★阿修羅♪ > 経世済民75 > 664.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
親のカードで400万円使った子ども、ヘソクリ全額150万円をつぎ込んだ主婦……過消費する“フツー”の人々  
http://www.asyura2.com/12/hasan75/msg/664.html
投稿者 MR 日時 2012 年 4 月 18 日 00:57:26: cT5Wxjlo3Xe3.
 

コンテンツ業界キャッチアップ

【第29回】 2012年4月18日 石島照代 [ジャーナリスト]


親のカードで400万円使った子ども、ヘソクリ全額150万円をつぎ込んだ主婦……過消費する“フツー”の人々

――ソーシャルゲームの何が問題か【中編】 

 ディー・エヌ・エーとグリーの二社が牽引する、いわゆるソーシャルゲームの勢いが止まらない一方で、様々な問題が社会問題化しつつある。ソーシャルゲームをパチンコ産業として捉えた場合の経済効果と、利益を産み出す価格差別戦略の限界を扱った上編に続いて、中編では、消費者(ユーザー)の観点から捉えた過消費問題について検討する。
ソーシャルゲームを含んだ
オンラインゲームに対する相談件数は三年間で倍増

 上編では、“パチンコのような”ソーシャルゲームの収益構造について説明したが、ソーシャルゲームの流通課金額(市場規模)が直近四半期で900億円(三菱モルガン・スタンレー証券調べ)を超えていることに驚いた読者も多かったことだろう。これくらいの規模に至れば、家庭用ゲーム機市場規模とそう遜色ないのは前編で述べたとおりだ。

 だが、この900億円を払っている人は本当に納得して、お金を払っているのだろうか。右のグラフは、全国の消費者センターに寄せられた、ソーシャルゲームを含むオンラインゲームに関する直近3年間の相談件数である。

 独立行政法人国民生活センターによると「『ソーシャルゲーム』という名称は新しすぎて、そのようなカテゴリーでのデータは存在していない」とのことで、従来のPC系オンラインゲームなどと同じカテゴリーで、2009年からデータが集計されているという。

 3年で相談件数が倍以上になっていることについて、同センターの相談情報部は「誰もが参加しやすいSNS型のゲームが普及した影響は十分考えられる」とし、その根拠として、「未成年者の利用に関する相談が増えたこと」を挙げた。この未成年者利用問題は、「IDの利用停止や強制退会などに関する相談」と同じくらい多く、相談件数のほとんどをこの2点が占めるという。
次のページ>> 未成年が使いすぎたら、とにかくまず消費者センターへ

 その次に、ソーシャルゲームの収益の柱となっている「コンプガチャを用いたイベント中の過消費」や、「RMT(リアルマネートレード)目的と見られるアイテム交換でアイテムをだまし取られた」などが続く。
「子どもが黙って使ったからお金返して問題」は、
お金を払う前に、まず消費者センターへ連絡を

 このように、全国の消費者センターにはソーシャルゲームに関する苦情や相談が寄せられているが、筆者ら(石島、小山)が特に問題視しているのは、RMTよりも、国民生活センターにも寄せられた相談「コンプガチャを用いたイベント中の過消費」に代表されるガチャビジネスの是非と、未成年利用問題の二点である。

 ガチャビジネスの是非は後述するとして、最初に未成年利用問題から説明する。これは、いわゆる「子どもがソーシャルゲームで過消費する問題」と、「子どもが黙って使ったからお金返して問題」のふたつに大別できるが、消費者問題に詳しい、元経産省官僚で一般社団法人ECネットワーク理事の沢田登志子氏は「法定代理人(保護者)から、同意していない取引だとして取消しの申し出があれば、基本的に企業側は応じる義務があると思われます」と指摘する。

「これは『未成年者取消』といって、民法上の強い権利として規定されています。たとえば、『未成年者の仮想通貨購入には保護者の承諾が必要です』と書かれていれば、法定代理人(親)の同意があったと見なすことができるかどうかですが、この規定は、裁判で争った場合、無効とされる可能性が非常に高いと考えられます。

 また、未成年が詐術を用いて(成年であると偽って)取引を行った場合は取消しできないのですが、よく見かける『あなたは18歳以上ですか?』という年齢確認ページだけでは、未成年が詐術を用いたと主張するのは難しいと思われます。

 ですから、『18歳以上です』という自己申告のみで確認する仕組みしか用意していない場合は、年齢を偽って登録した未成年がアイテムを買った場合もお金を返さねばならない可能性があります」
次のページ>> 独身時代の貯金全額150万円をつぎ込んだ主婦

