http://www.asyura2.com/12/hasan75/msg/647.html
Tweet |
日経ビジネス オンライントップ>アジア・国際>FINANCIAL TIMES
家電製造を米国に戻すGE
2012年4月17日 火曜日
FINANCIAL TIMES
米ゼネラル・エレクトリックが家電の生産を海外から国内に戻している。新興国の労働コストが上昇していることで、海外移転のメリットが減ったためだ。歓迎される製造業の「国内回帰」だが、成功モデルにできるかは今後次第だ。
米ゼネラル・エレクトリック(GE)は、国内家電事業に10億ドル(約820億円)を投入し、メキシコや中国に移していた製造拠点を米ケンタッキー州ルイビルに戻すことを決めた。これにより、数百人の雇用を創出するという。
ジェフリー・イメルトCEO(最高経営責任者)はこの決断について、「過去にないリスクの大きい投資だ」と言う。
その通りかもしれない。生産拠点の国内回帰はイメルト氏が描く現在の同社の戦略を象徴するものだ。それだけに成功しなかった場合、その失敗は永遠に彼について回るだろう。
海外労働コストの優位性が薄れる
米国の製造各社では今、「リショアリング(reshoring)」という海外から国内に製造拠点を戻す戦略が試されている。新興国の賃金が急上昇する一方で米国の賃金は停滞、海外工場の労働コストの優位性が失われているからだ。
その結果、米国での工場雇用者数はこの2年で42万9000人増えた。これは、景気後退期に失われた数の約5分の1に当たる。
GEでは海外投資が増える一方で、国内では昨年、米メディア大手NBCユニバーサルの株式の過半を売却するなどしてきたことから、今や従業員数は国外の方が多い。2011年末時点で、全社員30万1000人のうち、米国の社員は13万1000人だった。
とはいえ、同社は2009年以降、米国で新たに1万3500人、そのうち製造部門で1万1000人を採用する計画を発表している。
テレビで流れるCM「GE Works」シリーズには、製造の「アウトソーシング」をやめて国内に戻すことで、GEグループ全体の競争力を高めるというイメルト氏の構想が表現されている。良くも悪くも、GEを米製造業復活のシンボルとしたのだ。
GEの家電事業は照明事業と合わせても全売上高の約6%。とはいえ、その米国における再生は困難を伴う試練となる。というのも、冷蔵庫や暖房機などを作る同部門にとって主要市場である北米の市場環境は厳しいからだ。
スウェーデンの家電メーカー、エレクトロラックスによると、北米家電市場の規模は2006年から2011年の間に4分の1縮小し、米家電メーカーのワールプールによれば、今年も3%以上の成長率は見込めないという。
昨年のGEの家電・照明事業の利益率はわずか3.5%。これに対し同社のほかの事業の利益率は15%以上だった。GE家電事業の競合には、まだ生産を国外に移しているところもある。
海外移転は持続可能ではない
1953年にGEの国内向け家電の主力工場として建設されたルイビル工場「アプライアンスパーク」は古い。93万平方メートルの工場敷地は羽目板で囲まれ、板を打ちつけた窓もある。だが、生まれ変わる兆しも見える。ある建物の外側に取りつけられた巨大スクリーンには、中できびきびと働く工場作業員の姿が映し出されている。
敷地への進入路に並ぶ看板には、「米国は下り坂にあると言う者がいる。彼らは我々の生産ラインで起きていることを知らないだけだ」と書かれている。
工場に入ると、さらに劇的な変化を見ることができる。生産が移転された時に置き去りにされた古い設備が雑然と置かれた手つかずの場所もあるが、それ以外の場所は作り替えられ、見違えるようだ。壁は真っ白に塗り直され、照明も明るく、天井の大きな扇風機により快適な気温が保たれている。組み立てラインでは、暖房機や冷蔵庫の新シリーズを次々に生産している。
生産拠点が労働コストの安い韓国やメキシコ、中国に移されるに従い、同工場は従業員数がどんどん減り、4年前には閉鎖寸前かと思われた。
