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日本半導体・敗戦から復興へ
エルピーダとは一体何だったのか半導体の歴史の中で俯瞰してみる
2012.04.05(木)
湯之上 隆:プロフィール
エルピーダの経営破綻から1カ月がたった。半導体業界は別にして、世の中ではエルピーダ倒産など過去の些細な出来事になっているように感じる。もはや週刊誌ネタにもならず、このまま忘れ去られていくのだろうか。
私の中では、いまだにその余韻がくすぶり続けている。経営破綻の発表があった2月27日の週、ほとんど寝ずに6本の原稿を書きまくった狂乱状態からは脱したものの、今なお、「なぜ破綻したのか?」「なぜ破綻を回避できなかったのか?」「経産省は何をしていたのか?」「坂本社長がそのまま居座り続けていいのか?」「どうしたら再建できるのか?」など、後から後から、疑問がわいてくる。
本稿では、先月の記事よりいささか冷静になってエルピーダ経営破綻を見直してみたい。特に、半導体の歴史の中で、エルピーダとは一体何だったのかを考えてみたい。
設立から倒産まで、エルピーダの12年間の軌跡
図1に、1999年12月にエルピーダが設立されてから2012年2月に経営破綻するまでの、売上高、営業損益、およびDRAM世界シェアを示す。
図1 エルピーダのDRAM売上高およびシェアの推移 (出所:ガートナー、iSuppli、エルピーダHPのデータを基に筆者作成)
シェアは、エルピーダ設立から2年で17%から4%まで下落した。2002年10月に坂本社長が就任して以降、売上高とシェアは増大し、V字回復に成功した。
一方、営業損益は、坂本社長就任後も低空飛行が続いた。営業損益が初めて黒字化するのは2004年度であり、まともに利益を上げたと言えるのは2006年度まで待たねばならなかった。
2007年からDRAM価格が下落し、2008年1月には「DRAM1ドル時代」が到来した。シェアは拡大するも売上高は減少し、リーマン・ショックの影響などもあって2008年度は1474憶円の営業赤字を計上した。
2009年6月、産業再生法第1号が適用され、公的資金が注入された。売上高は若干増加し、営業損益もわずかに黒字となるが、シェアは低下した。そして、2011年に震災、タイ洪水が起き、歴史的円高が進行した。2012年、負債総額4480億円となり、エルピーダは経営破綻した。
結果的に、12年間でエルピーダは、設立以前のNECと日立製作所合計シェア17%を上回ることは一度もなかった。売上高では2010年の5143憶円が最大だった。営業損益で黒字となったのは5回、最大の利益を上げたのは2006年度の634憶円であった。
これがエルピーダの全成績である。この成績は、半導体産業の歴史の中ではどのように見えるのだろうか?
韓国の圧倒的な強さの前に日本半導体は全滅
図2に、国籍別のDRAMシェアを示す。DRAMの覇権は、米国から日本へ、そして韓国へと移り変わったことが明確に分かる。今や韓国のシェアは60%を超えており、「1強+その他」の構造となっている。
図2 地域別DRAMシェアの推移 (出所:ガートナー、エルピーダHPのデータを基に筆者作成)
かつて80年代中旬に約80%のシェアを誇った日本は、2000年前後、エルピーダ1社を残して撤退した。エルピーダはそれなりに健闘したのかもしれないが、韓国の圧倒的な強さからすれば、些細な抵抗であったに過ぎない。
75年以降のDRAMシェアを俯瞰すれば、まず欧州が全滅し、次にエルピーダ1社に託した日本が全滅したことは、歴史の必然であったかのごとく見える。欧州と日本だけでなく、米国と台湾が消えていくのも時間の問題かもしれない。