 未成年者取消がこれほどまでに強い理由のひとつとして、「ネットビジネス全般に言えることだが、対面で確認していないので、法定代理人(親)の承諾があったと見なすことが難しい。このような難しさは法整備がされていないことも一因で、同意確認の妥当性がどこで担保できるのか現行法上では不明であることも挙げられる」(国民生活センター、相談情報部)。

 また、子どもが高額のアイテムを購入する場合は、親のクレジットカード番号が入っているスマートフォンを使うケースがほとんどだ。ECネットワークに寄せられた相談事例では「高校2年生の子どもが親のクレジットカードデータを5枚盗み見して、月に400万円使った」ケースもあったそうだが、この場合も未成年者取消がほぼ可能だという。

「どのような場合でも、お子さんが使用して高額請求が来た場合は、請求に応じる前に、お近くの消費者センターに連絡してください」(沢田氏)
「子どもの貯金に手を出しそうになって我に返った」
独身時代の貯金全額150万円をつぎ込んだ主婦

 ソーシャルゲーム問題に関する認識共有は、家庭用ゲーム以上に難しい。たとえば、携帯ゲーム機を子どもが触っていたら、「あー、ゲームやってる」と分かるし、親であれば「遊んでばかりいないで、勉強しなさい」と叱りつけるかもしれない。

 だが、いじっているのが携帯電話だったらどうだろう。やっているのは、ゲームとは限らない。その行動の多様性と、「ログインしないと分からない世界」(国民生活センター)という閉鎖性が、ソーシャルゲームをやる人とやらない人の間の温度差を産んでいるようにも感じられる。つまり、「わたしには関係のない話」ということになってしまうというわけだ。

 そこで、過消費問題のリアリティを感じてもらうために、ソーシャルゲームに1年で150万円をつぎ込んだ主婦の話を紹介しよう。

 地方都市に住む主婦カヨコさん(仮名、41歳)は、3年以上続けたソーシャルゲームを今年2月に止めた。カヨコさんは就学前の子ども2人を産んだとは思えないほどの、若々しい女性だ。それなりの年収を稼ぐ夫のおかげで、悠々自適な専業主婦生活を満喫しており、ネットスラングで言う、いわゆる「リア充(実際の生活における、客観的な社会的勝ち組のこと)」に分類される。
次のページ>> きっかけは、幼稚園のお迎えのヒマつぶし

 そんなカヨコさんがソーシャルゲームで遊ぶようになったのは、「子どもの幼稚園の迎えを待っている間のヒマつぶしとしてちょうどよかったから」で、「他のママ友と子どもを待ちながらいっしょに遊んでいました」という。

 初めて遊んだソーシャルゲームはグリーの「ハコニワ」で、「キレイなお花を咲かせるのが単純に楽しかった。あの頃のグリーは安心して遊べた」と当時を振り返る。

「ハコニワ」とは、動物とふれあいながら植物を育てたりするかわいらしいガーデニングゲームで、特にゲームを全くやらない女性に支持されている。実際、カヨコさんも「家庭用ゲームもパチンコ台も一切触ったことがなく、むしろ両方ともキライ。ゲームは『ハコニワ』が初めてで、あんまりゲームという感じはしなかった」そうだ。

 だが、「ハコニワ」程度のゲームならば、150万円も使うようなことはない。一体、カヨコさんは何にお金を使ったのか。

「アバター(自分の分身としてゲーム上などに登場するキャラクターのこと)用のコンプガチャです。『ハコニワ』を遊んでいるうちに、『夢アバター』と呼ばれる、初期の激レアアイテムが欲しくて集めるようになりました。一緒に『ハコニワ』を遊んでいた友だちが『夢アバター』をたくさん持っていたのがうらやましくて。

 その激レアアイテムは毎月1日に実施される、1回500円のコンプガチャでしかでないのですが、コンプガチャをコンプリートするには約2万円かかる。かつ、ユーザーが自然発生的に行っていた物々交換でレアアイテムと交換してもらうために、この月1回のコンプガチャにお金を大量につぎ込んでいました」。
「自分は、ネトゲ廃人かもしれない……」
「恋するキャバ嬢」で消えた、お金と時間

 だが、「夢アバター」を揃えることは、後から始めた自分にはムリだと悟ったカヨコさんは、次に、携帯電話関連の技術開発企業KLab(クラブ)の「恋してキャバ嬢」(グリー用)にのめりこむ。

