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第81回】 2012年4月13日高田直芳 [公認会計士、公認会計士試験委員/原価計算&管理会計論担当]
保険業界やエルピーダメモリを襲った「需要蒸発」に企業の経営戦略が「必ず失敗する理由」を見る
先日、信号待ちで停止しているときに、4台からなる玉突き事故に巻き込まれた。筆者は赤信号の先頭で停止しており、後ろに2台の車が停止していた。
さらにその後方から、4台目の車がドカンとぶつかってきて、ドン、ドンと玉突き衝突になってしまったのである。先頭にいた筆者の場合、衝撃力は弱まり、後部バンパーにコツンと当たっただけであった。
近くに神社の駐車場があったので、そこへ車を乗り入れる。バンパーにかすり傷が付いていた。
残りの3台はどうしたのかな、と周辺を見回したところ、道路に立ち往生したまま。近づいて見て回ると、全員が女性ドライバーで、運転席で泣きじゃくっていた。
携帯電話を使って警察と救急に通報しながら、車3台を駐車場に誘導する。後方の車のクラクションが、けたたましい。こういうときに、人はその性格を表わすようだ。
全員に目立った外傷はない。警察車両や救急車もすぐに到着した。現場検証や事情聴取って、そういうふうにするのか、などと、暢気な傍観者になって見学していた。最初に衝突してきた人は、携帯電話を操作していて前方不注意であったらしい。
その場で家族へ連絡したのはもちろんだが、迷ったのが保険会社への連絡である。自分の車に戻ってダッシュボードの中を見ると、自賠責やら任意保険やら、保険会社の名前がずらりと書き並べてあった。
どこへどう連絡していいものやら。こういうときは保険会社ではなく、車を購入した販売店(ディーラー)の担当者へ連絡するのが一番であることを、紹介しておこう。
その日の夜、最初に衝突した加害者の保険会社から、連絡があった。100%の過失を認めるという。その応対に、さすが手慣れているという印象を持った。
保険約款というと、針の先でつついたような細かい文字がびっしりと並んでいて、とても読む気になれない。それでも我慢しながら保険証券を矯(た)めつ眇(すが)めつしているときに「そうだ、次のコラムは保険会社を扱おう」と考えた次第である。
保険会社と事業会社を区別しないのが、
経営分析の基本
以下では、製造業や流通業を「事業会社」と呼ぶことにする。メディアでは、上場企業の業績を語る際、「銀行・証券・保険を除く」という表現をしばしば用いる。事業会社とは明らかに異なる扱いだ。
本連載では、第10回コラム(メガバンク編)と第11回コラム(地方銀行編)以外で、「銀行・証券・保険」を積極的に取り上げたことがない。しかも保険会社は今回が初登場である。
次のページ>> 保険会社は災害や事件にどのように対応してきたか
別に避けてきたわけではない。確かに銀行には自己資本比率規制、そして保険会社にはやソルベンシー-マージン規制といった独特の指標があって、取っつきにくい面があるのは否めない。
ただし、ソルベンシー-マージンなどは、金融当局が持ち出す物差しである。保険会社といえども「上場」しているのであるから、ROE(自己資本利益率)などの経営指標などで、他の事業会社と比較できなければ、上場している意味がない。
そこで2008年以降、日本経済に降りかかった事件や災害に、保険会社はどのように対応してきたのかを、事業会社にも共通する経営指標を用いて論じてみよう。
話題が散漫になっては困るので、ポイントを3つに絞る。リーマン-ショック、東日本大震災、そしてタイの大洪水である。
特にリーマン-ショック以降、「需要が蒸発した」という表現が飛び交った。「需要」が「蒸発」するとは、どういう現象を指すのか。具体的なデータの裏付けを示すことなく、センセーショナルな表現に飛びつくのは、経済学や会計学などを生半可にかじった者にしばしば見られる「現象」だ。
これについては12年2月末、出し抜けに破綻(正確には会社更生法の適用を申請)したエルピーダメモリに、「需要蒸発」に関する顕著な例を見ることができる。ただし、今回は保険会社の決算データに、その一端を見出すことにする。
事業会社にも保険会社にも、先に挙げた3つのポイントが業績に及ぼした影響は大きい。ところが、影響の度合いは多少異なるようだ。事業会社はリスクを回避するために保険会社を利用するのに対し、利用される側の保険会社は契約者(事業会社)の損失を「分散させることで、投資のリスクを部分的に消去することができる」(クルーグマン・ミクロ経済学533頁)からだ。
そうした点に注意しながら、話を進めていく。
東京海上HDでも、
タイの大洪水には耐えられなかったか
まずは本連載でお馴染みのSCP分析(Sale-Cost-Profit:タカダ式操業度分析)を東京海上HDに適用したものを、〔図表 1〕に掲げる。拙著『高田直芳の実践会計講座/戦略ファイナンス』や『会計&ファイナンスのための数学入門』で紹介している、筆者オリジナルの分析手法である。
