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政界スターの失脚が物語る中国の誤謬
−Wペセック
4月19日(ブルームバーグ):殺人や腐敗、ハーバード大学、それにケネディ元大統領のジャクリーン夫人の名前まで取りざたされるスキャンダルはまれだ。今や中国の注目の的となっている薄熙来氏をめぐる騒動はこうした全ての要素を提供した。いや、もしかしたらそれ以上かもしれない。政治システム全体を永久に変えるかもしれないのだ。
3月15日まで薄氏は重慶市のトップを務め、政界のロックスターだった。中国で強力な権限を行使する共産党政治局常務委員のメンバーになるとみられていた。その薄氏の政治的財産が一瞬にして消えた。「深刻な規律違反」を犯したとされたことに加え、際どい一連のうわさが広がったためだ。
最大の原因は薄氏の妻、谷開来容疑者と、昨年11月殺害された英国人実業家との関係だ。かつて中国のケネディ夫妻とも呼ばれた薄夫妻にとっては驚くような展開となった。谷容疑者はハーバード大生の息子とともに、英国人のニール・ヘイウッド氏と経済的利害をめぐって対立していたと、国営の新華社通信は伝えている。
このスキャンダルをきっかけに、北京ではさまざまなうわさがささやかれている。最も一般的な見方は、薄氏の流星のごとき台頭を阻止しようとする組織的な動きが背景にあるのではないかというものだ。薄氏は社会的平等をトップダウン方針で推進した。毛沢東元国家主席時代の歌やスローガンを活用する薄氏の戦略は個人崇拝を助長するものだとの見方が多かった。薄氏更迭の前日、温家宝首相は政治改革を追求し続けない限り、文化革命の再来につながりかねないと発言していた。
しかし、核心のところは違う。中国の政治制度は旧態依然としているのに、経済は前進している。薄氏の盛衰と、それにまつわる不透明感は、高成長を遂げる中国の誤謬(ごびゅう)を浮き彫りにしている。
手放せない高級品
中国には最新技術を備えた工場、現代的なオフィスビル、6車線の高速道路、高速鉄道のほか、日米もうらやむ国家資産を誇る。新興の富裕層はプラダやルイヴィトンの高級品、高級車のメルセデス・ベンツが手放せない。
しかし政治制度は毛沢東や旧ソ連のスターリン書記長時代のままだ。エジプトやミャンマーで民主主義が根付く一方、中国では密室での協議や裏取引、追放が後を絶たない。こんな不透明な世界がネット文化と衝突しているが、ネットを通じたニュースを抑え込むことは不可能だ。
中国が思われていたほど統治しやすい国でないことも分かった。温首相は民主主義の進展について希望にあふれた発言をしたが、中国はまだ古代および現代の歴史にとらわれている。間違いを繰り返さないために過去に何が起きたかを知っておく必要がある。国民が話題にすらできない事件の現場となった天安門広場に、今でも毛沢東の写真が飾られていることを忘れてはならない。
強欲さに目が向けられる中で、政治的リスクも否定できない。政府からささやかな給与を受け取り、専業主婦とされる妻を養う薄氏がどうやって豊かな生活を送り、息子を費用の高い英米の学校に留学させることができるだろうか。
格差拡大
政府高官の不正行為が明るみに出ることでエリートと低所得層の格差拡大があらためて注目され、共産党の正統性へのリスクとなるかもしれない。
中国が繁栄し続けるためには家計から国への膨大な所得移転をやめることが必要だ。それで消費者の権限は強まり、超富裕層の権限は弱まる。問題は1%の超富裕層の人たちが改革に反対するかだ。
国会に相当する全国人民代表大会(全人大)の代表のうち資産家上位70人の純資産合計額は昨年、スロバキアの年間国内総生産(GDP)より多かった。これを見れば、中国のモデルがいかに国民を失望させているか、それに共産党の大物が自分たちの収入が減るような改革になぜ抵抗するかが分かる。
超富裕層は政治家であることが多いため、中国は経済の改革と貧富の格差是正に苦労するかもしれない。改革への障害は、社会不安をもたらすハードランディングのリスクを高める。
薄氏の失脚に驚いたり、中国指導部が排他的社会に挑む政治スターの台頭をいかに許容しないかについて語ることもできよう。妻の谷容疑者と死亡した実業家をめぐって想像をめぐらすことも可能だ。ただ今回の事件は、時代遅れの政治制度がこの国の将来を危うくしていることを何よりも雄弁に物語っている。(ウィリアム・ペセック)
(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
原題:Billionaires Make Killing Amid China Murder Tale: WilliamPesek(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:東証 Willie Pesek wpesek@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:James Greiff jgreiff@bloomberg.net
更新日時: 2012/04/19 10:40 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M2NQ566JTSE901.html
薄時代の重慶事業支出を洗い直し 資金の流れ解明に重点
2012年 4月 19日 13:21 JST
【北京】消息筋によると、中国当局は失脚した薄熙来氏が重慶市党委書記時代に打ち出した何十億ドルに上る同市政府の事業支出について精査している。かつて全国的な関心を集めた薄氏のポピュリスト(大衆迎合主義)的なプログラムを当局が直接問題視していることをうかがわせる。
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AP
薄氏は240万人が生活できる割安な賃貸住宅施設の建設を約束していた。