「恋してキャバ嬢」は、ユーザーが架空のキャバ嬢になって架空の店舗のナンバーワンを目指す大ヒットソーシャルゲームだ。サービス開始から10ヵ月あまりで500万人を突破し、ある関係者によれば「東証マザーズの上場に寄与するほど大ヒットした」そうだ。
次のページ>> 「1日やらなかっただけで、ランキングが下がってしまう」

 カヨコさんは「『恋してキャバ嬢』ではお金も使ったが、時間も使った」という。

「自分は、テレビで言ってた『ネトゲ廃人(オンラインゲームで昼夜問わず日常生活を犠牲にしてゲームに熱中する人のこと)』かもしれない、と思ったことがあります。『恋してキャバ嬢』をやっている時は、本当にそんな感じでした。たしかに、コンプガチャでお金も使いましたが、時間の使い方もハンパではなかった。つねにゲームに張り付いていないとダメなんです」

 そこまで思うなら止めればよかったのに、と思うが、「今ならそう思えるが、止めるに止める事ができなかった」とカヨコさんは話す。

「もちろん、止めたいという気持ちはいつもありました。でも、このゲームは1日やらなかっただけで、ランキングが下がってしまう。追い抜かれることがいやで、ゲームから離れられなくなった。だから、放置しておけばいいのだけど、それができないゲームシステムになっている。他のゲームより、時間の使わせ方がとにかく酷い」。

 下がるランキング、底をつく独身時代の貯金。……なんとかしなければ。焦った末に、子どもの学費のために月々貯めている子ども名義の貯金通帳に手を伸ばしそうになった時、カヨコさんは我に返ったという。

「亡くなったばかりの祖母のことをふっと思い出したんです。祖母には本当にかわいがってもらったので、いまの自分を見たらとても悲しむだろうな、と。

 あと、娘がまだ未就学児なのに難病を患って手術をしたことも大きかったですね。娘の体にチューブが入っているのを見て、この子のためにも私も今を大事に生きなければ、と。明日死ぬかもしれないんだからみたいな事を考えました」。

 カヨコさんはアイテムをオークションに出すこともなく、退会した。それ以降、一切ソーシャルゲームは遊んでいない。

 そして、カヨコさんは話の最後を次のように締めくくった。

「私のようにソーシャルゲームを止めたくても止められない人、きっとたくさんいると思います。だから、その人達のためにも、記事をしっかり書いてください。もう、ゲームと名のつく物は、二度とやりません」。
次のページ>> あなたはカヨコさんにならないと言い切れるか

ゲームの刺激慣れしていない人は過消費しやすい?
あなたも「1年で150万円を使うカヨコさん」になるかも

「いままでゲームで遊んだことがない主婦が、暇つぶしに無料だといわれているゲームで遊んだら、150万円使っていた」というカヨコさんの話から思ったのは、もしかしたら予想以上にゲーム未経験者がソーシャルゲームの収益を支えているのかもしれないという仮説だ。

 もちろん、ソーシャルゲームユーザーの中に、家庭用ゲーム経験者やパチンコユーザーもいることは論を待たないが、3ヵ月の課金総額が900億円を越えてくるとなると、また別の種類のユーザーもいると考える方が妥当だろう。

 もちろん、これはただの仮説に過ぎない。だが、前出のecネットワーク代表の沢田氏も「子どもや普通の主婦らが、ソーシャルゲームのアイテムを買いすぎるケース、つまり過消費をすることは見受けられる」と話す。

「サイバーエージェントが運営する『アメーバピグ』で15歳以下の利用を制限したら、年齢を偽って利用していた大人から、『購入済みのゲーム内通貨の使い道がなくなった』、『今までのように遊べなくなるなら退会したいが、そうするとお金が返ってこない』と消費者センターにクレームが殺到したそうです。その中には、子どものIDを使って遊んでいた母親の話もありました。

 また、本当は親が利用していたのに未成年者取消を悪用するケースも多いようですね。企業側は通常、未成年者取引に応じる際にその利用者には退会してもらうのですが、その時に、親が退会を渋るケースもあるそうです。これらの話だけでも、普通の大人がどれだけ遊んでいるかが分かります」(沢田氏)

 このような、暇つぶしで遊んでいる主婦や子どもなどの姿から見えてくるのは、「刺激慣れしていない」ユーザー属性である。

 筆者らの周りの家庭用ゲーム業界関係者は異口同音に「ソーシャルゲームは儲かるのは分かるが、正直何がおもしろいのか分からない」と言う。筆者も同感で、遊んだ5つのソーシャルゲームのどれも2日以上続かなかった。
次のページ>> ソーシャルゲームの未来は?

