★阿修羅♪ > 経世済民75 > 561.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
不可解な市場のトレンドに関する4つの疑問 無限競争に苦しむ韓国の若者の救世主 高度成長の終わった中国で顕在化した問題点
http://www.asyura2.com/12/hasan75/msg/561.html
投稿者 MR 日時 2012 年 4 月 09 日 01:08:25: cT5Wxjlo3Xe3.
 

不可解な市場のトレンドに関する4つの疑問
2012.04.09(月)
(2012年4月7/8日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

ハッピー・イースター(復活祭)。そしてユダヤ人読者には、ハッピー・パスオーバー(過越祭)だ。ある食事が、これら2つの宗教の祭りを結びつける。パスオーバーのセダーがそれだ。

 セダーはユダヤ人がエジプトからの脱出を祝う儀式的な夕食だ。イエスが十字架に張りつけられる前夜に過ごしたのが、最後の晩餐のセダーだった。

 セダーは、一番幼い子供がその夜はなぜすべてが普段とは異なるやり方なのかについて、4つの疑問を投げかけるところから始まる。そこで本コラムも本コラムなりの伝統に従い、理にかなわないように見える市場のトレンドについて、4つの疑問を問うてみたい。

■過去の金融危機の後は株式市場の停滞がかなり長引いたのに、なぜ今回、世界の株式市場はこれほど回復してきたのか?


大規模な金融危機の後の割に、世界の株式市場は力強く回復してきた〔AFPBB News〕

 今回の回復はもう、最も似ていると思われた2度の市場暴落の型にはまらなくなった。つまり、1929年のウォール街の大暴落と、1989年の大納会での日本のバブル崩壊だ。

 S&P500株価指数は現在、2007年のピークと比べ、辛うじて10%安い程度だ。これに対し過去の大惨事の後は、S&Pは45%、日経平均株価は70%も安かった。

 一体、何が違うのか? 政策対応である。

 米連邦準備理事会(FRB)議長のベン・バーナンキ氏は、ウォール街の大暴落と日本のバブル崩壊の専門家だ。米国と日本では当時、中央銀行が危機に対して劇的な金融緩和という刺激策を速やかに講じることができず、資産価格の下落がもたらす経済的なダメージを大幅に悪化させてしまった。

 バーナンキ氏について歴史がほかに何を言うことになろうとも、当時と同じ過ちは繰り返さなかった。FRBの金融緩和のおかげで、資産価格は急速に持ち直すことができた。このため、少なくともバーナンキ氏は、金融危機の台本を変えることに成功した。

 だが、極端な金融政策による対応の後、新たな台本がどんな結末を迎えるのかは、まだ分からない。

■今回の危機が始まって以来、世界の株式市場の指数とコモディティー(商品)指数はあらゆる局面で同じ動きを見せてきたのに、今は逆方向に動いているのはなぜか?

 CRB指数で見たコモディティー価格と株式市場との乖離は著しい。第1四半期には、世界の株式指数が11%近く、ないしそれ以上も上昇したのに対し、CRBは低迷し、0.2%の上昇にとどまった。

 これは危機勃発以来の異常な相関関係が終わりつつあることを示しているのかもしれない。何しろ、コモディティー価格は一部企業にとっては売り上げ増を意味するが、その他企業にとってはコスト増を意味するため、株価と連動する必要はない。

 だが、コモディティー価格は、群を抜いて重要なコモディティー消費国である中国について何かを物語っている可能性の方が高い。というのも原材料価格の停滞は、中国の需要に関する懸念を反映している。モルガン・スタンレーが算出しているコモディティー関連企業の株価指数は第1四半期に4%上昇しただけで、中国株と同程度だった。

 ブラジルなど、中国に多額の輸出を行っている国の株価は上昇相場を存分に謳歌しているため、コモディティー以外の市場が中国の減速に気づくのは、これからのようだ。

■多くのリスクを抱えた通貨は決まって確実に下落してきたのに、ユーロがいまだにこれほど強いのはなぜか?

 ユーロのしぶとい強さは、驚くべきであると同時に有害だ。ユーロ圏の危機をもたらしたのは、周縁国の国際収支の問題だ。このため、各国は今より大幅に安いユーロを必要としている。

 ところがユーロは、欧州中央銀行(ECB)が4カ月前に銀行向けの低利融資を発表して以来、ほとんど下げていない。なぜか?

