http://www.asyura2.com/12/hasan75/msg/473.html
Tweet |
コラム:政策正常化には極めて時期尚早=サマーズ氏
2012年 03月 27日 13:44 JST
3月25日、経済について予測する人々は二通りに分かれる。将来を知ることはできないが、それが可能だと信じる人々と、将来の予測が不可能であることを認識している人々だ。写真はサマーズ氏。ダボスで2010年1月撮影(2012年 ロイター/Arnd Wiegmann)
1 of 1[Full Size]
トップニュース
日経平均は続伸、米緩和姿勢継続を好感し全面高
責任を痛切に感じている、損失は取り戻せる自信あった=AIJ社長
欧州救済基金の増強合意、十分かは議論分かれる=安住財務相
アフガン兵士が英兵2人射殺、警官によるNATO兵殺害も
ローレンス・H・サマーズ
[ケンブリッジ(米マサチューセッツ州) 25日 ロイター] 経済について予測する人々は二通りに分かれる。将来を知ることはできないが、それが可能だと信じる人々と、将来の予測が不可能であることを認識している人々だ。
経済の転換はめったに予測できるものではなく、しばらく進行してから認識されることが多い。従って、米経済に関する判断は暫定的なものでなければならない。言えることは、ここ5年間で初めて、潜在力をはっきりと上回る成長が、高い確率で再開したようだということだ。換言すれば、控えめな成長という予想コンセンサスがさらに下振れするリスクがあった数年間を経て、今はリスクが完全に二分されたということだろう。
2010年と2011年の春先には、経済が決定的に転換した兆候を見つけたと多くのエコノミストが考えたものの、ほんの数カ月後に失望するだけに終わった。しかしさまざまな要因は、今回が違う状況である可能性を示唆している。雇用の伸びは人口の伸びにかなり先行している。株式市場は上昇しており、予想ボラティリティーは2007年に金融危機が始まって以降のどの時期よりも低く、企業に重くのしかかっていた不透明感が薄れてきたことを示している。車や他の耐久財の購入を先延ばしにしてきた消費者の需要も積み上がっている。住宅市場も安定化しつつある。ここ数年、若年層が両親と同居する傾向が強まったため、世帯形成率は平時をかなり下回っていた。この先いつか、彼らは自身の世帯を形成し、世帯形成・需要の増加が住宅市場の好転を招き、さらに住宅市況が改善するという好循環が生まれるだろう。適切な規制政策が講じられれば、無線情報技術をめぐる革新やソーシャルネットワーキング、石油・天然ガスの新資源発見は、投資や雇用創出の飛躍につながる可能性が高い。
原油価格高や欧州問題再発、将来的赤字への懸念が金融に与える影響が引き続き顕著なリスクであることは確かだ。だが2010年や2011年とは異なり、そうしたリスクは市場に既に織り込まれ、個人消費や企業の設備投資の見通しにも組み入れられているもようだ。原油価格は既に著しく上昇している。欧州情勢は解決したとはとても言えないが、今後数カ月間に昨年のように悪化することはないだろう。そして市場参加者は、赤字についての警告を口々に発している。従って、さほど大したニュースでなくても、こうした分野のニュースは現在の見通しの上方修正に実際に寄与するだろう。
こうしたことは、マクロ経済政策には何を意味するのだろうか。われわれが享受している回復は、米経済の自然な回復力の反映というより、財政・金融政策担当者が、完了したとはとても言えない民間部門のレバレッジ解消を相殺するために講じた異例の措置を映したものだろう。全治療過程を終えていない回復期の患者は、重大な危険にさらされている。同様に、今後数年間、回復の最も深刻なリスクはもはや金融の緊張でも外的ショックの可能性でもなく、適切な需要の維持から従来の財政・金融プルーデンス(健全性)への関心へと、政策のシフトを急ぎ過ぎることだろう。
経済の潜在成長力に関する悲観的な見方によると、失業率は引き続き通常水準を2%ポイント下回り、雇用者数は潜在力を500万人下回り、国内総生産(GDP)は潜在力に1兆ドル近く不足している。月に30万人の雇用が創出されて経済が4%で成長したとしても、標準的な状況を取り戻すまでには数年を要する。従って、今年、平時であれば適切な政策に急転換するのは極めて時期尚早と言えるだろう。
実際、エコノミストがヒステリシス効果(履歴効果)と呼ぶ現象に関する最近の調査は、減速が大きな悪影響を与えかねないことを示唆している。ブラッド・デロング氏と私は最近の論文で、経済の収縮によって財政を抑制しようと時期尚早かつ過度な措置を講じれば、財政問題を長期的に悪化させるリスクを冒すことになると指摘している。
それでは、財政の持続可能性や過度の信用創造、政策への信認が極めて重要な意味を持つ世界で、最終的に政策が正常さを取り戻すことに対する妥当な懸念にいかに答えればいいのだろうか。正しい解決法は、状況の正常化にコミットするものの、一定のレベルを超えたらという条件をつけた政策を遂行することだ。米連邦準備理事会(FRB)は、失業率とインフレ見通しが一定のレベルを超えるまで、現在のフェデラルファンド(FF)金利を維持するとコミットすることができる。長年にわたりインフラに資金を投じるというコミットメントに、雇用もしくは生産の伸びが一定水準に到達した場合に発動されるガソリン税のような財源の仕組みを含むことも可能だ。税制改革は、経済動向の好転にペースを合わせながら段階的に税率を変更することができるだろう。
条件付きのコミットメントには、家計や企業に対し、政策がいかに展開していくかについて明確にする利点がある。また、立法化が必要な分野では、政治的な不透明感が除去されるだろう。それによって政策担当者は、まさに今われわれが必要としている、短期的な成長拡大と中期的な健全性へのコミットの両立を描くことができる。情勢が急激に変化する世界では、政策に含まれる偶発性は常に存在する。それをはっきりと認識することが、誰も正確には将来を読み取ることのできない世界で、信頼感を与え、かつ信認を守る方法だろう。
(ローレンス・H・サマーズ氏はハーバード大学教授。元米財務長官)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE82Q01S20120327?sp=true
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。