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これからの日本について、自分のアタマで考えよう!【第2回】 2012年3月27日 藤野英人,ちきりん
この20年間下がり続けている日経平均にだまされるな!
現状、日経平均株価は1万円台に乗せたが、それでも1990年の3万9800円の最高値から 比べると約1/4の水準。しかし、今の生活を振り返ってみれば、20年前に比較して格段に便利で豊かになっている。ファンドマネジャーとして5500人以 上の社長と会ってきた藤野英人さんと、人気ブロガーのちきりんさんの特別対談・第2回は、日経平均株価のカラクリについて語ってもらった。
社会人1年目は不本意な配属だったけど、
それが今の自分を作ってくれた(藤野)
ちきりん 今回の藤野さんの著書には「日経平均は死んだ」とあったんですが、藤野さんは、昔から日経平均に採用されるような企業は投資対象にしてなかったんですか?
藤野 僕はたまたま大学卒業して最初の会社で、日経平均に採用されるような大型株ではなく、時価総額の低い、中 小型株に投資する部署に配属されちゃったんですよ。だから日経平均株価の採用銘柄よりはもっと小さな企業の調査をしていました。当時はすごく不満でしたけ ど、今考えるとそれが今の自分の基礎になっているなと思います。
その頃の僕は、今の自分から見るととても嫌いなタイプでした。大企業志向が強くて、一流企業とか一流大学卒が偉いとか、そういう価値観をすごく 持っていて。だから、中小企業を担当することになって、すごいガッカリ感がありました。たとえば、マツモトキヨシが上場する時なんて「なんだ、この社名 は」と(笑)。冷静に考えれば人の名前ですからね。今でこそ社名の違和感がなくなりましたけど、当時は「こんな名前の会社を調査するのか……」って思いま したね。
ち きりん 関西出身。バブル最盛期に証券会社で働く。その後、米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。マネージャー職を務めたのちに早期リタイヤし、 現在は「働かない生活」を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦などを含め、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブ ログ「Chikirinの日記」を開始。政治・経済からマネー・問題解決・世代論まで、幅広いテーマを独自の切り口で語り人気を博す。現在、月間150万 以上のページビュー、日に2万以上のユニークユーザーを持つ、日本でもっとも多くの支持を得る個人ブロガーの1人。著書に『ゆるく考えよう』(イースト・ プレス)がある。 ブログhttp://d.hatena.ne.jp/Chikirin/ ツイッターアカウント@InsideCHIKIRIN
ちきりん 大企業志向って、学生とか、若いときはみんなよく陥りがちですよね。
藤野 そうなんです(笑)。でも、私はガッカリしながらもきちんと仕事をしようと思って、中小企業やベンチャー企業にできるだけ会社訪問しました。また、逆に社長の方も僕に面会に来るわけですよ。投資してもらおうとしてアピールをしに来るんです。
1998年くらいまでは、日本企業の株式公開というのは主に相続対策でした。標準的なケースとしては、創業者は30歳で起業して、60歳で IPO(株の新規公開)をするんです。それは数字にも表れていて、創業して平均28.8年くらいで株式公開するというデータがありました。つまり上場時の 社長の年齢は60歳前後で、名を遂げた人たちの最後の花道だったんですよ。だから、IPOといいながら入場門じゃなくて退場門だったんです。
ちきりん なるほど、退場門ですか。自分の創業した会社の株を少しでも高く売り抜けて、あとは悠々自適に老後を送ると……。
藤野 そうです。そうした社長たちは「ゴールにたどり着いた、もう退場だ」という意識だから、今後の展望についての話はあまりなくて、「私がいかに成功したか」という自慢話が多いんですね(笑)。
でも、とはいえ、そういう社長たちに毎日のように接しているうちに、だんだん彼ら・彼女らに魅力を感じるようになってきたんです。当たり前の話で すけど、会社を興して、それを大きくして成功している人たちばかりだから、海千山千の人たちばかりで、ある意味ものすごく存在感があって。さらに、彼ら、 彼女らには人を引き付ける魅力がすごくあるわけです。いろいろな人がいて、いろいろな仕事があり、いろいろな人生があって、それぞれ面白い。
ちきりん 何十年も企業を経営してきたというのはスゴイことですからね。
藤野 そして、この海千山千の創業社長たちが、若造の僕に対していろいろ熱心に話しをしてくれるわけです。彼ら、彼女らからすると、若い僕に人生の体験を伝えてあげようという意識は全然なくて、私から本気でお金を引き出そうと手練手管の数々を繰り出すんです。
今思うと、それこそ僕にとって最高の教育だったんですね。結果的にこれを何年も続けるうちに、知らず知らずにベンチャーマインドが僕の中に打ち込まれていったんです。それで、私は投資するときには、会社の規模ではなく、成長するかしないか、という基準で判断するようになったんです。
ちきりん 彼らからベンチャーマインドを叩き込まれているなというのは、当時から意識されていましたか? ずっと後から、振り返ってそう感じるのですか?