 それは、家庭用ゲームの刺激がすでに免疫としてできていることも大きいだろうし、また、ソーシャルゲームユーザーが好むとされる、「他人より強い自分」を確認したいという欲が全くないこともある。ただでさえ、現実社会は他者と優劣を比較されるようにできているのだから、ゲームくらいヘタなりに自分のペースで「マリオカート7」などを遊ばせて欲しいと思ってしまうのだ。

 だが、もし筆者のゲームデビューが、カヨコさんのようにソーシャルゲームだったらどうだろう? もしかしたら、筆者も「1年で150万円を使うカヨコさん」になっていたかもしれない。
ユーザーが失望と後悔のうちに離れていくならば
ソーシャルゲームビジネスにサステナビリティなど望めない

 子育ては喜びだけを与えてくれるとは限らない。子どもの世話でストレスをためがちな主婦の皆さんが、同じようなことの繰り返しの単調な日常を変えてくれる刺激を求めて、結果、お金と時間を湯水のように使ってしまう気持ちは理解できる。ケータイやスマートフォンでアクセスし、コンプガチャにお金をつぎ込めば、そこにいるのは「○○ちゃんのママ」ではなく、ランキング上位に輝く売れっ子キャバ嬢の「カヨコさん」だ。人目をはばかって、パチンコ屋に行く必要もない。

 したがって、筆者にはカヨコさんを責める気持ちはまったくない。「大人なんだからそんなの自己責任だ」と声高に叫ぶ人もいることも承知の上である。自己責任論を唱える人は、「彼女が愚かだから」と言いたいのだろうが、その愚かさの代償が150万円と大量の時間の浪費というのは、妥当なのだろうか。

 それに、ゲームコンテンツ産業を長年見てきた立場としては、カヨコさんに「ゲームと名のつく物は、二度とやらない」と言わせてしまったことが本当に残念でならない。ゲームビジネスは、他の娯楽産業である、映画や漫画と同じでコンテンツそのもので勝負してきたはずで、人の弱さにつけ込んでお金を巻き上げるようなビジネスモデルではなかったと思うからだ。

 急増したソーシャルゲームユーザーは、時間とお金を湯水のように使った挙げ句、カヨコさんのように失望と後悔のうちに、ひとり、またひとりと、ソーシャルゲームから離れていくのだろうか。だとすれば、ソーシャルゲームビジネスの未来にサステナビリティ(持続可能性)など望むべくもない。

 明日公開予定の後編では、ソーシャルゲームにおける過消費の自己責任議論の妥当性と、コンテンツ業界と社会のサステナビリティの関係を論じて、稿を締めたい。
●取材協力者プロフィール
沢田登志子(さわだ・としこ)/早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1984年通商産業省(当時)入省。2003年、独立行政法人経済産業研究所広報企画ディレクターを最後に、経済産業省を退職。2003年〜2006年ECOM研究員(ADR実証実験事務担当)、2006年有限責任中間法人ECネットワーク設立(現在は一般社団法人)。

http://diamond.jp/articles/-/17158


コンテンツ業界キャッチアップ【第28回】 2012年4月17日
石島照代 [ジャーナリスト],小山友介 [芝浦工業大学システム理工学部准教授]

