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原油はなぜ高騰しているのか――原油投機が成り立つストーリー
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120329-00000003-toyo-bus_all
東洋経済オンライン 3月29日(木)22時48分配信
今回は、原油相場の長期予想をする中で、原油相場の本質および金融市場の本質について考察したい。
このところ、原油価格は再び上昇基調にあり、高止まりをしている。その理由としてよく挙げられているのは、緊迫する中東情勢と世界的な景気の回復である。しかし、これはウソである。ウソが言い過ぎなら、正確ではない、ということになる。
現在の原油価格はファンダメンタルズからは説明できない。実需から見れば原油は割高であり、バブルといえる。
原油は、原燃料として実際に使われる需要はそれほど多くない。石油化学工業の原材料と自動車の燃料が主な需要である。電力の発電用に原油が使われていると思われているが、石油火力発電はかなり少数派で、化石燃料の場合は、米国やエネルギー後進国は石炭であり、日本などは液化天然ガス(LNG)である。
そして、米国をはじめ世界的に、シェールガスがブームとなり、その結果、従来型の天然ガスへの需要が低下するとみられ、全体的には天然ガスは値下がり傾向にある。かつては、天然ガスは、原油の代替資源とみられ、価格も連動していたが、現在では、連動性は相対的には低下し、シェールガスの積極的活用により、さらに連動性は薄れてきた。
天然ガスの価格が下落しているのは、まさに需給によるものであり、シェールガスにより実需の需要が減った、今後も減ると見込まれたため、値下がりしたのである。したがって、天然ガスはおおむね実需に沿った動き方をしている。
一方、原油はどうか。値上がりを続けている。だから、原油は投機的需要によるバブルであり、天然ガスは実需に基づく売買がなされていると考えればよさそうに思える。
実際、原油価格の上昇は、世界的な株式市場の上昇と連動してきた。このところの日本の株式市場が上昇傾向となっているのも、世界のリスク資産市場の昨年末からの上昇基調に追随したものに過ぎない。いや追随したというより、同じ投資家がこちらにもカネを回してきただけのことで、それに国内投資家が追随したということだ。
したがって、現在の原油の上昇、あるいは高止まりと日本の株式市場の急激な上昇傾向は、リスク投資復活という大きな流れの一環である。
しかし、これで話が終わりではつまらない。というより、バブルとはもう少し複雑である。投機的需要とはどこから来るのか。これを少し掘り下げて考えてみよう。
■原油投機のストーリー
原油に対する投機が成り立つストーリーは、短期的には、前述のとおり、中東情勢の緊迫からの原油の物理的な品不足からの高騰というものである。ホルムズ海峡が封鎖されれば、とんでもないことになる、世界の終わりだ、というストーリーまで語られる。だから投機することになる。
しかし、この話もそう単純には終わらない。このストーリーは直ちに広まるから、すべての人がこれを信じれば、直ちに原油価格は、このストーリーを織り込んで高騰してしまう。投機の場合は、いかなる短期であっても、値上がりするのは将来でないといけないから、このストーリーが、より幅広い投資家に知られる、あるいは、より深刻に受け止められるということがないといけない。
そうなるためには、どのような状況が必要だろうか。いくつか質的に異なるパターンが考えられる。ここでは紙面が限られているから、簡単に列挙するにとどめよう。
第1に、中東情勢に世界一洞察力がある人が、世間の見通しと、自分の見通しの差を利用して、投機を行うのが、ファンダメンタルズによる投機である。
第2に、中東情勢自体は変化がないが、実は深刻な問題だというファクトが徐々に広まっていくという情報の広まり方の変化に賭ける、情報に関する投機がありうる。
第3のストーリーは、情報は同じだが、それに対する投資家達のとらえ方が変化する、悲観度合いが高まると予想するということだ。これは投資家センチメント(心理)に対する投機といえる。
第4は、投資家の原油投資に対するセンチメントではなくリスク資産投資全体に対するセンチメントを対象とする場合だ。投資家のリスク許容度の変化に対する投機とも言えるだろう。
第5のストーリーは、理由が何であれ、将来、他の投資家が原油を買うようになることに賭ける投機である。これは他の投資家の行動に対する投機である。この場合、他の投資家の行動の理由は何でも良い。
最後の第6のストーリーは、他の投資家の予想に対する投機である。つまり、自分以外の多くの投資家が、原油が高騰するストーリーに乗る投資家が増えると予想する、ということを自分が予想することにより、原油の値上がりに投機するということだ。
第5と第6のストーリーは、最初の4つのストーリーと本質的に異なる。他者、すなわち、他の投資家に対する見通しに基づき、自己の投資を決めるというスタンスとして投資(あるいは投機)をとらえており、根本的な投資哲学が異なっており、それを明示的に自己認識している。
■価格が上がると思うから買う
私は、昨今の金融市場における投機の多くは、最後の第6のパターンによるものだと考えており、現在の原油の高騰も、これに当てはまると考えている。つまり、ほとんどすべての投資家が、原油が高騰するというストーリーに乗りたいと考えていると多くの投資家が予想しているから、多くの投資家は原油の高騰に賭けているのである。
そして、第6のストーリーのいちばん重要なところは、期待が自己実現するということである。もちろん、すべての投資は期待の自己実現をもたらす可能性がある。上がると思うから、買うのであり、自分で買えば、少なくともその分は上がる。しかし、自分の買った分しか上がらなければ、それは利益にならない。
一方、第6のストーリーにおいては、期待の自己実現は、連鎖反応ですべての投資家の期待が連動することから、必ず実現する。
そう、この第6のパターンがバブルそのものなのである。バブルの定義は、膨らむことだが、バブル的な投資とは、上がると思うから買うということで、それ以外の理由がないときにバブルと言われる。
そう考えると、新しいバブルの定義が生まれる。すなわち、バブルとは、多くの投資家が、他の投資家も周りの投資家が買うだろうと思って買ってくるという期待のもとに買っており、それが自己実現している状態のことを言う。つまりバブルのキーは、期待の自己実現ということなのである。
原油のバブルは、投資家たちがそう期待する間は続くだろうし、今後、金融市場におけるバブルは、これと同じようなメカニズムで起きるだろう。したがって、実体経済が停滞しても、金融市場のバブルは永遠になくならない。
一方、バブルの頻度、広がりは小さくなると思われる。この理由については、やはり、原油においても金融市場においてもファンダメンタルズが重要だ、あるいは、ファンダメンタルズが重要だ、と一般に信じられていることが重要なのだが、これはまたあらためて議論したいと思う。
小幡績(おばた・せき)
株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省、1999年退職。2001〜03年一橋大学経済研究所専任講師。2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授。01年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)がある。
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