次のページ>> 東京海上HDが、ゆっくりと沈む
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〔図表 1〕の中央に黒色で描かれているのは、「実際売上高」の移動平均線である。その下に緑色で描かれているのが、黒字と赤字の分水嶺となる「損益操業度売上高」だ。
この損益操業度売上高は、CVP分析(Cost-Volume-Profit:損益分岐点分析&限界利益分析)の「損益分岐点売上高」と似た概念である。ただし、損益分岐点売上高が「単利計算=1次関数」で計算されるのに対し、損益操業度売上高は「複利計算=指数関数」で計算される。
単利と複利が似て非なる概念であるのと同様に、損益分岐点売上高と損益操業度売上高も似て非なる概念だ。ところが世の中には、高校一年の夏あたりで数学を放棄してしまう人が多いようなので、単利と複利の区別が付かない人が意外と多いらしい。
それはともかく、後掲の〔図表 4〕で説明するように、SCP分析(タカダ式操業度分析)に従ってコストを「複利曲線」で表現すると、黒字と赤字の分水嶺がもう一つ存在する。それが〔図表 1〕の上方において橙色で描かれている「収益上限点売上高」になる。
緑色の損益操業度売上高と、橙色の収益上限点売上高に挟まれた領域を、〔図表 1〕では「収益ゾーン」と表示している。この図表では2度、黒色の実際売上高が収益ゾーンの下方を割っている。
1度目はリーマン-ショック後の08/12(08年12月期)であり、2度目は11/12(11年12月期)である。11年3月に起きた東日本大震災では収益ゾーン内に何とか収まったものの、タイの大洪水には耐えきれず、収益ゾーンを割ってしまったことがわかる。
東京海上HDが、ゆっくりと沈む
〔図表 1〕の中央にある青色の曲線を「予算操業度売上高」と呼ぶ。製品1個あたり(サービス1単位当たり)の平均費用が最も低くなる売上高である。いわゆる「量産効果」を最も発揮する売上高である。
この予算操業度売上高を100%に置き直して、他の売上高を百分率で表わしたのが次の〔図表 2〕だ。
次のページ>> T&Dホールディングスの「需要が蒸発」した
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〔図表 1〕が金額ベースであったのに対し、〔図表 2〕は百分率である。後者(百分率)のほうが、保険業界を含めた「金融」の特性を説明しやすいので、以下は〔図表 2〕に基づいて話を進めていく。
〔図表 2〕から浮かび上がる1つめの特徴は、08年9月期のリーマン-ショック以前では、黒色の実際操業度率が120%近くにまで達していたことだ。他の金融関連銘柄でも同率で推移するものが多い。「カネ」を扱う業界は、高速回転するということなのだろう。
2つめは、赤色で描かれた「最大操業度率」が、かなり低位で推移することだ。東京海上HDの最大操業度率は、101%〜103%を漂う。他の金融関連銘柄でも同様の比率を示すところが多い。
最大操業度率というのは、経済学の「利潤最大化条件」を満たすものをいう。最大操業度率が低位に推移するものとしては、流通業界が挙げられる。すなわち、金融業界と流通業界はともに「薄利多売」の特性を有している。長く続く低金利時代を反映しているのかもしれない。
金融界は、高給のイメージが強い。人件費への分配が多く、また、設備投資などの内部留保を厚くする必要がないので、薄利多売になる傾向がある。その点で同じ薄利多売といえども、流通業界とは異なるようだ。
3つめは、東京海上HDではリーマン-ショック以降、黒色の実際操業度率を100%に維持しようとする努力が窺えることだ。10/6(10年6月期)の実際操業度率が低下しているのは、この期より資産除去債務(企業会計基準18号)を計上したことによる。
4つめとして、11/3(11年3月期)以降、実際操業度率が急落しているのは、やはり東日本大震災の影響だ。〔図表 1〕では黒色の実際売上高は緩やかな下降カーブを描いているが、〔図表 2〕の百分率で見ると、実際操業度率は30%を割っている。東日本大震災と、タイの大洪水によるダブルパンチの影響だ。
保険業界は、とにもかくにも「確率」の世界である。08年9月のリーマン-ショックや、11年3月の東日本大震災が「想定内」であったかどうかはともかく、2011年後半に起きたタイの大洪水は、想定していた確率の、ほんの少し外側で起きた事件といえるだろう。
メディアなどでは、円高・高税率・電力不足などをまとめて「六重苦」という表現を用いる。実際にはそれらは正六角形を形成しているわけではない。東京海上HDにとっては、タイの大洪水が駄目押しになったことがわかる。
T&Dホールディングスの
「需要が蒸発」した
