時、ビーチに持っていく本を4冊くらい選んだなかに竹内先生の本があったんです。ビーチで読んでいたら、「これはすごくおもしろい!」と1日で読んでしまいました。背中に日焼け止めを塗るのを忘れて読んだので、やけどして夜に38度の熱が出てたいへんな目にあいました(笑)。
竹内 そんなことがあったんですか、それはすみませんでした。でも、本を誉めていただいてありがとうございます。この本、幻冬舎さんから1月に出たんですが、最初はあまり売れなくて……。担当者も社長や営業からさんざん責められていたそうで。ところが、ちきりんさんのブログで本をバーンと誉めてくださったら、一気に売れて本屋さんから消えてしまい、大急ぎで増刷したんです。いまでは4刷までいきました。
ちきりん 本って難しいですよね。いい本を書いても読んでもらえるとは限らないし。でも2月末くらいから売れ始めたと聞きましたけど。
竹内 エルピーダの倒産(2月27日)のときですね。結果的に本が売れました。私はエルピーダを擁護する発言をしているんですが、実は債権者でもあったのです。
ちきりん そうなんだ。エルピーダって、いちばん大きな債権者は誰なんですか。
竹内 やっぱりエルピーダに製造装置を納めている会社でしょうね。なかには数十億円の売掛があるメーカーもあると聞いています。不思議なことに、金融関係者はきれいにすり抜けているところもある。先日、外資系の金融機関の人にも聞いてみましたが、大丈夫だと言ってました。金融機関はちゃんと逃げきってたところもあるんです。結局、メーカーが潰れて苦しくなるのは、やっぱりメーカーなんですかね。
ちきりん 竹内先生は44、45歳ですよね。アメリカだったら大企業でも社長になっていて全然おかしくない年齢です。いまも東芝に残っていれば、もしかしたら役員になっていたかも?
竹内 実は、私は東芝の社長になりたいと思っていたんですよ。ですから、技術だけをやるのではなく、MBAにも行ってマネジメントも勉強していたんです。けれども、内部から会社を変えていくのはとても難しいことだと悟ったんです。
次のページ>> いまや1事業部だけが儲けて、9事業部は負け戦
ちきりん 先生から見ても、中から変えていくのは難しいと思える状態なんですね……。日本の大メーカーって今、本当に、希望が見えないですよね。
竹内 いま、多くのメーカーでは10の事業があったら、せいぜい1つの事業が儲けていて、残りのほとんどの事業は赤字を垂れ流しているような状態ではないでしょうか。だから従業員でいえば、90%の人は消耗戦を戦っているわけです。たまたま1つ儲けている事業部があれば、その他の事業の人も食べていける。
東芝だと、フラッシュメモリがありますよね。もし、フラッシュがなかったら東芝だってひどい状態ですよ。シャープも少し前までは液晶が飛び抜けてよかったけれど、いまはダメですね。
ちきりん 死んでいる事業を経営者が切り捨てられないということですね。GEのジャック・ウェルチ氏のようには大ナタを振るうことができない?
竹内 会社って、本当に変えるためには、潰れるところまでトコトンいかないと、反対者が周りを囲んでしまって無理なんですよ。ウェルチのときだって、GEがほとんど潰れるところまでいっていたから変えられたと思いますよ。
ちきりん ということは、日本のメーカーは当時のGEよりまだ余裕があるということですか?
