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ユーロ危機再燃:束の間の高揚の後で
2012.04.18(水)
The Economist
ECBの低利資金の効果が徐々に消え、スペインの国債利回りが上昇している。
高揚感は過ぎ去った。昨年12月と今年2月の2度にわたる欧州中央銀行(ECB)の長期資金供給オペ(LTRO)で、市中銀行はECBが1%に引き下げた主要政策金利で1兆ユーロを超える3年物資金を借り入れた。
LTROは、表向きはユーロ圏の銀行の破綻を防ぐ仕組みだが、銀行が資金の一部を高利回りの国債購入に使ったため、低迷するユーロ圏の南部周縁諸国の国債市場を押し上げることにもなった。その効果が薄れてしまった。
使い果たされた弾丸
ECBの2回目の3年物資金供給が実施されてから、スペインの10年物国債利回りは上昇している。4月半ばには6%台に迫り、11月以来最も高い水準を記録した*1(図1)。
利回りの反転は、ユーロ圏の債券市場の力学が変化していることが大きな要因で、これがイタリアにも影響を及ぼしている。
スペインの新政府によるつまずきも、マイナスに働いた。こうした状況の底流には、スペインの傷ついた銀行、政府の財政計画の厳しさ、その2つがただでさえ弱い経済に与える影響に関するより深刻な懸念がある。
債券市場の力学から見てみよう。規制当局からの暗黙の支援を受け、スペインとイタリアの銀行が保有する国債の残高は11月から2月にかけて1220億ユーロ増加した。国債の価格は急上昇し、利回りは低下した。価格が下がることを期待して借りた国債を売っていたヘッジファンドは、買い戻しを余儀なくされた。上昇相場はほかの投資家も呼び込んだ。
この好循環は3月初めに悪循環に変わった。利回りが、国債がもはや割安と考えられなくなる5%を割り込むと、買いが次第に減少したと話す投資家もいる。だが、主な引き金となったのは、2回目にして最後のLTROが終結したことかもしれない。周縁国の国債を買っていた銀行が手持ちの弾丸を使い果たしてしまったのだ。
「ECBが『これ以上ない』と言ったとたん、入札に応じる銀行は消える」と、あるヘッジファンド運用担当者は話す。こうした銀行以外に熱心な国債の買い手がほとんどいないため、経験豊かな投資家は、利回りが再び上昇すると見ている。
*1=その後、利回りは6%を突破し、16日には一時6.2%近くに上昇した
証券会社は、いずれ買い手が現れると期待して売り手から国債を引き取ることに消極的になっている、と債券運用大手ピムコのアンドリュー・ボールズ氏は言う。
薄商いの市場では、ごく少数の投資家が怖気づいて売り始めたりすれば、国債利回りが突如急騰しかねない。
スペインの2012年予算の対応の不手際が、一部の投資家に売りを促した可能性もある。発足からまだ日が浅いスペイン政府は、3月の地方選挙が終わるまで予算を先送りした。また、財政赤字の目標が、欧州各国の指導者と合意した国内総生産(GDP)比4.4%ではなく、5.8%になるということも発表した(結局、5.3%の目標で妥協した)。
クリストバル・モントロ国庫相とルイス・デギンドス経済相は「始終、互いに矛盾する発言をする」と、スペインのあるエコノミストは不満を漏らす。
だがスペインは、混乱したメッセージよりもっと深刻な問題を抱えている。2011年の財政赤字は、主にスペインの自治州による使い過ぎが原因で、目標としていたGDP比6%ではなく8.5%になった。景気は後退している。4月11日に発表された統計によると、2月までの1年間で生産活動は5.1%縮小した。
1年間で財政赤字をGDP比で3.2%減らす試みは、事態を一段と悪化させるだろう。労働者の解雇にかかる費用を引き下げ、地域で賃金を設定するのを容易にする労働市場の改革は、やがてはスペイン経済に恩恵をもたらすだろうが、今はその時ではない。
スペインの将来に影を落とす銀行問題
スペインの銀行に関する懸念は、見通しをさらに暗くしている。長く続いた国内の建設・住宅ローンブームがめちゃくちゃな終わりを迎えたことは、多くの銀行融資がすでに焦げ付いていることを意味している。今後さらに多くの融資が焦げ付くだろう。