一向に改善されなかった収益率
日本半導体産業の本質的な課題は収益率が悪いことである。収益率が悪いから、好況時に十分利益を上げることができず、不況時には大赤字を計上する。
その原因の一端は、私が言い続けてきた過剰技術で過剰品質を作る病気にある。
その言葉は耳にタコができるほど聞いたと言われるかもしれない。私も何度も書くのはいささか食傷気味になってきた。ところが、前回の「エルピーダよ、2度目の敗戦を無駄にするな 社長とアナリストが語る『負けた原因』は大間違い」(2012年3月2日)を読んだ読者の方々から様々な“過剰技術・過剰品質”情報が寄せられた。その1つを紹介しよう。
エルピーダのDRAMの検査工程は、他社より随分(一説では10倍)多いという話がある。その検査工程の1つに「バーンイン」がある。
バーンインとは、初期不良を事前に低減するためのスクリーニングの方法であり、例えばウエハにDRAMが形成された後に摂氏100〜125度の高温状態でDRAMに高電圧を一定時間印加する。これは一種のストレステストであり、これによって市場不良を起こしやすいDRAMを事前に見つけることができる。
ある時期からバーンインを、日本以外の半導体メーカーは止めてしまったという。これに気付いたとき、日本メーカーは非常に驚いたらしい。ところが、「他社が止めたから我々も止めて原価低減しよう」とはならなかったという。逆に、「他社はやっていないバーンインを、当社はいまだに実施している」と威張るようになったというのである(なんてこった!)。
これは氷山の一角であり、同じような話が至る所にある(長くなるのでメルマガにて詳細に伝えたいと思う)。
話を収益率に戻す。図3に、エルピーダ設立前(つまりNECおよび日立)と後の売上高、営業利益率を示す。坂本社長が売上高とシェアを増大させたことは前節で述べた。しかし、営業利益率については、NECと日立時代より悪化している。特に、不況時の赤字額が次第に巨額になっていることが分かる。
図3 NEC、日立、エルピーダの半導体売上高と利益率 (出所:電子ジャーナル『半導体データブック』やエルピーダHPのデータなどを基に筆者作成)
坂本社長の最大の責任は、エルピーダ設立以前から大きな問題だった収益率を一向に改善することができなかったことにある。収益率が悪いから、DRAM価格下落、リーマン・ショック、円高、震災、タイ洪水に襲われて、経営破綻に至ったのである。
坂本社長が犯した二重の罪
さらに、次のような経緯から、坂本社長は二重の罪を犯していると言える。私は、2004年1月と5月の2回、坂本社長の許可の下、エルピーダの技術者に聞き取り調査をした。2回目の調査では、三菱から出向している技術者に、エルピーダ、ファンドリー、三菱のDRAMについて詳細に比較してもらった。
その結果、「エルピーダは微細加工など要素技術は優れているが、マスク枚数も工程数も“こてこて”であり、装置のスループットが悪いため装置台数が通常の2倍以上ある。検査工程に至っては10倍以上もあり、正気を失っているとしか言いようがない。エルピーダのDRAMは世界一過剰な技術を使って世界一高いDRAMを作っている」ことを明らかにした。
私は、この結果を直接、坂本社長に報告した。しかし、坂本社長は興味を示さなかった。それどころか、私はエルピーダを出入り禁止になった(これがきっかけで私は同志社大学を追い出されることにもなった。以上の顛末はいずれメルマガにて詳述する)。
つまり、坂本社長は、エルピーダが低収益体質であることを知っていながら、対策を講じなかったことになる。エルピーダの低収益率に関して、坂本社長は二重に罪を犯していることになる。
本当に円高がエルピーダを殺したのか?