自己責任論の下に過消費を誘発する焼畑ビジネスモデルに明日は創れるか――ソーシャルゲームの何が問題か【前編】

 ディー・エヌ・エーとグリーの二社が牽引する、いわゆるソーシャルゲームの2011年推定市場規模は約2856億円で、今年2012年は 4643億円、2013年に至っては5766億円まで成長する見込みという(以上、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のレポートによる)。一方、任天 堂、ソニー、マイクロソフトがハードを提供する家庭用ゲーム機市場は3000億円程度なので、今年は市場規模が逆転する可能性もあるようだ。
 だが、それだけの勢いを持つ一方、様々な問題が社会問題化しつつある。たとえば、未成年者問題、換金が可能なRMT(リアルマネートレード)問 題、そして、「ガチャ」と呼ばれる仕組みによる過消費問題などである。なかなかの問題山積ぶりであるが、ソーシャルゲーム市場は予想通り成長するのだろう か。
「ソーシャルゲームは、パチンコみたいなもの」
三菱UFJモルガン・スタンレー証券リポートの衝撃
 なぜ、ソーシャルゲーム市場は今年4000億円市場にまで成長すると考えられているのだろうか。その根拠のひとつに、約20兆円の市場規模を誇るパチンコ・パチスロ産業との類似がある。
 3月9日、19日に発表された三菱UFJモルガン・スタンレー証券リポート(以下、三菱モル・スタ証リポート)「ソーシャルゲームの正体を探る (V)」の中身は衝撃的だった。ソーシャルゲームを「『≒(ニアリーイコール)パチンコ』という見方に変更する」とし、ソーシャルゲーム関連企業を従来の オンラインゲームではなく、パチンコ産業と比較検討するという内容だったためだ。
 執筆者の荒木正人シニアアナリストはパチンコとソーシャルゲームの共通点として、次の4点を挙げている。
 1.RMT(リアルマネートレード)による現金化期待
2.人ではなく端末(機械)相手に遊ぶこと
3.ある確率のもとで(電子クジである)ガチャを引くこと
4.同一ゲームシステムにおける「皮替え」が行われていること
次のページ>> パチンコ市場とソーシャルゲーム市場にユーザー重複の可能性!?
 1はパチンコでいうところのいわゆる「三店方式」の現金化と同じで、希少価値が高いとされる電子データ(いわゆるレアカード)を、オークションサ イトなどで売り現金化することを指す。実際に、グリーの人気ゲーム「探検ドリランド」では、増殖バグを使って電子データを複製し3ヵ月で3000万円稼い だというケースもネット上で報告されている。
 3は後述するが、4の「皮替え」とは、キャラクターなどを変更して同じゲームシステムを使い回しすることである。たとえば、菓子メーカーがパッケージのキャラクターを変えて、同じお菓子を売るようなものである。
 加えて、パチンコ市場とソーシャルゲーム市場の、ユーザー重複の可能性も示唆されている。バンダイナムコゲームスの鵜之澤伸副社長は2月、バンダ イナムコHDが開催した中期経営計画説明会で、急成長したソーシャルゲームへの資金の流入元を聞かれ、パチンコ市場が1%縮小したら約2000億円となる ことから、「(ソーシャルゲームを遊んでいるのは)今まで(の家庭用ユーザー)とは違い、パチンコ業界の客ではないか」と答えている。
 だが本当に、パチンコ市場とソーシャルゲーム市場のユーザーが重複しているとすると、今年度のソーシャルゲーム市場規模予想は三菱モル・スタ証予想である4643億円を遙かに超える可能性が高い。
 20兆円あると言われるパチンコ・パチスロ市場の売上の75〜90%は、客に還元(ペイアウト)されるという(諸説有り)。これらを計算すると ホール(店)の実入りは年間2〜5兆円となる。予想通りソーシャルゲームがパチンコ・パチスロ産業から客と売上を奪っているならば、最終的にはソーシャル ゲームの市場規模が1兆円を超える可能性もでてくるからだ。
吉と出るか凶と出るか?!
900億円を超え市場でのリアルマネートレード規制