 もしかしたら、解体にかかわるリスクにもかかわらず、投資家がギリシャが抜けたユーロ圏の方が強くなると思っているからかもしれない。だが、大部分においてはユーロの強さはFRBの責任だ。何しろ投資家は、FRBの方がECBよりも金融緩和に踏み切る可能性が高いと見ているからだ。

 米国の金融緩和はドル安を招く。実際、ユーロは今年、バーナンキ氏の強気の発言や弱気の発言を受けて動いてきた。

 だが、第1四半期の上昇相場は、米国経済が回復しているという確信に基づいていた。だとすれば、米国における金融緩和の可能性は薄れた。そうすると、ドルは強くなる。

 投資家は、いいとこ取りはできない。長期的な必然性は結局、欧州はユーロ安なくして力強い回復のお膳立てはできないということだ。

■過去に企業の利益率が今ほど高まった時には、その後毎回下落してきたのに、なぜ投資家は利益率が上昇し続けると思っているのか?

 なぜなら、希望は永遠に湧き出るからかもしれない。あるいは、証券会社が愚かか不正直からかもしれない。

 企業の利益率には、常に平均に回帰してきた長い歴史がある。一定の水準に達すると、長期的な平均値に戻っていくのだ。そして今、利益率は過去最高水準に達している。景気回復が弱々しい中で企業収益が力強いのはこのためだ。

 この状況に対する現実的な直感は、リーマン破綻後の雇用喪失のおかげで、需要が戻ってきた際に企業がより大きな利益を上げられているということだ。ただ、企業は今では雇用を補充している。米国の雇用は経済全体よりも力強く回復しており、利益率は低下しなければならないということだ。

 現在の予想は、利益率の上昇を示唆している。昨年の株価下落は今年の利益減少を割り引いていたため、買い手と売り手は証券会社が言うことを信じていないのかもしれない。だが、第1四半期の上昇相場は、こと、利益予想に関しては、期待が経験に勝ったことを示唆しているのかもしれない。

By John Authers
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34942

 
 

「無限競争」に苦しむ韓国の若者たちの救世主 ソウル大学キム・ナンド教授〜著者インタビュー
2012.04.09(月)
JBpress:プロフィール
SHARE
RESIZE
PRINT
upperline
12345
一見、昔なつかしい昭和の学園ドラマを思わせるタイトルだ――熱血先生と悩みを乗り越えて成長していく生徒たち・・・。しかし、『つらいから青春だ』の内容は、世界中で社会が不安定に揺れ動いている現在の若者に向けたメッセージである。

 著者のキム・ナンド氏はソウル大学きっての人気教授だ。その物腰はとても穏やかで、いわゆる「熱血」先生ではない。しかし、未来への不安に思い悩む学生たちを励ましたいという強い思いが、この本には詰まっている。

 韓国経済が世界市場で躍進する一方で、世代間格差と激しい競争社会に翻弄される韓国の若い世代。その厳しい実情についてキム氏に聞いた。

世代間格差、競争社会のあおりで不利な状況に置かれる韓国の若者


キム・ナンド氏 ソウル大学生活科学学部・消費者学科教授。学生が直接評価する「ソウル大優秀講義」に選ばれ、大学が公式に授与する「ソウル大学教育賞」を受賞するなど、講義と学生指導への熱意が評価されている。キム教授の講義はソウル大学で最も早く聴講申し込みが締め切られることでも有名。このほか「韓国ギャラップ最優秀博士号論文指導功労賞も」受賞。
―― 『つらいから青春だ』は韓国でのミリオンセラー最速記録を塗り替え、170万部を突破するベストセラーとなっているそうですね。読者にそれだけ支持された理由は何でしょう。

キム 最初は驚くと同時に戸惑いました。というのも、出版社は当初、5万部は売れるだろうと話していて、それでも大きな数字だと思っていたくらいでしたから。

 売れた大きな理由の一つは、韓国の若者たちがいま仕事を得る機会がとても少なくなっているという社会問題にあると思います。韓国では若者の雇用環境が非常に厳しくなっているのです。