前回記事の私の主張「DRAM価格の下落、歴史的円高、震災、タイの洪水は、エルピーダ経営破綻のトリガーに過ぎない」に対して、「そうは言ったって円高はやっぱりキツイ。これは経営破綻の原因から外せない」という反論がある。
この反論に対する私の回答は、図4を見てもらえば明らかになる。円/ドル為替相場は、あるサイクルで上がったり下がったりしている。この為替相場と、NEC、日立、およびエルピーダの営業利益率を見比べてみよう。果たして、為替相場と営業利益率の間に、何らかの相関を見出すことができるだろうか? 円高が進行している時でも利益率が増大しているときもあるし、その逆もある。私には相関があるように見えない。
図4 円/ドル為替と各メーカーの営業利益率
「エルピーダ経営破綻の原因は円高にある」と主張する人がいるなら、図4に関する論理的な解釈を聞かせていただきたい。
公的資金を注入した経済産業省の責任を問う
エルピーダの設立には経産省が関わっていたと考えられる。また、2009年6月の産業再生法第1号適用は経済産業省が認定した。だが今回、経産省はエルピーダを見捨てた。
経産省がやっていることは、まったくちぐはぐだ。その理由を述べる。
2009年6月30日の経済産業省「News Rerease」の冒頭には、以下のようにある。
「エルピーダメモリ株式会社から提出された『事業再構築計画』について平成21年6月30日付けで認定を行いました。この計画で、同社は、第三者割当増資及び金融機関からの資金調達を実施し、財務基盤を強化します。同社の強みである微細化技術に加えて、広島工場に高付加価値DRAMの最先端設備を導入することにより、更なるシェア拡大を図ります。汎用DRAMについては、台湾のDRAMメーカーと連携して製造の主軸を台湾に移管します。これらの取組を通じて、同社は、技術優位性を維持し、生産性の向上を目指します」
ところが、これまで見てきたように、公的資金が注入された2009年以降、シェアはアップするどころか低下した。営業利益率の改善が見られないことから生産性が向上したとは言えない。汎用DRAMを台湾に移管し、エルピーダ本体はプレミアDRAMを増やせたかというと、図5を見る限り、劇的な変化は見られない。
図5 エルピーダのDRAM構成比(出所:エルピーダ発表資料より)
エルピーダが経営破綻してしまったから本当は言いたくなかったのだけれど、大体、経産省はたった300億円で何を期待したんだろう? 本気で再生させるなら、1桁、額を間違えているのではないか? 300億円では露光装置の5台も買ったら終わりだ。
結局、産業再生法適用の認可の前提となっているエルピーダの公約は何も果たせていない。経産省は、認可して公的資金を注入した後、エルピーダを監督指導したのか? 何もしていないのではないか?
反論があれば、ぜひ聞きたいものだ。エルピーダの設立に関わった当時の経済産業政策局、商務情報政策局の参事官、課長の皆さん、いかがですか。
エルピーダは日本半導体の“トカゲのしっぽ”だったのか
エルピーダは、日本半導体産業において、初めての合弁会社であった。初めてのDRAM専業メーカーだった。初めて外部から社長を招聘した。初めて産業再生法適用が認可された。経営破綻したエルピーダの負債総額4480憶円は戦後の製造業では最大だった。エルピーダは、何から何まで初めてであり、記録ずくめであった。
2004年1月、同志社大学の教員として、エルピーダの技術者への聞き取り調査を行った時のことである。
「エルピーダ出向の辞令を受け取ったとき、あなたはどう思いましたか?」
この質問に対して、多くの技術者が「なぜ私がエルピーダに?」「片道切符だ」「絶望的」「人生、終わった」と悲観的な意見を述べていたことを思い出す。
結果的に、この通りになってしまった。結局、エルピーダとは、日本半導体の“トカゲのしっぽ”だったのだろうか。続きは、メルマガでお会いしましょう。
湯之上隆有料メールマガジン 「内側から見た『半導体村』 −今まで書けなかった業界秘話」をイズメディア・モールで販売中。日本の半導体産業の復興を願う筆者が、「過去の歴史から学ぶ」材料として、半導体技術者として経験した全てを語る問題作。1月の連載開始以来、草創期のエルピーダに出向した著者だからこそ語れる「エルピーダ失敗の原因」を赤裸々に綴ってきましたが、そのさなか、2月27日にエルピーダが東京地裁に会社更生法を申請しました。次回の3月15日配信号では、4000文字に及ぶ「かなり長い前書き」として、改めて、エルピーダの敗因を分析。エルピーダからサムスンに移籍した人物にヒアリングした際の興味深いコメントも紹介しています。前書きに続く本編にもリアルで具体的なエピソード満載です。有料メルマガは申込み初月無料、バックナンバーの購入も可能です。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34901
エルピーダ買収にハイニックスが名乗りを上げた理由
韓国内では本気度に疑問も、すべてはオーナー会長の心次第
2012.04.05(木)
玉置 直司:プロフィール
会社更生手続き中のエルピーダメモリの支援企業を選定する第1次入札が締め切りになった。東芝や米マイクロン・テクノロジーなど予想された顔ぶれに加え、韓国のSKハイニックスが応札したことが分かった。DRAM世界2位の同社は一体どこまで本気なのか?