 そもそも、ソーシャルゲームは現在どれくらい売り上げているのだろうか。右の図は、国内ソーシャルゲームの市場規模(=課金流通額)である。
 数字は2010年10月以降の四半期ごとの数字で、ディー・エヌ・エー、グリー、ミクシィ、サイバーエージェント(アメーバブログ)の、国内ソーシャルゲーム大手課金流通額を合算したものである(ただし、アバター、広告売上は含まない)。
次のページ>> グリーがRMT規制にいち早く反応、しかし業界全体では?
 2011年10−12月期の市場規模を単純に4倍すると3628億円となる。この数字を家庭用ゲームソフトの市場規模と比べると、任天堂のDSブームでソフトウェア市場が活性化した2006年の3638億円に匹敵する規模である。
 家庭用ゲームソフトの年間市場規模は、この数年3200〜3300億円程度で推移しているので、ソーシャルゲームの市場規模は家庭用ゲームの市場 規模を超え、ゲーム産業では最大勢力となる。また、マンガ産業は年々市場規模が縮小しており、2010年には4091億円だったことを考えると、コンテン ツ産業全体で見ても、このままいけばソーシャルゲーム市場がコンテンツ産業最大の市場規模となるのは時間の問題である。
 だが、三菱モル・スタ証リポートがでたところで、ソーシャルゲーム業界も対応し始めた。先陣を切ったのは業界大手のグリーで、3月12日にRMTへの対応を表明、30日にはRMTビジネスを行う業者に出品の停止と削除を申し入れた。
 この対応が諸刃の剣であることは、業界関係者なら火を見るより明らかだ。というのも「RMTでアイテムを売却できるため、高いARPPU(アー プ、Average Revenue Per Paid User、課金ユーザー1人あたりの平均売上金額)が持続しやすくなっている側面がある」(三菱モル・スタ証リポート)からだ。つまり、「純粋に遊技が目 的の人」だけでなく、「儲けるために遊んでいる人々」がいるので、ソーシャルゲームの市場規模は拡大し、結果、儲かっているということだ。
 確かに、グリーの反応は素早かったが、同業他社が追随するかは懐疑的だ。元来、ソーシャルゲームと同じセクターに分類されていたPC用オンライン ゲームでは、このユーザー構造は既に成立しており、RMT業者も存在している。そのため、ある業界関係者も「なぜソーシャルゲームだけがRMTを規制しな ければいけないのかが、全く分からない」と語っている。
 それを裏付けるように、グリー単体はともかく、ディー・エヌ・エー、グリー、ミクシィ、ドワンゴ、サイバーエージェント、NHN Japanのソーシャルネットワークサービス系大手6社が立ち上げた連絡協議会の動きはなく、本稿掲載時においても連絡協議会に関しては「立ち上げた」以 上の話はない。
次のページ>> ビジネスモデルを強力に支える「ガチャ」の仕組み
ユーザー全員からお金をもらわなくていい
ビジネスモデルを強力に支える「ガチャ」の仕組み
 直近3ヵ月で900億円を稼ぎ出すソーシャルゲームビジネスは、どのようなユーザーに支えられているのだろうか。
 ソーシャルゲームの場合、ヒットと呼べるのは「月商1億円越え」からだという。月商1億円稼げるソーシャルゲームとは、どんなユーザー構成になる のだろうか。関係者の話を総合すると、「アクティブユーザーが15-20万人で、そのうち10%〜15%の2万人程度から月5000円払ってもらうような イメージ」だという。つまり、ユーザー20万人のうち、18万人は無課金でもビジネスが成立するということだ。
 なぜ、そんなことが可能なのだろうか。ソーシャルゲームの大人気タイトルのひとつ、コナミの「ドラゴンコレクション」は、月商数億を超える大ヒッ トタイトルだが、大ヒットの原動力となっているのが、三菱モル・スタ証レポートの「3.ある確率のもとで(電子クジである)ガチャを引くこと」に出てきた 「ガチャ」である。
「現在のソーシャルゲームのガチャのベースは、コナミの『ドラゴンコレクション』です。これが非常に良くできていて、みんなこれをマネしました。グリーの『ドリランド』などのカードゲーム系は、グリー、ディー・エヌ・エー問わずほぼ全てそうですね」(関係者談)
 ガチャにはいろいろあるが、特に実入りがいいのが、期間限定イベントと組み合わせた「コンプガチャ」だという。コンプガチャ付き期間限定イベントとは、能力値を大幅にアップさせる期間を限定し、コンプガチャをやらせるイベントのことだ。
 下図は、バリエーション豊富なコンプガチャのうち、「賞品付き模様揃えゲーム」タイプを説明したものである。
http://http://49.212.5.128/compsim/
次のページ>> 実は決められている、ガチャで当たる賞品の「価格」
 ガチャ、およびコンプガチャと商品価格には、密接に関係がある。
「ガチャはゲームセンターにある、キャッチャーマシン(クレーンのようなもので商品をつかむゲーム)みたいなものです。キャッチャーマシンの景品 小売価格は風俗営業等の規制によりひとつ800円までと決まっています。ということは、1プレイ100円だったら、8回以下で取られてしまうと赤字になる ので、平均プレイ回数を8回以上で調整しなければいけない。
 ガチャも同様で、お客さんには分かりませんが、ガチャで当たるデータはすべて価格が決まっています。コンプガチャの場合は、最終的にもらえる商品 の価格が基本になります。たとえば、ガチャが1回300円で、コンプガチャでもらえる最終商品の価格が10万円だった場合、平均350回はガチャを回して いただかなければなりません。当然個人差はありますから、1万円以下ですむ人もいれば、10万円以上かかる人もいます」。
 つまり、「ユーザー全員からお金をもらわなくていい」ソーシャルゲームを支える理屈のひとつには、たとえば「一部のユーザーが300円のガチャを330回以上回すような過消費をしている」可能性もあると言うことだ。
「ガチャ」ビジネスを支える
価格差別戦略に限界はないのか
 しかし、いつまでも「一部のユーザーが300円のガチャを330回以上回すような過消費」など、し続けてくれるものだろうか。
 このように、少額しか支出する気がない人からは少額(もしくは無料)、多額の支出をする気がある人には多額の金額を払ってもらえる、1つの商品を別の価格で販売することを、経済学では「価格差別(price discrimination)」と呼ぶ(第25回参照)。
 アイテム課金ビジネスを価格差別戦略の視点で分析したとき、重要なのは次の2点である。
 1.基本料金を無料にすることで、将来課金をしてくれるかもしれない多数の潜在的な顧客を呼び込む(いわゆるフリーミアムビジネスモデル)。
次のページ>> 納得した結果の「過消費」なのか?
 2.アイテム課金のビジネスモデルとすることで、パッケージビジネスの場合よりずっと細やかに価格差別を行うことが出来る。