東京海上HDの次に、MS&AD-IGHDとNKSJ-HDを扱おうと思ったのだが、両社は上場してまだ十分な年数を経ておらず、決算データが少ない。これは第一生命にもいえる。
そこで、T&Dホールディングス(太陽・大同・T&Dフィナンシャル生命)のデータを基に〔図表 3〕を描いてみた。
なお、MS&AD-IGHDとNKSJ-HDの文字を見て、読者はどういった保険会社かをイメージできるだろうか。筆者はときどき「ん〜っ」と戸惑う。表音文字を並べただけの企業名を見ていると、対外的な企業イメージよりも、合併に伴う社内融和を優先させた妥協の産物、といった印象がしてならない。
次のページ>> 企業活動には、上にも下にも限度がある
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さて、〔図表 3〕にある各売上高の定義は、〔図表 1〕と同じである。
09/12(09年12月期)に大きな変動を見せているのは、前年同期(08年12月期)が▲1320億円の経常損失であったのに対し、その原因となった有価証券評価損が消えて、急回復(+2030億円)したことによる。
〔図表 3〕で注目したいのは、09/3(09年3月期)だ。色付けした4本の売上高すべてが折り重なり、黒色の実際売上高を超えている。ここが「需要の蒸発」に当たる。この時期、どういう状況になっていたのか。
企業活動には、
上にも下にも限度がある
その前に、正常な状態の概念図を、次の〔図表 4〕に示す。〔図表 3〕でいえば、08/3(08年3月期)以前、または11/3(11年3月期)以降が、〔図表 4〕になる。〔図表 3〕が時系列の動態図表であるのに対し、〔図表 4〕は、ある一定時点の静態図表になる。
http://diamond.jp/mwimgs/7/2/600/img_7249cd9e3d7ae9879be2cafb70d6896511912.gif 管理会計や経営分析の世界で絶対的通説の位置にあるCVP分析(損益分岐点分析&限界利益分析)でも、〔図表 4〕に似た図表が存在する。第75回コラム(ソニー編)では、次の〔図表 5〕を掲載した。CVP図表という。
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〔図表 5〕は、書籍や情報システムのすべてに掲載または搭載されているものなので、見たことのある人も多いだろう。ただし、〔図表 4〕と〔図表 5〕は、似て非なるものである。それを一目で確認してほしい。
〔図表 5〕は、企業のコスト構造を、縦軸の固定費を起点に、右上がりの「直線」で描く。「単利計算=1次関数」を基礎とするから当然である。
それに対して〔図表 4〕は、企業のコスト構造を、縦軸の「基準固定費」を起点に、反り返った「複利曲線」で表現する。SCP分析(タカダ式操業度分析)は、「複利計算=指数関数」の考えに基づいているからである。
企業活動をよくよく観察すると、昨日稼いだキャッシュは今日へ再投資(複利運用)され、今日稼いだキャッシュは明日へ再投資(複利運用)されていることがわかる。実務と理論を融合させると、〔図表 4〕にあるような「複利曲線(指数曲線)」で表現するのが正しいのだ。
世の中にある書籍や情報システムは、そのすべてに〔図表 5〕が採用されている。故に、これを絶対的通説という。ところが、絶対的通説は、理論(単利計算構造)と実務(複利計算構造)とが一致していない。それにもかかわらず、こうした矛盾を改めようとしないところに、人は「権威」に弱いものであることを痛感させられる。
〔図表 4〕のほうは、理論と実務を一致させた、筆者オリジナルの表現方法であり、筆者自製のシステム「原価計算工房Ver.6」でのみ実現させているものである。2008年11月に出版した拙著『高田直芳の実践会計講座/戦略ファイナンス』以前には決して存在しなかった表現方法でもある。
需要が蒸発して、
企業は疲弊する
リーマン-ショック後には、どうなったか。SCP分析(タカダ式操業度分析)に基づいて描いたのが次の〔図表 6〕である。
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〔図表 6〕の特徴は、総コスト曲線と売上高線とが交わる点が存在せず、4種類の色付きの点が折り重なっている。〔図表 4〕において黄色で染められた収益ゾーンが、〔図表 6〕では「蒸発」している。
企業が、〔図表 6〕にある総コスト曲線上を駆けずり回っても、原点Oから伸びる売上高線と交わる場所を見つけることができない。これが「需要の蒸発」である。〔図表 3〕を見ると、T&Dは09/3(09年3月期)の1回だけ、需要が蒸発した。
こうした場合、企業はどのような経営戦略を採用すべきか。
次のページ>> 遅きに失した経営戦略によって「蒸発」したもの
