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企業収益:利益率の上昇はいつまで続くか?
2012.04.04(水)
The Economist
企業の利益率は極めて高くなっている。この水準は果たして維持できるのか?
ナスダックとICE、NY証取の買収意欲を再確認
経済が活力を欠く中で、企業の利益率の高さが株式市場の力強い回復を後押ししてきた〔AFPBB News〕
労働者と貯蓄家にとって、この4年間はひどいものだったが、企業部門にとっては良かった。
米国では企業の利益率が過去65年間で最も高くなっている。このことは、経済が活気を欠いているにもかかわらず、株式市場が力強く回復した理由の一端を説明している。
利益率が上昇したのは、企業が人件費を厳しく管理したほか、先進国の中央銀行の政策のおかげで支払利息が減ったためだ。こうした利益率を維持できるかどうかは、株式市場にとって重要だ。
強気筋はS&P500のPERの低さを挙げるが・・・
株式市場の強気筋の大半は、現在16倍程度のS&P500の実績PER(株価収益率)をその根拠としている。だが、景気循環調整後PER(過去10年間の利益を平均したPER)には警告サインが潜んでいる。景気循環調整後PERは22倍と、歴史的な平均値を大きく上回っており、これに基づくと、市場の魅力は相当低く見える。
理論に従えば、利益率は時間とともに平均に戻っていくはずだ。利益があまりに低ければ、企業は廃業し、生き残った企業の競争力(ひいては利益率)を高めることになる。同様に、利益が高ければ、当該産業により多くの資本が流れ込み(そして既存企業は事業を拡大する気になる)、結果的に生じる競争は利益率を低下させるからだ。
しかし、現在の高い利益水準は、投資の急増につながっていない。国内総生産(GDP)比で見た場合、米国の企業投資は30年ぶりの低水準に迫っている。この投資不足については、米国における過剰規制から、燃料価格の高騰と賃金上昇の停滞で実質所得が圧迫されている中での需要見通しの不確実性に至るまで、多くの原因が挙げられている。
ゴールドマン・サックスのピーター・オッペンハイマー氏は、GDPに対する利益の割合が高いのは、単に労働力への配分の低さがもたらす当然の帰結だと指摘する。「失業率が高く、技術がさらに労働力を代替することを考えると、この状況が近いうちに劇的に変わることはないだろう」と同氏は語る。
したがって現金はほかのところに流れている。シティグループのロバート・バックランド氏は、米国企業と欧州企業はともに、設備投資よりも、むしろM&A(合併・買収)や自社株買いに資金を回していると言う。その結果、「利益は依然、景気循環に敏感なものの、利益率の構造的な平均回帰を待っている向きは今後も落胆し続けるだろう」と話す。
コンサルティング会社スミサーズ・アンド・カンパニーのアンドリュー・スミサーズ氏によると、企業の経営幹部は、株主にとっての長期的な価値を犠牲にして、短期的に利益率を高めるインセンティブを与えられているという。例えば価格を引き上げれば、すぐに利益を押し上げられるが、次第に市場シェアを失っていく危険がある。
同様に経営幹部は、1株当たりの利益(EPS)に影響が出ることから、企業の長期的な健全性のために不可欠な投資計画に着手しないかもしれない。何しろ、四半期の利益目標を下回った企業は悲惨な目に遭う。
もしスミサーズ氏が正しいのなら、投資家は現在の利益に対して必要以上にカネを払っているのかもしれない。米国の証券アナリストの利益予想は、利益率が既に高い現行水準から一段と上昇することを示唆している。アナリスト予想は、企業の利益の伸びが名目GDPの伸びを大きく上回ることを示しているためだ。
もちろん、企業が新興国に商品を売っている限りは、こうした上場企業の利益は国内のGDPよりも速く伸び得る。だが、その場合、企業部門の競争力を保つための投資が必要になるが、今のところ、設備投資は十分な規模で行われていない。
企業に現金を使わせるためには