―― 日本に比べ韓国経済は勢いがあると思うのですが、韓国でも若者の就職は難しいのですか。

キム そうです。その背景としては、大きく見ると1997年のアジア通貨危機があります。アジア通貨危機以降に新自由主義の考え方が広まり、経済競争がとても激しくなりました。

 その過程で韓国の若者たちは、就職において不利な状況に置かれるようになったのです。

 新自由主義とは、自由競争と市場至上主義のことで、韓国には絶えず競争し続けなければならない「無限競争」という言葉もあります。


キム そういう競争の中に置かれれば、まだ何も持っていない若い世代は必ず不利になります。これまでは貧富の差ばかり注目されていましたが、いまは既得権を持つ現役世代と、新しく社会に入ってくる人たちとの格差が問題になっています。

―― 日本でも年金問題などで世代間格差が明らかになったり、経済の低迷で若い人たちがなかなか就職できないといった社会問題があります。同じような状況ですね。

スティーブ・ジョブズにも難関? 詰め込み型の韓国の大学受験


『つらいから青春だ』(キム・ナンド著/吉原育子訳、ディスカバー・トゥエンティワン、¥1400・税別)
キム 韓国の若者の話をする時に、教育問題、受験問題を抜かすことはできません。韓国の中高生が勉強していい大学に入りたいという強迫観念はほかの国よりも強いと思います。

 しかし、一生懸命勉強していい大学に入りさえすれば、すべてが解決するというように親からずっと教えられてきたのに、実際に大学に入ってみたら何も解決されないことが分かって挫折する若者が増えているのです。

―― 日本でもいい大学に入れたいという親の気持ちはありますが、韓国では親が子供に期待する度合いが高いのですね。

キム 韓国の社会では学歴が成功の大きな要素になります。また、子どもがいい大学に入れば親も自分の評価になるので、いきおい教育に強く入れ込むようになるのです。

 ところが、そういう受験競争が大学に入るための勉強には役立っても、国の知識レベルを上げていくのには役立っていないと思います。

―― 国の知識レベルを上げるというのはどういうことですか。

キム 創造性、クリエイティブ性ということです。韓国の教育はむしろクリエイティビティーを殺してしまいます。

 習ったり模倣したりということでは、何かを創り出すことはできません。しかし、韓国では正解を覚えること、反復することが教育になっている。

 もしスティーブ・ジョブズが韓国にいたら大学には入れないでしょう。成績も悪いだろうし、負け組になっていたのではないかと思います(笑)。

若者の問題は失業率の高さに加え、心理的な痛みを抱えていること

―― 韓国の若者は就職難にあえいでいるということですが、失業率はどのくらいなのですか。

キム 17〜29歳の青年の失業率は6〜7%です。韓国の全体の失業率は3〜4%ですから、数字だけ見ても若者の失業率は約2倍になっています。

 しかし、若い人たちの実感としてはもっと高いはずです。なぜかというと2つ理由があります。1つは、ずっと就職活動をしてもなかなか就職できず諦め、就職活動自体をしていない人は統計上に表れていないこと。

 2つ目は、現在はあまりやりたくない仕事に就きながら、やりたい仕事を探している人は数字に反映されていないことです。


ソーシャルメディア上の知り合いは多くても、実社会では孤独?〔AFPBB News〕

 ただ、韓国の若者が置かれている問題は失業率だけで見てはいけない。若い人たちは社会的にも心理的にもつらさ、痛みを抱えています。

 貧富の差が広がる中、高校性は伝統的に仲間意識がすごく強かったけれども、いまは仲間外れのような問題が増えています。大学生も、ツイッターやフェイスブックなどで知り合いは多くなっているにもかかわらず、いい人間関係というのはとても減っている。

 私が見るに、韓国の若者は以前よりもずっと孤独になっています。一見、人間関係がすごく広がっているように見えても、実際には独りなのではないかと思います。

―― 深い人間関係を築けないのは、詰め込み教育、激しい受験競争と関係があるんでしょうか。

キム それもあると思いますが、もう一つは家族関係の変化です。兄弟も減り、子どもは家族と一緒に過ごすよりも、自分の部屋でパソコンやケータイをいじっている方が多くなっています。

