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日本政府は600億ドルの資金協力表明へ、IMF支援で財務相
4月17日(ブルームバーグ):日本政府は、欧州の政府債務危機の拡大を阻止するため、国際通貨基金(IMF)の資金基盤強化に向け、外国為替資金特別会計から600億ドル(約4.8兆円)の融資枠を設定することを決めた。週末にワシントンで開かれる20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議などで正式に表明する。安住淳財務相が17日午前の閣議後会見で明らかにした。
財務相は各国に先立って支援額を表明した背景について「欧州は決して楽観できる状況にはない。確実に危機の収束につなげるためにもIMFの資金基盤強化は重要だ。早期合意に向けた流れをつくるために日本の態度表明が重要との判断に至った」と説明。その上で、「相当数の国々が日本の表明に合わせて拠出をしてくれるのは間違いない」との見通しを示した。
IMFのラガルド専務理事は、日本が600億ドルの資金協力を表明する方針を示したことを受け、他の国にも追随するよう呼び掛けた。IMFが電子メールで専務理事の声明を配布した。
記事に関する記者への問い合わせ先:東京 下土井京子 Kyoko Shimodoi kshimodoi@bloomberg.net
記事に関するエディターへの問い合わせ先:東京 大久保 義人 Yoshito Okubo yokubo1@bloomberg.net香港 Paul Panckhurst ppanckhurst@bloomberg.net
更新日時: 2012/04/17 11:54 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M2LPLA6K50Y401.html
企業・経営>「気鋭の論点」
平均的日本人の「資産」価値は2740万円
人的資本の価値を最新のツールで計測してみると
2012年4月17日 火曜日
松本 哲人
「人的資本の価値」を測る、と聞いた時、読者は何を思い浮かべるだろうか。「人的資本」そのものは多義であるが、ここで筆者が言う「人的資本の価値」とは、ある人物から金融資産から得る所得や不動産所得などをのぞき、今後獲得する所得のことである。より具体的には、将来受給する年金や給料などの割引現在価値のことを指している。つまり、人としての価値とは全くの別物である。
これは、株価が理論上は将来の分配金の割引価値であるのと同じである。こうした給料や年金などの所得は国民所得の3分の2程度を占めており、経済にとって重要な要素といえる。なお、米国では、平均的な人的資本の価値はおよそ48万ドル程度である(2007年)。この場合、非労働者や既に退職した年齢層も加えた人口の平均なので、一般によく語られる生涯給与とは異なる数字である。日本人の場合は、2005年のデータだが25万ドル(その当時の為替レートで約2740万円)であった。さて今回は、筆者らが考えた人的資本の計算方法をご紹介したい。
マクロ経済分析などで生産要素としての人的資本を測る場合、経済学者は受けた教育レベルなどでその値を計測してきた。だが、個人の最適なポートフォリオ、すなわち資産構成を考えるうえでは金融資産や土地・建物など実物資産と同じようにその人的資本の金銭的価値を考える必要がある。この金銭的価値を計算するのは意外と難しいのである。
教育の価値や寿命をどう織り込むかがカギ
1976年、ジョン・ケンドリック米ジョージ・ワシントン大学教授は、この価値が投下した費用に一致すると仮定し、育児にかかる金銭的な費用など、成長するまでにかかったコストを基に資産価値を計算した。だが、当然、教育や経験などにより蓄積された人的資本の資産価値の増加はこうした手法では計上されず、過小評価になりがちである。これは会社の価値を図るときに費用を元にした会計上の資産を見ても過小評価になることが多いのと同じである。
そこでデール・ジョルゲンソン米ハーバード大学教授らは、教育水準と年齢を元に生涯給与の推定を行い、人口構成や死亡率などを勘案した上で米国全体の人的資本の価値を計算した。彼らは労働経済学の成果を基に緻密な計算を積み重ね、割引率と将来の人口全体の賃金上昇率については妥当な数値を仮定して計算した。手法としては、手間がかかるものの、定義に沿った推定である。
だが、すでに起こりつつある産業構造の急変や人口構成の変化など、避けられない誤差がいくつも重なると、構造的に間違った方向へと推定してしまう危険性がある。さらに株価の変動の多くは「分配金の変化よりも割引率の変動によるものである」というジョン・キャンベル米ハーバード大学教授の調査結果もあり、ジョルゲンソン教授らの手法は割引率を固定してしまう問題がある。
一方、「割引率」に焦点を当てて人的資本の価値を計算したのが金融経済学を専門とするハンノ・ルスティック米カルフォルニア大学ロサンゼルス校教授らである。彼らは人口全体の賃金上昇率、株や債券のリターンなどをベクトル自己回帰(VAR)モデルによって推定し、そこから逆算された割引率を使って資産価値を計算した。