藤野 そうですね。振り返って、でしょうか。当時は全然意識していませんでしたが、毎日、エネルギッシュな社長さんたちにお会いしているうちに、知らないうちに意識が変わっていったんですね。
次のページ>> 20年前の株式市場の主役は、鉄鋼株や総合電機株
ちきりん 今、話を聞いていて思ったんですけど、構造的に、世代とか時代って上手くシフトしていくようになっている面があるなと。
たとえば、今から20年くらい前に藤野さんが野村アセットマネジメントに入った時期って、株式市場の主役は鉄鋼株とか総合電機株ですよね。そし て、当時40代くらいの最も実力のあるアナリストがそういう業界を担当しますよね。一方、若い人にはそういう主役のセクターは担当させられないから、「お 前は中小型株でもやっとけ」という風になったわけですよね。
実は、『起業のファイナンス』などの著作がある磯崎哲也さんと対談したときも同じようなことをおっしゃっていて、シンクタンクにいらっしゃった時 に、上の人は皆、鉄鋼とか電機などの業界を担当していて、「お前は、ITでもやっとけ」ということになり、それがネット業界とかITの企業とかに興味を持 つきっかけになったということでした。
これはよく考えると非常に面白いことで、40歳くらいになり、企業の中で一番実力が出てくると、その時代の花形産業の担当を当然するわけですよね。ところが、それって終わりかけている業界の可能性がある。一方、若手は花形じゃない産業を担当させられるわけですが、それが結果的には将来勃興する産業を勉強できる機会になる、構造的にそうなっているんじゃないかと思いました。
藤 野英人(ふじの・ひでと)レオス・キャピタルワークス取締役・最高投資責任者(CIO)。 1966年富山県生まれ。90年早稲田大学卒業後、国内外の運用会社で活躍。特に中小型株および成長株の運用経験が長く、22年で延べ5000社、 5500人以上の社長に取材し、抜群の成績をあげる。2003年に独立、現会社を創業し、現在は、販売会社を通さずに投資信託(ファンド)を直接販売する スタイルである、直販ファンドの「ひふみ投信」を運用。ファンドマネジャーとして高パフォーマンスをあげ続けている。ひふみ投信 http://www.rheos.jp/ ツイッターアカウント@fu4
藤野 なるほど、そういわれてみるとおもしろいです。確かにそうかもしれないですね。
実は、私が入社して3〜4年経ってファンドマネージャーの仕事に慣れてきたころ、先輩に「君もそろそろ、中小型株みたいな女、子供のセクターはや めて、そろそろ総合電機とか鉄鋼とかにいかないとね」というようなことを言われたんです。これは総合電機や鉄鋼が花形だ、と思っていないと出ない言葉です よね。
これを言われて僕はすごくショックを受けました。まず女性に失礼だし、子供にも失礼。さらに、中小型株の企業に失礼だし、僕にも失礼ですよね。なんとデリカシーのない発言だろうと。
ちきりん 学生本人が就職でベンチャー企業に入ろうとしても、親が「もっと一流の大きな会社に行きなさい」というのと同じ感覚ですよね。大きい企業がいちばんいいという固定観念がある。
藤野 そうです。その頃の金融業界は、ソニーなどの総合電機を担当しているアナリストが全アナリストのトップで、次に通信セクターが続き、ずーっと下がって中小型株はヒエラルキーの一番下という雰囲気が今よりもずっと強くありました。
僕自身も過去には、そういう既成の枠の中でモノゴトを見ていた側の人間なんですけど、中小企業の創業者と接しているうちに、僕は、ちきりんさんが本で書かれたように「自分のアタマで考える」ようになっていったんです。