各国政府は、企業が山のように積み上げた現金を使い始めることを望んでいる。しかし、資産運用会社GMOのジェームス・モンティア氏が指摘するように、それは政府自身の行動に左右される。
国民勘定という点では、大規模な政府の赤字は、企業の利益急増のカウンターパートだ。経済の様々な部門(政府、家計、外国、企業)の黒字と赤字(資金過不足)は均衡を保たねばならず、ある部門の大規模な黒字は、どこか別の部門の赤字で相殺されなければならない。
各国政府は(企業部門から購入する)商品やサービスにカネを使ったり、社会的給付を賄うために借金をしたりする。後者の場合も、その後、企業から提供される商品やサービスにカネが使われる。
このことは、企業経営者が政府の永続的な赤字を望むべきだということを示唆するものではない。だが実際、こうした財政赤字が減るに従い、企業の利益が圧迫される可能性があることは示唆している。
これが実現する「良い」道筋もある。企業が人員の採用を増やすとともに今より高い賃金を払い、税収を押し上げていくシナリオだ。しかし、「悪い」道筋もある。緊縮プログラムが需要を落ち込ませた場合がそれだ。結末が前者となることを祈ろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34906
円安へのトレンド転換は尚早
80円前後で振れの大きい展開に
ドル円相場は2、3月に76円台から一時84円台まで急伸した。直接の要因は堅調な米国景気とその金利上昇。背景には欧州発の世界危機リスクの後退があった。今年初め、市場は欧州危機を警戒する一方、リスク削減やヘッジなど危機対策をやり尽くした。ECB(欧州中央銀行)の3年物資金供給オペ(LTRO)発動で銀行破綻が回避され、そうしたヘッジなどの反対売買が起きた。リスク警戒ムードが緩和されると、円安に傾きやすい。
3月上旬、ロンドンで会った海外投資家は皆、円売り話ばかりを聞きたがった。そこから彼らがすでに円売りポジションを構築済みと拝察した。彼らは日本の経常赤字化とか日銀の一線を越えた金融緩和を、円安への触媒だと強調した。これに対し、経常赤字化懸念や日銀の政策からの円安を促す資金フローは現段階で生じてはいないと説明して不興を買った。では何が円安のドライバーかと問われ、あなた方自身の思惑からの取引だと答えてさらに不興を買った。
そして、最近の円安と株高の勢いを見て、相場が新局面に入ったと思わないのかと訝られた。しかし、米景気低迷と低金利環境で長らく円高地合いが続いた後に米金利がじわり上昇し、急激な円安と株高が相伴う展開は、この局面の典型的現象。上のグラフは、過去の米利上げ局面入り前後のドル円相場の推移をまとめたもの。左半分の利上げが近づく場面で、ドル円相場は平均的にはじわり上昇する程度だが、個々のチャートでは、短期的な上下動を繰り返している。
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これは、米金利上昇を受けて投機筋がドル売りを解消し、さらに続く金利上昇に沿ってドル買いに転じ、やがて本邦投資家のヘッジ(ドル売り)の巻き戻しが一部誘発されるという、短期資金に牽引された相場の特徴だ。
実際に米金利上昇とドル円の連動は左下のグラフが示す通り。右下のグラフは、海外投機筋が円売りポジションを3月前半までにほぼピーク水準まで積み上げたことを示し、これからドル高・円安の勢いが鈍ることを示唆した。
今後、欧州問題は根本解決には程遠く、米景気指標が夏にかけて弱まる過去2年のパターンを脱するか見極める必要がある。上のグラフで利上げ後に再度ドル円が下落しがちな傾向も勘案し、円安はまだトレンドになり得ないと判断している。向こう数ヵ月は80円前後での振れの大きいボックス圏の相場展開を予想する。
(ドイツ証券グローバルマクロリサーチオフィサー 田中泰輔)
http://diamond.jp/articles/-/16932
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