不動産価格はまだ、ユーロ圏でやはり住宅問題を抱えるアイルランドほど大きく落ち込んではいない。投資家は、スペインの銀行の自己資本増強に国が駆り出されるのではないかと心配している。
問題を複雑にするのは、スペインの膨大な民間債務の多くが、同国銀行を通じて間接的に外国人に対して負っている債務だということだ。スペインの純額ベースの投資不足(企業、家計、政府が外国人に負っている債務の総額から、各部門が所有する外国資産を差し引いたもの)は、GDPの93%に達している。長期にわたる経常赤字が累積した結果だ。
ーロ圏の投資家がホームバイアスを強めているため、対外債務を抱えた国は債務を借り換えるのが難しくなっている。ギリシャとポルトガルはスペインと同程度の対外債務を抱えているが、借り入れコストはスペインより高い(図2参照)。
スペインとイタリアは、自国経済の見通しが大幅に改善しない限り、今の借り入れコストに長く耐えることはできない。そのため、両国は外部の助けを頼らざるを得ないかもしれない。
だが、ECBがすぐに次のLTROを認めるのは難しい、とバンク・オブ・アメリカのローレンス・ブーン氏は考えている。
ECBは、直接的な国債購入を再開することができる。6人から成るECBの役員会の一員であるブノワ・クーレ氏は4月11日、その可能性があることをほのめかし、スペインの国債利回りを若干低下させる一因になった。
だが、国債購入を再開したら、既存の投資家は、債務再編が行われた場合にECBに劣後する立場に置かれることを一層心配するようになる。いずれにせよ、ECBのマリオ・ドラギ総裁は最近、高い利回りは約束した改革を実行するよう各国政府に要請する債券市場のやり方だと述べている。
スペインの次は・・・
スペインは、ギリシャやポルトガル、アイルランドが申請したような支援プログラムに志願するかもしれない。だが、苦境にあるという点ではイタリアもスペインとほとんど変わらず、ユーロ圏の貧弱な救済基金が長い間両国の救済を担うことはできない。
より可能性の高い結末は、スペインが最終的に、自国銀行の資本を増強するために共同救済基金に頼らざるを得なくなることだ。そうなれば、スペインの借り入れコストにかかる圧力が取り除かれるかもしれない。
その間にも、一部の投資家は既に、次に問題が起こりそうな地域に目を向けている。「フランスは我々が最も割安な価格で最も大きく売り建てている国だ」と、あるヘッジファンド運用担当者は話している。
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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35016
急増するギリシャの貧困に立ち向かうボランティア
2012.04.18(水)
Financial Times
今から15年前のこと。エンジニアのラザロス・パパゲオルギュ氏は友人たちと協力し、アテネ市街でテント暮らしをする貧しいクルド人難民のグループを支援しようと決意した。自宅で作った栄養のある食事を、市内のパン屋から寄付されたパンと一緒に届けることにしたのだ。
白髪頭のパパゲオルギュ氏の小さなボランティアチームは「アルトス・ドラッシ(パンの行動)」という名の団体に成長し、同氏の当初の想定をはるかに上回る数の人々に食事を出すようになった。今では貧しい家庭に食料を手渡したり、何千人ものアテネの住民に日々の食事を提供するスープキッチン(無料食堂)に食材を供給したりしている。
クルド人難民の支援で始めた活動が急拡大
「私たちは不自由なく暮らせるアテネ市民には珍しく、移民の人たちの役に立つことを何かしたいと考えていた」とパパゲオルギュ氏。「だが、危機に襲われてからはフルタイムで活動している。私たちが支援する人たちの中にはギリシャ人も少なくない」
S&P、ギリシャ国債を選択的デフォルトに格下げ
ギリシャでは失業率が2割を超え、貧困に苦しむ人が急増している(写真は首都アテネの議会前)〔AFPBB News〕
ギリシャでは経済危機が悪化するにつれて貧困に苦しむ人が急増しており、同国の社会福祉制度も十分に対処できない状況になっている。
欧州連合(EU)の統計局ユーロスタットの調べによれば、直近の歳出削減策が実行される前の2010年でさえ、ギリシャ国民のほぼ28%が貧困と社会的疎外に直面していた。2009年の実績値20%から劇的に急増したことになる。