 社会全体も個人主義になってきている中で、孤独、寂しさが大きくなってきていると思います。

―― 韓国は日本に比べ儒教的な文化が強く残り、親子関係が密だと思っていたのですが、子どもの孤独感に親が対処できないのはなぜですか。

キム 韓国の社会が非常に速いスピードで成長し変化してきたため、親と子の価値観に大きなズレが生まれ、親が助言したり、相談に乗ったりすることが難しくなっているのだと思います。

 親の世代は、共同体・集団的な考え方があり、明日のために努力して成長していくという価値観を持っているのに対して、いまの若い人たちは自分、個人が大事、いまが大事、いいものを消費したいと考えています。

―― 豊かな社会で育ったからそういう価値観になったのでしょうか。

キム そうだと思います。豊かな時代に生まれたために子どもたちが持つ期待も逆に大きい。幸せかどうかの判断基準は、どれだけ豊かであるかというよりも、自分が期待したものをどれだけ達成できたかにかかっている。


ソウル市内の大学修学能力試験(大学共通の入学試験)会場の様子〔AFPBB News〕

 反対に、親の世代は豊かではなかったけれども自身の期待もそれほど大きくなかったので、いまの若者のようなつらい思いをしなかった。

 ですから、年配の人たちが、自分たちの若い頃はもっと一生懸命働いていたのに、いまの若者はやる気がないというようなことを言うのは間違っていると思います。

 なぜなら、いまの若者は仕事を選ぶ基準、目の高さ、条件が上がっているのに、就職できる機会がとても少なくなっているからです。

―― 若い人の自殺も増えていると聞きます。

キム 確かに自殺率は高くなっています。いつからの現象かはっきりとは言えませんが、そういう傾向があるのは大きな問題だと思います。昨年、KAIST(韓国科学技術院)というエリート大学の学生が何人か続けて自殺し、社会的関心を集めました。

 名門大学の学生ですらそれだけつらい思いをしているということは、一般的な大学生はどれだけたいへんな思いをしているか分かると思います。

若い人たちは自分の世界に閉じこまらず、広い世界へ出ていってほしい

―― この本を出されて、若い人から多くの反響があったと思います。先生はツイッターなどで若い人と対話されていますが、どういう悩みが多いですか。

キム 80%以上が就職や進路についての悩みです。残りは異性や友人などの人間関係です。

 私は本の中で「イヤホン」という表現を使いましたが、韓国の若者たちは自分の世界に閉じこもっています。

 自分の部屋にこもってパソコンをいじったり音楽を聴いたりしているだけで、広い世界に出ていこうとしない。だからイヤホンを外せと書いたんです。

―― 日本にも「引きこもり」という表現があります。似たような傾向ですね。

キム 社会が個人化していても人間関係は大切だと、韓国の若者にも日本の若者にも私は伝えたいのです。

弱肉強食、優勝劣敗ではなく、思いやりのある「温かい資本主義」を

―― さきほど新自由主義の話が出ましたが、日本もアメリカ的な成果主義を取り入れたものの成功していない例が多く見られます。いままでのような欧米的な思考や価値観が行き詰まっているようにも思います。

 一定の経済成長を続けながら自分たちの幸福感も増していくために、欧米とは違う歴史や文化的背景を持ったアジア的価値観をうまく利用することはできないでしょうか。

キム その質問に対するいい答えができれば私はノーベル賞をもらえるでしょう(笑)。

 確かなことは、私たちが資本主義を選択しているのは、それがベストだからではなく、代案がないからです。資本主義を完全に放棄することはできないと思います。

 しかし、アメリカ的な勝者が全部を持っていくというやり方がうまくいかないことも私たちは分かっている。

 そこで私がよく使う表現が、「温かい資本主義(warm capitalism)」です。

 どういう意味かと言うと、勝者が全部を取り、敗者は何も得られないというやり方ではなく、一緒に肩を組んで成長していけるような仕組みのことです。それは長い目で見れば、社会の効率にも役立つことになるはずです。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34855


高度成長の終わった中国で顕在化した問題点欠如する道徳心、異常な海外留学熱、賃金高騰・・・
2012.04.07(土)
川嶋 諭


フランス・パンリーの原子力発電所の構内に停車した消防車(2012年4月5日撮影)〔AFPBB News〕

フランスでも原発事故が起きた。フランス公共ラジオは4月5日、フランス北部のパンリー原子力発電所で火災が発生し、原子炉が自動停止したと報じた。放射能を帯びた冷却水が一部漏れ出したもようだ(「仏原発で小規模の火災、放射能を帯びた冷却水漏れる」)。