竹内 今まではメーカーも余裕がありました。80年代に絶頂を誇っていた電機や半導体事業も、90年代から少しおかしくなり、21世紀に入ってからはあれよあれよと見る間に凋落していったんです。ただ、メーカーというのはエンジニアで決まるところもあります。たとえ経営者の手腕がどうであれ、エンジニアさえヒット作を打ち出せれば、それなりに生き延びられる構造なんです。
ちきりん シャープでいえば液晶、東芝ならフラッシュのように、エンジニアが頑張っていい製品、技術をつくりあげてしまうと、経営者がダメダメでも企業全体としては延命するということですね。
竹内 いま、シャープはコアの液晶事業まで業績不振に陥ったから、台湾のEMS大手の鴻海精密工業に出資をあおぐ形で救済してもらった。赤字の事業はやめればいいと思いますが、国内に工場もたくさんあるし、従業員もたくさん雇っている。だから、会社全体の売上にそれらの部門が貢献していないからといって、それらの事業・人を切れるかというと、日本の社長はこれをなかなか断行できません。
たとえトップが決断したとしても、各事業部ごとに担当者がいるわけで、「殿、ご乱心召されるな!」ということになって全員で止められてしまうわけですよ。だから、本当に潰れるような危機的状況にでも陥らないかぎり、内部から変わっていった例は見たことがない。これは日本企業だけではなく、世界のどの企業でも同じような状況ではないでしょうか。
日本最後のメモリ専業メーカーのエルピーダの場合、坂本幸雄さんが外部から入って、一瞬よくなりましたよね。思い切った投資もしたし、東証一部上場まで果たした。坂本さんは日体大からテキサス・インスツルメンツ(TI)に入ったという変わり種で、神戸製鋼所の半導体部門などを経てエルピーダの経営再建のために入ってきた人で、「半導体業界の救世主」とまで呼ばれていましたけれど、結局、今年の2月末にはエルピーダも潰れてしまった。ただ、潰れる前に外部から経営者を連れてきたのは、非常に珍しい例ですよね。
次のページ>> なぜか辞めない日本のエンジニア
ちきりん エンジニアの人だって、これはやばいなという状態はわかりますよね。そしたら潰れる前には引き抜きなんかで辞めていくんですか?
竹内 いや全然、辞めないですね。ふつう、会社が傾いてくると、アメリカではヤバイと思ってクモの子を散らすように逃げていくじゃないですか。優秀なエンジニアだったら誘いもかかってくるし。労働市場の違いかも知れませんが、不思議なほど、みんな辞めないんです。
ちきりん ベンチャーなど小さな会社へ行くと、お給料が下がるからでしょうか?
竹内 いや、そこではないでしょう。みんなと一緒にいたいという思いが強いのではないでしょうか。でも、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」のは事業が勝っている時の話ですよね。不採算事業なら、「死なばもろとも」になってしまうのに。
それこそ、ちきりんさんの本じゃないけれど、「自分のアタマで考えていない」証拠ですよ。例えば、新聞やテレビで、「○○社がエルピーダやシャープの支援に名乗り」とか、「韓国の××社も名乗り」とか言われると、もう自分たちが助けてもらえると信じ込んでしまう。勘違いというより、そう信じたいんでしょうね。あれはウソだってことが、わかってもらえない。
みんなどこの会社も厳しいので、ヨソの会社にまでお金を出して助けようなんて、誰も思いません。おいしい事業だけ少しのお金でかっさらってサヨナラ、というのが当たり前の世界なんだけど、その想像力がなぜか働かない。
ちきりん 先ほどのお話では、エンジニアは不思議なほど会社を辞めないということでしたが、20代のエンジニアと40代、50代のエンジニアでは意識の違いはありますか?
竹内 若い人のほうが先に辞めますね。それに、コア事業に携わっていた人たちはサバイバルにも長けているので、ヤバそうとなると先に消えてしまう。
ちきりん どういう人が最初に、沈み掛けているタイタニックから出ていくんですか? 技術に自信のある人ですか?
竹内 トップ1%の優秀な人ですね。エンジニアとして優秀だけではなくて、たとえば海外留学をした経験のある人とか、外の世界、他の会社のことを知っている人ですね。
ちきりん アメリカに留学したとか、世界で仕事をした経験があるとかの「技術力にプラスαの部分」が大きいということですね。やっぱり技術者にも、技術以外、たとえばビジネスに関する視野や経験も重要ということですよね。
次のページ>> 不採算部門の方が昇進が早くなる!?
竹内 そうです、外の世界を知っている人ですね。エンジニアはとても特殊な世界に生きていて、同じ職場で10年、20年もの間、社外の人と名刺交換をしたことがないという人もいる世界なんですよ。20年間、ずっと同じ人と同じ社食でメシを食っているんだから、外の世界がわかるはずがない。もちろん、儲かっている間は、日本でもアメリカでも辞めません。問題なのは赤字に転落しても、なぜか儲かっているときの感覚のまま生きているんですね。
不採算部門の方が昇進が早くなる!?
ちきりん 危機感がないってことでしょうか?
