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脱デフレ、狭まる日銀包囲網
2012年4月16日 月曜日 松村 伸二
デフレ克服に向けた政府・日本銀行の連携が揺らいでいる。審議委員人事の迷走が政策の手を縛るという本末転倒ぶりだ。株価は再び1万円を下回り、世論も日銀を追い詰め始めた。
新年度入り最初の日本銀行・金融政策決定会合を控えた6日朝、白川方明・日銀総裁と野田佳彦首相が会談に臨んだことが市場で憶測を読んだ。昨今の円安・株高のきっかけになった2月の金融緩和強化決定の際にも両者は朝食をともにしており、「政府主導」の次なる金融緩和が近いと市場は読む。
もっとも日銀は4月9〜10日に開いた政策会合では追加的な金融緩和を見送った。だが、今月は27日にも、日本経済の見通しを示す「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」をまとめる会合がある。2月に設定した「当面は1%をメドとする」という事実上の物価目標に程遠い見通しを出すと、同時に追加緩和に踏み切らざるを得ない、との観測は根強い。
事実、追加緩和を巡って日銀に対する“包囲網”はこれまでになく狭まっている。象徴的だったのが、審議委員人事だ。2人の審議委員が退任したのが4月4日。本来ならここで委員を補充しなければならないが、政府が後任候補の1人にBNPパリバ証券のチーフエコノミスト、河野龍太郎氏を挙げたところ、野党は「財政再建を重視し、金融緩和に消極的」と反対したのだ。
政治に加え国民、市場も脱デフレ
日銀の審議委員人事は、国会の同意人事である。しかし、「ねじれ国会」の下では国会の同意を得るのは容易ではない。
いつか見た光景ではある。2008年3月、当時の福田康夫政権は福井俊彦総裁の後任に、武藤敏郎副総裁の昇格や田波耕治・元大蔵事務次官を充てる人事案を提示。しかし、現与党の民主党は「財政と金融の分離に反する」として反対した。その後、曲折があって今の白川総裁体制が形作られた経緯は、人事迷走の代表例だ。
実は上の表にあるように、当初、副総裁に抜擢された白川氏が総裁代行を務めた2008年3月以降、2年3カ月も審議委員が全員揃わない異常事態が続いた。そして日銀はこの間も量的緩和の復活など重要政策を決めてきた。政治はリーマンショック後の大変な時期でさえ審議委員の欠員を放置するという最悪の形で圧力をかけた。今回の河野氏起用への不同意自体にも「金融緩和に積極的な審議委員を増やす」(欧州系証券の債券ストラテジスト)という政治の意思がうかがえる。
しかも、日銀が4日に公表した「生活意識に関するアンケート調査」では、デフレを「困った」と答える声が「好ましい」を3年ぶりに上回った。「安ければいい」と考えていた国民の中にも、所得減少などの副作用の強さが意識され始めた。デフレ克服に向け、国民も“日銀包囲網”を狭めようとしている。
さらに言えば、日経平均株価が1万円を割り込み、2月の会合直前の9000円近辺から一時1万200円台まで駆け上がった上昇分の半分が帳消しになった。こうした市場の動きもまた、新たな脱デフレ策の催促と映る。
未曾有の長期デフレを克服するには本来、日銀、政府の両輪が政策面でフル回転する必要がある。それが実際は日銀に頼り切りの状態。狭まる日銀包囲網は、政治の無策の裏返しでもある。
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松村 伸二(まつむら・しんじ)
日経ビジネス記者。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20120412/230897/?ST=print
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