 NHKは2011年5月20日にBSで「放射性廃棄物はどこへ(終わらない悪夢)」という番組を放送している。ドーバー海峡に放射性廃棄物を堂々と廃棄するフランスの原発事情を目の当たりにして背筋が寒くなった。

 日本政府は原発の再開に躍起になっているようだが、核のゴミをどうするかの問題は少なくともはっきりさせてほしい。日本には福島第一原子力発電所から拡散した放射性物質の処分という問題も新たに発生したことを肝に銘じて。

 さて今週は「中国」に関する記事をご紹介したい。

高度経済成長が終わった中国

今週のランキング
順位 タイトル
1 20年かけて売上を10倍にした町工場
2 エルピーダとは一体何だったのか
3 「失われた道徳心」が中国の国家的問題に
4 誰も解除できないユーロという時限爆弾
5 「放射性物質は煙突から管理されながら出てくるから大丈夫」と言い張った原子力保安院
6 米国のナイキが取り戻し、ソニーが失ったもの
7 打ち砕かれた「対日陰謀」論、TPPを推進する米国の本当の狙いとは
8 インド経済:魔力を失いつつある国
9 エルピーダ買収にハイニックスが名乗りを上げた理由
10 一流世界への道は良き師匠との出会いから始まる
11 フランスの未来:現実を否定する国
12 消費税増税には断固反対する
13 消費税増税法案は、政治家の落第証明書
14 中国に誕生した、自由も民主もない巨大な「自民党」
15 決して偶然ではないトルコの大復活
16 数千年の歴史が雄弁に語る、内戦勃発必至のイラク
17 どう考えても持続不可能、「50円」で医師が24時間対応する制度
18 高度成長という魔法が解け始めた中国
19 天皇陛下心臓治療に2つの疑問
20 原油価格:増え続ける産油国の石油消費
「失われた道徳心」が中国の国家的問題に
高度成長という魔法が解け始めた中国
中国の不均衡是正に「万歳二唱」
海外留学に殺到する中国人、価値観の変化の契機

 姫田小夏による「失われた道徳心」と英フィナンシャル・タイムズ紙の「海外留学に殺到する中国人」の2編は、急速に経済成長した中国社会のひずみをリポートした記事だ。

 姫田さんは、いま中国では8つの問題が国家的関心事になっているという。

 「(1)住宅価格と固定資産税改革、(2)物価、(3)収入格差、(4)“老三難”と言われる教育、医療、失業問題、(5)食品の安全性、(6)スクールバスの安全性、(7)ミニブログと社会の管理、(8)道徳心の喪失、がそれである」

 「この中で興味深いのは最後の「道徳心の喪失」だ。「道徳心の喪失」はここに来て浮上してきた新しい社会問題である」

 「上海でも社会道徳の欠如を嘆く声が日増しに強まっており、中国政府もまたこれを重視している」

 経済成長を最優先してきた中国では、お金こそがすべてという風潮が蔓延するようになってしまった。かつてお互いに助け合ってきた社会は、目の前に起きた人の不幸を見て見ぬふりをして通り過ぎる社会へと変質した。

 経済成長のおかげで確かに中国は豊かになった。しかし、それで本当に幸せになったのかと中国人が自問自答し始めたと言うのである。

 いま中国人の経営者の一部で儒教や仏教がブームになっているという。すなわち「得」から「徳」へのシフトが起き始めたと見ることができる。

 徳を失った中国人は海外、とりわけアフリカやアジアで様々な問題も起こしている。欧州人の間では中国人だと分かると露骨に嫌な顔をする人が増えているとも聞く。

 徳ある社会へ中国は変質できるのか。実質はともかく制度上は社会主義を貫いている中国が変わることはそう容易ではないし、変化にはいまの国家が誕生して以来の日時以上が必要になるのではないか。それは歴史が教えることでもある。

