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http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20120402/304249/?ST=business
大前研一の「産業突然死」時代の人生論
日本でも若者の失業が深刻な社会問題になる 安定的な就業をしている若者は「2人に1人以下」
2012年04月02日
政府は3月19日に「雇用戦略対話」を開き、大学および専門学校を卒業・中退した後に正社員などの安定した仕事に就いている人の割合は48%にとどまる という推計をまとめた。大学と専門学校は高等教育の課程に相当するが、その高等教育が雇用に結びついていない実態が明らかになった格好だ。
安定的な就業をしている若者は「2人に1人以下」
下のグラフを見ていただきたい。「雇用戦略対話」に提出された資料をもとに作成したもので、卒業生の主な推計進路の内訳を示している(2010年3月卒業者が対象)。
中学を卒業して高校に進学する人は122.1万人でほとんどを占め、就職して仕事を続ける人は全国で2000人に過ぎない。高校卒業生になると、 85.7万人が大学に進学し、就職者は18.6万人、就職して3年以内に離職する人(就職後早期離職者)が7.5万人(40%)いる。
大学と専門学校を合わせた高等教育はどうか。14.1万人が進学し、56.9万人が就職、うち19.9万人(35%)は早期離職者となっている。そし て、無業または一時的な仕事に就いている人が14万人いる。合計すると48%の卒業生が3年後には就業していないことがわかる。このグラフには示していな いが、このほかに中途退学者が6.7万人いると推計されている。
早期離職者、無業・一時的な仕事、中途退学者の合計を「学校から雇用へと円滑に接続できなかった若年者」として政府は定義し、計算したところ、その割合 が52%になった。逆に言えば、冒頭で書いた通り、「安定した仕事に就いている人の割合」すなわち安定就業率は48%にとどまったというわけである。
高校卒業生で見れば、安定就業率は32%と推計され、さらに状況が悪化する。
若年失業率は9.1%、その背後には膨大な失業者がいる
次に主要国の若年失業率と就職活動の特徴についてまとめてみた。よく見ていただきたいのは若年失業率のグラフと数値だ。
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20120402/304249/chart2.jpg
主要国の若年失業率は、フランスの22.8%を筆頭に、イギリスの18.9%、アメリカの17.6%、ドイツの11%と続く。日本はどうか。9.1%で あり、欧米より低い数字だ。90%以上が仕事に就いているという結果になる。日本の高等教育修了者でも安定就業率は48%という数字と矛盾するように思え るが、それはなぜか。
答えは簡単だ。日本では、調査期間である月末1週間のうち、1時間でも働けば就業者と見なされ、失業率は低めに出る。さらに、ハローワークへ仕事を探し にきた人だけを失業者としてカウントして失業率を算出することが大きく効いている。仕事探しをあきらめた人やハローワークに行くのが面倒くさいと考える人 は失業者とみなされない。また、大学を出ているのに就職できず、親から借金して資格を取るために専門学校などに通っている若者も求職活動を止めていれば、 それも失業者の対象から外される。
したがって、「日本の若年失業率が9.1%」と言っても、その背後には膨大な数の「実質的な失業者」がいると推測される。もしそうした人たちも失業者としてカウントすれば、日本の若年層の失業率は欧州各国のそれと同等か、あるいはそれ以上になるかもしれない。
Next:若年失業率50%に迫るスペイン、増税も歳出削減 もできない
前述のグラフには出ていないが、ヨーロッパで経済的に行き詰まっているスペインでは若年失業率が急速に増えており、いまや50%に迫る勢いだ。
スペインは若年だけでなく、一般の失業率もヨーロッパの平均10%の2倍近くあり、ギリシャやイタリア並みの大幅な歳出削減が現実にはできない情勢になっている。失業者をこれ以上増やすことができないからである。
つまり、スペインはここまで来ると、消費減退から失業増加に至る可能性がある「増税」も、公的需要創造を減らさざるを得ない「歳出削減」もできない、というジレンマに陥る。
失業率がこのレベルになるとストライキや暴動などの社会不安が起こる確率が高く、財政再建とは二律背反となる。結局、スペイン政府はどちらの選択肢も明確に取れないで漂流することになる。
Next:イタリアのモンティ「学者内閣」から学んだ財政改革の方法