貧困率は今、かなり高まっている、とパパゲオルギュ氏は見ている。「私たちの推計では、30%はもう突破している。失業が今年も予想通りに増え続ければ、40%に達する恐れもある」
一方、多くのギリシャ人にとって頼みの綱である家族支援のネットワークにかかる負担は、ますます重くなっている。労働者の5人に1人は失業中で、年金支給は約30%カットされ、貯蓄も着実に減っているためだ。
栄養失調を防ぐのに不可欠な存在に
「フードバンク」という団体を運営する退役陸軍大将、アリストメニス・ディオニソポロス氏は、子供や年金受給者、ホームレスといった最も弱い立場の人々が栄養失調になるのを防ぐにあたって、ボランティア団体は欠かせない存在になっていると話す。
この団体は、主に品質保証期限が近づいた食品などを地元のメーカーから寄付してもらい、各地に分配する事業に携わっている。
フードバンクは1990年代に、スーパーマーケットを所有する裕福なギリシャ人が食品の廃棄を減らすために設立した団体だ。現在では、アテネ北部の郊外にある倉庫から無料食堂、児童養護施設、住宅など150カ所近くに食品を届けている。
ディオニソポロス大将によれば、基本的な食べ物を提供してほしいという要望が今回の危機で急増したという。「昨年は食料の分配が30%近く増えた。今では約2万人に食料を提供しているが、この数は3年前の2倍に相当する」
ギリシャの反貧困グループは、世界的なフィランソロピー団体、スタブロス・ニアルコス財団が立ち上げた総額1億ユーロの3カ年事業から資金援助を得ながら活動を拡大している。
同財団のアンドレアス・ドラコポウロス共同代表(ニューヨーク在勤)は、「社会に付加価値をもたらすことができ、かつ非常に誠実で献身的に活動している人たちの運営する」プロジェクトに今年は約2500万ユーロを配分していると語った。
ただ、非営利団体の国際基準を満たすグループがギリシャにはほんの少ししかないと残念そうに付け加えている。
アルトス・ドラッシとフードバンクはすでに、同財団の総額150万ユーロのパイロットスキーム(試験事業)から活動規模増強資金の援助を受けている。
最後の拠り所となるギリシャ正教会
アテネではこの他にも、学校を通じて約3000人の生徒・児童に食料支援を行うプログラムや、ホームレス向けデイセンター*1を3カ所新設するプログラム、住宅からの立ち退きを迫られている家族を支援する社会住宅整備計画などが援助を得ている。
「この試験事業の資金を比較的短期間で全額使うことができればいいと思っている」とドラコポウロス氏は言う。「食料や医薬品、住宅に関する支援のニーズは今後18カ月間で非常に大きなものになるだろう」
継続的な食料支援を求める多くのギリシャ人にとって、ギリシャ正教会の教会は支援の柱の1つになっている。アテネでは教区の司祭たちが、昼食を出す無料食堂を無休で開いたり、人数の多い家庭にパスタや豆類を配ったりしている。
*1=宿泊の設備がない福祉施設
「ここに来れば食事ができることが分かっているから安心できる」。ある公的機関を定年退職したスタマティア・パパゾグロウ氏はそう話す。
労働者が数多く住むアテネ郊外の町ドラペツォナのアギオス・ファヌリオス教会のニコラス神父は、前述のフードバンクや、エーゲ海に浮かぶ島のオリーブ油製造組合などから成る仕入れのネットワークを自ら整備した。修道院のコックだった神父は、毎週のメニューも自分で作成するという。
苦しい時だからこそ尊厳を大事に
ここでは5人のボランティアスタッフが1日当たり400食を作っている。昨年は250食だったそうだ。教会の文化センターにあるキッチンの外では、自前の容器を手にした人々が並んで待っている。
「配給を受ける人は名前が登録されていて、カードを見せることになっています。配給が整然と行えるようにするためです」。ニコラス神父はこう話す。「こういう困難な時期には、教区の人々の尊厳を傷つけないように接することがとても重要です」
By Kerin Hope
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/35021
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