ハイニックスの応札は韓国内でもサプライズだった。2012年3月30日金曜日の午後遅くに応札が明らかになると、業界内や証券市場でもその思惑や効果に対する評価が錯綜した。
買収の思惑や効果に評価が錯綜
エルピーダメモリの支援企業を選ぶ1次入札にSKハイニックスが応札したことは、韓国内でもサプライズだった〔AFPBB News〕
前向きな評価は、ハイニックスとエルピーダの世界DRAM市場でのシェアを合わせると33.8%近くに達し、首位のサムスン電子(45.1%=シェアは米調査会社IHSアイサプライによる2011年1〜9月期調べ)に迫る一大勢力が誕生すること。価格支配力などが高まり、業績向上も期待できるというものだ。
だが、こうした評価は決して多くはない。何よりも、エルピーダ買収がハイニックスと親会社のSKテレコム、さらにSKグループ全体に大きな負担になるという見方も強い。
韓国メディアは、エルピーダ買収に必要な金額を1兆5000億〜3兆ウォン(1円=14ウォン)と見ている。
ハイニックスは現在約4兆ウォンの現金を抱えているものの、その全額を2012年の設備投資に使う計画だ。
買収資金は当然、SKグループが負担することになるが、ハイニックスを3兆ウォンを超える金額で買収したばかり。半導体事業への大規模投資に耐えられるか懸念の声が多い。
週明けの4月2日になって、韓国の経済メディアは一斉に、ハイニックスによるエルピーダ買収応札の「本気度」に疑問を投げかける報道をした。
応札報道で一時は株価が急落
30日に応札の情報が流れるとハイニックスの株価が一時急落し、同社があわてて背景説明に追われたようだ。
経済メディアやアナリストは、「エルピーダは広島や台湾に生産拠点が分散している」「エルピーダが強いモバイル分野ではハイニックスも十分な競争力がある」――などを理由にシナジー効果も不透明だとの見方を明らかにした。
そのうえで、応札してもハイニックスが失うものは何もなく、むしろ入札競争が激しくなれば買収価格が上昇し「他社が買収しても大きな負担となる」と報じた。つまり陽動作戦だというわけだ。
実際のところはどうなのか。SKグループに詳しいある韓国の経済人は「ここ数日間で出ているさまざまな見方はすべて憶測だ。結局は、オーナー会長の胸一つ。それが韓国の財閥の意思決定だ」と明かす。
では、オーナー会長である崔泰源(チェ・テオン)会長(51)の真意はどこにあるのか。
「SKハイニックス」にかけるオーナー会長の意気込み
エルピーダの買収に名乗りを上げたことが表面化した3月30日のわずか4日前の26日。崔泰源会長はソウル近郊の利川(イチョン)にあるハイニックス本社で開かれた記念式典に出席した。この日の行事は、ハイニックスの社名にSKの名前を付け、「SKハイニックス」として新たに出発することを記念したものだ。
韓国大手財閥のSKグループは3兆ウォン以上を投じてハイニックスを買収したばかり〔AFPBB News〕
崔泰源会長はこれに先立ち、ハイニックスの共同代表理事(取締役に相当)にも就任した。韓国の経済界では、ハイニックスに対する崔泰源会長の並々ならぬ思い入れと見る。
崔泰源会長は2〜3年ほど前からハイニックス買収に強い関心を持っていた。
その理由を韓国の大手紙デスクは「2世、3世の財閥オーナー会長は、父親を超えたいという意識が強く、崔泰源会長は、ハイニックス買収がその絶好の機会になると見ているのではないか。とすれば、エルピーダについても簡単にあきらめない可能性も十分にある」と解説する。
「父親を超える」とはどういうことか。
繊維関係の事業からスタートしたSKは、創業者の実弟である崔鍾賢(チェ・ジョンヒョン)が2代目会長になり、飛躍的に成長する。 崔泰源会長の父親だ。
筆者は、崔鍾賢氏と長時間インタビューした経験があるが、関心領域の広さ、先見性、行動力ともに、傑出した韓国の典型的な財閥創業会長(実際には実兄が創業したがすぐに会長を引き継いだ)だった。
無難に経営しているだけでは評価されない財閥オーナーの宿命
