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http://diamond.jp/articles/-/17170
昨年末から今年にかけて、金融庁が生命保険会社各社に対し、保険の募集文書の一斉検証を指示、報告を求めていたことが本誌の取材でわかった。
これは保険の販売をめぐって再三に渡る指導を受けながら、苦情が一向に減らないことを金融庁が問題視したことが背景にある。なかでもターゲットになったのは、医療保険とがん保険だった。
数万件に上る募集文書の
点検指示に震え上がる生保
それは、国会で発せられた1つの質問から始まった。
「誇大広告がないかどうかをどのように見ているのか。広告規制を強化すべきではないか」
昨年10月末に開かれた衆議院の財務金融委員会。質問に立った自民党のあべ俊子議員は、中塚一宏金融担当副大臣を問いただした。医療保険の募集広告があまりに誇大で、消費者の誤解を招いているのではないかとの趣旨だった。
それから2ヵ月後、金融庁が動く。生命保険各社に対し、保険募集のパンフレットや広告の一斉検証を指示、今年2月までに報告するよう求めたのだ。さらには、報告に偽りがないか、金融庁自身がチェックする旨も通告。保険各社は震え上がった。
金融庁がかくも強硬な姿勢を打ち出すのには理由がある。実は募集文書をめぐっては、以前から誇大にならないよう指導がなされ、2006年には厚生労働省保険局長名で保険会社に要請までした経緯があるからだ。
にもかかわらず、金融庁などの元には、苦情が相変わらず寄せられている。そうした折に政治家からの質問を浴び、金融庁も腰を上げたというわけだ。
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しかし、保険会社にとってはたまったものではない。というのも、大手ともなれば募集文書は数万件に上る。それを1件1件、しらみつぶしに点検し、問題があれば解消しなくてはならないからだ。
しかも、新年度の募集文書はすでに刷り上がっている段階で、各社は該当するページを刷り直したり、問題の部分にシールを貼ったりと対応に大わらわ。
「今年2月半ばまで、他の仕事はすべてキャンセルして対応に当たった。忙しさは、05年ごろに表面化した保険金不払い問題の比ではなかった」と大手保険会社の幹部は明かす。
高額療養費制度で
実は少ない自己負担
今回、金融庁がターゲットにしたのは、この5年間で合わせて100万件あまりと右肩上がりで増加している医療保険とがん保険。中でも、「高額療養費制度」と「先進医療」に関する記述の2つだ。
どの保険会社のパンフレットにも、「入院したら多額の費用がかかります」などとした上で、「もしもの備えは万全ですか」と、保険の必要性を訴えている。
しかしこうした記述は、確かに一面では事実であるものの、別の側面から見ればクロに近いグレーな表現である。たとえば、長期入院などで医療費が膨れ上がったとしても、自己負担する金額は実はそこまで大きくないからだ。
これは、高額療養費制度というもののおかげ。医療機関に支払う医療費が、所得に応じて決められた一定額を超えたら、超過分の一部が払い戻されるという制度だ。
たとえば40歳の会社員(標準報酬月額が53万円未満)が入院し、その月にかかった医療費が100万円だった場合、7割の70万円は公的な医療保険でカバーされるものの、残り30万円は窓口で支払わなければならない。
次のページ>> 募集パンフレットには、数字のマジックが満載
だが、このうち21万2570円は、後に健康保険組合から払い戻される。つまり、実質的な自己負担は8万7430円にすぎないのだ。
さらに健康保険組合などの「付加給付」と呼ばれる払い戻しの上乗せ制度を使えば、2万〜5万円程度で済んでしまうのだ。
今では、入院前にあらかじめ健保に申請し、手続きさえ取っていれば、初めから払い戻し分を差し引いた最終的な自己負担分だけを支払えばよくなった。4月からは外来受診に関しても同様で、費用負担は軽減されている。
こうした仕組みがあるにもかかわらず、パンフレットには小さな文字で、目立たないようにしか書かれていないのだ。
募集パンフレットには
数字のマジックが満載
こうした事情は、「先進医療特約」についても同じだ。
先進医療とは、厚生労働省により承認された高度な医療技術のことで、がんに対する「陽子線治療」や「重粒子線治療」などが知られている。
こうした治療は健康保険の適用外で、中には技術料が300万円程度もするものもある。そこでパンフレットには、「先進医療は高額になりがちです」などと書かれている。
しかし、詳細は後述するが、300万円もする治療は123種類もある先進医療のうち、ほんのわずか。そもそもそうした高額治療を実際に受ける人もそこまで多くはない。
確かに、「高額になる」とは断言していない。とはいえ、文言の周辺に高額治療だけピックアップした図表を掲載していることを考えれば意図は明白で、消費者が誤解してもおかしくない。
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こうした事例は枚挙にいとまがない。
たとえば、「死因の3割ががん」で、「いまや2人に1人ががんにかかる」との表現。その上で、入院時の自己負担は多額で、医療費以外にも差額ベッド代や病院までの交通費なども必要になるとし、先進医療まで加えればさらに高額になってしまうと訴えている。
しかし、がんにかかる割合が高くなるのはあくまでも50歳以上で、若いうちにがん保険などに入る必要性は薄い。
費用に関しても、前述の通り高額療養費制度があるのでたいしたことはないし、差額ベッドなどは利用しなければいいだけの話。入院時の日用品だって、自宅で使っているものを持っていけば済む。
また入っている保険によっては給付に制限がある場合もあり、入院や治療で支払ったお金すべてが保険で賄えるわけでもない。
つまり、保険の募集文書は数字のマジックと、巧みな言葉のレトリックが満載で、真実を伝えているとは言い難いのだ。
だが、消費者がこうした点を見抜くのは至難の業。消費者の相談に乗るファイナンシャルプランナーでさえも理解できていない人が少なくない。
しかも、保険商品は極めて複雑怪奇に設計されており、パンフレットを詳細に見てもその全貌を知ることはできない。たとえ営業担当者に疑問をぶつけてみたところで、専門的な言葉で適当にごまかされてしまうのがオチだ。
保険は、住宅に次いで高い買い物と言われている。にもかかわらず、知識不足に付け込まれ、高いだけで必要のないものを売り付けられているのが現状なのだ。
次のページ>> 保険「セールストーク」の騙しの手口を、一挙公開!
医療保険22商品を徹底解説
関心高まる地震保険に盲点も
『週刊ダイヤモンド』4月21日号の第1特集は「騙されない保険」。金融庁も問題視する医療保険、がん保険を中心に、生命保険に潜む“わな”を始め、セールストークの騙しの手口などを一挙公開しました。
今回の特集では、医療保険22商品を初めて、保険料に保障範囲、先進医療の3つの視点から徹底解剖したほか、今、業界に旋風を巻き起こしている乗り合い代理店大手3社を本誌記者が直接訪問、提案内容をプロに判定してもらう覆面調査も実施しています。
また、東日本大震災を受けて、関心が高まる地震保険についても徹底解説。地震保険に入っていれば安心との常識がいかに間違っているかについても解き明かしています。意外な盲点満載で必見です。
例年実施している「プロが選ぶ生命保険ランキング」や、「自動車保険ランキング」は今年も掲載。盛りだくさんの内容になっていますので、ぜひとも手にとってご覧ください。
(『週刊ダイヤモンド』副編集長 田島靖久)
質問1 自分で入っている保険の内容を、よく理解している?
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