〔図表 4〕にある各点の色は、〔図表 1〕や〔図表 3〕にある各線の色と同じである。
企業が正常な状態にあるときは、〔図表 4〕左下にある損益操業度売上高から、右上にある収益上限点売上高までの「収益ゾーン」に、黒色の実際売上高が存在する。〔図表 4〕において、黄色で染めた「上弦の月」が収益ゾーンを表わす。
実際売上高が左下の損益操業度点売上高を下回れば、当然、赤字に転落する。それ以外にも、売上高をがむしゃらに伸ばして、右上の収益上限点売上高を超えても赤字に転落する点に注意して欲しい。〔図表 4〕ではそれぞれ赤色で染めた部分だ。
〔図表 4〕右上の収益上限点売上高を超えた先にあるのは、「利益なき繁忙」である。
次のページ>> 無限の収益拡大を保証するCVP分析
絶対的通説であるCVP分析(損益分岐点売上高&限界利益分析)によれば、売上高を増加させれば赤字から黒字に転換する点(損益分岐点)が存在し、そこからさらに売上高を伸ばせば黒字が無限に拡大する、と説く。〔図表 5〕を見れば明らかなように、損益分岐点よりも右上方は、無限の黒字(黄色で染めた領域)が待ち構えている。何と素晴らしいことだろう。
そこで企業は〔図表 5〕の教えに従い、事務部門や製造部門の従業員を営業部門に回して、売上高の増大を図ろうとする。権威の説く絶対的通説を信じて。
ところが、企業の実態が「複利計算構造」であった場合は、どうなるか。〔図表 6〕を見れば明らかなように、総コスト曲線上を必死に駆け上がろうとしても、その下はすべて真っ赤っか。営業部門へ異動させられた社員は、疲弊していくだけなのである。
遅きに失した経営戦略によって
「蒸発」したもの
では、〔図表 6〕の状況にある企業が取るべき経営戦略は何か。簡単にいえば、リストラ(構造改革)である。〔図表 6〕の縦軸にある「基準固定費」の引き下げである。
しかし、不動産などの物件費の削減に比べ、人員整理などの人件費の削減は難しい。事務部門から営業部門へ社員を異動させたところで、傷口を広げるだけだ。畢竟、会社更生法の適用を申請したエルピーダメモリは正しい選択をした、ということになる。
いや、その評価は、実は正しくない。なぜなら、エルピーダメモリの場合、リーマン-ショックよりも前に、収益ゾーンが「ずっと消滅」していたからである。
遅きに失した経営戦略によって「蒸発」したものは何か。
エルピーダメモリのSCP分析(タカダ式操業度分析)を掲載して、それを確かめようと考えたのだが、12年2月29日付の日本経済新聞を読んで気持ちが萎えた。その記事によると、エルピーダメモリは会社更生法の適用を申請する直前、それまで取引のなかった、りそな銀行に250億円もの預金を移し替えたという。
メインバンクの怒りは如何ほどか。別に、メインバンクの肩を持つわけではないが、恩を仇で返す企業では分析する気が失せる。
次のページ>> 誤った理論からは誤った経営戦略が導かれる
過去を遡れば、政府は09年6月に、日本政策投資銀行を通じてエルピーダメモリに300億円を出資した。経済産業省は当時、DRAMの供給を確保することは国民生活や経済産業活動を支えるために極めて重要だ、と説明した(二階経済産業大臣の閣議後大臣記者会見の概要)。
収益ゾーンがすでに消滅していた企業に300億円。全額が私たちの税金だ。それがすべて、政治的な判断で「蒸発」してしまったのである。
民間企業が投資に失敗した場合、その意思決定を下した役員は、株主代表訴訟制度で責任を問われる可能性がある(会社法847条)。ところが、政府が投資に失敗した場合、その意思決定の当不当を問う「納税者代表訴訟制度」といったものはない。政治や行政は、やりたい放題といったところだ。
おそらく政治家も役人も、300億円ものテコ入れをすれば売上高が増えて、エルピーダメモリは復活すると信じたのであろう。そしてここで注意すべきは、CVP分析(損益分岐点分析&限界利益分析)が絶対的通説として君臨している以上、それを信じた政治家や役人の判断に誤りはない、という点だ。
誤謬はむしろ、理論のほうにある。
筆者以外の企業が利用する情報システムはすべて、〔図表 5〕のCVP図表の右上に広がる黄色の領域をその画面に映し出し、企業はそれを信じて経営戦略を展開している。そんなものなど、存在しないにもかかわらず。
瑕疵ある理論は、企業の経営戦略を誤らせ、政治や行政の政策判断を誤らせる。エルピーダメモリは、それを見事に実証してくれたのである。
300億円は、随分と高い授業料であった。ところが、これだけの代償を払いながら、企業や政府は、いまだに絶対的通説を信じてやまない。〔図表 5〕のCVP図表が潜在意識に植え付けられているため、「会計知なき人々」はひたすら営業部門の強化や資本注入に走ろうとする。その現実に、筆者は苦笑するばかりである。
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