 具体的には、ゲームエクスペリエンスの代価として100円しか払う気がない顧客からは100円、5000円まで出せると考えている顧客からは5000円、10万円までと考えている顧客からは10万円払ってもらえるような仕組みをつくりこむことが可能となる(右図)。
 ここで問題となるのは、「300円のガチャを330回以上回すような過消費をする一部の顧客は、本当に自分が払いたい金額まで冷静に行動した結果なのか」と言うことだ。そのような高額な支払いが発生するガチャシステムで問題となるのは、以下の3点である。
 1.ユーザーが欲しいアイテムをそのまま販売するのではなく、「アイテムが手に入る“かもしれない”くじを引く権利」を販売していること。
 2.(1と関連して)ユーザーが欲しいアイテムを手に入れるまでにかかる金額が不明なこと。たとえば、「ガチャが1回300円で、コンプガチャでもらえる最終商品の価格が10万円」だとしても、消費者に商品価格は明示されていない。
 3.くじ1回あたりの支出額が少額で、かつ、くじ1回あたりにかかる時間が短いこと。
 2と3が合わさると、「夢中になってくじを何度も引いてしまい、気がついたら大変な高額となった」という悪夢が起こりうる。「300円のガチャを 330回以上回す」ということは10万円近くかかる。消費者に「もしこのアイテムを確実に10万円で買えるなら、あなたは支払ったか?」と聞いた時、どれ だけの人が「はい」と答えるだろうか。
「いきなり10万円払えと言われたら断るが、1回300円で330回なら払ってしまう」、という行動を行動経済学の知見で説明すると、次のようになる。
次のページ>> ソーシャルゲームは焼畑ビジネスか
 1)人間は損得の計算を「損(得)の総額」ではなく、「基準となる点からの差額」で行う
→そこで、ソーシャルゲームでは、いきなり10万円払わせるのではなく1回300円ずつ徴収することで基準点を毎回ずらし、ユーザーに「300円出しただけ」という感覚にさせる
 2)損得の評価に関しては、基準点から離れるにつれて、得の側に関してはプラスの評価の伸び幅が弱まり(逓減)、損の側に関してはマイナスの評価の伸び幅が強まる(逓増)
→ユーザーは1回あたりの支出額が高額になると忌避感が強まるので、ソーシャルゲームではそれを避ける
 3)確率が小さい現象に対して、人間はその発生確率を過剰に見積もりがちである。言い換えると、「ほぼ100%」の現象に対しては「100%でない」ことに過剰に反応し「わずかだが可能性がある」現象に関しては「確率がゼロでない」ことに過剰に反応する
→そのため、ソーシャルゲームでは、ユーザーは実際の確率以上に「レアアイテムが当たるかもしれない」と考えやすい
「ガチャ」ビジネスを支える
価格差別戦略は焼畑ビジネス?

 この過消費を可能にする仕組みまでを加えた形で価格差別戦略の図を書き換えると、右図のようになる。ユーザーが冷静なら「ここまで払ってもいい」 と思っている金額をずっと超えて、お金を投入してしまう仕組みを徹底的に作り込むことで、収益を最大化させようとするのが、ガチャシステムを採用したソー シャルゲームだ。
 ここで重要なのは、消費者の行動が「冷静な判断」ではない可能性が高い、ということにある。消費者が合理的な範囲内(=納得ずく)でソーシャルゲームを楽しんでいる場合には、支出額は節度ある範囲内でとどまるので、継続的にソーシャルゲームで遊んでくれるはずだ。
 しかし、冷静な判断力を失うほどにのめり込んでいるとしたら、その消費者は近い将来破綻し、企業は優良な顧客を失うことは明らかだ。そのため、利 益を維持・拡大したい場合には、新規顧客を開拓し続ける必要がある。開拓した新規顧客が経済的にソーシャルゲームを続けられなくなるまで課金を続けさせ、 次の新規顧客にとってかわる。ソーシャルゲームビジネスは、完全な「焼畑」ビジネスモデルを採用していると言っても差し支えないだろう。
 このように、収益の大きな部分を、そのごく一部の人に依存しているソーシャルゲーム業界は、アイテム課金への規制に及び腰になるのは当然だ。そこで次回は、このようなソーシャルゲームをどのような人々が遊んでいるのか、プレイヤーのタイプについて検討したい。
http://diamond.jp/articles/-/17157/votes
質問1 ソーシャルゲームをプレイしたことがある?
質問2 ソーシャルゲームで有料の「ガチャ」を回したことがある?