それは、既成の価値観でモノゴトを見るのではなくて、一度全てを疑って、ゼロベースで考えて自分なりの結論をアウトプットしていくという姿勢です。
少なくとも起業して成功していく人たちは皆「自分のアタマで考える」人たちなんです。そんな人たちと真剣にやりあってきたということが僕にとっては重要な経験でしたね。
ちきりん なるほど。
藤野 そして、この20年間は日経平均が右肩下がりの厳しい経済環境が続いていたけど、そうした中でも自分のアタマで考えている人たちが結構たくさんいて、そういう人たちが新しい市場や産業を切り拓いたりしてきたということが現実としてあります。
ちきりん 経営トップの人が、自分より若い役員や部長より圧倒的に思考が大胆で柔軟だということが結構あるじゃないですか。
社長が一見常識外れなことをガンガン言い出したり、リスクをとったりする。周りの人は「そんなことをしたら危ない」とか、「お金がかかる」とかいろいろ言うんだけど、社長がトップダウンでガーとモノゴトを進めていくパターンの会社にこそ、結構いい会社がありますよね。それって、まさに自分の頭で考えているんですよね。
過去の常識にとらわれず、特に成功体験さえ切り離して、未来を柔軟に考えられる人がどんどん出てきている。そういう経営者や会社を身近に見ている人にとっては、日本の将来はとても明るいというか、暗い感じは全然しないですよね。
藤野 そうですね。創業者が率いている企業などは、自分のアタマで考えている柔軟な経営者が多いで すね。一方で、今の大企業の社長のほとんどはサラリーマンなので、創業者と違って「自分たちの存在意義は何か」という根本的な問題を考えずに、どちらかと いうと事業活動の成果を上げて出世して社長になった人たちです。結果的に、今、根本的なところから自分で考える習慣がない人たちが多くなってきているとい う感じがします。
だから、個人が何を見るかによって日本って、見え方が全然違うと思うんです。大企業とか大きなメディアというサークルの中だけで付き合いをしてい る人たちには、日本経済は右肩下がりの風景にしか見えないと思います。そういう人たちが作っている新聞記事やテレビ番組を見ていると、「日本って20年間 ダメだったね、今後も暗いね」となるんだけど、僕から見るとそういう面ばかりでなく、日本には明るくて可能性がある面も十分にあります。
次のページ>> 日経平均は30年前と同じ水準なのはなぜなのか
この30年間で日本は豊かになったのに、
なぜ日経平均は上がらないのか
ちきりん 私が不思議だなと思うのは、9000円台の日経平均って30年くらい前と同じ水準ですよね。連続性があると いわれている指標が、30年前と今とで同じ水準ということは、「日本経済が生み出している価値は30年前と変わってないですよ」という話になるわけですよ ね。ところが一方で、藤野さんが本の中でも言っているように、30年前の生活と今の生活を比べると、今の方が圧倒的に便利で快適になっている。
藤野 かなり便利になりましたよね。
ちきりん 実は私は、学生のころに起業の真似事みたいなことをしたんです。その時に、一番不便だったのは注文を 受けることでした。当時はインターネットもケータイ電話もなくて、固定電話で注文を受けなければいけなかったんです。しかも当時の電話機には留守番機能も ないし、転送機能もなかった。つまり、注文を受けるためには、物理的に固定電話の前に居続けなければならなかったんです。今だったら、携帯がありネットが あり、電話だってモバイルフォンに転送できます。
当時の私は、「小さな会社だと全部自分でやる必要がある、固定電話の前で注文待ってるなんて、あたしには全く向いてない」と思ったんですど、今はあらゆることが簡単・便利になっていて、やろうと思えば学生だってビジネスを気軽に起こせます。