イメルト氏は2008年に家電及び照明事業を売却、またはスピンオフ(分社)する可能性があると発表した。だが、その計画は金融危機の発生により阻まれ、同社はその戦略を見直した。
家電部門GEアプライアンスのチップ・ブランケンシップCEOは、生産の海外移転は一時的にはコストの削減効果をもたらすが、「時が経つにつれ、持続可能なビジネスモデルではないと判明した」と語る。
加えて「我々のサプライチェーンが広がりすぎたことにも気づいた。市場が求めるほど機敏に対応できず、そこでもっといい事業のやり方があるのではないかと検討し始めた」と言う。
同氏はGEが国内で家電生産を再開することにした要因は3つあると言う。第1が無駄のない「リーン生産方式」と設計技術の導入で、第2が2段階の賃金体系への移行だ。2005年以前から勤務する熟練従業員は時給22ドル、それ以降に採用した従業員は時給13ドルとする。第3は1700万ドル(約13億9500万円)の政府補助の存在だ。
今回の判断は国際競争力を取り巻く変化を反映している。米ボストン・コンサルティング・グループによると、中国の賃金水準が上昇しているため、2005年には中国の4.6倍だった米国の賃金は、生産性を考慮して調整すると、2015年までに2.3倍に縮む。原油価格の高騰による輸送コストの上昇も生産の国内回帰を後押ししている。
その結果、暖房機の生産は中国から、冷蔵庫はメキシコから戻ってきた。洗濯機の生産もアジアから戻す予定だ。現在約4100人いるルイビル工場の従業員は、来年5000人に増加すると見込まれている。
残る家電事業売却の可能性
もっとも、イメルト氏らGE幹部は、製造拠点の国内回帰戦略が成功すると証明するには、まだ多くのことをする必要があると認めている。
ボストン・コンサルティングによると、米国で販売される家電製品の約半分が輸入品だという。強いのは韓国のサムスン電子とLG電子で、ワールプールやエレクトロラックス、米メイタグといった有名ブランドの多くが低コストの製造拠点を持っている。
昨年10月ワールプールはアーカンソー工場の閉鎖を発表し、エレクトロラックスはアイオワ工場を閉鎖した。両社とも生産をメキシコに移した。
ブランケンシップ氏は、ルイビル工場での生産強化を図っているので、「今年半ばには満足できそうだが、それでも勝利宣言はしない」と言う。
投資家が期待を寄せているのは、冷蔵庫や食器洗い機ではなく、航空エンジンや発電用ガスタービンだ。照明と合わせても家電部門は、昨年の営業利益の約1.5%しか貢献していない。
米サンフォード・バーンスタインのアナリスト、スティーブン・ウィノカー氏は、家電部門に投資してきたとはいえ、同部門の売却の可能性はまだ消えていないと指摘する。「売却するなら、できるだけ良い印象を与えることが重要だから」と同氏は言う。
だが、家電事業がGEにとって「ブランドの顔」であることに変わりはない、とブランケンシップ氏は言う。
先日、ルイビルの商工会議所で講演したイメルト氏は、GEの雇用創出への歓迎ムードも、ルイビル工場の成長と競争力を維持できなければ、意味がないと述べた。
「非常に難しい事業だが、成功させるために私は一生懸命努力する。今はそう約束することしかできない」
Ed Crooks
(©Financial Times, Ltd. 2012 Apr. 2)
著者プロフィール
FINANCIAL TIMES
フィナンシャル・タイムズ
FT、ことフィナンシャル・タイムズは英国ロンドンにて1888年創刊の新聞。世界の 主要ビジネス情報を提供し正確で鋭いニュース、評論、分析を提供。紙面でも、オンラインでも、FTはグローバルなビジネス界には欠かせないメディアである。140カ国以上の160万人に読まれ、世界23拠点で印刷している。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20120413/230925/?ST=print
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。