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世界最大手、ウォルマートが倒れる日規模10分の1のアマゾンに決して勝てない理由とは?
2012.04.16(月)
堀田 佳男:プロフィール
米国の小売業界で過去1年、しきりに取り沙汰されている仮説がある。それは地上に店舗を構える大型小売店が「やがては終焉する」というものだ。
「地上派」の代表格は業界最大手のウォルマート(本社アーカンソー州)である。一方、「ネット派」の代表がアマゾン(本社ワシントン州)だ。
ウォルマートは足踏み、アマゾンは躍進
ネット通販で肩を並べるものがなくなったアマゾンのジェフ・ベゾスCEO〔AFPBB News〕
どちらも一般消費者を対象にしたビジネスだが、20世紀型の薄利多売を信条とするウォルマートが足踏みし、ネット通販で闊歩するアマゾンが興隆する流れはすでに誰の目にも明らかだ。
アマゾンと言えば、かつては本やDVDの販売に特化していた。だが今では、ウォルマートが店舗で売る物品をネット上で売っている。
乳児用の紙オムツから腕時計、靴、アパレル製品まで多岐にわたる。いまさら記すことでもないが、ネット上で買えないものはないと言えるほどのレベルに達しつつある。
「地上派」が終わるという仮説はあくまで仮説の話であるが、米国では車を飛ばしてショッピングする時代は終わりを迎えつつあるという脈動を感じさえする。それは欲しい物はネット通販で入手することを意味する。
ただ「地上派」の小売大手がすべて数年後に姿を消すわけではない。徐々に縮小し、淘汰されていく運命にあるかもしれないという仮説だ。
ウォルマートとアマゾンの企業規模を見ると、今はウォルマートが圧倒している。売上高は4189億ドル(約33兆5000億円・2011年1月期)とアマゾンの480億ドル(約3兆8400億円・2011年12月期)という数字で比較にならない。
それでも昨年6月、ある予測が世間を騒がせた。両社の成長率が現在のまま継続されると、2024年には両社の立場は逆転するとの味方だ。その兆候はすでに出ているし、逆転の時期は早まる可能性さえある。
アマゾンの昨年の売上は前年比で41%増。驚異的な数字だ。一方のウォルマートは8%に過ぎない。近年、8%の成長率を達成できれば文句を言う社長はいないが、アマゾンの急追は「ネット派」の勢いをそのまま物語っている。
一方、消費者の中には「地上派」の衰退論に納得しない人たちもいる。ネット通販を利用しはするが、店舗の必要性も説いている。そこにはネット時代らしい理由があった。オハイオ州に住むケリー・バーミングハムさんが自身の体験を述べる。
「店舗にも行くのです。でもそれは実際の品物を手に取り、色や大きさをチェックするためです。その後、自宅に戻ってネット上で買い物を済ませます。もちろん新品でもネットの方が安いからです」
この現象は日米で同じだ。
顧客の変化に追随できなくなった企業
多くの企業は絶えず新しい試みをしている。新製品だけでなく、売り方や見せ方の工夫も惜しまない。顧客側はそれを受け入れているだけに思われるが、実は企業よりも消費者のマインドの方が早いスピードで変化している場合が多い。企業は顧客についていけていないのだ。
アマゾンに大きく水を開けられたウォルマート〔AFPBB News〕
ウォルマートがアマゾンに喰われている主因は、消費者の購買行動が大きく変化しているにもかかわらず、企業側がその対応に遅れているからにほかならない。
5年前、ウォルマートに足繁く通う客の4人に1人しかネット通販をしていなかった。しかし今では2人に1人だ。
これまでウォルマートの主な顧客層の平均年収は5万ドル以下で、ネット通販には消極的だった。だが今ではその顧客層もネットや携帯でショッピングをする。
ウォルマートも今ではアマゾンに負けじと、ネット通販をさかんに行ってはいる。しかし昨年のオンラインでの売り上げは、企業全体の2%に過ぎない。
いまウォルマートの事業戦略の最大の関心事は、いかにアマゾンに追いつくかだという。ただ現時点で、マラソンであれば1キロ以上の差をつけられている印象がある。
もちろんペースを上げる努力はしている。昨年5月以来、オンラインのインフラに5億ドル(約400億円)を投資した。その中にはIT企業5社の買収や300人のコンピュータ関連職の増員も含まれる。
それだけではない。昨年から取締役も入れ替えた。もちろんオンラインに力を入れるためである。
しかしオンライン市場戦略の専門家で、ウェブマックス社のケネス・ウィスネフスキー最高経営責任者(CEO)は「ウォルマートの企業価値が下がっている理由はズバリ、ネット通販の顧客をつかまえられずにいるからです。一方のアマゾンは新しいブランド製品の提供だけでなく、割引や特典といった付加価値をつけて疾走していますから、その差は縮まりません」と、ウォルマートのネット通販への力の入れ方が遅すぎたと語る。
ウォルマートが起死回生の一策
電子書籍から紙オムツまで、買えないものはないと言えるほどになったアマゾン〔AFPBB News〕
多くの顧客にとり安い商品はより安く、高額商品であればさらに安くという消費者心理はネット通販時代になっても変化がない。アマゾンのネット上の平均価格はウォルマートの店頭価格より19%も安いという数字がある。
企業の成長という点で、現時点では勝負はついているかに見える。ウォルマートで2010年、最も売れた商品は果物のバナナだったが、アマゾンでは電子書籍端末のキンドルだった。
それでもウォルマートはいくつもの苦肉の販売戦術を打ち出している。たとえば高額商品の中でも、ソニーやサムソンの薄型テレビは店頭には置かず、オンライン上だけで提供している。
またウォルマートらしい低所得者層向けの計らいとして、クレジットカードも銀行口座も持たない顧客にネット通販を許す冒険も始める。
ウィスネフスキー氏はウォルマートの必死の企業行動に理解を示すが、「アマゾンの市場シェアを奪うためにはかなり過激な戦略をとらない限り難しい」と述べる。
どの業界にも競争はある。これまで世界最大手のウォルマートは、企業の懐の深さを生かしてほとんどのものを飲み込んできた。それが成長の方策だった。だがネット通販での劣勢は大きな停滞といって差し支えない。
この流れが大きくなり、ウォルマートだけでなく、ターゲットやシアーズといった「地上派」の他店も規模を縮小し、さらには姿を消すことがあるのか。
この仮説が実証されるまでにはもう少し歳月が必要になる。
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