竹内 ない。コア事業以外の人にも危機感はないでしょうね。それどころか、他部門の人に食わせてもらってラッキーと思っている人も多いのでは。逆に、液晶やフラッシュのように儲かっていて、会社の屋台骨を支えている事業部に携わっている人は、それこそ必死ですよ。自分たちが倒れたらおしまいだって、わかっていますから。
ちきりん それでも、儲かっている部門も儲かっていない部門も給料はみんなだいたい同じですよね? 優秀な人はどこの部門でも高いんでしょうけど。
竹内 同じどころか、逆なんです。たいていのメーカーでそうでしょうが、一つの部で昇進するのは何人と決まっています。そして儲かっているコア事業ほど優秀な人ばかりですよね。そうすると、優秀な人の昇進が他部門より遅くなるという不思議な現象が生まれてくるんです。逆に、不採算部門でそこそこ頑張っている人はぐんぐん昇進していく。
私の友人が東芝を辞めて、国内の電機メーカーに転職してiPhoneなどに搭載されるカメラをつくってるんですよ。当初、彼を中心に数人で始めた事業だったのが、いまや業績バツグンで大事業に成長したのはいいんですが、ここでもおかしな現象が起きた。不採算部門から人がどんどん入ってくるようになると、年功序列だから、あとから横滑りした他部門の年配者が友人の上司になるんですよ。
ちきりん 業績も横取りされちゃいそうだし。よくそんなばかばかしい仕組みが未だに続いてますよね。驚きです。
最強タッグで戦えないもどかしさ
竹内 問題は他にもあるんです。フラッシュのようにせっかく勝っている事業があっても、負け戦の部門が多くなると、社内的に「ヘンな力学」が働くんです。たとえば、「極力、社内のエンジニアを使いなさい」とか「できるだけ、社内の製品や部品を調達しなさい」といった、お達しが出てくる。これがどういう意味をもつか、ちきりんさん、わかりますか。
たとえばフラッシュメモリを使ってメモリーカードをつくる場合でも、いろいろな技術を寄せ集めることが必要です。当然、メモリ本体は世界最強の私達がつくる、それに載せるLSIや組み立ても世界最強の台湾でやる、というのが誰が見ても最適解なわけですよ。それが世界のどこでも勝てる最強商品であり、会社としての選択肢だと思うんですが、本体が弱ってくると、さっきのような「社内調達のお達し」が出される。そして、社内の資源をうまく使ってやるのがおまえの仕事だろ、となるんです。本来なら、最強タッグで組めば必ず勝てるのに、社内調達の道を選ばされるから、コア事業まで弱っていく。日本の会社の至る所で、こんなことが起こっているんだと思います。
ちきりん 本当は台湾でつくったほうがいいけれど、社内の工場を遊ばせておくのはもったいないから、コストが多少高くなっても内部資源を使えということですか?
竹内 弱小部門をコア部門で救っているつもりなんでしょうが、そうすることで、勝てていた技術・商品でさえ、勝てなくなっていく。GEのジャック・ウエルチは、世界で1位か2位になれない事業はどんどん解体していきましたよね。弱い部門を解体していかないと、強いコアの部門まで弱くなっていくんですよ。だけど、それを整理・淘汰して会社を変えていくことは内部からではなかなかできない。なぜなら、雇用があるから。
ちきりん 大ナタを振るうとなると、外から京セラの稲盛和夫さんクラスの人でも呼ばないとダメってことですね。
竹内 小泉純一郎でも、進次郎でも誰でもいいけど、アイツに言われたらしょうがないと思えるような人物でないと改革は進まない。そうでなければ、組織を内部から変えていくのは本当にむずかしいんですよ。
だから、私は社長になるのはあきらめて大学での研究者の道を選んだし、多くのエンジニアには赤字を垂れ流す事業部で働くより、辞めてもっと自分の技術を活かせる道を選んで欲しいんです。だって、彼らはどの企業も手が出るほど欲しい人材ですからね。
ちきりん 会社の不採算部門を支えるために「最強タッグ」で戦えないもどかしさ、内部からは変えていけない事情があるということですね。そういった状況下でエンジニアはどういう生き方をすればよいのか、次回はそのへんをお聞きしてみたいと思います。
(続く)
◆ダイヤモンド社書籍編集部からのお知らせ◆
『自分のアタマで考えよう』
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超人気ブログ「Chikirinの日記」の筆者による初の書き下ろしです。「プロ野球の将来性」「就活で失敗しない方法」「自殺の最大の原因」「電気代の減らし方」など、社会問題や日常の疑問を題材に自分のアタマで考える方法を解説します。出口治明氏(ライフネット生命保険社長)、安宅和人氏(ヤフーCOO室室長、『イシューからはじめよ』著者)など、第一線の経営者・ビジネスマンも絶賛した思考のワザを身につけてください。
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