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今こそ立ち上がれ日本の女性たちよ
W・ペセック
3月28日(ブルームバーグ)
:東日本大震災から1年余りが過ぎたが、日本のさまざまな不均衡への是正策はお寒い限りだ。
被災地の復興費用が膨らみ、日本の財政赤字はさらに拡大しつつある。財政不均衡拡大はこれまで以上に政治家らにとって懸念材料となり、野田佳彦首相の政権運営を難しいものにしている。日本の首相は5年間でこれで6人目。デフレは慢性化している。2月の貿易収支が黒字になったというニュースは、少なくとも今のところは、事態好転もあり得ることを示すまれな例に過ぎない。
奇妙なことだが、日本が抱えているこうしたギャップのうち、最も顕著な事例に対しては2011年3月11日の東日本大震災前よりも、現在のほうが一層ないがしろにされている。それは男女格差の問題だ。
経済協力開発機構(OECD)は繰り返し日本に対し、成長に向けて女性により多くの機会を提供するよう提言している。世界経済フォーラムの男女格差報告によると、日本は男女平等度で10年時点で94位と惨たんたる成績だったが、11年末時点ではさらに98位と順位を下げ、中国やジンバブエの後じんを拝するに至っているありさまだ。
英会話教室大手ベルリッツコーポレーション最高経営責任者(CEO)の内永ゆか子氏のケースは、日本における女性の社会的地位の低さとその問題にどう対処すべきかを示す最適な例だろう。内永氏はトイレに隠れていた過去を告白した。内永氏は日本IBMでシステムエンジニアとして働いていた1970年代、午後8時になると女子トイレに隠れた。当時の労働基準法が女性の残業を2時間に制限していたためで、チェック役である上司の帰宅を待って席に戻り、深夜まで働いたという。
あり得ないアンフェア
内永氏はブルームバーグとのインタビューで、当時のボスがいつも「僕は牢屋に入りたくないから」と言っていたのを思い出すと語った。「男性は自由なのに、私だけ手足を縛られて100メートル競争させられているようなもので、こんなアンフェアな競争はあり得ない」と文句を言っていたという。
労基法は改定され、男女の性差別は公に禁じられた。しかし12年現在でも、日本企業の幹部職のうち女性の割合は70人中わずか1人。日経平均225種に採用される上場企業で、女性が単独で率いる企業は1社もない。野田内閣も女性閣僚は小宮山洋子厚生労働相だけだ。
数字は事の本質を雄弁に物語る。米ゴールドマン・サックス・グループのストラテジスト、キャシー松井氏(東京在勤)は、女性の就業率が男性並みになれば、日本の国内総生産(GDP)は最大15%増えると推計する。デフレに見舞われマイナス成長に沈む日本経済にとっては、ほんのささいなプラス材料でも天の恵みだろう。
日本のリーダーたちが、中国が躍進するこの時期に、前に突き進まずにぐずぐずしている理由が、私には全く理解できない。男女格差是正への取り組みを変えるきっかけとなるのは何だろう。2万人近い犠牲者が出た昨年の大震災が、きっとそうした転換点になると私は確信していた。人口が減少傾向に入って急速に高齢化が進み、大量移民に懐疑的な日本社会は、その隠れた力を認識しなければならない。
隠れた力
日本には2つの隠れた力がある。1つは数百万人に上る熟練の退職者層の存在であり、その力は活用できよう。もう1つは高学歴の女性という豊富な労働力だ。日本を率いる後ろ向きな白髪の男性連中を頼りにしていてはだめだ。
政権与党の民主党はこうした目標の達成に向けて何もしていない。昨年6月、政府は20年までに指導的地位にある女性が占める割合が少なくとも30%程度になるよう期待するとした男女共同参画に関するリポートをまとめたが、実体が伴わずリップサービスの色彩が強い。
男女是正のきっかけとなるのは何かという設問の答えは、女性が自己の権利を主張することだ。日本にも過去に男女同権主義者たちのエネルギーが輝く瞬間は多々あったが、まとまりがあり持続的で大規模な形で示されたことは少ない。経済の大革新が必要な国にとっては、女性解放運動家グロリア・ステイネム氏ばりのアジ演説の小型版や、古代ギリシャの喜劇「女の平和」の台本の1ページを引用することでも役に立つかもしれない。結局、権力の座にある人たちはそう簡単に屈するものではないし、ましてや日本のオールド・ボーイで構成されたクラブはそうだ。
サクセスストーリーが必要
だからこそ内永氏(65)なのだ。同氏は1995年に日本IBMで初の女性取締役に就任。現在は、会社の枠を超えて女性の活用を目指す非営利団体、J−WINの理事長も務めている。同団体は加盟する日産自動車などで女性の役割の推進に向けた支援を行っている。
日本は内永氏のような女性のサクセスストーリーをもっと前面に打ち出し、修正可能な余地が最も大きいこの問題に対する関心を高める必要がある。男女平等を求めて長い間活動してきた資生堂の副社長、岩田喜美枝氏はそうした女性の1人だ。岩田氏は活用されていない女性の力を引き出すことに大いに尽力している。日本には恐らく女性の首相が必要だ。女性首相が誕生したからといって打撃はないだろう。
「OL」打破を
男女格差の問題が、日本の出生率低下のジレンマをさらに深刻にしている。女性が自らのキャリアにとってより良い機会を得ようとして、出産年齢が高まる傾向にある。女性の地位を向上させ、仕事と家庭の両立を支援するもっと先見性のある政策が、世界3位の経済大国日本の繁栄にも資するはずだ。経済成長を高めるだけでなく、子供の数も増やす魔法の杖(つえ)となろう。
ところが、現実に目を向けると、将来のない「OL」という役割に依然追いやられている大卒女性が多過ぎる。斬新なアイディアや仕事上の提案をできるかもしれないのに、彼女たちはお茶くみをさせられている。それは民主主義国家の運営とは言えない。女性たちは日本の男女格差是正に向け立ち上がる必要がある。(ウィリアム・ペセック)
(ウィリアム・ペセック氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
記事に関するコラムニストへの問い合わせ先:東証 Willie Pesek wpesek@bloomberg.net
更新日時: 2012/03/28 09:14 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M1J1KZ6JIJW001.html
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