ベルルスコーニのもとで漂流していたイタリアでは危機克服のモンティ「学者内閣」が誕生した。閣僚は全員“専門家”であり、一人も政治家がいない。
この場合には選挙民におもねる必要がないので冷酷な医者のような財政削減の診断書を書き、さっさと手術を始めてしまった。国民も政治家も口を挟む余地がないくらいの早業であった。
野田内閣の進める「社会保障と税の一体改革」を見ていると、すべての政治家がバラバラなことを言っており、離党届だ集団離脱だと喧しい。
「日本の財政赤字は経済協力開発機構(OECD)加盟国で最悪なのだ」という議論を横に置いて、「景気回復するまで増税とは何事だ」と言う人も出てくるし、「マニフェスト違反だからけしからん」と言う人もいる。
劣悪な状況における財政改革は独裁者にしかできない、と世界中のほとんどの人が思っていたが、モンティ内閣のような超法的組閣で人を得れば、一気に改革が進み諸外国の支援も得られる、という新しいことを学んだ。
Next:「若年失業→晩婚・未婚→少子化→年金制度の破綻」という図式
日本では若年層の失業がそれほど深刻な社会問題になっていないのは、親元で生活している人がかなりの数に上るためだろう。いわゆる「パラサイト」である。
欧米と比べて日本の社会システムが「ソフト」なのは家族の単位で住宅や食糧などの「シェア」が起っているからであるが、それでも35歳で親と同居している人が35%ある、という数字もそろそろ限界に来ている。
ましてや、親との同居は晩婚や未婚の最大の原因になっており、「少子化」という深刻な社会現象の原因そのものとなっている。
つまり、若年失業の増加で結婚できない人が増えていることが少子化の大きな原因となっており、それが現役世代が高齢者を助ける現行の年金制度の破綻にもつながっている、という図式が透けて見えるのである。
Next:若年層の失業実態とその影響をきちんと調べよ
未就職世代の親たちはまだ50代か60代の現役世代で、所得もそれなりにあるだろうから、今のところは何とかなる。
だが、親はいつまでも現役ではない。定年退職すれば年金だけの生活となるケースが大半だろうから、いつまでも子をパラサイトにさせておく余裕はない。
私はそう遠くない将来、日本でも若年層の失業率が深刻な社会問題になると見ている。若年層の失業に関する実態とその及ぼす社会的影響をもう少し広範かつ克明に調べてみる必要がある。
もし、すでに欧米並みの20%を超える失業率に達しているようなら、これは政治の大問題になるだろう。
報告書「福島第一原子力発電所事故から何を学ぶか」
米MITで原子力工学博士号を取得し、日立製作所で高速増殖炉の炉心設計を行っていた大前研一氏を総括責任者とするプロジェクト・チームは、「民間の中 立的な立場からのセカンド・オピニオン」としての報告書「福島第一原子力発電所事故から何を学ぶか」をまとめ、細野豪志環境相兼原発事故担当相に10月 28日に提出しました。
報告書のPDF資料および映像へのリンクは、こちらです。最終報告、補足資料はこちらをご覧ください。
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大前研一の「「産業突然死」時代の人生論」は、09年4月7日まで「SAFETY JAPAN」サイトにて公開してきました。そのバックナンバーはこちらをご覧ください。
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大前 研一(おおまえ・けんいち)
1943年、福岡県に生まれる。早稲田大学理工学部卒業後、東京工業大学大学院原子核工学科で修士号を、マサチューセッツ工科大学大学院原子力工学科で博 士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年、マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社。以来ディレクター、日本支社長、アジア太平 洋地区会長を務める。
2005年4月に本邦初の遠隔教育法によるMBAプログラム(ビジネスブレークスルー大学院大学)が開講、学長に就任。経営コンサルタントとしても各国 で活躍しながら、日本の疲弊した政治システムの改革と真の生活者主権の国家実現のために、新しい提案・コンセプトを提供し続けている。
著作に『さらばアメリカ』(小学館)、『新版「知の衰退」からいかに脱出するか?』(光文社知恵の森文庫)、『ロシア・ショック』(講談社)など多数がある。
大前研一のホームページ:http://www.kohmae.com
ビジネスブレークスルー:http://www.bbt757.com
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