重慶市の財務当局者によれば、同市の新指導者は市の投資プロジェクトの「洗い直し」に着手した。このプロジェクトは重慶を中国でももっとも急速に成長させたもので、薄氏が共産党中央指導部の高位に就くのではないかとみなされる材料にもなった。別の当局者は、捜査は市の植樹運動にも及んでいると語った。この植樹運動は薄氏お気に入りの事業で、広い支持を集めたが、年間100億人民元、つまり約15億ドル(約1200億円)という法外な金額を投じていたという。
当局のこの動きは、不透明な国家主導の経済モデルを問い直す姿勢を示している。薄氏は在任中、巨額の財政資金を投入し、ショーケース的なインフラ事業や社会住宅の開発を推進していた。これは中国で重慶モデルと呼ばれ、「左翼」勢力から支持を得た。毛沢東時代に吹き荒れたが、その後長年失われた万人平等主義に郷愁を寄せる勢力だ。重慶モデルに対しては過剰支出と高債務に陥るとの批判がある。
中国の国務院(内閣に相当)は18日、これとは別に、汚職撲滅の一環として、公共支出と割安な社会住宅建設に関する詳細な情報を公開するよう各省庁と地方政府に命じた。
重慶市政府の支出に関する精査は、薄氏が先月に党委員会書記を解任されたのを受けて始まったが、今週までほとんど注目されていなかった。地元紙が先週末、追加的な精査が実施されると報じたのを受けて、香港に上場している重慶農村商業銀行の株価は、重慶市の支出削減によって融資拡大が阻害されるとの不安感から、過去2日間で14%急落した。
農村商業銀行は18日、同行の資本基盤は強く、リスク防止措置も敷いていると強調し、株価は同日、2.5%上昇した。
重慶市財務局の当局者がウォール・ストリート・ジャーナルに明らかにしたところによると、薄氏解任の1週間後の3月21日、重慶市の経済立案機関と財務局は共同で「緊急通知」を出し、重慶市の投資事業を「洗い直す」と発表した。
同当局者は「われわれの役割は、どのようにして資金が調達、支出、そして運営されたかを精査することだ」と述べた。重慶市の企画機関である同市開発改革委員会からはコメントが得られていない。
重慶市財務局はまた、銀行ないし他の投資家によって先行して資金拠出され、完成したあと市政府に売却された開発事業を精査している。この場合、コストは目先、市政府の帳簿外になっている。しかし、多くの場合、開発業者は市政府が保有しており、こうした業者が返済不能に陥った際には、市政府が債務を背負うことになる。
バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチによると、重慶の経済成長率は昨年、16.4%に達しており、中国の省ないし地方レベルの地域では最速ペース。中国全体の成長率9.2%を大幅に上回っている。薄氏は元商務相で、中国のシカゴと呼ばれることがある重慶を変革した中心人物としてその手腕を称賛され、開発の遅れた中国西部地域の成長の手本とされた。
重慶市政府が各種のプロジェクトのためどの程度の銀行融資を確保したかは不明だ。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのリポートによれば、昨年の重慶の固定資産投資7600億人民元(約1206億ドル)のうち、大半は重慶市政府が設立した8つの投資目的会社の借入が占めている。投資目的会社は主として、「銀行融資の担保としての土地と、借り換えのための土地評価」に依存していたという。
投資家やアナリストは最近数カ月間、このような投資目的会社が返済期限が到来した際に融資を返済できるかどうか懸念していた。中央政府による不動産規制の中で土地評価額が急落し、こうした投資目的会社がデフォルト(債務不履行)に陥れば、銀行やその他の投資家にとって巨額の損失につながる。
重慶市政府の投資目的会社が発行した債券の平均利回りは、政府保証付きであるにもかかわらず、8%以上に達し、2010年の5.8%を大幅に上回っている。ムーディーズ・インベスターズ・サービスが一部出資しているデータ会社チャイナスコープ・フィナンシャルによれば、これは民間企業の発行した債券利回りや、他の地方政府の発行した債券の全国平均利回りをも上回っている。
チャイナスコープの調査・分析主任のチュー・チャオピン(朱超平)氏は「市場は重慶市政府の債務をますますリスキーだとみている」と述べた。
重慶市政府に近い筋によれば、薄氏解任を受けて就任した張徳江党委書記(副首相)率いる同政府は、債務懸念払拭のため、既に薄氏に最も近いプロジェクト向け支出を削減し始めている。
重慶国際展覧中心(エキスポセンター)は、国営メディアで今年10月にオープンすると伝えられているが、消息筋によると、重慶市政府は最近、同センターの植樹部門の支出を1億5000万人民元(約2380万ドル)から3000万人民元(約480万ドル)に削減した。センターを建設している国営会社のスポークスマンからはコメントを得られていない。
240万人向けに割安な賃貸住宅施設を2012年までに建設するという薄氏の計画は、全国レベルの目標をはるかに上回る規模だが、これも不透明になっている。
クレディ・スイスの不動産アナリスト、ドゥー・チンソン(Du Jinsong)氏は「重慶は社会住宅建設で中国全土のモデルだった。しかし問題は、(薄氏解任など)今回の政治的な変革を受けて、大規模な金額の支出が持続可能なのかということだ」と述べた。
このプロジェクトは、薄氏が重慶市の貧困層から支持される要因となったものだった。薄氏の時代の重慶は補助金付き住宅を4000万平方メートルにわたって建設する計画だったし、多くの住民は薄氏が在任のころ生活状況は劇的に改善したと感じている。
記者: Lingling Wei、Dinny McMahon、Brian Spegele
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