海外の有名大学を目指す中国人


米インディアナ州の名門校、ノートルダム大学〔AFPBB News〕

 英フィナンシャル・タイムズ紙の「海外留学に殺到する中国人、価値観の変化の契機」は、中国の家庭における変化をリポートしたものだ。

 今まで中国国内の有名大学に入ることを目標に据えてきた人々が、それらを卒業したあとに海外の有名大学への留学を目指すようになっているという。

 「過去2年間で、62万人の中国人学生が海外留学に行った。これは、1978年に中国の改革政策が始まって以来、海外で学んだ学生総数の4分の1以上に上る数だ」

 「『20〜30年前に米国に来た中国人学生は、全員とは言わないまでも大半が学界のエリートだったが、今ではかなり層が広がった』と、米国大学教務部長・入学審査部長協会(AACRAO)幹部のジェフ・ペトゥルッチ氏は言う」

 教育熱心なのは良いことだ。とりわけ海外で教育を受けると、自分の国の問題点がよく見えるようになる。FT紙もそれによる中国の変化に期待している。

 ただし、留学している中国人は欧米の文化に積極的に触れようとしているわけではないと言う。

 「多くの中国人学生にとって、欧米の生活に適応するのは難しい。暗記学習に重点を置く学校制度に慣れている彼らは、クラスでの討論に参加するのに苦労することが多く、欧米人のクラスメートとは付き合わない」

 それでも、中国に閉じこもっているよりは海外に出ることで少しずつでも中国人の心に変化が生じ始めているのは事実だと見る。

 「エジンバラで学び、北京で英語を教えているジェン・ヤン・シューティンさんには、確かにこれが当てはまる。『もっと大勢の人が海外に行き、私がしたように自分の目で見れば、外の世界と中国の関係はもっと正常化するでしょうね』」

貿易黒字を減らした中国の問題点

 もう1本のFT紙はマーティン・ウルフ氏による論文で、中国の対外黒字が減少をどう評価するかという視点だ。結論から言えば、かなり改善はしているが、まだまだ不十分ということになる。

 「中国の国際収支は、ジェットコースターのように激しく上下してきた。経常黒字は2003年から2007年にかけて、国内総生産(GDP)比2.8%から10.1%に増加した。その後、黒字は急減し、2011年にはGDP比2.9%まで落ち込んだ」

 しかし、GDP比で大幅に減ったとは言っても、貿易相手国との関係においては必ずしも黒字が減少したことにはならない。貿易相手国のGDP比で見るべきだとウルフ氏は言う。

 「中国のドル建てGDPが年間15%拡大したとすれば、黒字額は2016年には4000億ドルを超えることになる。中国の実質為替レートは上昇する可能性が高いため、年間15%というGDP成長率は妥当な数字だ」

 「他国に課せられる調整の規模を評価したいと思ったら、中国のGDPではなく、それらの国々のGDPとの関係で黒字を見なければならないのだ」

 不十分とは言え中国は貿易黒字を減らしてきたことは世界経済にとっては好ましいことであった。しかし、中国はその過程で大きな問題を抱えてしまった。

 本来は黒字で稼いだ資金を家計に回して消費を上げるべきところを国内投資に回して経済成長を達成してきたことだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34936  

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
01. 2012年4月09日 05:35:09 : Pijo5v1olc
1990年代前半のアメリカ経済にみられた雇用なき景気回復を連想させる構図ではあるが、今の現状はこれと程遠い。あの当時は共産圏の自由主義化と中国の改革解放経済の進展などで、ドル需要が増大しつつあり、ドル供給は世界経済の発展に寄与した。

今日では、ドル増発は原油価格の上昇と直結し、日本や中国などの資源輸入国の消費減退を招く、世界がそれほどドルを必要としていないため、世界経済のドルを基軸とした長期的な発展は望めない。

最大の懸念材料はどこの国も財政的に困窮し、緊縮財政策を強いられてしまったことだろう。国家債務は最終的に国民に投資の失敗のツケを回す国家ぐるみの粉飾会計バブルに等しいから、健全財政は必然的に、民間の会計の粉飾をあぶりだすことになる。


  拍手はせず、拍手一覧を見る

この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
 重複コメントは全部削除と投稿禁止設定  ずるいアクセスアップ手法は全削除と投稿禁止設定 削除対象コメントを見つけたら「管理人に報告」をお願いします。 最新投稿・コメント全文リスト
フォローアップ:

 

 次へ  前へ

▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民75掲示板

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。

     ▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > 経世済民75掲示板

 
▲上へ       
★阿修羅♪  
この板投稿一覧