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Financial Times
恐ろしいほど「日本化」してきたユーロ圏
2012.04.20(金)
ここ数週間、市場がめちゃくちゃな動きを見せる中で、ある驚くべき出来事がほとんど注目されないまま起きていた。2年物国債の利回りに見るドイツの短期金利が先週、二十数年ぶりに日本のそれを下回ったのだ。
これは一部の人がしばらく前から薄々感じていたことを裏づけた。ユーロ圏が日本化しつつある、ということだ。
過去四半世紀にわたる日本の経験に続くことへの不安は、2007年に金融危機が勃発して以来ずっと悩みの種となってきた。理由は簡単だ。それが資産配分にとてつもなく大きな影響を及ぼすからだ。
ドイツの国債利回りに見る日本化の兆し
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先週はドイツの2年物国債の利回りが二十数年ぶりに日本を下回るという大異変が起きた〔AFPBB News〕
既にその兆しは見えている。ドイツの短期金利ばかりではない。指標となる10年物ドイツ国債の利回りは4月18日、1.63%に低下し、史上最低を更新した。
ほぼすべての人が、ドイツが何らかの形でソブリン債務危機の費用負担を引き受けることになると考えているため、著名ヘッジファンドマネジャーのジョン・ポールソン氏のドイツ国債売りには一定の論理があるのかもしれない。
だが、もしユーロ圏が本当に日本と同じ道を歩んでいるのであれば、重大な教訓は、国債利回りが今後大幅に低下する可能性があるということだ。日本の10年債利回りは、1997年に2%台を割り込んで以来、その水準を再び超えることはほとんどなく、最近も含め、一定期間にわたって1%を下回ることさえあった。
欧州では長らく株式市場が低迷してきたが、日本流のシナリオの下では、市場の見通しはなお暗い。欧州大陸の株式市場は現地通貨建てで米国の株式市場に大きく見劣りしてきた。ユーロ・ストックス50指数は2009年3月につけた危機後の最安値から30%しか戻していないのに対し、S&P500株価指数は105%も上昇している。
ユーロ圏が本当に日本化したら、欧州株式市場のさらなる空洞化につながるだろう。格付け機関のフィッチ・レーティングスによると、欧州株式ファンドの運用資産は昨年末までに、2007年の水準の半分近くに落ち込んだという。
日本との類似が最も顕著なのは経済面だ。ユーロ圏の周縁国は今後、債務負担を減らそうと悪戦苦闘する中で、10年間にわたる平均以下の低成長と緊縮策に直面する恐れがある。
これは何を意味するのか。UBSのアナリストたちはその兆候として、1980年から1990年にかけての日本の名目国内総生産(GDP)成長率が85%だったと指摘する。その後20年間の成長率はたった8%だった。最も憂慮されるのは、同時に起きた日本の債務残高の増加ではなく、こうした経済成長の不足だ。
ECBの低利融資が大量のゾンビ銀行を生む恐れ
政策対応という点では、欧州中央銀行(ECB)は日本のように量的緩和と銘打った策は講じなかったかもしれないが、銀行に期間3年の低利融資を与えるECBのプログラムは裏口経由で同じ結果をもたらす。断続的に「出口戦略」がささやかれるものの、大方の市場参加者にとっては、ECBが今後何年も何らかの形で関与し続けざるを得ないことは明白だ。
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ECBの低利融資で危機は一時的に落ち着いたものの、大量のゾンビ銀行を生み出してしまう恐れがある〔AFPBB News〕
「長期資金供給オペ(LTRO)」として知られる低利融資は、周縁国だけでなく中核国の一部でも、大量のゾンビ銀行を生み出す大きなリスクを伴う。
450ものドイツの銀行が2回目のLTROを利用したという事実は、ユーロ圏最大の経済大国ドイツにおける銀行の過当競争の度合いを浮き彫りにしている。
その他の国では、スペインとイタリアの銀行がLTROの資金を使い自国国債を大量に買い込んだことで、これらの銀行の運命はいよいよ密接に自国政府の運命と結びつくことになった。とてもではないが、良いことではない。
市場環境という点では日本とユーロ圏に大きな違いも
経済的な側面が曇って見えるとしたら、市場からは小さな希望の光が差し込んでいるのかもしれない。日本が失われた10年に突入した時、今のユーロ圏と比べると、株式は信じ難いほど高く、国債はかなり安かった。3万9000円に迫る水準で史上最高値をつけた日経平均株価は、この4月18日にはたった9667円で取引されていた。
UBSのアナリストらによると、PER(株価収益率)で見た場合、1989年のピーク時の日本の株価バリュエーションは歴史的な平均より103%高かった。欧州では、2007年のバリュエーションは12%高いだけだった。
最も開きが小さい指標で見ても、日本のPBR(株価純資産倍率)は歴史的な平均値を64%上回っていたのに対し、欧州は35%高いだけだった。同様に、日本の方が、国債価格が安かった。日経平均がピークをつけた時、日本の10年債利回りは5.74%で、その後は最大8.23%まで上昇した。
対照的に、2007年にDAX30指数が最高値をつけた日のドイツの10年債利回りは4.56%で、それ以来、ほぼ一貫して低下してきた。
もしかしたら市場の出発点がインパクトを和らげるかもしれないが、今後の見通しはなお暗い。米国の株式市場が最近の上昇局面の後で調整に見舞われたら、欧州はこれまでのアンダーパフォーマンスにもかかわらず、同じような運命をたどるのを避けられないだろう。
日本のような展開が「最良のシナリオ」?
ユーロ圏の問題の規模(スペインの財政赤字からイタリアの債務残高、フランスの銀行に至るまで幅広い)は、シティグループのマット・キング氏が指摘しているように、2008年の米国や1990年代のスウェーデンで見られたような劇的な政策対応がうまくいかないことを意味している可能性がある。
となると、大陸全土でデフォルト(債務不履行)の連鎖反応の引き金を引くのを避けるために、どうにか切り抜けていくことが最もましな選択肢だということになる。だが、このことは、日本流の株価低迷と国債価格の上昇が最良のシナリオになる可能性が十分あることも示唆している。
By Richard Milne
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35042
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