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コラム:消費税問題は日本の分水嶺、廃案ならトリプル安も | Reuters http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPTYE82P03V20120326
[東京 26日 ロイター] 野田佳彦首相が24日の講演で、消費税増税法案の成立に「政治生命を懸ける」と述べ、同法案の行方と政局がリンクして展開する可能性が高まってきた。マーケットは今後の展開を織り込めずにいるが、大きな節目は「4、5月解散」があるのかどうかと、6月21日の通常国会会期末の動向だ。
今後のシナリオを分析すると、市場価格を最も変動させそうなのは、同法案の廃案時に想定される円資産のトリプル安リスクだろう。それ以外の展開では、様子見が継続しそうだ。
<野田首相、消費増税に「政治生命懸ける」>
野田首相は24日、消費税増税法案について、「政治生命を懸けてこの問題を前進させ、この国会中に成立させる意気込みだ」と述べた。国内メディアは、野田首相が不退転の決意を示したと伝えるとともに、同法案が廃案になった場合、野田首相に政治責任が生じることになったと指摘した。
不退転の決意とは、いざとなったら衆院解散の"大権"を行使する意図をにじませ、正面突破を図る意図を明白にした、ということだろう。そこで、いくつかの日程上のポイントを基点に、起こり得る展開を想定してみた。
<最初の関門、法案の閣議決定>
最初の関門は、今月30日だ。野田首相は24日の講演の中で、同法案の閣議決定と国会提出が4月にずれ込む事態は「あってはならない」と強調。年度内の処理に強い決意を示した。27日午後に訪問先の韓国から帰国し、民主党内で進められている同法案の事前審査に野田首相自ら参加して、決着へ弾みをつけることも検討されているという。
もし、30日ないし31日中の閣議決定が出来なければ、野田首相の指導力にいきなり黄信号が点灯することになるが、私は31日中までに閣議決定され、この関門は何とか通過できると予想する。
<4月26日の小沢判決、衆院での採決左右へ>
次の関門は、同法案の衆院採決前後に来る。3月中に同法案が提出されれば、5月の大型連休明けが、衆院での採決時として意識される可能性が高い。その際に同法案に反対する民主党内の議員グループに勢いが増すかどうかは、4月26日に予定されている小沢一郎・元民主党代表を被告にした政治資金規正法違反裁判の判決結果が大きくかかわってくる。
もし、小沢氏が無罪になれば、反消費税を主張している小沢氏に近い議員グループの勢いが増し、衆院採決の段階で大量の反対票が出て、安泰と見られてきた衆院での可決も危ぶまれる展開になる可能性がある。否決された場合は、野田首相が「国民に直接意見を聞きたい」とし、衆院を解散するケースも想定できる。一方、採決を延期して党内調整に時間をかけるシナリオもある。そのケースでは、採決時期が延びるほど、野田首相の指導力が落ち、野田内閣が窮地に陥りやすくなると予想する。
<衆院可決後、民・自の駆け引き激化へ>
小沢氏に有罪判決が出れば、衆院で同法案が可決され、参院に送付される可能性が高まるだろ。そのケースでは民主、自民両党間に大連立や話し合い解散の機運が高まるのではないか。参院は野党多数であり、何らかの対応策が出なければ、否決され同法案は廃案の運命をたどるからだ。
ただ、大連立には自民党内に根強い反対論があり、話し合い解散に対しても、「先に消費税増税法案の成立」という民主党と、「先に解散」という自民党の思惑に隔たりがある。どちらもアイデア先行で、両党首脳が決断できないまま、時間だけが経過する可能性がかなりありそうだ。
<4、5月解散説の背後に、大阪維新の会の足音>
だが、両党首脳の背中を押す大きな要因がある。橋下徹大阪市長が率いる「大阪維新の会」に対する世論の高い支持という現象だ。日本経済新聞が26日付朝刊で発表した世論調査では、維新の会の国政進出に期待する声が57%と、期待しないの33%を上回った。政党別の支持率でも、無党派層が28%でトップを占め、自民党の26%、民主党の24%を上回った。
5月中の解散となれば、維新の会の候補者擁立が目標の300人に達せず、民主党と自民党が小選挙区制で議席を分け合い、第1党と第2党の座を占める公算が大きい。そういう思惑が、民主・自民の両党首脳の決断に影響を与える可能性がある、と私は考える。
<通常国会会期末にドラマか>
6月になっても、上記のような決断が下されずに来れば、6月21日の通常国会会期末は目前だ。ここから先は、3つの大きな道に分かれると予想する。1つは衆院解散のシナリオ。話し合い解散か、野田首相の決断による解散という2つの展開にさらに分かれる。野田首相の決断による場合は、参院での採決で否決された後の可能性が考えられる。
2つ目は廃案だ。このケースでは野田首相の政治責任を問う声が、民主党内からも噴出する。9月の民主党代表選を前に野田内閣が総辞職した場合、同党の代表選と国会での首相指名選という手続きに約1カ月を費やすことになるだろう。
<年末までの大幅会期延長も>
もう1つの選択肢は、12月まで大幅に通常国会の会期を延長し、事実上の通年国会として、同法案への賛成を野党に促すという展開だ。衆院解散に消極的な民主党内には、この展開を期待する声が少なくない。9月の民主党代表選の際に、消費税増税法案を審議中ということなら、野田首相の続投をとりあえず望む議員も多くなるということも考えられる。
通年国会への思惑がうごめく中、野田首相の24日の発言は、正面突破の可能性をかなり強くにじませたと、私の目には映る。「何も決断できない政治」に対する世論の反発は、無党派層の増大や、大阪維新の会に対する期待感の高さからうかがえる。解散を先送りしても、民主・自民の両党にとっては、厳しい審判の結果が待ち受けている可能性がある。
<消費税問題、日本の分水嶺になる可能性>
マーケットは、今のところ、どのシナリオになるか、断定する材料がなく、様子見を決め込んでいるようだ。ただ、1つはっきりしていることは、「消費税増税法案が廃案になった時は、格付け機関による日本国債の格下げを伴って、国債価格の下落(長期金利の上昇)を招く」(シティグループ証券・チーフJGBストラテジスト、道家映二氏)という展開だ。
私は、日本国債下落だけでなく、日本株、円にも海外勢から売りが出て、一時的に円、日本株、日本国債の「トリプル安」という現象が起きると予想する。廃案以外のケースでは、最終的に衆院選でどのような新勢力図になるのかが判明するまで、この問題で市場が大きく変動する可能性は低いと予想する。
いつの時点で消費税増税問題の先行きが鮮明になるのか不明だが、今年の東京市場の動向を大きく左右する材料であることに間違いない。単に税制を変えるというだけでなく、日本の将来図を見通す上でも、重要な分水嶺になると指摘したい。
*筆者(田巻一彦氏)はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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