http://www.asyura2.com/12/hasan75/msg/479.html
Tweet |
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34862
Financial Times
もうたくさん! 見当違いのベビーブーマー叩き
2012.03.28(水)
Financial Times:プロフィール
(2012年3月27日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
筆者の世代は金ピカ世代だと言われることがある。経済がするすると繁栄し、社会福祉が充実し、住宅価格も上昇する時代を生きてきた。
今では老後の生活を楽しむために、自分の子供たちの口に入るはずのパンを盗み取っている。若者たちがどこにもない職を求めて街中を歩き回る一方で、自分たちはサファリ見物の旅と豪華客船の旅のどちらにしようか迷っている――というわけだ。
誤解だらけの「世代間格差」論争
死に場所なら英国が一番、英調査
苦労もせずに快適な老後を過ごしていると批判されるベビーブーム世代だが・・・〔AFPBB News〕
もうたくさんだ。今こそ、ベビーブーム世代を弁護するために誰かが立ち上がらなければならない。
英国ではこのところ世代間の公平性を巡る議論がかまびすしいが、ただ聞いているだけでは、誤解やうその混じった話やこじつけの言説に飲み込まれてしまう。
本紙(フィナンシャル・タイムズ)でさえこの感情的な流れに乗り、今の若者たちを「不運な世代」と呼んでいる。こうした形容は時代のムードを捉えているが、それと同時に、深刻な不公正を見えにくくしてしまっている。
明らかにナンセンスな話の1つに、ちょうど成人しつつある世代は1950年代から1960年代前半にかけて生まれた筆者の世代よりも貧しくなるという説がある。
確かに、ジョージ・オズボーン財務相の緊縮型の財政戦略が向こう数十年間にわたって英国経済を停滞させることは、理論的にはあり得るだろう。しかし、理にかなった予測からは、経済は再び成長に転じるとの結論が導かれる。かなり悲観的な前提を設けても、2050年の英国は今の2倍裕福になっていると予想される。
ベビーブーム世代はただで大学に通えた?
また、ベビーブーム世代は大学の授業料を1ペニーも払わずに済んだが、今の学生たちは借金をしてこれを支払っているという嘆きの声もよく聞かれる。これも決して額面通りには受け取れない。
確かに、1960年代から1970年代前半にかけて大学生だった人々は授業料を払わなかった。
英国では、緊縮財政の一環として大学授業料が引き上げられ、大規模なデモが繰り広げられた〔AFPBB News〕
だが、その特権を享受できたのは、その世代の10%にすぎなかった。残りの90%は大学に進学できず、ひどい環境の学校を出て未熟練労働者となった人も多かったのだ。
今では45%前後の人々が大学教育を受けるようになっている。筆者には、これは進歩だと思える。
現在の若い世代は退職年齢が今よりも高くなるとの指摘もある。確かにその通りだろう。だがそれは、親の世代よりも7〜8年長生きする可能性があるためだ。
年金の支給開始年齢を現状のまま凍結する代わりに、この7〜8年の長生きをあきらめるかと言われたら、果たして彼らは首を縦に振るだろうか?
今日の若者の大半は20代の間は、なかなか住宅を取得できないだろう。なるほど、親の世代は住宅価格の上昇による多額の利益を棚ぼた式に手にできた。しかし、この蓄積された富はこれからどのように使われるのだろうか?
ベビーブーマーが築いた資産を受け継ぐのは誰か
その一部は、遅まきながら迎えるギャップイヤー*1を異国の地で過ごすために使われるのかもしれない。少数派だろうが、終末期のケアを受ける費用として使わなければならない場合もあるだろう。
しかし富の大部分は、ベビーブーム世代の子供たちに引き継がれる。住宅市場で起きる大きな変化は、持ち主の年齢の変化なのだ。
若い世代は、自分の不動産を手に入れるまで長期間待たなければならない。だがその一方で、親からの遺産相続のおかげで、節約にいそしんだり住宅ローンの頭金をかき集めたりという苦労をせずに済む人も多数出てくるはずだ。
*1=本来は、高校卒業から大学入学までの自由に過ごせる期間のこと
だからといって、現在の税制や社会福祉制度に不公正な部分があることが否定されるわけではない。
大手金融機関バークレイズのCEO(最高経営責任者)のボブ・ダイアモンド氏は昨年、総額2500万ポンドもの報酬を受け取ったとされるが、支給対象年齢に達したからとの理由でバスの無料パスや冬季燃料手当を手渡されたら、きっと当惑するに違いない。
投票に行くために緊縮財政から守られる高齢者
英国、100年債の発行で協議開始へ
オズボーン財務相が発表した新予算案には、法人税引き下げの財源として年金生活者の税控除の凍結が盛り込まれ、「おばあちゃん税」と非難されている〔AFPBB News〕
先日発表された予算案には「グラニー・タックス(おばあちゃん税)」が盛り込まれた(この税は、説明の仕方がまずいが、実に妥当な政策だ)。
だが、それを除くと裕福な高齢者たちは緊縮財政の影響から守られている。選挙の投票率が高いことがその大きな理由だ。
また、金融危機の代償として経済成長が止まって2010年代は失われた10年となりそうだが、たとえそうだとしても、これから働き始める若者たちの暮らしは多少惨めなものになるだけだ、などと考えるべきではない。
予算案には、きちんとした雇用や教育、職業訓練の機会を若者に提供する戦略となるものが全く盛り込まれていないのだ。
真の問題は同一世代内の不平等
しかし最も問題なのは、こうした最近の議論のせいで、もっと大きな課題に人々の関心が向かわなくなってしまっていることだ。公平性(あるいはその欠如)について言うなら、真の緊張関係は世代間ではなく同一の世代内に存在する。今の若者たちの間には、甚だしい不平等が見受けられるのだ。
第2次世界大戦後の繁栄による恩恵は、平等には分配されなかった。例えば、1980年代の産業空洞化によって職を失った人々のことを考えてみてほしい。
ベビーブーム世代というと、持ち家があって年金もたっぷり受給できると思われがちだが、実際には、退職後に貧しい生活を強いられる人が何百万人もいる。彼らにとっては、冬季燃料手当が暖を取るための唯一の手段だ。
このような不平等は、さらに手厚く守られつつある。ベビーブーム世代の比較的運に恵まれた人は、緊縮財政が自分の子供に及ぼす影響を緩和したり、学費を払ってやったりできる。また、幸運な若者は自分の親から住宅ローンの頭金を援助してもらえたり、いずれは住宅を引き継いだりするだろう。
そしてそれ以外の人々は、スキルがないことにますます寛大でなくなっているグローバル労働市場から締め出され、厳しい財政難に直面する福祉国家からも締め出されることになる。
問題とすべき格差は、大学の授業料を支払う学生たちとその親たちの間にあるのではない。学生たちと、十分な教育を受けられず仕事にも就けずにいる若者たちとの間にあるのだ。
若い世代に遺したい「社会の流動性」
確かに、オズボーン財務相には、裕福な年金受給者が享受している税制面や福祉面の特権に大ナタを振るってもらわねば困る。しかし、本当に力を入れる必要があるのは、社会的・経済的に圧迫されている若い世代が、身を立てる機会を得たり社会の恩恵を享受したりできる可能性を高めることだ。
ベビーブーム世代であることの最大の利点は社会の流動性が高いこと、つまり親の世代の職業や階級に縛られることが少なかったことだった。この特質は若い世代に遺してやる必要がある。
By Philip Stephens
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。