それ以上にすごいのは、韓国最大のエネルギー関連公企業であった韓国石油公社(旧油公)と韓国初の携帯電話サービス会社韓国移動通信という公企業2社の民営化の際に買収に成功し、エネルギーと携帯電話サービスという2つの事業を両輪に韓国を代表する財閥にのし上がったことだ。
父親の急死を機にグループ会長に就任した崔泰源氏は、父親から継承した事業をうまく切り回し、SKグループは優良経営の財閥になった。
ところが、父親から継承した事業を無難に経営することだけでは「経営者としての評価」を受けられないのも、韓国の財閥オーナーの宿命だ。
崔泰源会長も、自分の時代にさらにグループを飛躍させる新成長事業を是が非でもつかみたいという強い思いがあるようだ。
化学、医療、IT――。SKグループはここ数年、エネルギーと携帯電話サービスに次ぐ、新規事業の育成に力を入れてきた。
そんな中で出てきたのが、ハイニックスの買収だった。
3兆ウォンを超える投資ということで、崔泰源会長もさすがに慎重に慎重を期して決断したようだ。エルピーダについても、慎重ながら大胆な決断をするかもしれない。
父親が成し遂げられなかった半導体事業への特別な思い
半導体事業を「第3の柱」にしたいというのが、買収の理由だが、それ以外にも実は、崔泰源会長にとって半導体事業には別の思い入れもあった。
1970年代後半に父親の先代会長が、半導体事業へ一度進出したことがある。ところが、第2次石油危機のあおりで、グループ経営全体が危機に直面し、わずか数年で半導体子会社を清算することになった。
「父親が成し遂げられなかった事業を自分が進め、さらにグループの新成長事業として定着させたい」――。崔泰源会長が、ハイニックスを買収し、共同代表にまで就任したのはこんな意向もあったからだ。
「父親を超える」は、財閥オーナーの事業観のキーワードだ。現代自動車を率いる鄭夢九(チョン・モング)会長が無謀と言われながらも高炉事業に進出したのは、父親である現代財閥創業者・鄭周永(チョン・ジュヨン)氏の悲願だったからだ。
負の遺産も背負い、是が非でも「免罪符」を得たい会長
もう1つの事情を説明してくれた韓国の経済人もいる。「崔泰源会長は、とにかくすぐに事業で成果を上げたいはずだ。ハイニックスへの思い入れはその裏返しだ。エルピーダ買収に名乗りを上げたのも、是が非でもサムスンと並ぶ半導体会社に浮上させたいという思いだろう。焦りが裏目に出ないといいが・・・」
実は、崔泰源会長は今、裁判の被告席に立たされている。個人的に巨額の財テクに失敗したが、この際、会社の資金を流用した容疑で起訴されたのだ。
崔泰源会長は、ハイニックス本社の記念式典に出席した4日前の3月22日にはソウル中央地裁での裁判に出廷した。この日の検察と弁護団の攻防は昼をはさんで9時間にも及んだという。
父親が急死したことで会長に就任した崔泰源氏だが、父親からは事業だけを継承したわけではない。不透明な支配構造や経理処理など「負の遺産」も引き継ぐことになった。これを解消する過程で、崔泰源会長は2003年にも背任横領で逮捕され、その後、有罪判決が確定して収監されたことがある。
現在進行形の裁判がどう進むかは別として、「崔泰源会長としてはSKグループの経営を拡大・安定させた経営者としての評価を固めることで、グループ経営権にからむさまざまな問題について免罪符を得たい」(経済人)というのだ。
極秘提携交渉をしたこともあるエルピーダとハイニックスの因縁
韓国内でも、エルピーダの支援企業は、マイクロン・テクノロジーか東芝が最有力という声が圧倒的だ。
ハイニックスが2次入札まで行くかどうかは分からないが、少なくとも、1次入札に参加したのはそれなりの深い理由があったわけで、単なる陽動作戦や牽制球とばかり決め付けるのは早計だろう。
韓国の半導体業界関係者はこんな話も明かしてくれた。「エルピーダとハイニックスは3〜4年前に極秘で提携交渉を進めたことがある。両社に因縁がないわけではない」。
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