しかし残念ながら、彼らのモデルでは、人の寿命の存在を勘案できなかったため、人的資本の価値はアメリカの人口一人当たりの年間労働所得の約100倍、2500万ドルと巨大な額となってしまった。このような最新の金融経済学のテクニックを使ったアプローチは確かに魅力があるが、人的資本の資産価値の評価に利用するには、人口構成や死亡率をどう取り入れていくかが課題となりそうなのである。
そこで筆者はジュリアン・ディ・ジョバンニ・カナダ・トロント大学教授と共に、こうした寿命や誤差などの問題を回避し、かつ簡単に人的資本の価値を評価する方法を提案した。前提となるのは「個人の消費と個人の人的資本も含めた資産全体の比率が、一定である」ということである。
さらに、これは経済全体では経済全体の人的資本と家計の金融資産・不動産などの資産全体と家計消費の比率が一定であることを意味する。筆者らは、個人の消費は個人の全資産の5%という前提で、耐久財消費を調整した家計消費を20倍することで、まず米国における資産全体(人的資本、金融資産、不動産などの合計)の価値を計算してみた。この上でFRB(米国連邦準備理事会)から発表されている、家計全体が所有する金融資産および不動産などの実物資産の価値を差し引き、それを人的資本の価値としたのである。
消費者の自分に対する評価が、消費に現れる
このアプローチでは、人々の行動は最適化されているとの近代経済学の原則に基づき、「消費者個人の人的資本に対する自己評価額が、消費行動に何らかの形で現れている」との前提に立つ。そのため、消費者の実際の割引率や、個人がおのおの考えている退職のタイミングなど、消費者の予想している給与の上昇率が自動的に個人の消費に現れると考える。ゆえに、他の手法で困難とされる問題を全て回避できる。
しかもこの手法では、給与や年金額などのデータが不要である。だが筆者らのアプローチは「個人の人的資本評価が消費行動に表れている」という前提が非常に重要であるため、筆者らの推計した人的資本の資産価値がこうしたデータと大きな齟齬をきたしていないか、給与などのデータを使い裏付け調査もする必要がある。
調査の結果、人的資本の価値は計算された資産全体のおおよそ4分の3を占めており、国民所得における平均的な労働分配率が3分の2であることを考えると、若干高めであった。だがこれは給与などは金融資産による収益に比べ安定しており、割引率が低いことが理由であろう。また、給与の増加額と人的資本の資産価値の成長率の相関係数は高くないものの、給与と人的資本の比率は長期的には安定した関係にあることも判明した。
さらに、人的資本の国際比較による検証もしてみた。家計の金融資産および実物資産のデータを発表している国について、ロバート・バロー米ハーバード大学教授らが発表した、教育年数に基づく生産要素としての人的資本の指数と比較してみた(グラフ)。図に示されているようにチェコは例外だが他は教育年数に相関している。
筆者らの手法は多くのマクロ経済学のモデルで隠れた前提となっている「消費と資産全体の額が一定である」という仮定に基づき計算したものだ。筆者らの算出した人的資本の価値は、米国の計算結果では年金などを考慮していないジョルゲンソン教授らの数値を若干上回り、死亡や退職を考慮していないルスッティック教授らの当初の35年分の割引給与額を若干下回る水準となり、ある意味最も妥当な水準といえる。いずれにせよ、筆者らの手法はデータさえ整っていれば先行研究に比べ簡単に人的資本の資産価値が評価でき、なおかつその結果も最も常識的なものに収まった。
人的資本の収益は、債券の収益に相関
現在家計の実物資産データは一部の国を除くと充実したものではないが、家計の実物資産データが充実すれば各国の人的資本の資産価値がもっと精緻にかつ簡単に測れるようになる。そうすると、多国間の人材の稼ぐ力の比較などにも応用できる。筆者らはこの研究で得られた人的資本の価値のデータを使い、人的資本の収益は、インフレが落ち着いたグレートモデレーションの期間において、債券のリターンに相関していることを実証した。その一方で国内株式とは負の相関をしており、人的資本を考慮することが、投資家のポートフォリオが自国株式に偏りやすい「株式のホームバイアス」の説明になりうることも発見したのである。
※本稿は筆者の個人的見解であり、IMFの見解を代表するものではありません。
このコラムについて
「気鋭の論点」
経済学の最新知識を分かりやすく解説するコラムです。執筆者は、研究の一線で活躍する気鋭の若手経済学者たち。それぞれのテーマの中には一見難しい理論に見えるものもありますが、私たちの仕事や暮らしを考える上で役立つ身近なテーマもたくさんあります。意外なところに経済学が生かされていることも分かるはずです。
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著者プロフィール
松本 哲人(まつもと・あきと)
松本 哲人 国際通貨基金(IMF)調査局エコノミスト。米ウィスコンシン大学経済学博士(Ph.D.)。東京大学法学部卒業後、野村総合研究所入社、野村証券エコノミスト、英国銀行、米国連邦準備銀行を経て現職。専門は国際金融。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20120411/230853/?ST=print
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