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新築「空室率38%」時代
2012年4月18日 水曜日
蛯谷 敏
ビル建設ラッシュで、空室だらけの「オフィス2012年問題」。新築ビルの空室率は4割近くに達し、当面、改善は望めない。「建てれば入る」という都心ビル神話は、過去のものになる。
4月26日に開業予定の「渋谷ヒカリエ」。オフィス棟はディー・エヌ・エーなどが入り満室稼働。だが、こうしたケースは稀だ(写真:村田 和聡)
「竣工前、満室稼働」。東京・渋谷駅に隣接する商業ビル「渋谷ヒカリエ」が、ビルオーナーの関心を集めている。
4月26日に開業予定の同施設は、東京急行電鉄のお膝元である渋谷駅周辺の再開発計画の目玉プロジェクト。劇場やホールなど、開業前から様々な施設が話題を呼んでいるが、その中でオフィス関係者の興味を引いているのが、テナントの入居状況である。
ソーシャルゲームで急成長を続けるディー・エヌ・エー、ライブドアを買収して話題となった韓国ネット大手NHNの日本法人、KDDIなどが入り、全フロア満室で稼働する。
「竣工前にテナントがすべて決まるケースなんて…」。同業者からは、羨望とも嫉妬ともつかない声が漏れる。
「ヒカリエは例外中の例外」
東京都心のオフィスは昨年から大型オフィスビルの竣工が相次ぎ、供給が一気に増えている。昨年12月に開業した地上40階建ての「住友不動産新宿グランドタワー」、今年2月竣工の東武鉄道「東京スカイツリーイーストタワー」。今後も、5月に東京駅前の郵便局跡に「JPタワー」が完成、2012年だけでも貸室総面積2000坪以上のオフィスビルが約30棟竣工する予定だ。
ところが、供給とは裏腹に、借り手の動きは鈍い。ネットや医療といった一部の好況業種を除けば、多くの産業はオフィスを拡張するほどの業績は見込めない。経費削減のためのオフィス移転がある程度で、「渋谷ヒカリエの満室スタートは、例外中の例外」と不動産仲介業者は口を揃える。
そのため、多くのオーナーはテナント探しに奔走している。先に挙げた有名ビルでも、いまだ過半のテナントが決まっていないものもあるという。
新築ビル開業による「2012年問題」で、業界の構造的な課題が、いよいよ表面化してきた。オフィスビル仲介を手がけるビルディング企画の調査によると、都心5区(渋谷、港、中央、新宿、千代田)の高層ビルの平均空室率は、2012年2月に8.19%を記録した。
一般に、店子と大家の力関係が逆転するのは、空室率5%と言われている。この水準を超えれば、テナントが優位になる。リーマンショック前の好況だった2007年などは、空室率は3%でオーナー優位だった。
だが、それも今は昔。新築ビルなら、テナントが殺到した時代は過ぎ去り、今では、賃料引き下げやフリーレント(一定期間の無料貸し出し)で、オーナーが身を切らなければ埋まらない。
しかも、ビルディング企画の調査では、さらに衝撃的な数値がある。新築ビルに限れば、平均空室率は38%(2012年2月)にまで跳ね上がるのだ。
「空室率5%の攻防なんて過去のものとなるかもしれない」。高止まりが続く空室率を前に、あるオフィスビル関係者はつぶやいた。
足元、世界経済は平静を取り戻しつつあるが、先行きには不透明感が漂う。震災の影響も重なり、企業の経済活動は、全体的に見れば縮小傾向が目立っており、オフィス市場にも影響を与えている。そこにオフィスの大量供給問題が降りかかる。
「それでも、新築ビルは賃料さえ下げればテナントは決まる」と強気のオフィス関係者もいる。だが、経済活性化と企業成長が実現しない限り、オフィス市場が勢いを取り戻すことは難しい。オフィス業界の過去の常識が崩れようとしている。
このコラムについて
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日経ビジネス “ここさえ読めば毎週のニュースの本質がわかる”―ニュース連動の解説記事。日経ビジネス編集部が、景気、業界再編の動きから最新マーケティング動向やヒット商品まで幅広くウォッチ。
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著者プロフィール
蛯谷 敏(えびたに・さとし)
2000年、日経BP社入社。通信業界誌『日経コミュニケーション』記者を経て、2006年より日経ビジネス記者。情報通信、ネット、金融、不動産、政治、人材など色々担当。「一極集中」から「多極分散」へと移り変わる様々な事象をテーマに日々企画を考えている。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20120416/231021/?ST=print
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