http://diamond.jp/mwimgs/0/d/250/img_0d65e3c1eafbf27537ef9d2e6f01b61710566.jpg

http://diamond.jp/articles/-/17157


#SNSはパチンコに向かっている
 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
01. 2012年4月18日 21:17:19 : 1zJaP9wkqc
これらゲームを利用した課金システムは、当初から問題になると思ってた。これらを野放しにしているのには権力者にお金がながれていると予想する。A〇B商法も似たりよったり。こちらは問題にならないぐらい政府とつながっているのだろう。
東電・オリンパスも同様に権力者に蜜をあたえて両者WIN・WINか?一般国民だけがバカを見る世の中なんでしょうね。残念っです。

02. 2012年4月19日 12:13:01 : HKRKwJgwks
似たような問題はソーシャルゲーム以前、MMORPGなどのネットゲームが流行り始めた頃からありましたね。
アイテム欲しさに不正アクセスして捕まった未成年者も居ましたし、ガンホーエンターテイメントの社員がゲーム内アイテムを不正取得しRMTで換金、数百万だか数千万だか荒稼ぎしていて逮捕されたとかいう事件もありました。
記事にもありましたが、いつの間にかゲームが「遊び」から「露骨な集金システム」になってしまったのは本当に残念です。
日本では家庭用ゲーム機においても似たような集金体制がとられつつあるので、「ゲーム離れ」は今後ますます加速していくように思います。

03. 2012年4月19日 13:50:39 : XJL2YLIhEs
公営ギャンブルもパチンコも、普通のテレビゲームもしない宝くじも買わない私には、テレビゲーム上のアイテムを得るのに本物の金を払うって時点で、金額の多寡に関わらず、その『太っ腹』ぶりが理解不能。
私がその分貯金できてるかって言ったら話は別だけど、150万どころか15万でも熱出すと思う。お二人の言うようにシステムにもモンダイあるけど、君子危うきに近寄らず。
馬鹿を見るったって、ゲーム会社だって『これ買ったら必ず儲かりますよ』って騙してるわけじゃないし。アイテム買わないと不幸になるぞって脅してるわけでもない。
よ〜く考えよ〜、お金は大事だよ〜♪
木の葉っぱか『子供銀行』券にしときなさい。

04. 2012年4月19日 19:10:58 : ie1vZ0ZLoc
モバ何とかとかAK何とかは子供が犠牲になっているような卑劣な商売。

その子供は大人になって詐欺のような商売に手を染めてしまう。

悪循環ががおこり、日本は滅亡する。(日本未来予想です)


05. 2012年4月19日 20:22:03 : jNhLiHGQnc
パチンコはパチンコ屋に行かないと出来ない。でもオンラインゲームはどこでも出来る。似たようなものだと思うが、そこが罠。いくら金儲けが上手ても、こんなので儲ける会社やその経営者は尊敬できないね。

06. 2012年4月20日 14:01:40 : GustFGFCZw
飲酒運転とおなじように禁止したらいい

07. 2012年4月21日 09:49:32 : p9B89YgNYw
子どもの使った分を払う義務は無いんじゃないの?
実際に裁判になれば勝てないかもしれないけど、法の精神はそうだろう

08. 2012年4月24日 11:36:15 : XJL2YLIhEs
そんなゲームが出来る機械(&機会)を払う能力のない子供に与えちゃいかん。
電話とメールだけに制限しろ。義務がない子供には権利もない。親に払う義務はないかどうか知らんが、監督する義務は間違いなくある。

  拍手はせず、拍手一覧を見る

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
  削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告する?」をクリックお願いします。24時間程度で確認し違反が確認できたものは全て削除します。 最新投稿・コメント全文リスト
フォローアップ:

 

 次へ  前へ

▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民75掲示板

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。

     ▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民75掲示板

 
▲上へ       
★阿修羅♪  
この板投稿一覧