藤野 通信に関していえば劇的に便利になりましたよね。NTTが分割して民営化し、その後インターネットやケータイも普及して……。
ちきりん 30年前ってコンビニはもう東京にけっこうあったと思います。でも、ケータイはまだないし、ネットも ないし、本を買いに行くのも、家の近くには小さな本屋しかないので、わざわざ新宿の紀伊国屋書店までいかないといけない。そのために交通費払って、買いに 行って、そこで「ありません」と言われてガッカリして帰るみたいなこともあったわけです。
服だって、ユニクロの品質の服をあの値段で当時、買えたかというと、ありえないですよね。フランスの高級ワインも当時2万円くらいしていたのが、今は3000円で買えるしとか。
藤野 だから、90年の日経平均株価が3万8000円だとしても、あの時代に戻りたいと思わないですよね。
ちきりん 本当にそうですね。でもそこで藤野さんにお聞きしたいのですが、それなら、なぜ日経平均は上がってな いのか。なぜ、日経平均は日本経済の状況をきちんと表す指標であり続けていないのか、ということです。日経平均を算出するための225銘柄は、時代に合わ せて適宜銘柄を入れ替えていますよね。
次のページ>> グリーやディーエヌエーが日経平均に採用されないワケは…
若くて伸び盛りの企業は
日経平均に採用されない
藤野 日経平均銘柄への採用は、時価総額や流動性(売買がどれだけ活発になされているか)という2つの観点から、その時々で日本を代表する企業が採用される仕組みになっています。
ですから、企業が伸び盛りの時期ではなく、ある程度成長した後に日経平均に組み入れられることが多いのです。
ちきりん グリーとかディーエヌエーとかをもっと早く日経平均に組み込んでおけば、日経平均はもっと伸びたはずだと思うのですが、流動性など銘柄選択の際の技術的な問題としてそういうことが難しいわけですね。
藤野 そうです。それから、もっと重要な問題として、この10年間で大企業の利益がだいぶへこんでしまったということが言えると思います。
日経平均は時価総額の大きな会社の株価動向でほとんど決まるので、大企業がへこんでしまうと株価にも影響し、日経平均も下がる仕組みになっているのです。
日本全体の経済規模を示すGDPは趨勢としてこの10年も増え続けていますが、それが反映されてないのは、大企業の利益がへこんで、その分の利益 が中小・中堅企業に分散しているからです。だから、大企業の状況を示す日経平均は、日本の経済実態以上に落ち込んでしまった、ということになるわけです。
ちきりん 日経平均以外の株価指標、たとえば、小型株が集まっているジャスダック市場の株価指標なんかはちゃんと上がってきているのですか? それともそういった指標も、現実を反映する指標づくりに失敗しているんですか?
藤野 日経ジャスダック平均は、2001年9月から2011年9月の10年間で10%上がっています。残念ながら劇的に上がっているというわけではないのですが、大型株の影響を受けやすいTOPIXは同時期でマイナス26%なので、それと比べると、中堅企業の集合体を示す指標はちゃんと上昇しているということは言えます。
また、個別にみると、株価が何倍にも成長した中小企業が結構たくさん出ています。
ちきりん なるほど。藤野さんの本には、何倍にも上昇する小型株のことがたくさん紹介されていますが、そういった株価指数は、日本経済の中で中小企業が頑張っている状況をきちんと反映しているのですね。
(第3回へ続く)
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